F 労働基準法 解答の解説  Tome塾Homeへ
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14
4B
 フレックスタイム制を採用するに当たって、労使協定により定めなければならない事項に関し、32条の3の1号によれば、フレックスタイム制で労働させる労働者の範囲を労使協定で定めればよく、その人数に制限はない。
 労働者の範囲の例としては、例えば個人ごと、グループごと、課ごと、部ごとあるいは職種ごと、さらには全員というのもありうる。
 問題文にある「原則として」とあるのは、労使委員会の決議、労働時間等設定改善委員会の決議により、労使協定の代替が可能という意味か。
 労使協定の代替可か否かについてはこちらを。
13
6B
 フレックスタイム制を採用するに当たっては、32条の3にあるように、まず「就業規則その他これに準ずるもの」により、「その労働者の始業及び終業の時刻をその労働者の決定に委ねることとする旨」を記載するととに、労使協定によって、同条に定められた一定の事項を定めなければならない。
 労基協定に定めるべき事項については、同条の1号から4号により、適用する労働者の範囲、清算期間(3か月以内の期間)、清算期間における総労働時間、その他厚生労働省令で定める事項である。
 本肢は、このうち、その他厚生労働省令で定める事項についての出題であり、施行規則12条の3によれば、「フレキシブルタイムとコアタイムは、定める場合にはその時間帯の開始及び終了の時刻を協定しなければならないが、必ず定めなければならないものではない」
30
2ア
 フレックスタイム制については、32条の3に「就業規則その他これに準ずるものにより、その労働者に係る始業及び終業の時刻をその労働者の決定にゆだねることとした労働者について、書面による協定により、一定の事項を定めた時に、その労働者に対して適用される」ものである。
 よって、労使協定だけでなく、就業規則等により「始業及び終業の時刻をその労働者の決定にゆだねる」ことが必要なのである。
 これについては、就業規則の定め(S63.1.1基発1)においても、「フレックスタイム制を採用する場合には、就業規則その他これに準ずるものにより、始業及び終業の時刻を労働者の決定にゆだねる旨を定める必要があるものであること」と念押しされている。
 なお参考までに、問題文には、「常時10人以上の労働者を使用する使用者がフレックスタイム制により労働者を労働させる場合は、就業規則により」とあるが、もし、常時使用する労働者が10人未満であって、どうしてもフレックスタイム制を採用したい場合は、就業規則を作成するかこれに準ずる文書を作成して、「始業及び終業の時刻をその労働者の決定にゆだねる」と書いておかなければならない。 
 この準ずる文書の性格については、こちらを参照のこと。
28
4B
 32条の3に定めるフレックスタイム制は、「就業規則その他これに準ずるものにより、その労働者に係る始業及び終業の時刻をその労働者の決定にゆだねることとした労働者については、過半数代表者等と所定の事項について書面による協定を結んだ時に、その労働者に対して適用される」
 フレックスタイム制も最も重要なポイントは、「労働者に始業および終業の時刻を自主的に決定できる権利を与え、これを保証することにある」
 この点、就業規則の定め(S63.1.1基発1)において、
 「フレックスタイム制を採用する場合には、就業規則その他これに準ずるものにより、始業及び終業の時刻を労働者の決定にゆだねる旨を定める必要があるものであること。
 その場合、始業及び終業の時刻の両方を労働者の決定にゆだねる必要があり、始業時刻又は終業時刻の一方についてのみ労働者の決定にゆだねるのでは足りないものであること」とある。
 さらに当然ながら、フレックスタイム制が適用されている労働者に対しては、使用者は始業及び終業の時刻を指定するような業務命令を発することはできない。
17
2E
 「フレックスタイム制の場合にも、使用者には労働時間の把握義務がある。従って、フレックスタイム制を採用する事業場においても、各労働者の各日の労働時間の把握をきちんと行うべきである」(S63.3.14基発150)とある。フレックスタイム制においても時間外労働や割増賃金の支払がありうるので、当然のことである。
15
5D
 フレックスタイム制を採用した場合の労基法上の休憩の与え方及び就業規則における規定の仕方に関して、通達(S63.03.14基発150)によると、
  「フレックスタイム制を採用した場合でも、休憩は労基法の規定どうりに与えなければならない。一斉休憩が必要な場合には、コアタイム中に休憩時間を定めるよう指導すること。
 一斉休憩が必要でない事業においては、休憩時間帯を労働者に委ねる場合には、各日の休憩時間の長さを定め、それをとる時間帯は労働者に委ねる旨を、就業規則に記載しておけばよい」
⇒一斉休憩が必要な事業場においては、例えば「午前 10 時から午後3までの間(ただし正午から午後1時までの休憩を除く)は、労働しなければならない時間とする」とコアタイムを設けるなど。
 本肢の場合は、一斉休憩の原則が適用される事業場であるから、就業規則上の記載だけでなく、34条2項によって、「労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、ない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による除外協定がないと、休憩時間は一斉に与えなければならない」
 なお、一斉休憩の原則を適用しなくてもよい事業場とは、こちらの事業場である。

2
6B
 フレックスタイム制を実施する場合は、32条の3により、
@「就業規則その他これに準ずるもの」により、その労働者に係る始業及び終業の時刻をその労働者の決定に委ねることを定め、
A過半数組織の労働組合(ない場合は、労働者の過半数代表者)と、所定の事項を定めた労使協定を結ぶ
必要がある。
 この場合、@については、就業規則を定めなければならない事業(常時10人以上の労働者を使用する事業)であれば、就業規則の変更の届出が必要。
 Aについては、32条の3の4項に「前条2項の規定(すなわち、1か月単位の変形労働時間制を労使協定で実施する場合は、その協定を所轄の労働基準監督署長に届け出なければならない)は、1項各号に掲げる事項を定めた(フレックスタイム制に関する)協定について準用する。ただし、清算期間が1か月以内のものであるときは、この限りでない」とある。
 つまり、「清算期間を1か月超(3か月以内)と定めた場合に限り、フレックスタイム制導入の労使協定を所轄の労働基準監督署に届出なければならない」
15
5E
 通達(S63.1.1基発1号)によれば、
 「派遣労働者が派遣先においてフレックスタイム制の下で労働させる場合には、派遣元の使用者は、つぎのことを行う必要がある。 
1  派遣元事業場の就業規則その他これに準ずるものにより、始業及び終業の時刻を派遣労働者の決定に委ねることを定める。
2  派遣元事業場において労使協定を締結し、所要の事項について協定する。
3  労働者派遣契約において、当該労働者をフレックスタイム制の下で労働させることを定める。
11
4E
 フレックスタイム制を採用した場合であっても、時間外労働となる場合がある。
 具体的には、「フレックスタイム制における時間外労働の計算」にある通りで、
(1)清算期間が1か月以下の場合、
・清算期間合計の労働時間(休日労働は除く以下同じ)が1週平均40時間となる時間を超えた場合
(2)清算期間が1が月超
@1か月合計の労働時間が、1週平均50時時間となる時間を超えた場合、その超えた時間
A清算期間合計の労働時間(上記@による超えた時間を除き)1週平均40時時間を超えた場合には、
時間外労働になるので、予め、これらのことを見越して、いずれかに時間外労働が発生すると思われる場合は、36条の規定による協定の締結と届出が必要である。
 36協定は、36条2項の4号により、本来は「1日1箇月及び1年のそれぞれの期間について労働時間を延長して労働させることができる時間の取り決め」が必要であるが、フレックスタイム制の場合は、1日単位や1週間単位だけでは、時間外労働は発生しない。
 よって、通達(基発1228-15、H30.12.28:問2)においても、「1日について延長することができる時間を協定する必要はなく、「1か月」、「1年」の延長時間を協定すれば足りる」とある。

3
5E
 「フレックスタイム制」とは、32条の3にあるように、「就業規則等で始業及び終業の時刻を労働者の決定に委ねることとし、過半数組織労働組合等との書面による協定により、所定事項を定めた場合は、清算期間平均の1週間当たりの労働時間が法定労働時間を超えない範囲内において、1週間において40時間、1日において8時間を超えて、労働させることができる」
 ただし、同条2項により、「清算清算期間が1が月超の場合は、1か月合計の労働時間が、1週平均50時時間を超えない場合、あるいは、清算期間合計の労働時間が、1週平均40時時間を超えない場合」と読み替える」
 このようなフレックスタイム制を採用した場合であっても、時間外労働となる場合があり、「フレックスタイム制における時間外労働の計算」にあるように、
(1)清算期間が1か月以下:清算期間合計の労働時間が1週平均40時間を超えた場合
(2)清算期間が1が月超:
@1か月合計の労働時間が、1週平均50時時間を超えた場合、
Aあるいは、清算期間合計の労働時間(@による超えた時間を除く)が、1週平均40時時間を超えた場合である。
 このような自体の発生が予測される場合は、あらかじめ36条の時間外労働に関する協定の締結と届出が必要である。
 36条2項の4号によれば、一般には「対象期間における1日1箇月及び1年のそれぞれの期間について労働時間を延長して労働させることができる時間」の取り決めが必要であるが、上記のごとく「フレックスタイム制では、1日単位や1週間単位だけでは時間外労働は発生しないので、これらは不要」
 よって、通達(基発1228-15、H30.12.28:問2)においても、「1日について延長することができる時間を協定する必要はなく、「1か月」、「1年」の延長時間を協定すれば足りる」とある。
⇒つまり、「36条協定の締結により、時間外労働が発生しても、1週間において40時間、1日において8時間を超えて、労働させることができる」

5
7A
 「フレックスタイム制」とは、32条の3にあるように、「就業規則等で始業及び終業の時刻を労働者の決定に委ねることとし、過半数組織労働組合等との書面による協定(フレックスタイム制協定)により、所定事項を定めた場合は、清算期間平均の1週間当たりの労働時間が法定労働時間を超えない範囲内において、1週間において40時間、1日において8時間を超えて、労働させることができる」
 ただし、同条2項により、「清算期間が1か月超の場合は、1か月合計の労働時間が、1週平均50時時間を超えない場合、あるいは、清算期間合計の労働時間が、1週平均40時時間を超えない場合」と読み替える」
 逆にいえば、清算期間合計の労働時間が1週平均40時間を超える(ただし、清算期間が1か月超の場合は、1か月合計の労働時間が1週平均50時時間を超える、あるいは、清算期間合計の労働時間が、1週平均40時時間を超える)ことが予測される場合は、予め、36条協定(時間外・休日労働協定)を締結しておく必要がある。
 本肢はその際に協定で定める延長時間について問うたものである。
 本来ならば、36協定は、36条2項の4号により「1日、1か月及び1年のそれぞれの期間について労働時間を延長して労働させることができる時間の取り決め」が必要であるが、
 通達(基発1228-15、H30.12.28:問2)によれば、「フレックスタイム制」の場合は、1日について延長することができる時間を協定する必要はなく、「1か月」、「1年」の延長時間を協定すれば足りる」とある通り。
⇒フレックスタイム制では、1日単位の労働時間だけでは、時間外労働は発生しないからである。


6B
 「労働基準法第32条の3に定めるいわゆるフレックスタイム制について、清算期間が1か月を超える場合」とある。
 この場合に特有な時間外労働は、32条の3の2項から、「清算期間を1か月ごとに区分した各期間ごとに、1週間当たりの平均労働時間が50時間を超えた場合は、その超えた時間が時間外労働となる」
 よってたとえば、清算期間を平均すれば週当たり平均労働時間は40時間以下であるが、ある1か月を極端に繁忙にして、その月の週平均労働時間が50時間を超えると、超えた時間は割増賃金が発生する時間外労働となるのである。
 いずれにしても時間外労働の発生が想定される場合は、36条1項から、労使協定の締結と届出が必要である。
 この協定の締結義務を含め、割増賃金の支払時期に関しては、通達(H30.12.28基発1228ー15)に、「清算期間が1箇月を超える場合において、清算期間を1箇月ごとに区分した各期間を平均して1週間当たり50時間を超えて労働させた場合は時間外労働に該当するものであり、時間外・休日労働協定の締結及び届出を要し、清算期間の途中であっても、当該各期間に対応した賃金支払日に割増賃金を支払わなければならない」とある
 
なお参考ながら、清算期間最終月においては、清算期間合計の労働時間(ただし、1か月平均で50時間を超え、時間外労働としてカウントされた時間を除く)の1週間平均が40時間を超えた場合、清算期間最終月の時間外として、その賃金支払日に割増賃金を支払わなければならない。
30
1ア
 フレックスタイム制は、1か月以内の一定の期間(清算期間)の総労働時間を定めておき、労働者がその範囲内で各日の始業及び終業の時刻を選択して働くことにより、労働者がその生活と業務との調和を図りながら、効率的に働くことを可能とし、労働時間を短縮しようとする趣旨のものである。
 そして、清算期間における実際の労働時間が定められた総労働時間ぴったりとならないことは、通常起こりうることであるが、このような場合、その清算期間ごとに始末をつけるのが原則である。
 このことに関して、通達(S63.01.01基発1)によれば
 「当該清算期間内で労働時間及び賃金を清算することがフレックスタイム制の本来の趣旨であると考えるが、それを次の清算期間に繰り越すことの可否については次によるものであること」
・清算期間における実際の労働時間に過剰があった場合に、総労働時間として定められた時間分はその期間の賃金支払日に支払うが、それを超えて労働した時間分を次の清算期間中の総労働時間の一部に充当することは、その清算期間内における労働の対価の一部がその期間の賃金支払日に支払われないことになり、法24条(全額払いの原則)に違反し、許されないものであること。
・清算期間における実際の労働時間に不足があった場合に、総労働時間として定められた時間分の賃金はその期間の賃金支払日に支払うが、それに達しない時間分を、次の清算期間中の総労働時間に上積みして労働させることは、法定労働時間の総枠の範囲内である限り、その清算期間においては実際の労働時間に対する賃金よりも多く賃金を支払い、次の清算期間でその分の賃金の過払を清算するものと考えられ、法24条に違反するものではないこと。
20
4B
 32条の1項、2項から、
 「使用者は、労働者に、休憩時間を除き、1日について8時間、1週間について40時間を超えて、労働させてはならない」
 とある。
 本肢の場合、1日6時間、1週間で36時間の労働であるから、32条には抵触しない。
 参考までに、休日については、35条
 「使用者は、労働者に対して、毎週少くとも1回の休日を与えなければならない」とあり、
 1週間に6日の労働であれば、35条の法定休日の定めにも違反していない。
29
4D
 「1日の所定労働時間が8時間の事業場において、1時間遅刻をした労働者に所定の終業時刻を1時間繰り下げて労働させる」とある。
 この者のその日の実際の労働時間は8時間であり、所定労働時間内であるから、時間外労働に従事させたことになならないことは、容易に推定できるであろう。
 この点については、通達(S29.12.01基収6143)においても、
 「32条又は40条に定める労働時間は実労働時間をいうものであり、時間外労働について36条1項に基づく協定及び37条に基づく割増賃金の支払いを要するのは、右の実労働時間を超えて労働させる場合に限るものである。 従って、例えば労働者が遅刻した場合その時間だけ通常の終業時刻を繰り下げて労働させる場合には、1日の労働時間を通算すれば32条又は40条の労働時間を超えないときは、36条1項に基づく協定及び37条に基づく割増賃金支払いの必要はない」とある。
30
1オ
 法定労働時間を規定した32条にある「1週間について40時間」の「1週間」とは、通達(S63.1.1基発1号)によれば、
 「1週間とは、就業規則その他に別段の定めがない限り、日曜日から土曜日までとする」とある。
 ついでに、「1日とは、原則として、午前0時から午後12時までをいう。ただし、継続勤務が2暦日にわたる場合には1勤務として取り扱い、当該勤務は始業時刻の属する日の労働として、当該日の「1日」の労働とする」ともある。


6A
 法定労働時間を規定した32条2項にある「休憩時間を除き1日について8時間」とある「1日」とは、通達(S63.1.1基発1号)によれば、
 「1日とは、原則として、午前0時から午後12時までをいう。ただし、継続勤務が2暦日にわたる場合には1勤務として取り扱い、当該勤務は始業時刻の属する日の労働として、当該日の「1日」の労働とする」とある。
 たとえば、もし仮に、11月6日(水)の午前8時から17時までの所定労働(休憩1時間を除き8時間)を終了した後、直ちに時間外労働に入り、11月7日(木)の午前8時まで連続して労働した場合:11月7日午前0時から8時までの労働も、11月6日の労働とする(結局、6日の労働時間は23時間となる) 
 上記の例において、たとえば11月7日の午前2時から4時までの2時間は睡眠時間であるとした場合、どう考えるかであるが、
・2時間程度であれば、完全に睡眠したとしても、睡眠後に新たな労働が始まったとは考えにくいことから、労働時間ではないとしても一時的中断でしかなく、11月6日からの労働は継続していると解釈される可能性が高い。
・また、その睡眠時間がいわゆる仮眠時間にすぎず、いつでも何かあれば対応しなければならない状況であれば、指揮命令下にあると考えられ、労働時間と解釈される可能性もある。
 これらは、実態を詳細に吟味して判断されると思われる。
14
4A
 本事例は、最高裁第1小(H12.3.9三菱重工業長崎造船所事件)であり、
 「従業員に、始業前と終業後に作業服や保護具の着替えをするよう義務づけており、始業時刻から着替えを始めた従業員らに対して、労働時間内に着替えを行った結果、本来の労働を行わなかったとして、就業規則違反を理由に、賃金カットを行った。これに対して、組合側が賃金カット分の支払いを求めた訴訟である。
 これに対し最高裁は、
 「同社での作業服や保護具の着替えは、会社の指揮命令下で行われ、労働時間に含まれる」
 と判断し、組合側勝訴の福岡高裁判決を支持し、会社側の上告を棄却したものである」
 その判決要旨は、
 「労働基準法32条の労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいい、右の労働時間に該当するか否かは、労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができるか否かにより客観的に定まるものであって、労働契約、就業規則、労働協約等の定めのいかんにより決定されるべきものではないと解するのが相当である」
 ここで、「就業規則等の定めいかんにより決定されるべきものではない」という意味は、就業規則により、
 「作業服・保護具の着替えなどの準備行為等は所定労働時間外に行い、実作業がはじまってから所定労働の始まりとする」
 と定めても、それに関係なく作業の実態で判断すべきということ。   このように、準備作業や作業終了後の片付け、交替勤務のときの手待時間、深夜業のときの仮眠時間、就業前・終業後のミーテイングや研修時間等々が労働時間か否かについては、指揮命令下に置かれているか否かについて実態に応じて判断すべきであるとしている。
28
4A
 過去問解説(14-4A)にあるように、最高裁判例(H12.3.9三菱重工業長崎造船所事件)において、
 「労働基準法第32条の労働時間とは、「労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいい、右の労働時間に該当するか否かは、労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができるか否かにより客観的に定まるものであって、労働契約、就業規則、労働協約等の定めのいかんにより決定されるべきものではない」と解するのが相当である」としている。
20
4A
 過去問14-4Aの解説の通りで、
 「使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができるか否かにより客観的に定まるものであって、労働契約、就業規則、労働協約等の定めに従い決定されるべきものではない」としている。
22
4B
 最高裁判例[三菱重工業長崎造船所事件](H12.03.09)については、過去問解説(14-4A)の通りであるが、本肢に関連するものについてさらに補足すると、
 「D造船所の就業規則は、労働時間を午前8時から正午まで及び午後1時から午後5時まで、休憩時間を正午から午後1時までと定めるとともに、始終業基準として、始業に間に合うよう更衣等を完了して作業場に到着し、所定の始業時刻に作業場において実作業を開始し、
 所定の終業時刻に実作業を終了し、終業後に更衣等を行うものと定め、
 さらに、始終業の勤怠把握基準として、始終業の勤怠は、更衣を済ませ始業時に体操をすべく所定の場所にいるか否か、終業時に作業場にいるか否かを基準として判断する旨定めていた。そして、これを怠ると、懲戒処分を受けたり就業を拒否されたりし、また、成績考課に反映されて賃金の減収にもつながる場合があったということである
 このような事実関係によれば、労働者は、使用者から、実作業に当たり、作業服及び保護具等の装着を義務付けられ、また、この装着を事業所内の所定の更衣所等において行うものとされていたというのであるから、
 右装着及び更衣所等から準備体操場までの移動は、使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができる
 また、労働者の副資材等の受出し及び散水も同様である。
 さらに、労働者らは、実作業の終了後も、更衣所等において作業服及び保護具等の脱離等を終えるまでは、いまだ使用者の指揮命令下に置かれているものと評価することができる。
 そして、労働者らがこれらの行為に要した時間が社会通念上必要と認められるとして労働基準法上の労働時間に該当するとした原審の判断は、正当として是認することができる」
 つまり、「同社での作業服・保護具の装着、脱着及び更衣所から準備体操場までの移動時間は、使用者の指揮命令下で行われ、労働時間に含まれる」とした。
27
6ア
 最高裁判例[賃金請求事件(三菱重工業長崎造船所事件](H12.03.09)]によると、
 「労働基準法32条の労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいい、右の労働時間に該当するか否かは、労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができるか否かにより客観的に定まるものであって、労働契約、就業規則、労働協約等の定めのいかんにより決定されるべきものではないと解するのが相当である。
 そして、労働者が、就業を命じられた業務の準備行為等を事業所内において行うことを使用者から義務付けられ、又はこれを余儀なくされたときは、当該行為を所定労働時間外において行うものとされている場合であっても、当該行為は、特段の事情のない限り、使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができ、当該行為に要した時間は、それが社会通念上必要と認められるものである限り、労働基準法上の労働時間に該当すると解される」事件の詳細については、14-4A22-4B を参照のこと。
19
5B
 本肢は、「大星ビル管理事件(H14.2.28 最高裁第1小法廷)」からの出題である。
 この事件は、「ある労働者が、泊り勤務の間に設定されている連続7時間から9時間の仮眠時間が労働時間に当たるのに、仮眠中の実作業時間に相当する時間しか時間外勤務手当、深夜就業手当が支払われていないとして,訴えを提起したもの」
 これに対する判決の要旨は、
 「労基法32条の労働時間とは,労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいい,実作業に従事していない仮眠時間が労基法上の労働時間に該当するか否かは,労働者がその仮眠時間において使用者の指揮命令下に置かれていたものと評価することができるか否かにより客観的に定まるものというべきである。
 そして,不活動仮眠時間において,労働者が実作業に従事していないというだけでは,使用者の指揮命令下から離脱しているということはできず,当該時間に労働者が労働から離れることを保障されていて初めて,労働者が使用者の指揮命令下に置かれていないものと評価することができる。
 本件の場合は、仮眠時間中,労働契約に基づく義務として,仮眠室における待機と警報や電話等に対して直ちに相当の対応をすることを義務付けられているのであり,実質的に上記のような義務付けがされていないと認めることができるような事情も存しないから,本件仮眠時間は全体として労働からの解放が保障されているとはいえず,労働契約上の役務の提供が義務付けられていると評価することができる。
 したがって,本件仮眠時間中は不活動仮眠時間も含めて被告人の指揮命令下に置かれているものであり,本件仮眠時間は労基法上の労働時間に当たるというべきである」
22
4A
 最高裁判例[大星ビル管理事件](H14.02.28)によると、
 「労基法32条の労働時間とは,労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいい,実作業に従事していない仮眠時間が労基法上の労働時間に該当するか否かは,労働者がその仮眠時間において使用者の指揮命令下に置かれていたものと評価することができるか否かにより客観的に定まるものというべきである。
 そして,不活動仮眠時間において,労働者が実作業に従事していないというだけでは,使用者の指揮命令下から離脱しているということはできず,当該時間に労働者が労働から離れることを保障されていて初めて,労働者が使用者の指揮命令下に置かれていないものと評価することができる」

5
3選択
 「労働基準法32条の労働時間(以下「労基法上の労働時間」という)とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいい、実作業に従事していない時間(以下「不活動時間」という)が労基法上の労働時間に該当するか否かは、労働者が不活動時間において使用者の指揮命令下に置かれていたものと評価することができるか否かにより客観的に定まるものというべきである〔…(略)…〕。
 そして、不活動時間において、労働者が実作業に従事していないというだけでは、使用者の指揮命令下から離脱しているということはできず、当該時間に労働者が労働から離れることを保障されていて初めて、労働者が使用者の指揮命令下に置かれていないものと評価することができる。したがって、不活動時間であっても(C)労働からの解放が保障されていない場合には労基法上の労働時間に当たるというべきである。
 そして、当該時間において労働契約上の役務の提供が義務付けられていると評価される場合には、(C)労働からの解放が保障されているとはいえず、労働者は使用者の指揮命令下に置かれているというのが相当である」
 本肢は、最高裁判決「割増手当請求事件、いわゆる 大林ファシリティーズ事件(H19.10.19)」からの出題ではあるが、上記部分については、大星ビル管理事件の判決文を引用している。
 すなわち、選択すべき語句は「労働からの解放」である。 
 参考までに、この裁判では、「亡夫と共にマンション管理員として住み込みで勤務していた妻が、両名の時間外労働、休日労働の割増手当の取扱り扱いを不服として争ったものである。
 その結果、夫婦は、所定労働時間の開始前及び終了後の一定の時間は断続的な業務に従事していたが、その場合において、管理員室の隣の居室に居て、実作業には従事していない不活動時間についても、労働から解放されていないとして、労働時間であると認定され、差し戻しとなった。
令4
2E
 「実作業に従事しない仮眠時間に、当該警備員は労働契約に基づき、仮眠室における待機と警報や電話等に対して直ちに対応することが義務付けられている」とある。
 このような実態にもかからず、「仮眠中の実作業時間に相当する時間しか時間外勤務手当、深夜就業手当が支払われていない」として,訴えを提起したのが、大星ビル管理事件(H14.2.28最高裁)である。
 その判決によれば、「上告人らの職務は,もともと仮眠時間中も,必要に応じて,突発作業,継続作業,予定作業に従事することが想定され,警報を聞き漏らすことは許されず,警報があったときには何らかの対応をしなければならないものであるから,何事もなければ眠っていることができる時間帯といっても,労働からの解放が保障された休憩時間であるということは到底できず,本件仮眠時間は実作業のない時間も含め,全体として被上告人の指揮命令下にある労働時間というべきである」とある。
26
5D
 労働基準法32条の1項、2項は、「1週間につき40時間を超えて、また1週間の各日につき8時間を超えて労働させてはならない」と法定労働時間を定めたものである。
 ここで、労働法コンメンタール労働基準法によれば、「労働させるとは一般的に、使用者の指揮監督のもとにあることをいい、必ずしも現実に精神又は肉体を活動させていることを要件とはせず、従って、貨物取扱いの事業場において、貨物の積込係が、貨物自動車の到着を待機して身体を休めている場合とか、運転手が2名乗り込んで交代で運転に当たる場合において運転しないものが助手席で休息し、又は仮眠しているときであってもそれは労働であり、その状態にある時間(手待時間)は労働時間である」としている。
30
1イ
 労働基準法にいう労働とは、「使用者の指揮監督のもとにあることをいい。必ずしも現実に精神または肉体を活動させている必要はない」とされている。
 よって、休息や仮眠中であっても、それが使用者の指揮監督のもとにあると認められるものであれば、労働となりうる。
 本肢の場合、通達(S33.10,11基収6286)によれば、「定期路線トラックにおいて、運転手甲のほかに交替運転手乙を乗り込ませ、往路は甲が全部運転し、復路は乙が全部運転することとし、運転しない者は助手席において休息し、又は仮眠をするという形態のものがある。
 この場合において往路における乙、復路における甲は、労働を提供しない建前となっているので、これらの者の勤務時間は、労働時間とは解し難い点もあるが、又一面当該トラックに乗り込む点において使用者の拘束を受け、また万一事故発生の際には交替運転、或は故障修理等を行うものであり、その意味において一種の手待ち時間或は助手的な勤務として労働時間と解するのが妥当と考えられるが如何」というお伺いに対して、回答は「見解の通り」とあった。
 本肢のばあいは、往きと帰りで分けているのではなく、適宜運転を交替する場合であるかもしれないが、」その場合でも、基本的なことろは変わりないので、「運転しないものが助手席で休息し、又は仮眠しているときであってもそれは労働時間である」といえる。

2
6A
 「運転手が2名乗り込んで、1名が往路を全部運転し、もう1名が復路を全部運転することとする場合」とある。
 そして、袋運転予定者は「助手席で休息し又は仮眠している」
 この場合の休息・仮眠しているサブの運転手は労働時間中にあるのかないのかであるが、通達(S33.10.11基収6286)によれば、「往路担当運転者、復路担当運転者に該当しない時間は労働を提供しない建前となってはいるが、当該トラックに乗り込む点において使用者の拘束を受け、また万一事故発生の際には交替運転、或は故障修理等を行うものであり、その意味において一種の手待ち時間或は助手的な勤務として労働時間と解するのが妥当と考えられるが如何」というお伺いに対して、回答は「見解の通り」とあった。
21
5D
 本肢はさまざまな問題を含んでいる。
 まず、休憩時間については、34条3項に、
 「使用者は、休憩時間を自由に利用させなければならない」とあり、さらに通達(S22.9.13発基17)において、
 「休憩時間とは単に作業に従事しない手待時間を含まず、労働者が権利として労働から離れることを保証されている時間の意であって、その他の拘束時間は労働時間として取り扱うこと」とされている。
 よって、問題文に「休憩時間に来客当番として事務所に待機させたが、その時間に実際に来客がなかった場合」とあるが、
 来客当番中は、自由にその場から離れることができない拘束状態にあるから、実際に来客があろうとなかろうと、休憩時間とはいえず、労働時間となる。
 よって、その他の労働時間が法定労働時間どおりであったとしても、全体では法定労働時間を超えることになり、割増賃金の支払い義務が生じることになる。
 一応、これで一件落着のようであるが、
 休憩時間と考えていたその来客当番時間が実は労働時間ということになれば、休憩時間が不足することになるから、34条1項違反になってしまう。
 通達(S23.4.7基収1196)においても、
 「休憩時間に来客当番として待機させていれば、それは労働時間である。
 なお、この場合は休憩時間を他に与えなければならないことになるが、その際は34条2項ただし書きによる休憩時間一斉付与例外の労使協定を締結しなければならない」とある。
 すると、別の時間にその人だけが、本来の労働時間内に不足分の休憩時間を取ることになり、結局はトータルの労働時間は法定内に収まる可能性もある(この場合は割増賃金も発生しない)
 法定時間内に収まらないとしたら、それは来客当番労働のせいではなく、それ以外の予定外労働によるはずだ。
 これでは、本肢は成立しないことになる。
 よって、休憩時間帯の来客当番が日常的に発生する場合には、その時間帯は最初から労働時間とし、その他の時間帯を休憩時間として指定するなど、就業規則や労使協定を整備しておくことが必要であろうが、突発的にこのような事態が発生した場合は、休憩時間の不足はやむを得ないものとし、その代わりに割増賃金を支払うという事後的な解決もあると思われる。

4
2B
 通達(S33.10.11基収6286)によれば、「定期路線トラック業者の運転手に、路線運転業務の他、貨物の積込、積卸を行わせるために、小口の貨物が逐次持ち込まれるのを待機する意味でトラック出発時刻の数時間前に出勤が命ぜられている。
 この場合、現実に貨物の積込を行う以外の時間は全く労働の提供はなく、いわゆる手待ち時間がその大半を占めているが、出勤を命ぜられ、一定の場所に拘束されている以上、労働時間と解すべきか」というお伺いに対し、回答は「見解の通り」とある。

4
3A
 「使用者が労働基準法施行規則第23条によって日直を断続的勤務として許可を受けた」とある。施行規則第23条によれば、「使用者は、宿直又は日直の勤務で断続的な業務について、所轄労働基準監督署長の許可を受けた場合は、これに従事する労働者を、32条の規定にかかわらず、使用することができる」とある。
 つまり、32条の法定労働時間の規定「休憩時間を除き、1週間について40時間を超えて、1週間の各日については、休憩時間を除き1日について8時間を超えて、労働させてはならない」にかかわらず使用することができる。
 よって、36条1項の協定がなくとも、時間外労働をさせることができる。
 問題文にある「休日日直」については、通達(S23.06.16基収1933)に、
 「施行規則23条によって日直を断続的勤務として許可を受けた場合においても、休日には法36条1項による協定がなければ日直をさせることができないものと解するが」というお伺いに対し、回答は、「使用者が施行規則23条によって日直の許可を受けた場合には、法36条1項の協定がなくとも、休日に日直をさせることができる」とある。
 なお、宿直・日直と労働時間、休日との関係に関する通達(S23.01.13基発33)によれば、「施行規則23条によって宿直又は日直勤務の許可受けた場合は、その宿直又は日直に勤務については、法4章(労働時間、休憩、休日及び年次有給休暇)、6章(年少者)及び6章の2(妊産婦等)で定める労働時間、休日及び休憩に関する規定は適用されない」とされている。
 即ち、施行規則23条によって宿直又は日直勤務の許可を受けた場合は、41条の3号に該当することになる。 
23
6B
 労働者とは、「他人の指揮命令を受けて労働を提供し、その対償として賃金を受けとる者」をいうのであって、労働者が指揮命令による労働の義務(債務)を履行(使用者側ではこれを受領)して初めて、賃金を請求する権利(債権)が(使用者側では賃金を支払う義務 が)発生する。
 別のいい方をすれば、「労働者が使用者からの指揮命令のもとで労務を提供した時間(すなわち労働時間)に対してのみ、使用者は賃金の支払義務が発生する」ということになる。
 本肢は、「労働者が意図的に業務命令にそわない業務を行った場合、使用者はその時間に対しても賃金の支払義務があるかいなかを争った、最高裁判例[賃金支払(いわゆる水道機工)事件](S60.03.07)に関する出題である。
 事件は、ある労働者が労働組合による「出張・外勤拒否闘争」に参加し、会社から受けた「出張・外勤命令」を拒否し、その代わりに内勤業務を行ったところ、会社側はその時間分の賃金をカットしたことによる。
 これに対する判決文は
 「本件業務命令は、組合の争議行為を否定するような性質のものではないし、従来の慣行を無視したものとして信義則に反するというものでもなく、上告人らが、本件業務命令によつて指定された時間、その指定された出張・外勤業務に従事せず内勤業務に従事したことは、債務の本旨に従つた労務の提供をしたものとはいえず、また、被上告人は、本件業務命令を事前に発したことにより、その指定した時間については出張・外勤以外の労務の受領をあらかじめ拒絶したものと解すべきであるから、上告人らが提供した内勤業務についての労務を受領したものとはいえず、
 したがつて、被上告人は、上告人らに対し右の時間に対応する賃金の支払義務を負うものではない」とした。
21
5B
 きわめて常識的な問題であるので、解答はともかくとして、この際に、本肢の論点を明確にとらえることに力点を置こう。
 過去問(14-4A)の最高歳判例(三菱重工業長崎造船所事件)にあるように、
 「労働基準法32条の労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいい、右の労働時間に該当するか否かは、労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができるか否かにより客観的に定まるものである」とされている、
 本肢の場合、「使用者から会議への参加を命じられた場合に、その会議が法定労働時間を超えて引き続き行われた」とあるから、
 その会議が業務とは全く関係ないものならともかく、上司からの業務命令に基づく出席であるから、会議への出席時間は、会議の当初から労働時間であったと解される。
 その会議が法定労働時間を超えたとき、上司から「時間外になったが、引き続き出席するように」といった明確な命令がたとえなかったとしても、「退席してよい」という命令がない限り、「そのまま出席するように」という暗黙の命令があったするのが自然である。
 よって、その後引き続き行われた会議時間は、時間外労働時間であり、所定の割増賃金を支払わなければならない。
 例えば、教員は本来の授業活動以外に、諸々の会議その他の業務が多いといわれているが、通達(S25.9.14基収2983)において、
 「教員が使用者の明白な超過勤務の指示により、又は使用者の具体的に指示した仕事が、客観的に見て正規の勤務時間内ではなされ得ないと認められる場合の如く、超過勤務の黙示の指示によって法定労働時間を超えて勤務した場合には、時間外労働となる」とある。
19
5A
 通達「訪問介護労働者の法定労働条件の確保について」(H16.8.27基発0827001)によると、
 「訪問介護労働者については、当該事業場で定める所定労働時間を勤務する労働者、短時間労働者であって、労働日及び労働日における労働時間が定型的・固定的に定まっている労働者のほか、種々の勤務形態のものがみられる。これらの中で、非定型的パートタイムヘルパーは、訪問介護労働者の多数を占めており、利用者からの訪問介護サービスの利用申込みに連動して、月、週又は日の所定労働時間が非定型的に特定されるため、労働条件の明示、労働時間の把握、休業手当の支払、賃金の算定等に関して、労働基準法等関係法令上の問題点が多くみられる」として、
 「訪問介護労働者の法定労働条件の確保上の問題点及びこれに関連する法令の適用」について、指示を出している。
 この中で、
 「移動時間とは、事業場、集合場所、利用者宅の相互間を移動する時間をいい、この移動時間については、使用者が、業務に従事するために必要な移動を命じ、当該時間の自由利用が労働者に保障されていないと認められる場合には、労働時間に該当するものであること。
 具体的には、使用者の指揮監督の実態により判断するものであり、例えば、訪問介護の業務に従事するため、事業場から利用者宅への移動に要した時間や一つの利用者から次の利用者宅への移動時間であって、その時間が通常の移動に要する時間程度である場合には労働時間に該当するものと考えられること」としている。
26
5B
 研修が労働時間に含まれるか否かは、常識的には、出席が強制されたものであるかどうかで判断すべきと思われる、
 これに関しては、「労働基準法・上(厚生労働省労働基準局編)394頁」において、
 「労働者が使用者の実施する教育、研修に参加する時間を労働基準法上の労働時間とみるべきか否かについては、就業規則上の制裁等の不利益な取扱いの有無や、教育・研修の内容と業務との関連性が強く、それに参加しないことにより本人の業務に具体的な支障が生ずるか否か等の観点から、実質的にみて出席の強制があるか否かにより判断すべきものである」としている。
 つまり、問題文はこの部分を引用している。
 なお、実際には、このような研修が時間外に行われた、あるいは時間外にも及んだ場合に問題となる。
 これについては、通達(S26,1.20基収2875)によると、
 「労働者が使用者の実施する教育に参加することについて、就業規則上の制裁等の不利益取扱いによる出席の強制がなく自由参加のものであれば、時間外労働にはならない」とある。

4
2C
 前段にある「労働安全衛生法59条等に基づく安全衛生教育については、所定労働時間内に行うことが原則とされている」点については、
 通達(S47.9.18基発602号)によれば、「労働安全衛生法59条(雇入れ時・作業内容変更時の安全衛生教育、特別の危険有害業務従事者への教育)および60条(新任職長等の教育)の安全衛生教育は、労働者がその業務に従事する場合の労働災害の防止を図るため、事業者の責任において実施されなければならないものであり、従って、安全衛生教育については所定労働時間内に行うのを原則とすること」とある。
 そのほかに、労働安全衛生法による安全衛生教育については、「安全衛生管理者等に対する能力向上教育(19条の2)」、「危険有害業務従事者への教育(60条の2)」、「健康教育(69条)」などがあり、努力義務が課されている。
 一方、後段にある「使用者が自由意思によって行う教育であって・・・」については、通達(S26,1.20基収2875)に、「使用者が自由意志によって行う労働者の技術水準向上のための技術教育を、所定就業時間外に実施した時間は労働時間とみなされるか」というお伺いに対し、「労働者が使用者の実施する教育に参加することについて、就業規則上の制裁等の不利益取扱いによる出席の強制がなく自由参加のものであれば、時間外労働にはならない」とある。
 つまり、「就業規則上の制裁等の不利益取扱いによる出席の強制がなく自由参加のものであれば」、「所定労働時間内に行うことが原則」とまでは踏み込んでおらず、所定労働時間外に行われた場合であっても、労働時間ではないから賃金の支払い義務は発生しない。
21
5C
 安全委員会が時間外に実施された場合に、割増賃金の支払い義務が使用者に課せられるか否かは、その会議出席時間が労基法にいう「労働時間」に該当するか否かにかかっている。
 これについては、安全・衛生委員会の会議開催時間に関する通達(S47.9.18基発602)に、
 「安全・衛生委員会の会議の開催に要する時間は労働時間と解されること。
 従って、当該会議が法定時間外に行なわれた場合には、それに参加した労働者に対し、当然、割増賃金を支払わなければならないものであること」とある。
21
5A
 労働安全衛生法に定めるいわゆる特殊健康診断とは、66条2項により特定の有害な業務に従事する労働者について実施が義務つけられている健康診断である。。
 この健康診断が時間外に実施された場合に、割増賃金の支払い義務が使用者に課せられるか否かは、その健康診断時間が労基法にいう「労働時間」に該当するか否かにかかっている。
 これについては、通達(S47.9.18基発602)において、
 「特定の有害な業務に従事する労働者について行なわれる健康診断、いわゆる特殊健康診断は、事業の遂行にからんで当然実施されなければならない性格のものであり、それは所定労働時間内に行なわれるのを原則とすること。
 また、特殊健康診断の実施に要する時間は労働時間と解されるので、当該健康診断が時間外に行なわれた場合には、当然割増賃金を支払わなければならないものであること」としている。
 一般健康診断については、過去問解説(21-5E)を
21
5E
 一般健康診断が時間外に実施された場合に、割増賃金の支払い義務が使用者に課せられるか否かは、その健康診断時間が労基法にいう「労働時間」に該当するか否かにかかっている。
 これについては、通達(S47.9.18基発602)において、
 「労働者一般に対して行なわれる、いわゆる一般健康診断は、一般的な健康の確保をはかることを目的として事業者にその実施義務を課したものであり、業務遂行との関連において行なわれるものではないので、
 その受診のために要した時間については、当然には事業者の負担すべきものではなく労使協議して定めるべきものであるが、
 労働者の健康の確保は、事業の円滑な運営の不可決な条件であることを考えると、その受診に要した時間の賃金を事業者が支払うことが望ましいこと」とある。
 一方、特殊健康診断については、過去問解説(21-5A)にあるように、
 「特殊健康診断は事業の遂行にからんで実施されるものであるから、それに要する時間は労働時間であり、法定時間外に行なわれた場合には、当然割増賃金を支払わなければならない」としている。
令4
2A
 労働安全衛生法により事業者に義務付けられている健康診断の実施に要する時間については、
・定期健康診断:通達(S47.9.18基発602)によれば、「業務遂行との関連において行なわれるものではないので、その受診のために要した時間の賃金は、当然には事業者の負担すべきものではなく労使協議して定めるべきものであるが、事業者が支払う(労働時間とする)ことが望ましい」
・特定業務従事者の健康診断:通達(S47.9.18基発602)によれば、「事業の遂行にからんで当然実施されなければならない性格のものであり、特殊健康診断の実施に要する時間は労働時間と解される」
 つまり、「その種類にかかわらず、すべて労働時間として取り扱う」とはされてはおらず、「業務遂行との関連性」の度合いによって扱いが異なっている。


2D
 通達(S23.10.23基収3141)に、
 「事業場に火災が発生した場合、既に帰宅している所属労働者が任意に事業場に出勤し消火作業に従事した時間は、労働時間と解してよいか」というお伺いに対し、回答は、「一般に貴見の通り」とある。
⇒自分の所属する事業場で発生した火災に対する消化作業であるから、業務上必要な行為でもあり、使用者の指揮命令下に置かれた状態ではないが、使用者に賃金支払い義務が発生するという意味で、労働時間とすることが相当と思われる。
17
7D
 労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン(H29.01.20)において、
 「労働基準法においては、労働時間、休日、深夜業等について規定を設けていることから、使用者は、労働時間を適正に把握するなど労働時間を適切に管理する責務を有している。 
 しかしながら、現状をみると、労働時間の把握に係る自己申告制(労働者が自己の労働時間を自主的に申告することにより把握)の不適正な運用等に伴い、同法に違反する過重な長時間労働や割増賃金の未払いといった問題が生じているなど、使用者が労働時間を適切に管理していない状況もみられるところである。
 このため、本ガイドラインでは、労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置を具体的に明らかにする」としている。
25
3D
 労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン(H29.01.20)によれば、
 「労働基準法においては、労働時間、休日、深夜業等について規定を設けていることから、使用者は、労働時間を適正に把握するなど労働時間を適切に管理する責務を有していることは明らかである」としている。
 そして、具体的には、同ガイドラインにおいて、
 「使用者が始業・終業時刻を確認し、記録する方法としては、原則として次のいずれかの方法によること」とあり、
ア 使用者が、自ら現認することにより確認し、適正に記録すること。
イ タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録を基礎として確認し、適正に記録すること」とある。
 なお、参考までに同ガイドラインでは、「上記の方法によることなく、自己申告制によりこれを行わざるを得ない場合、使用者は次の措置を講ずること。  
ア 自己申告制の対象となる労働者に対して、本ガイドラインを踏まえ、労働時間の実態を正しく記録し、適正に自己申告を行うことなどについて十分な説明を行うこと。
イ 実際に労働時間を管理する者に対して、自己申告制の適正な運用を含め、本ガイドラインに従い講ずべき措置について十分な説明を行うこと。
ウ 自己申告により把握した労働時間が実際の労働時間と合致しているか否かについて、必要に応じて実態調査を実施し、所要の労働時間の補正をすること。
 特に、入退場記録やパソコンの使用時間の記録など、事業場内にいた時間の分かるデータを有している場合に、労働者からの自己申告により把握した労働時間と当該データで分かった事業場内にいた時間との間に著しい乖離が生じているときには、実態調査を実施し、所要の労働時間の補正をすること。
エ 自己申告した労働時間を超えて事業場内にいる時間について、その理由等を労働者に報告させる場合には、当該報告が適正に行われているかについて確認すること。
 その際、休憩や自主的な研修、教育訓練、学習等であるため労働時間ではないと報告されていても、実際には、使用者の指示により業務に従事しているなど使用者の指揮命令下に置かれていたと認められる時間については、労働時間として扱わなければならないこと。
オ 自己申告制は、労働者による適正な申告を前提として成り立つものである。このため、使用者は、労働者が自己申告できる時間外労働の時間数に上限を設け、上限を超える申告を認めない等、労働者による労働時間の適正な申告を阻害する措置を講じてはならないこと。
こと。また、時間外労働時間の削減のための社内通達や時間外労働手当の定額払等労働時間に係る事業場の措置が、労働者の労働時間の適正な申告を阻害する要因となっていないかについて確認するとともに、当該要因となっている場合においては、改善のための措置を講ずること」とある。

5
7E
 「使用者は、労働時間の適正な把握を行うべき労働者の労働日ごとの始業・終業時刻を確認し、これを記録することとされている」とあるのは、労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン(H29.01.20)において、
 「労働基準法においては、労働時間、休日、深夜業等について規定を設けていることから、使用者は、労働時間を適正に把握するなど労働時間を適切に管理する責務を有していることは明らかである。
 そして、4 労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置として、
 始業・終業時刻の確認及び記録:使用者は、労働時間を適正に把握するため、労働者の労働日ごとの始業・ 終業時刻を確認し、これを記録すること」とあることによる。
 そして、その方法としては、
 原則として次のいずれかの方法によること。
ア 使用者が、自ら現認することにより確認し、適正に記録すること。
イ タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録を基礎として確認し、適正に記録すること。
 とある通り。。
 なお、参考までに同ガイドラインでは、「上記の方法によることなく、自己申告制によりこれを行わざるを得ない場合、使用者は次の措置を講ずること」とあり、自己申告制による場合に講ずべき措置についても、規定している。  
22
5D
 38条では、
 「労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する」とあるだけであるが、
 通達(S23.05.14基発769)によれば、
 「「事業場を異にする場合」とは、事業主を異にする場合も含む」とされている。
 また、複数の事業場に派遣される派遣労働者についても、通達(S61.6.6基発333号)に、
 「38条は、派遣中の労働者に関しても適用されるので、一定期間に相前後して複数の事業場に派遣された場合には、労働基準法の労働時間に関する規定の適用については、それぞれの派遣先の事業場において労働した時間が通算されること」とある。

5
7C
 「労働基準法に定められた労働時間規制が適用される労働者が事業主を異にする複数の事業場で労働する場合」とある。
 この場合、38条では「労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する」とある。
 この場合の「事業場を異にする場合」とは、通達(S23.05.14基発769)によると、「事業主を異にする場合も含む」としている。
 本肢は、38条により、[労働時間を通算できる」とする規定の適用範囲について問うている。
 これについては、  「副業・兼業の場合における労働時間管理に係る労働基準法38条1項の解釈等について」(基発0901-3、R0209.01)によると、 
@労働時間が通算して適用される規定:法定労働時間(32条40条)について、その適用において自らの事業場における労働時間及び他の使用者の事業場における労働時間が通算されること。
⇒この結果、通算労働時間が法定労働時間を超えるときは、時間外労働が発生する。
A通算されない規定:
・時間外労働(36条)のうち、36条1項の協定(36協定)により延長できる時間の限度時間(同条4項)、36協定に特別条項を設ける場合の1年についての延長時間の上限(同条5項)については、個々の事業場における36協定の内容を規制するものであり、それぞれの事業場における延長時間を定めることとなること。
 また、36 協定において定める延長時間が事業場ごとの時間で定められていることから、それぞれの事業場における時間外労働が 36 協定に定めた延長時間の範囲内であるか否かについては、自らの事業場における労働時間と他の使用者の事業場における労働時間とは通算されないこと。
・休憩(34条)、休日(35条)、年次有給休暇(39条)については、労働時間に関する規定ではなく、その適用において自らの事業場における労働時間及び他の使用者の事業場における労働時間は通算されないこと。
 よって、問題文にある「休憩に関する規定」の適用については労働時間は通算されない。 
26
5A
 38条では、
 「労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する」とある。
 されば、事業主が異なる事業場についてはどうかであるが、これについては、通達(S23.05.14基発769)に、
 「「事業場を異にする場合」とは、事業主を異にする場合も含む」とされている。
 もし1事業場で8時間労働した者を、他の事業主が使用するときは、後の事業主が33条又は36条1項の規定に基づき、時間外労働についての法定手続きを取る必要がある。
 そして、通達(S23.10.14基収217)にあるように、
 「2以上の事業主に使用されその通算労働時間が8時間を超える場合、法定時間外に使用した事業主は、割増賃金を支払わなければならない」
 また、複数の事業場に派遣される派遣労働者についても、通達(S61.6.6基発333号)に、
 「38条は、派遣中の労働者に関しても適用されるので、一定期間に相前後して複数の事業場に派遣された場合には、労働基準法の労働時間に関する規定の適用については、それぞれの派遣先の事業場において労働した時間が通算されること」とある
18
3A
 事業場外労働に関する38条の2の1項と2項そのものである。
 外回り営業で、鉄砲玉が飛んだように出ていったきり電話もよこさず帰ってこない。仕事をしているのか、サボっているのか、時間が把握できないので、このままでは時間外もつけようがない。
 こういった場合は、労使協定によって定めた時間、労働したものとみなすことにする。
 そして、この労使協定によって定めた時間が法定労働時間を超えるときは、労働基準監督署長に届出るとともに、超過分について割増賃金を支払う、ということになっている。
ところが最近は、携帯電話があるので、外回り営業であっても、たえず会社と連絡を取ったり指示を仰がないといけない。つまり、離れていても指揮命令下にあって、労働時間もしっかり管理されている、そういったケースも多い。
12

 労働者が労働時間の全部又は一部について事業場外で業務に従事した場合において、労働時間を算定し難いときは、(A)所定労働時間労働したものと(B)みなす
 ただし、その業務を遂行するためには
(C)通常(A)所定労働時間を超えて労働することが必要となる場合は、その業務に関してはその業務の遂行に(C)通常必要とされる時間労働したものと(B)みなす
[解説]
 事業場外労働についてのみなし労働時間のことに気づけば、容易に解ける問題のはずである。
 38条の2において、
 「労働者が労働時間の全部又は一部について事業場外で業務に従事した場合において、労働時間を算定し難いときは、所定労働時間労働したものとみなす。
 ただし、当該業務を遂行するためには通常所定労働時間を超えて労働することが必要となる場合においては、当該業務に関しては、当該業務の遂行に通常必要とされる時間労働したものとみなす」
 なお、この場合の通常必要とされる時間は、労使協定によって定めることができる。
27
1

 最高裁判所は、海外旅行の添乗業務に従事する添乗員に労働基準法第38条の2に定めるいわゆる事業場外労働のみなし労働時間制が適用されるかが争点とされた事件において、次のように判示した。
 「本件添乗業務は、・・・・・・・これに従事する添乗員の勤務の状況を具体的に把握することが困難であったとは認め難く、労働基準法38条の2第1項にいう「(A)労働時間を算定し難いとき」に当たるとはいえないと解するのが相当である」
[解説]
 いわゆる事業場外労働のみなし労働時間制については、38条の2に、
 「労働者が労働時間の全部又は一部について事業場外で業務に従事した場合において、労働時間を算定し難いときは、所定労働時間労働したものとみなす」とある。
 つまり、事業場外で業務を行い、かつ、労働時間の算定が困難な場合に、事業場外労働についてみなし労働時間制が適用される。
 このみなし労働時間制の対象となるのは、一般的には、通達(S63.01.01基発1)によると、
 「事業場外労働に関するみなし労働時間制の対象となるのは、事業場外で業務に従事し、かつ、使用者の具体的な指揮監督が及ばず労働時間を算定することが困難な業務であること。従って、次の場合は適用しない。
@グループで事業場外労働に従事する場合で、メンバーの中に労働時間の管理をする者がいる場合
A事業場外で業務に従事するが、無線やポケットベル等(今風にいえば携帯電話)によって随時使用者の指示を受けながら労働している場合
B事業場において、訪問先、帰社時刻等当日の業務の具体的指示を受けた後、事業場外で指示通りに業務に従事し、その後事業場にもどる場合」とされている。
 本肢は、ある派遣会社の労働者が添乗員として旅行会社に派遣され、募集型の企画旅行の添乗業務に従事した。その後、派遣会社に時間外割増賃金の支払いを求めたところ、その添乗業務は38条の2にある「労働時間を算定し難いとき」にあたるとして、所定労働時間だけ労働したものとみなされると主張し、争いになった案件である。
 問題文はこの件に関する最高裁判例[残業代等請求事件(阪急トラベルサポート事件)(H26.01.24)の判決文である。
 これによれば、
・業務の内容が予め具体的に確定されており、自由裁量の余地はほとんどないこと
・添乗員は携帯電話で旅行会社と常に連絡をとりあい、必要がある場合は指示を受けることになっていること。
・ツアーにおける業務の遂行状況などについて、旅行会社に詳細な報告がなされていること。
 よって旅行会社は、添乗員の勤務の状況を具体的に把握することが困難であったとは認め難く、労働時間を算定し難いとはいえないとした。
 なお、同判決文には、以下のことも記載してあり、これも読まないと事件は完結しない。
 「本件派遣会社の就業条件明示書によると、「就業時間は、原則として午前8時から午後8時までとするが、実際の始業時刻、就業規則及び休憩時間は派遣先の定めによる」とされ、労働者派遣法によれば、「派遣先は就業日毎の始業時刻、終業時刻等を記載した派遣先管理台帳を作成して、これを派遣元に通知し、派遣元はこの通知を受けて時間外労働の有無と時間を把握し、割増賃金を支払う」ことになる」
 Eの「業務の遂行の方法を大幅に労働者の裁量にゆだねる必要があるとき」、Gの「使用者が具体的な指示をすることが困難なものとして厚生労働省令で定める業務」は、専門業務型裁量労働時間制の場合の話である。
22
5E
 事業場外労働のみなし制とは、38条の2にあるように、
 「労働者が労働時間の全部又は一部について事業場外で業務に従事した場合において、労働時間を算定し難いときは、所定労働時間労働したものとみなす」という制度。
 最近は、携帯電話、携帯メールなどのIT機器の普及により、外回りをしていた場合でも、使用者との連絡を取ることが可能になってきた。
 ましては、パソコン等を使用して在宅で勤務している場合は、「労働時間を算定し難いといえるかどうか」であるが、
 これについては、通達(H16.3.5基発0305001)に、
 「次のいずれの要件をも満たす形態で行われるIT機器を用いた在宅勤務については、事業場外労働に関するみなし労働時間制適用される。
 @当該業務が、起居寝食等私生活を営む自宅で行われており、
 A当該情報通信機器が、使用者の指示により常時通信可能な状態におくこととされておらず、
 B当該業務が、随時使用者の具体的な指示に基づいて行われていない」
 つまりは、自宅で私生活の合間に仕事をしており、かつ、常時通信可能な状態に置くことが義務付けられてはおらず、かつ、具体的に指示された通りにやれば済むような仕事ではない場合には、使用者の管理を受けているとは言い難いので、みなし労働時間制が適用される、としている。 
 逆にいえば、どれかひとつでも条件にあてはまらないときは、使用者の指揮命令のもとに労働した実時間が、労働時間とされる。
11
4A
 38条の2の2項において、
 「事業場外での業務を遂行するために通常所定労働時間を超えて労働することが必要となる場合には、当該業務の遂行に通常必要とされる時間を労使協定で定めることができる」とある。
 すなわち、労使協定で定めた時間がたとえば8時間であれば、これと事業場内でのその日の実労働時間(たとえば2時間)を加えて、その日は10時間労働したこととするのである。
 この協定の届出義務については、同条3項において、
 「使用者は、この協定を、省令で定めるところにより、所轄労働基準監督署長に届け出なければならない」とあるが、省令(施行規則24条の2の3項)によると、
 「事業場外労働のみなし労働時間制に関する労使協定は、所轄労働基準監督署長に届け出なければならない。ただし、協定で定める時間が法定労働時間以下である場合には、届け出る必要はない」とされている。 
 
@そもそも、法律よりも下位にある省令によって、法律条文とは異なることを規定することはあってはならないが、本件の場合、法律条文に「省令で定めるところにより、届け出なければならない」とあり、細部については省令に委任してあるので、その省令(施行規則24条の2の3項)は有効である。
A時間外労働が発生する場合は、事業場外労働のみなし労働時間制に関する労使協定とは別途に、36条協定の締結と届出が必要である。


6C
 「労働基準法第38条の2に定めるいわゆる事業場外労働のみなし労働時間制に関する労使協定で定める時間」とある。
 38条の2によれば、「労働時間の全部又は一部について事業場外で業務に従事した場合、労働時間を算定し難いときは、所定労働時間労働したものとみなす」とあり、これが原則であるが、
 同条では続いて、「ただし、当該業務(事業場内、外をあわせた業務全体の意味)を遂行するためには通常所定労働時間を超えて労働することが必要となる場合においては、当該業務(事業外業務の意味)に関しては、当該業務の遂行に通常必要とされる時間労働したものとみなす」とある。
 つまり、たとえば、外の顧客回りで平均的にいえば7時間かかり、これと事業場内でのその日の実労働時間(たとえば2時間)を加えて、その日は9時間労働したことにするのである。
 しかしながら、「通常必要とされる時間」については、労使の意見が対立しがちであることから、38条2項によって、「労働者の過半数代表者等との書面による協定があるときは、その協定で定める時間を、事業場外の業務の遂行に通常必要とされる時間とすることができる」とした。
 本肢の論点は、この場合の「事業場外労働のみなし労働時間制に関する労使協定の届出義務」についてである。
 これについては、施行規則24条の2の3項に、「事業場外労働のみなし労働時間制に関する労使協定は、所轄労働基準監督署長に届け出なければならない。ただし、協定で定める時間が法定労働時間以下である場合には、届け出る必要はない」とされている。
 しつこいと思われるかもしれないが、この場合の「協定で定める時間が法定労働時間以下である場合」とは、事業場外労働について協定した労働時間のみでは法定労働時間を超過しない場合であれば、届出は不要なのである。
 さらなら念押しとして、事業場外労働のみなし労働時間制において時間外労働が発生する場合は、この労使協定とは別途に、36条協定の締結と届出が必要である。
11
3B
 労使協定で実施する場合は、32条の2の2項に、
 「使用者は、厚生労働省令で定めるところにより、前項の協定を行政官庁に届け出なければならない」とあることから、当該協定を行政官庁に届け出る必要がある。
 しかしながら、就業規則その他これに準ずるものにより実施する場合は、常時10人以上の労働者を使用しない事業場にあっては、就業規則またはこれに準ずるものを届出する義務はない。
 ただし、施行規則12条により、定めた内容を労働者に周知させる必要はある。
26
5C
 1箇月単位の変形労働時間制については、32条の2から、
@労使協定(実際に強制力を持たせるには、これと就業規則あるいはこれに準ずるものも必要)
A就業規則その他これに準ずるもの
のいずれかにより実施することができる。
 ここで、「これに準ずるものもの」とは、常時10人未満の労働者を使用する事業場が作成する(届出の義務のない)就業規則と同じような内容のものをいう。
 以上2つ以外に方法はないかというと、実は38条の4の企画業務型裁量労働制の採用を決議する場合などに設置される労使委員会によってもこれを行うことができ、同条5項に、
 「労働時間その他の当該事業場における労働条件に関する事項を調査審議し、事業主に対し当該事項について意見を述べることを目的とする労使委員会において、その委員の5分の4以上の多数による議決により、一定の事項について決議が行われた場合には、協定を締結したものとすることができる」とあり、貯蓄金の管理と賃金からの一部控除を除く労使協定については、代替可能になっている。詳しくはこちらを
 すなわち、「労使委員会の委員の5分の4以上の決議によって、1箇月単位の変形労働時間制を実施することができる(この場合、決議を届け出る必要もない)」
 (ただし、労使協定の代わりになるということだけであるから、実際には、就業規則に必要な事項を記載しておかなければ、強制力に欠ける)
 参考までに、「労働時間等設定改善員会委員の5分の4以上の決議によっても、労働時間に関する労使協定の代替が可能である」詳しくはこちらを


2D
 1箇月単位の変形労働時間制を採用するには、32条の2から、「労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、ない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定、又は、就業規則その他これに準ずるものにより、一定の定めをする」ことが必要である。
 すなわち、労使協定によるか、就業規則(常時10人に満たない事業場の場合は就業規則に準ずるもの)いずれでもよい。
 ただし、労使協定だけによる場合は、通達(S63.1.1基発1号)にあるように、「労使協定の効力は、その協定の定めによって労働者を労働させても労基法に違反しないという免罰効果であり、労働者の民事上の義務は、当該協定から直接生じるものではなく、労働協約、就業規則等の根拠(労使協定に従う旨の定め又は労使協定と同じ内容の定め)が必要である」とある。
 よって、「労使協定による定めだけでは足りず、就業規則・・・・」とあれば、正しいとなる可能性がある。 
令3
5B
 「労働者の過半数で組織する労働組合・・・・・との書面による協定により、1か月以内の一定の期間を平均し1週間当たりの労働時間が労働基準法第32条第1項の労働時間を超えない定めをした」とある。
 これは、32条の2による「1か月単位の変形労働時間制に関する労使協定」のことであり、その効果は、同条にあるように、「法定労働時間の規定にかかわらず、その定めにより、特定された週において40時間又は特定された日において8時間を超えて、労働させることができる」ことで正しい。
 しかしながら、問題文では続いて、「この協定の効力は、所轄労働基準監督署長に届け出ることにより認められる」とあるが、32条の2の2項によれば、「使用者は、厚生労働省令で定めるところにより、前項の協定を行政官庁に届け出なければならない」とあって、36条にある「書面による協定を、これを行政官庁に届けた場合・・・・・」と書きっぷりが異なる。
 これについては、「労働基準法」(厚生労働省労働基準局編)481ページに、「36協定は、これを届けて初めて適法に時間外労働等を行い得る」のであって、届出は効力の要件になっているといえる。
 これに対して、「1か月単位の変形労働時間制に関する労使協定」については、同407ページに、「届出は労使協定の効力発生要件とはされていないので、労使協定が締結されていれば有効に1か月単位の変形労働時間制を採用しているものと認められるが、届出を怠った場合には罰則の適用がある(120条の1号により30万円以下の罰金)」としている。
 なお、1か月単位の変形労働時間制は、労使協定の締結だけでなく、就業規則等によっても実施することができることにも注意を。

4
7B
 「1か月単位の変形労働時間制」は、32条の2により、「労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、ない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、又は、就業規則その他これに準ずるものにより、行うことができる」
 そして本肢のように、「労使協定を締結することにより採用する場合」は、同条2項に、「使用者は、厚生労働省令で定めるところにより、前項の協定を行政官庁に届け出なければならない」とあって、協定の届出は義務となっている。
 しからば、「当該労使協定を所轄労働基準監督署長に届け出ないときは 1か月単位の変形労働時間制の効力が発
生しないのか」というのが、本肢の論点。
 そんなこと当たり前ではないかと思いがちであるが、この点に関して、労働法コンメンタール「労働基準法」(厚生労働省労働基準局編)407ページに、「届出は労使協定の効力発生要件とはされていないので、労使協定が締結されていれば有効に1か月単位の変形労働時間制を採用しているものと認められるが、届出を怠った場合には罰則(120条の1号により30万円以下の罰金)の適用がある」としている。
 すなわち、届出は罰則付きの義務であるが、1か月単位の変形労働時間制そのものは協定を締結した時点ですでに効力が発生している。
 ただし、通達(S63.1.1基発1号)にあるように、「労使協定の効力は、その協定の定めによって労働者を労働させても労基法に違反しないという免罰効果であり、労働者の民事上の義務は、当該協定から直接生じるものではなく、労働協約、就業規則等の根拠(労使協定に従う旨の定め又は同様の定め)が必要である」
22
5A
 1箇月単位の変形労働時間制については、32条の2に、
 「使用者は、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、ない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、又は 就業規則その他これに準ずるものにより、
 1箇月以内の一定の期間を平均し1週間当たりの労働時間が法定労働時間(40時間、特例事業の場合は44時間)を超えない定めをしたときは、
 特定された週において同項の労働時間(40時間又は44時間(、特定された日において同条2項の労働時間(8時間)を超えて、労働させることができる」とあり、
 まず、労使協定による定め又は就業規則その他これに準ずるものにより実施するものであることは正しい。
 また、労働時間の特定については、通達(S63.1.1基発1、H11.3.31基発168)において、
 「1箇月単位の変形労働時間制を採用する場合には、労使協定による定め又は就業規則その他これに準ずるものにより、変形期間における各日、各週の労働時間を具体的に定めることを要し、変形期間を平均し週40時間の範囲内であっても、使用者が業務の都合によって任意に労働時間を変更するような制度は、1か月単位の変形労働時間制に該当しない。
 なお、就業規則においては、各日の労働時間だけでなく、始業及び終業の時刻も定める必要がある」とされている。
18
4A
 1か月単位の変形労働時間制については、32条の2から、
 「平均し1週間当たり40時間を超えない限り、特定された週に40時間、特定された日に8時間を超えて、労働させることができる」
 この場合の労働時間の特定については、通達(H11.3.31基発168)において、
 「労使協定による定め又は就業規則その他これに準ずるものにより、変形期間における各日、各週の労働時間を具体的に定めることを要し、変形期間を平均し週40時間の範囲内であっても、使用者が業務の都合によって任意に労働時間を変更するような制度は、1か月単位の変形労働時間制に該当しない」とされている。
 すなわち、各日、各週の労働時間を予め定めておかなければならず、任意に変更することは許されない。
27
6イ
 最高裁判例[割増賃金請求事件(いわゆる大星ビル管理事件)](H14.0228)の判決文によると、
 「労基法32条の2の定める1箇月単位の変形労働時間制は,使用者が,就業規則その他これに準ずるものによ
り,1箇月以内の一定の期間(単位期間)を平均し,1週間当たりの労働時間が週の法定労働時間を超えない定めをした場合においては,法定労働時間の規定にかかわらず,その定めにより,特定された週において1週の法定労働時間を,又は特定された日において1日の法定労働時間を超えて労働させることができるというものであり,この規定が適用されるためには,単位期間内の各週,各日の所定労働時間を就業規則等において特定する必要があるものと解される。
 原審は,労働協約又は改正就業規則において,業務の都合により4週間ないし1箇月を通じ,1週平均38時間以内の範囲内で就業させることがある旨が定められていることをもって,上告人らについて変形労働時間制が適用されていたとするが,そのような定めをもって直ちに変形労働時間制を適用する要件が具備されているものと解することは相当ではない」としている。
 すなわち、22-5A18-4Aの解説にもあるごとく、1か月単位の変形労働時間制は、単に週平均の労働時間が法定労働時間を超えないとするだけでなく、労使協定又は就業規則その他これに準ずるものにより、変形期間における各日、各週の労働時間を具体的に定めることを要するのである。
(注:大星ビル管理事件は多くの論点から出題されている)


2E
 1か月単位の変形労働時間制については、32条の2から、「1か月以内の一定の変形労働期間を平均して、1週間当たりの労働時間が法定労働時間(40時間、特例事業の場合は44時間)を超えない範囲で、各労働日の労働時間を特定しなければならない」
 問題文にあるような「1日の労働時間の限度は16時間、1週間の労働時間の限度は60時間の範囲内で」というような制約はない。
 参考までに、1年単位の変形労働時間制においては、施行規則12条の4の4項により、「1日の労働時間の限度は10時間とし、1週間の労働時間の限度は52時間とする各労働日の労働時間を定め」とある。
13
6A
 分母は1週間の暦日数であるから、分子もこれに対応して、変形期間中の暦日数としなければならない。変形期間が1か月であれば、大の月、小の月、うるう月によって所定労働時間数が異なる。
 要は、変形期間内の所定労働時間数を7で割って求めた1週当たりの労働時間が40時間(特例事業においては44時間)以内でなければならないということ。 
19
5D
 32条の2において、
 「1箇月以内の一定の期間を平均し1週間当たりの労働時間が法定労働時間(40時間、特例事業の場合は44時間)を超えない定めをしたときは」とある。 
 すなわち、変形期間の歴日数を7で割って、その変形期間が何週間あるかを求め、これに1週当たりの労働時間が40時間(特例事業においては44時間)をかければ、労働時間の総枠が求まることになる。
 たとえば、週法定労働時間が40時間の場合、
 大の月は、31÷7×40から177時間
 小の月は、30÷7×40から171時間
 2月は   28÷7×40から160時間、うるう29日のときは、165時間
 ただし、変形期間が1か月とはいっても、1日から始まるとは限らないので、「労使協定において、起算日(何月何日から1か月単位とするか)を決めておかないといけない」
⇒これらを超えると時間外労働が発生する。  


2A
 前段にある「変形労働時間制により労働者に労働させる場合の起算日」については、施行規則12条の2に「就業規則その他これに準ずるもの又は書面による協定(労使委員会の決議及び労働時間等設定改善委員会の決議を含む)において、変形労働期間の起算日を明らかにするものとする」とある通り。
 しかしながら、問題文後段は意味不明である。
 「変形労働時間を1か月とし、起算日を毎月1日」とすれば、変形労働期間は「毎月1日から月末までの歴月」のサイクルとなる。
 問題文が、「その期間を1か月とする場合は、起算日は1日に自動的に決まる」という意味であれば、それはあやまり。2日からあるいはそのほかの任意の日からはじめても一向に問題ない。
 なお、1か月単位の変形労働時間制であるから、変形労働期間は1か月を超えることはできないが、たとえば、4週間をその期間とすることもよくあることだ。
 この場合、最初の起算日を具体的に定めれば、あとは毎4週間後の応当曜日ということになる。
29
1A
 法定労働時間の原則は32条の1項と2項により、「1週間40時間、1日8時間」であり、これを超えると、法定時間外労働として割増し賃金が発生する。
 しかしながら、本肢のように、一定の手続きを経て「1か月の変形労働時間制」を採用した場合は、32条の2から、「平均し1週間当たり40時間を超えない限り、特定された週に40時間特定された日に8時間を超えて、労働させることができる」
 本肢の場合、「特定された各週の月曜、火曜、木曜、金曜において9時間労働」しても、割増賃金は発生しないが、割増賃金の対象となる時間外労働の@にあるように、「定めた時間である9時間を超えた場合は、超えた時間数が割増賃金の対象」となる。
 また、後段にある「日曜から金曜までの間において所定どおり労働した後の土曜に6時間の労働をさせた場合」については、割増賃金の対象となる時間外労働のCにあるように、「週40時間を超える定めを行っていない週」であるので、40時間を超えた労働時間すなわち4×9+6-40の2時間が、法定労働時間を超えた労働、すなわち割増賃金の対象となる労働時間になる。
⇒労使協定において、たとえば、「第三週のみ週42時間を所定労働時間とする」と定めておけば、このようなことは発生しない。


2C
 「1か月単位の変形労働時間制により所定労働時間が、1日6時間とされていた日の労働時間を当日の業務の都合により8時間まで延長した」とある。
 そもそも、「業務の都合(しかも本肢の場合、突発的と考えられる当日の業務の都合とある)により、労働時間の変更が可能か」という素朴な疑問が湧いてくる。
 この点、通達(H11.3.31基発168)において、「労使協定又は就業規則その他これに準ずるものにより、変形期間における各日、各週の労働時間を具体的に定めることを要し、変形期間を平均し週40時間の範囲内であっても、使用者が業務の都合によって任意に労働時間を変更するような制度は、1か月単位の変形労働時間制に該当しない」とある。(1か月単位の変形労働時間制において、一度定めた勤務割りを変更することは、原則的に認められないという立場)
 しかしながら、現実問題として、「6時間の指定がある日に、8時間労働させた場合」が、割増賃金対象となる時間外労働となるか否かについては、通達(H6.3.31基発181他)によれば、「8時間を超える定めを行った日ではない日については、8時間を超過した時間数が時間外労働」とある。
 なお、参考までに、変形労働時間制における労働時間の変更については、規定がないゆえに、実際には多くの裁判例がある。
 たとえば、「東日本旅客鉄道変形労働時間制」(H12.04.27東京地方裁判所)においては、「1か月単位の変形労働時間制においては、使用者が日又は週につき法定労働時間を超えて労働させることが可能になるため、労働時間の過密な集中を招くおそれがあり、労働者の生活に与える影響が通常の労働時間制の場合に比して大きいことから、各日及び各週の労働時間をできる限り具体的に特定させることによって、労働者の生活設計に与える不利益を最小限にとどめる必要がある。・・・・
 労基法が1か月単位の変形労働時間制について変更が許される場合に関する定めを置いていないのは、使用者の裁量による変更が許されないという趣旨にとどまるものであって、就業規則上の留保を禁じた趣旨に出たものとまではいえないと解される。・・・
 もっとも、就業規則による労働時間の特定を要求した趣旨からすれば、就業規則の変更条項は、労働者から見てどのような場合に変更が行われるのかを予測することが可能な程度に変更事由を具体的に定めることが必要である」とし、「業務の都合」より変更するだけでは認められず、労働者側からみてもあらかじめ予測がつく(覚悟ができる)程度の変更理由を就業規則で定めておくことが必要と判断している。
17
3D
 一定の手続きを経て「1か月の変形労働時間制」を採用した場合は、32条の2から、「平均し1週間当たり40時間を超えない限り、特定された週に40時間特定された日に8時間を超えて、労働させることができる」
 本肢の場合、同じ月内で休日振替えを行ったのであるから、その月の合計の労働時間数に変りはないので、「平均して1週間当たり40時間を超えない」。
 ただし、振替えによって労働日が増えた週が、「週40時間を超える特定の週としてあらかじめ協定により定められた週」でない限り、1か月単位の変形労働時間制における割増賃金の対象となる時間外労働のCすなわち、「週40時間を超える定めを行っていない週である場合において、40時間を超過した労働時間は法定時間外労働」となる。
なお、1か月単位の変形労働時間制は、いわゆる法定時間の特例(週44時間)が認められる商業、映画・演劇業、保健衛生業、接客娯楽業においても実施可能であるので、このような事業の場合は、週40時間ではなく、44時間としないと問題がおかしくなる可能性もある。しかしながら、「1か月以内の合計の労働時間数に変りはないので、時間外労働の問題は生じない」としてある部分に着目すれば、本肢は「誤り」となる。
@休日振替は、予め、就業規則において、必要があればこれを実施する旨の規定を設けておく必要がある。A休日振替が成立した場合は、もともとの休日は労働日となるので、その日は休日労働とはならない。Bただし、振り替えたことにより、当該週の労働時間が増加するので、時間外労働が発生する場合があることに注意を。
29
1B
 一定の手続きを経て「1か月の変形労働時間制」を採用した場合は、32条の2から、「平均し1週間当たり40時間を超えない限り、特定された週に40時間特定された日に8時間を超えて、労働させることができる」
 本肢の場合、同じ週内で休日振替えを行ったのであるから、その月の合計の労働時間数に変りはないので、「平均して1週間当たり40時間を超えない」
 また、同じ週内での休日振替ええあるから、週1日あるいは4週で4日の法定休日が確保されているので、休日労働の発生もない。
 しかしながら、「水曜の休日を前日の火曜に振り替えて9時間の労働をさせた」場合、火曜は8時間を超えて労働をさせてもよいとして特定された日ではないので、割増賃金の対象となる時間外労働のAすなわち、「8時間を超える定めを行った日以外においては、8時間を超過した時間数(すなわち1時間)が、法定労働時間を超えた労働、すなわち割増賃金の対象となる労働時間になる」
⇒振替労働日である火曜に8時間以内の労働をさせた場合は、このような事態にはならない。
18
4B
 1か月単位の変形労働時間制については、32条の2から、
 「労使協定又は、就業規則その他これに準ずるものにより、1箇月以内の一定期間を平均し1週間当たりの労働時間が40時間を超えない定めをしたときは、特定された週において40時間、特定された日において8時間を超えて、労働させることができる」
 とあり、就業規則によってもこれを実施することができる。
 問題は就業規則で予め定めるべき事項であるが、@変形期間の長さと変形期間の起算日、A対象労働者の範囲、B変形労働期間の各日、各週の労働時間、C協定の有効期間がこれに該当する。
 特に重要なのが、各日、各週の労働時間である。
 たとえば、病院や発電所など24時間操業の事業場においては交代勤務制がとられることが多く、深夜作業日は長時間労働になるが、翌日は休日とか短時間労働にするとか、勤務ダイヤに応じて、労働時間に長短が生じる。このような場合によく採用されるのが、「1か月単位の変形労働時間制」である。
 この勤務ダイヤ制を採用した場合、就業規則において、すべての対象労働者の各日、各週の労働時間を予め定めて記載しておくことは現実的でない。
 よって、通達(S63.3.14基発150)では、
 「就業規則においてできる限り具体的に労働時間を特定すべきであるが、業務の実態から月毎に各人の勤務割(勤務ダイヤ)を作成する必要がある場合には、就業規則において各直勤務の始業・終業時刻、各直勤務の組合せの考え方、勤務割表の作成手続き及びその周知方法等を定めておき、それに従って各日ごとの勤務割は変形期間の開始前までに具体的に特定することで足りる」としている。
18
4C
 列車等乗務員の予備勤務者の労働時間を定めた施行規則26条によると、
 「使用者は、別表第1第4号に掲げる事業(運輸・運送業)において列車、気動車又は電車に乗務する労働者で予備の勤務に就くものについては、1か月以内の一定の期間を平均し1週間当たりの労働時間が40時間を超えない限りにおいて、1か月単位の変形労働時間制にかかわらず、1週間について40時間、1日について8時間を超えて労働させることができる」とある。
 つまり、列車等乗務員の予備勤務者については、1箇月単位の労働時間制に関する労使協定や就業規則で特別な取り決めをしなくとも、1箇月単位の労働時間制に準じた労働をさせることができる。
 ただし、航空機に乗務する予備勤務者には、施行規則26条は適用されないので、特別な取り決めを必要とする。
 この点において、本肢は誤りである。
 なお、参考までに休憩時間の特例(休憩時間を与えなくてよい)に関しては、航空機乗務員も適用される。
18
4D
 労使協定により定めなければならない事項については、32条の4の1項の通りで、労働時間の特定に関しては、対象期間を1か月以上の期間ごとに区分する場合、
 
@最初の期間における労働日及び労働日ごとの労働時間
 Aそれ以降の各期間における労働日数及び総労働時間
 である。
 ここで、Aについてはさらに、同条の2項により、
 「各期間の初日の少なくとも30日前に、過半数で組織する労働組合(ない場合は労働者の過半数代表者の)同意を得て、書面により、当該労働日数を超えない範囲内において各期間における労働日、及び  総労働時間を超えない範囲内において各期間における労働日ごとの労働時間を定めなければならない」
 つまり、いずれの期間についても、労働日と労働日ごとの労働時間を予め特定しないといけないが、その際は、過半数組織労働組合(ない場合は労働者の過半数代表者)の同意を得ればよく、個々の対象労働者の同意まで得る必要はない。
30
2ウ
 一年単位の変形労働時間制において、労使協定により定めなければならない事項については、32条の4の1項の通りで、労働時間の特定に関しては、対象期間を1か月以上の期間ごとに区分する場合、
@最初の期間における労働日及び労働日ごとの労働時間
Aそれ以降の各期間における労働日数及び総労働時間
を協定で定めなければならないことになっている。
 (なお、Aについては、同条2項にあるように、「労働日と労働日ごとの労働時間については、各期間の初日の少なくとも30日前までに定めればよい)
 本肢の論点は、「7月から9月を対象期間の最初の期間とした場合において、この間の総休日数を40日と定めた上で、30日の休日はあらかじめ特定するが、残る10日については、「7月から9月までの間に労働者の指定する10日間について休日を与える」ことは、労働日を特定したことになるか」ということ。
 このような労働日の指定方法については、通達(H6.05.31基発330)によると、
 「労働日を特定するということは、反面、休日を特定することとなり、問題文のように、変形期間開始後にしか休日が特定できない場合には、労働日が特定されたことにならない」として、このような協定は認められないとした。
28
4C
 「労働基準法第32条の4に定めるいわゆる一年単位の変形労働時間制の対象期間」とは、「その対象期間を平均して、1週間当たりの労働時間が40時間を超えない範囲内であれば、特定された週において1週40時間、又は特定された日において1日8時間を超えて、労働させることができる」期間のこと。
 その期間については、同条1項2号に「対象期間は1か箇月を超え1年以内の期間に限るものとする」とあり、3か月や6か月であっても構わない。
 要は、多忙期と閑散期がどのようなスパンで発生するかによって定めればよい。

22
5B

 1年単位の変形労働時間制において労使協定により定めなければならない事項は32条の4の1項から、
 労働時間に関しては、対象期間を1か月以上の期間ごとに区分する場合、
 
@最初の期間における労働日及び労働日ごとの労働時間
 Aそれ以降の各期間における労働日数及び総労働時間
 であって、さらにAについては、同条の2項から、
 「各期間の初日の少なくとも30日前に、過半数で組織する労働組合(ない場合は労働者の過半数代表者の)同意を得て、書面により、
 当該労働日数を超えない範囲内において各期間における労働日、及び
 総労働時間を超えない範囲内において各期間における労働日ごとの労働時間を定めなければならない
 なお、問題文に「1日10時間、1週52時間という労働時間の上限が定められている」とあるが、これは施行規則12条の4に規定されていて、この部分は正しい。
 念のため、労働時間の特定については、通達(H6.1.4基発1、H11.3.31基発168)において、
 「労使協定により、変形期間における労働日及び当該労働日ごとの労働時間を具体的に定めることを要し、使用者が業務の都合によって任意に労働時間を変更するような制度はこれに該当しないこと。
 従って、例えば貸切観光バス等のように、業務の性質上1日8時間、週40時間を超えて労働させる日又は週の労働時間を予め定めておくことが困難な業務、又は労使協定で定めた時間が業務の都合によって変更されることが通常行われるような業務については、1年単位の変形労働時間制を適用する余地はない」となっている。
30
2イ
 一年単位の変形労働時間制における労働日数、労働時間などの限度については、32条の4の3項により、「厚生労働大臣が労働政策審議会の意見を聴いて、定めることができる」ことになっている。
 そして、施行規則12条の4の4項において、「1日の労働時間の限度は10時間、1週間の労働時間の限度は52時間。ただし、対象期間が3か月を超えるときは、さらに細かい制限がある」
 なお、問題文には。「隔日勤務のタクシー運転者等暫定措置の対象とされているものを除き」とあるが、これは、隔日勤務のタクシー運転者等は実質的には1回の勤務で2日分労働していることから、施行規則66条に、「一般乗用旅客自動車運送事業における四輪以上の自動車の運転の業務に従事する労働者であつて、労働時間の終了から次の労働時間の開始までの期間が継続して20時間以上あり、始業及び終業の時刻が同一の日に属しない業務に従事するものについては、一年単位の変形労働時間制における1日あたりの労働時間の当分の間、16時間とする」とあることによる。
11
3D
 労使協定により定めなければならない事項については、32条の4の1項の通りで、
 「労働者の範囲、その対象期間、対象期間中の特に業務が繁忙な期間、対象期間における労働日及び当該労働日ごとの労働時間を定めなければならない」とあり正しい。
 また、対象期間における労働日数などの限度を厚生労働大臣が設けることについては、32条の4の3項の通りであり、具体的には、施行規則12条の4において定められている。
11
4B
 変形労働時間制は、その対象期間全期間について労働した場合に初めて有効なものである。
 よって、対象期間の途中から採用した者、あるいは対象期間中に退職した者については、本来の法定労働時間(1日8時間、1週40時間(1か月単位の変形労働時間制で特例事業の場合は44時間)の原則に従って賃金の清算をしなければならない。
 しかしながら、1年単位の変形労働時間制に限っては、平成10年以降、対象期間の途中から採用した者にも変形労働時間制を適用してよいことになった。
 また、逆に、対象期間の途中に退職した者も、対象期間の初日からさかのぼって、1日8時間、1週40時間超過の原則に基づいて清算する必要はなくなった。
 よって、これらの者であっても、その対象期間中において発生した時間外労働については、1年単位単位の変形労働時間制の割増賃金対象の時間外労働に従った割増賃金を払えばよい(払う義務がある)
 ただし、Dの変形期間中トータルの労働時間については、当然、全期間は勤務していないのでこれを超えることは通常はないとしても、運悪く繁忙期に労働した場合は、どうみても週平均8時間を超えることが起こりうる。
 この場合は、32条の4の2の規定に基づき、
 「対象期間中に労働させた期間が当該対象期間より短い労働者について、期間を平均し1週間当たり40時間を超えて労働させた場合においては、その超えた時間の労働については、割増賃金を支払わなければならない」とした。
 すなわち、「途中退職者または途中採用者等については、@からCまでで確定した37条に基づく割増賃金のほか、32条の4の2により賃金の清算をする必要があるのだ。
 一つの事業場で複数の1年単位の変形労働時間制が採用されている場合に配置転換された労働者についても、、配置転換前の制度においては途中退職者と同様な清算が、配置転換後の制度においては途中採用者と同様な清算が、それぞれ必要となる。
17
2D
  前段部分の「対象期間中に退職した場合、労働させた期間を平均し、1週間当たり40時間を超えた労働については、割増賃金を支払わなければならない」とあるのは、過去問(11-4B)の解説の通りである。
 問題は、これに違反した場合であるが、H11.1.29基発45において、
 「32条の4の2(賃金の清算)の規定による割増賃金を支払わない場合は24条に違反する」とある。
 この場合の24条違反とは「賃金全額払いの原則違反」のことで、120条により、「30万円以下の罰金」となる。
 参考までに、37条(時間外、休日及び深夜の割増賃金)の規定違反の場合は、119条により、
  「6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金」であり、こちらの方が重罰である。


1.問題文にわざわざ、「37条の規定の例により割増賃金を支払わなければならない」と書いてあるところが曲者である。
 確かに、32条の4の2による賃金の清算も、37条に従って割増賃金を計算することになるので他意はなさそうであるが、厳密にいえば、
 「37条を適用」とは書かずに、「37条の規定の例により」とあるから、
 これに違反すれば「37条違反ではなく、32条の4の2に対する違反」ということになり、罰金でいえば、H11.1.29基発45から24条違反となるのである。
2.これは、32条の4の2(賃金の清算)の規定は、問題文にもあるように、非常時災害等による時間外、36協定による時間外等により確定した時間外労働についての37条による割増賃金を支払った残りの部分の清算であることによる。
  つまり、37条による割増賃金を払った(変形労働時間制の協定を超えたため、36条協定による時間外労働の割増賃金はすべて支払った)が、さらに、残りの労働時間(すべては変形労働時間制の協定の範囲内であっても)その平均値が1週間当たり40時間を超えた労働に対しては、32条の4の2を根拠とした賃金の清算という形であるため、その不払いについては、24条違反ということ。;
28
4D
 1週間単位の非定型的変形労働時間制とは、32条の5にあるように、
 日ごとの業務に著しい繁閑の差が生ずることが多く、これを予測した上で就業規則等により各日の労働時間を特定することが困難であると認められる厚生労働省令で定める事業であって、常時使用する労働者の数が厚生労働省令で定める数未満のものに従事する労働者について適用されるものである。
 この制度によれば、1週間当たり40時間以内であれば、1日について10時間まで労働させることができる。
 この制度が適用される業種と規模は省令により限定されており、業種は施行規則12条の5から、「小売業、旅館、料理店及び飲食店の事業」であってかつ規模は同条2項から「30人」とされている。
⇒「A又はB」ではなく、「AかつB]である。

22
5C

 1週間単位の非定型的変形労働時間制について規定した32条の5にあるように、
 「日ごとの業務に著しい繁閑の差が生ずることが多く、かつ、これを予測した上で就業規則等により各日の労働時間を特定することが困難であると認められる一定の事業において、過半数代表者等との書面による協定を結ぶことにより、1日について10時間まで労働させることができる」制度である。
 よって、「日ごとの業務の繁閑を予測することが困難な事業に認められる制度ではあるが、1日の労働時間の上限は10時間と定められている」
 ここで、適用可能な事業所は、施行規則12条の5にあるように、
 「小売業、旅館、料理店及び飲食店の事業であって、常時使用する労働者の数が30人未満」
 なお、1日当たり10時間まで働かせることができるといっても、「1週間の各日の労働時間の通知は、原則として少なくとも当該1週間の開始する前に、書面により労働者に知らせなければならない」
23
1E
 労基法にいう賃金とは、11条に、
 「この法律で賃金とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう」と定義されている。
 つまり労基法でいう賃金とは、使用者が指揮命令をし、その命令のもとに行われた労働に対する対償として使用者が支払うものをいう。
 よって、問題文にある「顧客が支払うもの」は労基法では賃金とはされない。
 たとえば、従業員が顧客からもらうチップは賃金ではないが、使用者が客に請求して集めたものを当日労働した者に配分する場合は、賃金といえる。
13
3A

 賃金となるもの、ならないものの例1にあるS63.3.14基発150号11条関係に、
 「所得税や社会保険料の労働者負担部分を使用者が代わって負担する場合は、労働者が法律上当然生じる義務を免れるものであるため、使用者が労働者に代わって負担する部分は賃金と見なされる」とある。
19
2B
 通達(S63.3.14基発150号11条関係)によれば、「所得税や社会保険料の労働者負担部分を使用者が代わって負担する場合は、労働者が法律上当然生じる義務を免れるものであるため、使用者が労働者に代わって負担する部分は賃金と見なされる」

3
1E
 通達(S63.3.14基発150号11条関係)に、「所得税や社会保険料の労働者負担部分を使用者が代わって負担する場合は、労働者が法律上当然生じる義務を免れるものであるため、使用者が労働者に代わって負担する部分は賃金と見なされる」とある通り。
15
3A
 賃金となるもの、ならないものの例3にある通達(S32.2.13基発90号)によると、
  「労働協約により支給している定期券は賃金であり、これを賃金台帳に記入し、又6ヵ月定期乗車券であっても、これは各月分の賃金の前払いとして認められるから、平均賃金算定の基礎に加えなければならない」とされている。
⇒一般に、通勤手当(費)は事業主に支払い義務はないが、これが就業規則等の定めにより通貨で支払われている場合は賃金である。
 このように就業規則等の定めがある場合の通勤費を賃金とみなすことは、使用者の支払義務を明確にするためであって、通勤旅費を所得税法上課税対象としないことと されていても、賃金は賃金である。
 なお、本旨にあるように、通勤費を現金ではなく定期券そのもので現物給付することは、24条により、法令若しくは労働協約に別段の定めがある場合は合法とされている。
24
1D
 過去問(15-3A)解説の通りで、「労働協約により支給している定期券は賃金であり、これを賃金台帳に記入し、又6ヵ月定期乗車券であっても、これは各月分の賃金の前払い として認められるから、平均賃金算定の基礎に加えなければならない」
 本肢には、次の二つの論点がある。
・就業規則等による定めがある場合の通勤費は賃金である。
 これを定期券などの実物で支払う場合は、労働協約による定めが必要。
・「6か月分の定期券」であっても、実態は各月分の賃金の前払いであるから、「3か月を超える期間ごとに支払われる賃金」には該当せず、従って12条による平均賃金の算定基礎に加えなければならない。
19
2A
 労働基準法上の賃金とは、11条に、「賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう」とある。
 ここで、「労働の対償」となるか否かの判断基準のひとつに、「企業設備・業務費であるか否か」がある。
 ここで企業設備とは、企業が経営体として労働者から労務を受領するため、当然具備しておかなければならない有形、無形のすべての設備をいい、作業用用品代、出張旅費、社用交際費など、いわゆる業務費と呼ばれるものを含む。
 そしてこれら「実費弁償として捉えられている出張費(含む宿泊費)、接待交際費などは、本来的には使用者が支払うべきものであり、賃金ではない」とされている。
 つまり、使用者が労働者に支払うものであっても、実費弁償として支払われる旅費等は、賃金ではない。
 なお、通勤旅費については、労働基準法では、使用者には支払義務がない。
 しかし、就業規則等の定めにより通貨で支払われている場合は賃金である。また、労働協約の定めにより、通貨のかわりに通勤定期券が支給された場合であっても、賃金である。
 (一定の通勤費を賃金とみなすことは、使用者の支払義務を明確にするためである。通勤旅費を所得税法上課税対象としないこととは別の趣旨である)


3オ
 賃金とは、11条にあるように、「名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのもの」である。
 つまり労基法でいう賃金とは、使用者が指揮命令をし、その命令のもとに行われた労働に対する対償として使用者が支払うものをいう。
 本肢にあるような「私有自動車を社用に提供する者に対し維持費相当のものを社内規定により支払う場合」については、通達(S28.0210基収6212号)によると、
 「社用に用いた走行距離に応じて支給されるガソリン代は、実費弁償であり賃金ではない」とある。
 ここで、「実費弁償」とは、出張費(含む宿泊費)、接待交際費など、労働者が立て替え払いしたとしても「企業設備・業務費」として、本来的には使用者が支払うべきものをいい、賃金ではない。 
19
2E
 通達(S22.9.13発基17の3号)によれば、
 「労働協約、就業規則、労働契約等によって予め支給条件が明確である場合の退職手当は、法第11条の賃金であり、法第24条第2項の「臨時の賃金等」に当たる」
 よって、その支払いは24条2項のただし書きにより、毎月1回・一定期日払いではなくて、施行規則7条の2の2項により、
 「労働者の同意を得た場合には、口座振込み、小切手、郵便貯金銀行が為替取引に関し負担する債務に係る権利を表章する証書(いわゆる郵便為替)によることができる」
 この通達から逆に、
 「労働協約、就業規則、労働契約等によって予め支給条件が明確にはされていない退職手当は、賃金ではない。したがって、使用者に支払い義務はなく、支払うか否かは任意である」といえる。
27
4D
 通達(S22.9.13発基17の3号)
 「労働協約、就業規則、労働契約等によって予め支給条件が明確である場合の退職手当は、法第11条の賃金であり、法24条2項の「臨時の賃金等」に当たる」とある通り。
 ここで、「臨時に支払われる賃金」とは、毎月1回・一定期日払いの原則に当てはまらない賃金ということ。
22
3B
 賃金の意義についての通達(S22.9.13発基17の4号)によれば、
 「結婚祝金、死亡弔慰金、災害見舞金等の恩恵的給付は原則として賃金とみなさない。
 ただし、労働協約、就業規則、労働契約等によって予め支給要件が明確なものはこの限りでないこと」とある。
 確かに、結婚手当は、使用者が任意的、恩恵的に支給するという性格を持つものであるから、原則として賃金とはならない(使用者が支払わなくても罰則はない)が、
 就業規則によってあらかじめ支給要件が明確に定められ、その支給が使用者に義務付けられている場合には、賃金に当たり、これを支払わないと労基法違反で罰則が課せられる。
28
1オ
 労働基準法第11条にいう「賃金」とは、「名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払すべてのもの」をいう。
 よって、恩恵的な見舞金などの類は「労働の対償」と言えるか否かは即断できない。
 この点に関しては、通達(S22.9.13発基17の4号)によれば、
 「結婚祝金、死亡弔慰金、災害見舞金等の恩恵的給付は原則として賃金とみなさない。
 ただし、労働協約、就業規則、労働契約等によって予め支給要件が明確なものはこの限りでない」とある。
 つまり、労働協約、就業規則、労働契約通りにしないと罰則の対象となり得るからである。
 要するに、労働基準法における「賃金」とは、「それを支払うべきことが決まっているのに支払わないで罰則の対象となるもの」ということができる」

2
4E
 「食事の供与」が賃金になるか、福利厚生になるかの判定は結構難しいが、通達(S30.10.10基発644号)により、問題文とほぼ同文のものが通達されている。
 ここで、
 その際の基本的な考え方は、「賃金の意義について」(通達(S22.09.13発基17))に基づいており、
@所定貨幣賃金の代わりに支給するもの、即ち、その支給により貨幣賃金の減額を伴うもの、あるいは
A労働契約において、予め貨幣賃金の外にその支給が約束されているもの
 は、賃金とみなされる。
Bただし、代金を徴収するもの(代金が非常に低額である場合は除く)は賃金とはみなさない。
 なお、Bに関しては、通達(S22.12.9基発452)に、
 「労働者より代金を徴収するものは、原則として賃金ではないが、その徴収金額が実際費用の3分の1以下であるときは、徴収金額と実際費用の3分の1との差額部分については、これを賃金とみなす」ともある。
19
2C
 解雇予告手当は、解雇予告について規定した20条1項「使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも30日前にその予告をしなければならない。30日前に予告をしない使用者は、30日分以上の平均賃金を支払わなければならない」の後段にあるもの。
 この解雇予告手当については、通達(S23.8.18基収2520)に、
 「解雇予告手当は退職手当とその内容は類似するものの、過去の労働と関連が薄く、むしろ労働者の予測しない収入の中絶を保護するものであって、労働の対償となる賃金ではない」とある。
 なお同通達によると、「賃金ではないということは必ずしも通貨支払、直接支払の要件を具備しなくても差し支えないことになるが、24条の賃金支払の原則に準じて通貨で直接支払うよう指導すること」とされている。
 なお、問題文に「解雇予告手当は解雇の予告に代えて支払われる平均賃金をいう」とあるが、正確には「解雇の予告に代えて支払われるもので、その額は平均賃金×解雇予告不足日数」である。
26
3ア
 賃金であるか否かは、11条の「労働の対償として支払われるもの」と、24条の「賃金の支払5原則を使用者に課すべきもの」の両方を満足するかどうかで判定する。
 「賞与」については、通達(S22.9.13発基17号11条関連)と同じ考え方により、「恩恵的に支払われるものであれば賃金ではないが、労働協約、就業規則、労働契約あるいはそれまでの支払い実態等によって、あらかじめ支給することが明確なものは賃金である」と考えてよい。
 「家族手当」、「住宅手当」についても上記と同様。(ただし、住宅手当については少し複雑で、住宅貸与者以外にも給付があるか、住宅貸与者の自己負担割合はどうかなどによって異なる。詳しくはこちらを)
 「解雇予告手当」については、通達(S23.8.18基収2520)によれば、
 「退職手当とその内容は類似するものの、過去の労働と関連が薄く、むしろ労働者の予測しない収入の中絶を保護するものであって、労働の対償となる賃金ではない」とある。
14
3A
 賃金となるもの、ならないものの例17の通達(H9.6.1基発412)によると、
 「ストックオプション制度では、権利付与を受けた労働者が権利行使を行うか否か、また、権利行使をするとした場合において、その時期や株式売却時期をいつにするかを労働者が決定するものとしていることから、これより得られる利益は、それが発生する時期及び額ともに労働者の判断に委ねられているため、労働の対償ではなく、賃金には当たらない」
30
4オ
 労働基準法第11条にいう「賃金」とは、「名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう」とある。
 このうち、ストック・オプション制度については、通達(H9.6.1基発412)に、「この制度から得られる利益は、それが発生する時期及び額ともに労働者の判断に委ねられているため、労働の対償ではないことから、11条の賃金には当たらない」としている。
 ここで、ストックオプションとは、一般に,あらかじめ決められた価格で株式を取得する権利(コールオプション)あるいは処分する権利(プットオプション)をいう。
 たとえば、会社の取締役や従業員が1株1,000円で会社から株式を取得できる権利をもらった場合、もしその株が1,300円まで上がった場合に、このコールオプションを行使したあとすぐに売却すれば、1株に月300円の利益(税を除き)が得られることになる。(つまり、株価が上昇するように労働意欲を掻き立てる効果がある)
 このようなストックオプションは、問題文(通達)にもあるように、「利益の発生する時期、額ともに労働者の判断に委ねられているため、労働の対償、すなわち賃金とはいえない」とするのはやむをえまい。
⇒賃金が払えないので、かわりにストックオプションでというのは許されない。
25
7ア
 通貨払の原則とは、24条に、
 「賃金は、通貨直接労働者に、その全額を支払わなければならない」とあることによる。
 ただし、同条のただし書きにもあるように、「法令若しくは労働協約に別段の定めがある場合は、いわゆる実物給与も許される」
 よって、問題文にもあるように、通貨払は賃金支払の原則であって、例外を一切認めないということではないことに注意を。
 労働法コンメンタール「労働基準法p338(24条の趣旨)」の中の「通貨払の原則」においても、
 「通貨払の原則は、貨幣経済の支配する社会では最も有利な交換手段である通貨による賃金支払を義務づけ、これによって、価格が不明瞭で換価にも不便であり弊害を招くおそれが多い実物給与を禁じることにある。
 この原則は、労働者に不利益な実物給与を禁止するのが本旨であるから、公益上の必要がある場合又は労働者に不利益になるおそれが少ない場合には例外を認めることが実情に沿うので、退職手当について、銀行振出し小切手等の交付によることのほか、法令又は労働協約に定めのある場合には実物給与を認めている」と解説している。
 すなわち、問題文は原則的には正しい。
 ただし、上記後段にあるように、「公益上の必要がある場合又は労働者に不利益になるおそれが少ない場合には例外を認めることが実情に沿う」とあることも事実であり、問題文の立て方に異論がある。
22
3A
 最高裁判例[未払賃金(いわゆる大和銀行事件)](S57.10.07)によると、
 「被上告銀行においては、就業規則32条の改訂前から、
 年2回の決算期の中間時点を支給日と定めて当該支給日に在籍している者に対してのみ右決算期間を対象とする賞与が支給されるという慣行が存在し、
 右規則33条の改訂は単に被上告銀行の従業員組合の要請によつて慣行を明文化したにとどまるものであつて、
 その内容においても合理性を有するというのであり、右事実関係のもとにおいては、上告人は、被上告銀行を退職した後の日を支給日とする賞与については受給権を有しない」
 よって、賞与支給日在籍要件を定めた就業規則の規定が無効であるということはできず、退職後に支給日のある賞与の受給権がない以上、賃金全額払の原則に違反するとはいえない。
25
7エ
 全額払の原則とは、24条に、
 「賃金は、通貨で直接労働者に、その全額を支払わなければならない」とあることによる。

 これに関する最高裁判所判例のひとつ退職金請求](S48.01.19)があり、そこにおいて、
 「全額払の原則の趣旨とするところは、使用者が一方的に賃金を控除することを禁止し、もつて労働者に賃金の全額を確実に受領させ、労働者の経済生活をおびやかすことのないようにしてその保護をはかろうとするものというべきである」としている。
22
3D
  問題文に「労働者が退職に際し自ら賃金債権を放棄する旨の意思表示をした」とある。
 この事件は最高裁判所判例退職金請求](S48.01.19)であり、
 「退職金債権の放棄は、賃金全額払の原則に反するばかりでなく、本件退職金債権の放棄は、会社からの強制によるものであるから、退職金債権を放棄する旨の意思表示は無効である」として争ったものである。同判決文によると、
 「本件退職金は、就業規則においてその支給条件が予め明確に規定され、会社が当然にその支払義務を負うものというべきであるから、労働基準法11条の「労働の対償」としての賃金に該当し、したがつて、その支払については、同法24条1項に定めるいわゆる全額払の原則が適用されるものと解するのが相当である。
 しかし、全額払の原則の趣旨とするところは、使用者が一方的に賃金を控除することを禁止し、もつて労働者に賃金の全額を確実に受領させ、労働者の経済生活をおびやかすことのないようにしてその保護をはかろうとするものというべきであるから、
 本件のように、労働者たる上告人が退職に際しみずから賃金に該当する本件退職金債権を放棄する旨の意思表示をした場合に、全額払の原則が意思表示の効力を否定する趣旨のものであるとまで解することはできない。
 もつとも、全額払の原則の趣旨とするところなどに鑑みれば、意思表示の効力を肯定するには、それが上告人の自由な意思に基づくものであることが明確でなければならないものと解すべきであるが、本件の場合、意思表示が上告人の自由な意思に基づくものであると認めるに足る合理的な理由が客観的に存在していたものということができるから、右意思表示の効力は、これを肯定して差支えないというべきである」
 要するに、「労働者自ら賃金債権を放棄する旨の意思表示をした場合に、それが本人の自由な意思に基づくものであることが明確であれば、その債権放棄は有効である」
25
7オ
 全額払の原則とは、24条に、
 「賃金は、通貨で直接労働者に、その全額を支払わなければならない」とあることによる。
 ただし、この原則が適用されるのは「賃金」に限られる。
 本肢では、「退職金」が賃金に当たるかどうかについては明確にされていないので、この点において出題に多少の手抜かりがある。
 (退職金、結婚祝金、死亡弔慰金、災害見舞金等の恩恵的給付は、原則として賃金ではない。ただし、労働協約、就業規則、労働契約等によって、あらかじめ支給条件の明確になっておれば賃金であることに注意を)
 次に、問題文に「強行的な規制であるため、労働者が債権を放棄する意思表示をしたとしても、同原則の趣旨により、当該意思表示の効力は否定される」というのは、かなり微妙な判断を要する。
 「強行規制」の場合は、「当事者間で、法の規制とは異なるとりきめをしても、それは無効となり、法規制通りにしなければならない」とするのが、原則である。
 しかしながら、本肢に関連した最高裁判例退職金請求](S48.01.19)では、
 「労働者たる上告人が退職に際しみずから賃金に該当する本件退職金債権を放棄する旨の意思表示をした場合に、全額払の原則が意思表示の効力を否定する趣旨のものであるとまで解することはできない
 もつとも、全額払の原則の趣旨とするところなどに鑑みれば、意思表示の効力を肯定するには、それが上告人の自由な意思に基づくものであることが明確でなければならないものと解すべきである」としている。
 要するに、使用者側からの圧力等が全くなく、自らの自由意思に基づいて放棄した場合まで、全額払の義務違反とすることはできないとした。
 他にも同様な最高裁判例があるが、これらも含めて争われたのは、退職金全部を放棄するといったようなことだけでなく、会社への損害賠償金や住宅資金借入金と退職金の一部とを相殺することが許されるかどうかという例が多い。 
27
4C
 問題文に、「退職金は労働者の老後の生活のための大切な資金であり」とある点はその通りで異論はない。
 しかしながら、その次の「労働者が見返りなくこれを放棄することは通常考えられない」というのは余計なことであり、人によって種々の事情があると思われる。
 よって、「退職金債権を放棄する旨の意思表示は、それが労働者の自由な意思に基づくものであるか否かにかかわらず」というのはいいすぎであって、「自由な意思に基づくものであれば、その意思表示まで無効とする」のやりすぎであろう。
 この点に関しては、最高裁判例退職金請求](S48.01.19)においても、
 「労働者たる上告人が退職に際しみずから賃金に該当する本件退職金債権を放棄する旨の意思表示をした場合に、全額払の原則が意思表示の効力を否定する趣旨のものであるとまで解することはできない」とある
 
なお、この事件では、その経緯に示したように、
上告人は、途中退職を会社に申し出た際、「会社に対していかなる性質の請求権をも有しない」という確認書を会社と取り交わしていた。
 この上告人は、ライバル会社に転職しようとしていたこと、在職中に旅費等経費について疑惑を持たれていたなどの特殊な事情があるため、会社側が、疑惑部分の損害の一部を填補する趣旨で、上記の確認書に署名を求めたところ、本人がこれに応じたというのである。しかし、当人が後になって、「会社から強制された」ものであるとして最高裁まで争った。
 しかしながら結局、
本件の退職金債権の放棄は本人の自由意思に基づくものと、最高裁は判定したのである。


5B
 「労働者が賃金にあたる退職金債権を放棄する旨の意思表示をした」とある。
 そうはいっても24条1項による賃金の支払原則に、「賃金は通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない」とあり、使用者としては、本人の意思を尊重すべきか、労基法による原則に従うべきか、困ってしまう。
 これに関する最高裁判例として、退職金請求](S48.01.19))あり、そこでは、
 「労働者たる上告人が退職に際しみずから賃金に該当する本件退職金債権を放棄する旨の意思表示をした場合に、全額払の原則が意思表示の効力を否定する趣旨のものであるとまで解することはできない
 
もつとも、全額払の原則の趣旨とするところなどに鑑みれば、意思表示の効力を肯定するには、それが上告人の自由な意思に基づくものであることが明確でなければならないものと解すべきであるが、 本件の場合、意思表示が上告人の自由な意思に基づくものであると認めるに足る合理的な理由が客観的に存在していたものということができるから、右意思表示の効力は、これを肯定して差支えないというべきである」とした。
 つまり、「退職金債権を放棄する旨の意思表示は、
それが労働者の自由な意思に基づくものであると認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するときは、当該意思表示は有効であるとするのが、最高裁判所の判例である」
30
3

 最高裁判所は、同業他社への転職者に対する退職金の支給額を一般の退職の場合の半額と定めた退職金規則の効力が問題となった事件において、次のように判示した。
「原審の確定した事実関係のもとにおいては、被上告会社が営業担当社員に対し退職後の同業他社への就職をある程度の期間制限することをもつて直ちに社員の職業の自由等を不当に拘束するものとは認められず、したがつて、被上告会社がその退職金規則において、右制限に反して同業他社に就職した退職社員に支給すべき退職金につき、その点を考慮して、支給額を一般の自己都合による退職の場合の半額と定めることも、本件退職金が(C)功労報償的な性格を併せ有することにかんがみれば、合理性のない措置であるとすることはできない」
 本肢は、ある会社において、「同業他社に転職する場合は退職金を2分の1とする旨、就業規則が定められていることから、被告人は退職する際、同業他社に転職した場合には退職金の半分を返還する旨を約束して通常の退職金を受け取った。しかしながらこの者は実際には同業他社へ就職していたことがわかったので、会社が、退職金の半額を返還するように求めて訴訟となったものである。
 これに関する最高裁判例[退職金返還](S52..08.09)によれば、「会社が営業担当社員に対し退職後の同業他社への就職をある程度の期間制限することをもつて直ちに社員の職業の自由等を不当に拘束するものとは認められず、したがつて、会社がその退職金規則において、右制限に反して同業他社に就職した退職社員に支給すべき退職金につき、その点を考慮して、支給額を一般の自己都合による退職の場合の半額と定めることも、本件退職金が功労報償的な性格を併せ有することにかんがみれば、合理性のない措置であるとすることはできない。
 すなわち、この場合の退職金の定めは、制限違反の就職をしたことにより勤務中の功労に対する評価が減殺されて、退職金の権利そのものが一般の自己都合による退職の場合の半額の限度においてしか発生しないこととする趣旨であると解すべきであるから、右の定めは、その退職金が労働基準法上の賃金にあたるとしても、所論の同法3条(均等待遇)、16条(賠償予定の禁止)、24条(賃金の支払5原則)及び民法90条(公序良俗)等の規定にはなんら違反するものではない」
14
3E
 通貨以外での支払いが可能になるのは、24条から、
 「@法令若しくは労働協約に別段の定めがある場合(実物給与)、又は
  A厚生労働省令で定める賃金について確実な支払の方法で厚生労働省令で定めるものによる場合(本人の同意による振込み)」である。
 いわゆる労使協定ではだめである。 
20
3A
 通貨以外での支払いが可能になるのは、24条から、
 「@法令若しくは労働協約に別段の定めがある場合(実物給与)、又は
  A厚生労働省令で定める賃金について確実な支払の方法で厚生労働省令で定めるものによる場合(本人の同意による振込み)による場合」である。
 ⇒過半数組織労働組合又は過半数代表者とによる協定がある場合に許されるのは、一部控除(全額払いの例外)である。


5A
 「賃金は、原則として、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない」が、通貨払いの原則の例外は、24条後段のただし書によれば、「法令若しくは労働協約に別段の定めがある場合は実物給与で、又は厚生労働省令で定める賃金について確実な支払の方法で厚生労働省令で定めるものによる場合は振込み等で支払うことができる」
 なお、問題文にある「法令に別段の定めがある場合、又は当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合においては、賃金の一部を控除して支払うことができる」と定めている。
21
4A
 24条の前半から、
 「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない」ことを原則とする。
 ただし、同条の後段の「ただし書き」にあるように、
 「法令若しくは労働協約に別段の定めがある場合は、通貨以外のもので支払うことができる}とあり、
 労働組合との労働協約がある場合は、「賃金を通貨以外で支払うこと(いわゆる実物給与)も認められる」
 たとえば、労働組合との協約により、賃金である賞与の一部を自社製品や自社商品券などで支払うことは今でもありうるし、今でもよく見られるのは通勤定期券である。
 遠い昔には、荒巻しゃけ、缶詰類、薪や石炭などが給料の一部として支給されることもあったのだ。 
 参考 問題文にある「小切手」については、施行規則7条の2の2項により、
 「労働者の同意を得た場合には、退職手当を小切手で支払うこともできる」
25
7ウ
 通貨払の原則とは、24条の、
 「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない」とあることによる。
 ただし、これはあくまでも原則であって、同条の後段の「ただし書き」にあるように、
 「法令若しくは労働協約に別段の定めがある場合は、通貨以外のもので支払うことができる
 なお、問題文にある「強行的な規制」とは、たとえば本肢の場合、法令あるいは労働協約いずれにおいても定めがないのに、賃金の1割は当社製品を格安で提供することにより支払うなどということを、たとえ当事者間が合意したとしても、これを認めない(民法でいう契約の自治を認めない)ということ。
 強行規定であるから、その規定で許されている以外に、当事者間で勝手に例外を設けることは許されないのだ。
 参考までに、本条違反に関しては、「30万円以下の罰金に処せられる」
12
4A
 通貨以外での支払いについては、24条ただし書きにあるように、「労働協約に別段の定めがある場合」は許される。
 この場合の労働協約とは、
通達(S63.3.14基発150(労働協約))によれば、
 「24条の労働協約は労働組合法でいう労働協約のみを意味し、労働組合のない場合の労働者の過半数を代表する者との協定は労働協約ではない。労働協約の定めによって通貨以外のもので支払うことが許されるのは、その労働協約の適用を受ける労働者に限られる」とある。。
ここでも紛らわしい文章がでてきている。問題文では、「事業場の過半数の労働者を組織する労働組合が使用者と締結した労働協約」とあるが、24条の条文では、単に「労働協約に別段の定めがある場合」とあり、過半数であろうとなかろうと問題にしていない。
 本肢の趣旨はそこにあるのではなく、その労働協約の適用範囲を問うていると解釈すべきか。
 なお蛇足ながら、過半数の条件があるのは、24条の後半で、賃金の一部控除に関する協定については、「過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、過半数組織の労働組合ではない、あるいは労働組合そのものがない場合は、労働者の過半数を代表する者との書面の協定が必要」で、これとごっちゃにならないように注意しよう。
29
6A
 賃金の支払いについては、24条にあるように、「通貨で、その全額を支払わなければならない」のが原則であるが、同条のただし書きに「法令若しくは労働協約に別段の定めがある場合」は通貨以外のもので賃金を支払うことが許されている(いわゆる実物給与)
 本肢は、労働協約による場合の適用範囲を論点にしているが、これについては、通達(S63.3.14基発150(労働協約))により、「その労働協約の適用を受ける労働者に限られる」とある通り。
 ここで、労働協約とは、「労働組合と使用者が団体交渉などによって取り決めた労働条件やその他の事項を書面に作成し、両当事者が署名又は記名押印したもの」をいい、その適用を受ける労働者とは、締結したその組合の所属組合員は当然として、労働組合法17条にあるように、「常時使用される労働者の4分の3以上の数の労働者が1つの労働協約の適用を受けるに至ったときは、当該事業場に使用される他の同種の労働者(労働組合員でない者)に対しても当該労働協約が適用される」(この場合、他の少数労働組合の所属組合員にも適用されるか否かについては争いがある)
令3
3イ
 「賃金を通貨以外のもので支払うことができる旨の労働協約の定めがある場合」とある。
 このような場合は、24条に「賃金は通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。ただし、法令若しくは労働協約に別段の定めがある場合は、通貨以外のもので支払う(いわゆる実物供与による)ことができる」とある。
 本肢の論点は、「当該労働協約の適用を受けない労働者を含めすべての労働者(すなわち、他の労働組合に入っている、あるいはどの労働組合にも入っていない労働者)に対しても、この協約の効力が及ぶか」ということである。
 これについては、通達(S63.3.14基発150(労働協約))によると、「労働協約の定めによって通貨以外のもので支払うことが許されるのは、その労働協約の適用を受ける労働者に限られる」とある。
 よって、問題文にある「労働協約の適用を受けない労働者を含め当該事業場のすべての労働者につ居て・・・・」とあるのは、誤りであるといえる。
 しかしながら、労働組合法をよく知っている人であれば、上記はあくまでも原則であって、問題(29-6A) の解説で述べたように、労働組合法17条によれば、「常時使用される労働者の4分の3以上の数の労働者が1つの労働協約の適用を受けるに至ったときは、当該事業場に使用される他の同種の労働者(労働組合員でない者)に対しても当該労働協約が適用される」(この場合、他の4分の1未満の少数労働組合の所属組合員にも適用されるか否かについては争いがある)
11
4C
 賃金は「直接労働者に支払う」のが原則であるが、施行規則7条の2により、
 「使用者は、労働者の同意を得た場合には、賃金の支払について次の方法によることができる」 
@当該労働者が指定する銀行その他の金融機関に対する当該労働者の預金又は貯金口座への振込み
A当該労働者が指定する金融商品取引業者に対する当該労働者の預り金(一定の要件を満たすものに限る)への払込み、とある。
 ここで、預かり金について充たすべき一定の要件についても、証券投資信託の受益証券以外のものを購入しないこと等々の条件が、同条において細かく規定されている。
20
3B
 賃金は「直接労働者に支払う」のが24条による原則であるが、同条のただし書きに「確実な支払の方法で厚生労働省令で定めるものによる場合(振込み等)においては、通貨以外のもので支払うことができる」とあり、具体的には、施行規則7条の2により、
 「使用者は、労働者の同意を得た場合には、労働者の指定する銀行等の預貯金口座への振込、あるいは金融商品取引業者に対する預り金への払込みが許される」
 あくまでも、労働者の同意が必要である。
 ここで、同意については、通達(S63.1.1基発1(振込払)において、「労働者の同意を得た場合は指定する金融機関へ振込み払いをすることができるが、「同意」については、労働者の意思に基づくものである限りその形式は問わないものあり、「指定」とは労働者が賃金の振込み対象として銀行その他の金融機関における口座を指定するとの意味であって、この指定が行われれば、同意が、特段の事情がない限り得られているものであること」とある。
28
3A
 賃金は「直接労働者に支払う」のが原則であるが、施行規則7条の2により、「労働者の同意を得た場合には、賃金の支払について、当該労働者が指定する銀行等の口座への振込み等によることができる」
 ここで、「労働者の同意」についてであるが、現実問題として、振込みをするためには労働者本人名義の口座番号が必要であり、口座番号を教えるあるいは用紙に記入すれば、振込みに同意したとみなされのではないか、というのが本肢の論点。
 問題となる「同意」と「指定」については、通達(S63.1.1基発1(振込払)に、
 「「同意」とは、労働者の意思に基づくものである限り、その形式を問わないものであり、「指定」とは、労働者が賃金の振込み対象として銀行その他の金融機関に対する当該労働者本人名義の預貯金口座を指定するとの意味であって、この指定が行われれば、特段の事情のない限り、同意が得られているものであること」とある。
 つまり、口座を教えておきながら、振込みはいやだというのは、通常は考えにくいということ。
13
3D
 施行規則7条の2によると、
 「使用者は、労働者の同意を得た場合には、賃金を労働者の指定する銀行その他の金融機関の口座に振り込むことができる」とあるが、労働協約により労働者の同意に代えることができるという規定はない。  
 さらに、「同意」については、通達(S63.1.1基発1(振込払)によれば、「労働者の意思に基づくものである限り、その形式は問わない」とある。
 あくまでも、労働者個人の意志の問題であって、労働組合団体としての意志の問題ではない。
 実際問題としても、結局は本人が同意して口座番号を指定しなければ、実施することはできない。
 ただし、実務上では、口座振込みを実施するためには「賃金の口座振込に関する労使協定」の締結が求められている。
 これは、問題文にある労働協約とは異なるが、「労働協約、労使協定いずれであっても、労働者の同意に代えることはできない」
 参考までに、賃金の口座振込み等の手続きについては、通達(R04.11.28基発1128-4号)によると、
@口座振込み等は、書面又は電磁的記録による個々の労働者の同意により開始し、その書面等には次に掲げる事項を記載すること。
・口座振込み等を希望する賃金の範囲及びその金額
・指定する金融機関店舗名並びに預金又は貯金の種類及び口座番号、労働者が指定する証券会社店舗名及び証券総合口座の口座番号、又は指定する指定資金移動業者口座の口座番号(アカウントID)及び名義人等号
 (受入上限額を超えた際に超過額の受取りを希望する等の場合は代替口座に関する事項)
・開始希望時期
A口座振込み等を行う事業場に労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合と、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者と、次に掲げる事項を記載した書面又は電磁的記録による協定を締結すること。
  なお、協定の締結においては、労使で合意した上で労使双方の合意がなされたことが明らかな方法(記名押印又は署名など)により協定を締結すること。
・口座振込み等の対象となる労働者の範囲
・口座振込み等の対象となる賃金の範囲及びその金額
・取扱金融機関,取扱証券会社及び取扱指定資金移動業者の範囲
B使用者は、口座振込み等の対象となっている個々の労働者に対し、所定の賃金支払日に、次に掲げる金額等を記載した賃金の支払に関する計算書を交付すること。
・基本給、手当その他賃金の種類ごとにその金額
・源泉徴収税額、労働者が負担すべき社会保険料額等賃金から控除した金額がある場合には、事項ごとにその金額
・口座振込み等を行った金額
 (以下略)
令3
3ア
 退職手当については、通達(S22.9.13発基17号11条退職手当)により、「労働協約、就業規則、労働契約等によって、あらかじめ支給条件の明確である場合の退職手当は、労基法上11条の賃金であり、24条2項の「臨時の賃金等」にあたる」とされており、賃金である限り、24条により、「直接労働者に支払う」のが原則である。
 ただし、施行規則7条の2の2項に、「労働者の同意を得た場合には、退職手当の支払について、口座振込み、預り金への払込みによるほか、銀行その他の金融機関振出小切手、支払保証小切手、郵便貯金銀行が為替取引に関し負担する債務に係る権利を表章する証書(いわゆる郵便為替)によることができる」とある。
 なにはともあれ、「労働者の同意を得た場合」に限られる。
20
3D
 24条1項によると、
 「賃金は、直接労働者に支払わなければならない」とあり、
 特に、未成年者の賃金については、特別に59条を起こして、
 「未成年者は、独立して賃金を請求することができる。親権者又は後見人は、未成年者の賃金を代って受け取ってはならない」と厳しく規制している。
 なお、本人以外の者が受け取る数少ない例外として、通達(S63.3.14基発150(直接払))に、
 「労働者本人以外のものに賃金を支払うことを禁止するものであるから、労働者の親権者その他の法定代理人に支払うこと、労働者の委任を受けた任意代理人に支払うことは、いずれも本条違反となり、労働者が第三者に賃金受領権限を与えようとする委任、代理等の法律行為は無効である。
 ただし、使者に対して賃金を支払うことは差し支えない」とある。
 つまり、賃金を代理人(勝手に使ったりすることができる者)に支払うことは禁止であるが、病欠中や出張中などやむを得ない事情にある労働者について、その奥さんなど使者(単なる運び手であって、本人に支払うのと同一の効果を生じる者)に支払うことは許される。
21
4B
 前段については、24条1項に、
 「賃金は、直接労働者に支払わなければならない」とあり、これが大原則である。
 本人以外の者が受け取ることについては、通達(S63.3.14基発150(直接払))に、
 「労働者本人以外のものに賃金を支払うことを禁止するものであるから、労働者の親権者その他の法定代理人に支払うこと、労働者の委任を受けた任意代理人に支払うことは、いずれも本条違反となり、労働者が第三者に賃金受領権限を与えようとする委任、代理等の法律行為は無効である。
 ただし、使者に対して賃金を支払うことは差し支えない」とある。
 問題文にあるような「委任を受けた弁護士」であろうと、あくまでも任意代理人にすぎないから許されない。 
 もっとも、賃金を代理人(勝手に使ったりすることができる者)に支払うことは禁止であるが、病欠中や出張中などやむを得ない事情にある労働者について、その奥さんなど使者(単なる運び手)に支払うことは許される。

5
6A
 賃金の直接払の原則に関しては、通達(S63.3.14基発150(直接払い))に、
 「労働者本人以外のものに賃金を支払うことを禁止するものであるから、労働者の親権者その他の法定代理人に支払うこと、労働者の委任を受けた任意代理人に支払うことは、いずれも本条違反となり、労働者が第三者に賃金受領権限を与えようとする委任、代理等の法律行為は無効である。
 ただし、使者に対して賃金を支払うことは差し支えない」とある。
 よって、問題文前段にある「労働者と無関係の第三者に賃金を支払うことを禁止するものである」のは正しいが、「労働者の親権者その他の法定代理人に支払うことは直接払の原則に違反しない」とあるのは真逆であって、24条違反である。
 最後にある「労働者の委任を受けた任意代理人に支払うことは違反」は正しい。
 すなわち、労働者の親権者、代理人(法定代理人であろうと任意代理人であろうと)に支払うことは直接払の原則に違反する。
 なお、同通達によれば、「使者(単なる運び手であって、本人に支払うのと同一の効果を生じる者)に対して賃金を支払うことは差し支えない」とある。
30
6A
 賃金の払いについては、24条1項に、「賃金は、直接労働者に支払わなければならない」とあり、これが賃金直接払の原則である
 そして、通達(S63.3.14基発150(直接払))において、「労働者の親権者、法定代理人、任意代理人等に支払うことも違反である。ただし、使者に対して賃金を支払うことは差し支えない」とある。
 それでは、派遣労働者の場合、派遣元ではなく派遣先が代わりに手渡しすることについては、通達(S61.06.06基発333(24条関連))によれば、
 「派遣中の労働者の賃金を派遣先の使用者を通じて支払うことについては、派遣先の使用者が、派遣中の労働者本人に対して、派遣元の使用者からの賃金を手渡すことだけであれば、直接払の原則には違反しない者であること」とある。
 つまり、派遣先事業主が派遣元から頼まれて単に手渡しするだけなら、「使者」のようなものとみるのである。
21
4C
 24条によれば、「賃金は、直接労働者にその全額を支払わなければならない」とあり、これが基本原則である。
 ただし、「賃金債権の譲渡そのものが無効である」とすることに対しては、異なる議論もあり、最高裁判例「退職金請求上告事件(いわゆる電電公社小倉電話局事件」(S43.03.12)では、
 「国家公務員等退職手当法に基づき支給される一般の退職手当は、その支給額その他の支給条件はすべて法定されていて国または公社に裁量の余地がなく、欠格事由のないかぎり、法定の基準に従つて一律に支給しなければならない性質のものであるから、その法律上の性質は労働基準法11条にいう「労働の対償」としての賃金に該当する。
 したがつて、退職者に対する支払については、その性質の許すかぎり、同法24条1項本文の規定が適用ないし準用されるものと解するのが相当である。  
 ところで、退職手当法による退職手当の給付を受ける権利については、その譲渡を禁止する規定がないから、
 退職者またはその予定者が右退職手当の給付を受ける権利を他に譲渡した場合に譲渡自体を無効と解すべき根拠はないけれども、労働基準法24条1項が、「賃金は直接労働者に支払わなければならない」旨を定めて、使用者たる貸金支払義務者に対し罰則をもつてその履行を強制している趣旨に徴すれば、
 労働者が賃金の支払を受ける前に賃金債権を他に譲渡した場合においても、その支払についてはなお同条が適用され、使用者は直接労働者に対し賃金を支払わなければならず、したがつて、右賃金債権の譲受人は自ら使用者に対してその支払を求めることは許されないものと解するのが相当である」  
 よって、「たとえ、(民法の規定により)確定日付のある証書によって通知した場合であっても、賃金債権の譲受人は使用者にその支払を求めることはできない」
「確定日付のある証書によって通知した場合であっても」の部分、なまじ民法を知っている人にはだまされやすいかもしれないが、社労士試験であるからして、「使用者は直接労働者に対し賃金を支払わなければならない」という原則で押していけばよい。
 参考までに、民法467条の1項、2項から、
 「指名債権の譲渡は、譲渡人が債務者に通知をし、又は債務者が承諾をしなければ、債務者その他の第三者に対抗することができない。ここで、通知又は承諾は、確定日付のある証書によってしなければならない」
 つまり、債権者が第三者にその債権を譲渡する場合は、確定日付のある証書(公正証書、内容証明郵便など証書の作成日として法的な証拠力が認められてる文書)によって、「この人に払ってくれ」と債務者に通知しなければならないのだ。
28
3B
 「労働者が賃金の支払を受ける前に賃金債権を他に譲渡した」とある。「賃金債権」とは「賃金を支払え」と請求できる権利のことである。
 よって、労働者が例えば5月分の賃金を受ける前に、他人(たとえば、借金をしている相手方」に債権を譲り渡したとする。
 この場合、その譲受け人が会社に対してその「5月分の賃金」を自分に支払えと請求した場合は、使用者はどうすればよいかというのが本肢の論点。
 これに関する最高裁判例に、いわゆる電電公社小倉電話局事件」(S43.03.12)があり、それによると、「労働者が賃金の支払を受ける前に賃金債権を他に譲渡した場合においても、その支払についてはなお労働基準法24条が適用され、使用者は直接労働者に対し賃金を支払わなければならない」とした。
 つまり、このような場合は、過去問解説(21-4C)にもあるように、「民法の規定により、確定日付のある証書によって通知した場合であっても、賃金債権の譲受人は使用者にその支払を求めることはできない。すなわち民法よりも労基法の方が優先して適用される」

4
6エ
 「労働者が賃金の支払を受ける前に賃金債権を他に譲渡した場合」、その賃金は、あくまでも労働者に対して支払うべきか、その労働者から譲り受けた譲受人に支払うべきかという問題。
 これに関しては、最高裁判例「執行異議事件(いわゆる伊予相互金融事件)(S43.05.28)」において、「ある従業員が退職前に退職金の一部を他の者に譲渡したところ、会社は譲渡部分について差押えをを行った。しかしながら、原審では、執行力は排除とされたので、これを不服とし、そもそも債権譲渡は違法であるとして上告した」
 これに対する判決の要旨は、「本件退職金は、労働基準法11条にいう労働の対償としての賃金に該当するものというべきであるから、その支払については、性質の許すかぎり、同法24条1項本文の定めるいわゆる直接払の原則が適用されるものと解するのが相当である」とした。
 すなわち、使用者による差押えは認められず、労働者に対し賃金を支払わなければならないとした。(債権譲渡に対しても同様の趣旨であり、債権譲渡が有効であっても、本人への直接払いの原則により、使用者は直接本人に支払う義務がある)
 後段にある「国家公務員等に対する退職手当の給付を受ける権利」については、最高裁判例「退職金請求いわゆる「電電公社小倉電話局事件」(S43.03.12)がある。
 事件の経緯は、「電電公社に勤務していた定年間近のAは、同僚Bに損害賠償事件を起こしたため、公社から支払われる退職金の一部を同僚Bに債権譲渡することとした。しかしながらその後、この債権譲渡は同僚の脅迫によるものであるとして翻意し、債権譲渡の取消の意思表示を行って、公社にもこのことを通知した結果、退職金の全額はAに支払われた。
 これに対して、同僚Bは納得せず,公社に対して譲渡分は自分に支払えと訴訟を起こしたのである。
 これに対する判決文によると、
 「国家公務員等退職手当法に基づき支給される一般の退職手当は、国または公社に裁量の余地がなく、法定の基準に従つて一律に支給しなければならない性質のものでるから、その法律上の性質は労働基準法11条にいう「労働の対償」としての賃金に該当し、したがつて、その性質の許すかぎり、同法24条1項本文の規定(通貨直接、全額支払の原則)が適用ないし準用されるものと解するのが相当である」
  「退職手当の給付を受ける権利については、その譲渡を禁止する規定がないから、権利を他に譲渡した場合に譲渡自体を無効と解すべき根拠はないけれども、労働基準法24条1項が「賃金は直接労働者に支払わなければならない」旨を定めて、使用者たる貸金支払義務者に対し罰則をもつてその履行を強制している趣旨に徴すれば、
  労働者が賃金の支払を受ける前に賃金債権を他に譲渡した場合においても、その支払についてはなお同条が適用され使用者は直接労働者に対し賃金を支払わなければならず、したがつて、右賃金債権の譲受人は自ら使用者に対してその支払を求めることは許されないものと解するのが相当である」とある。(すなわち、賃金である限り、民間人、公務員の区別はない)
 よって、問題文後段の前半部分は正しいが、後半部分の「その譲渡を禁止する規定がない以上」以降は結論が真逆である。
25
7イ
 直接払いの原則とは、24条に、
 「賃金は、通貨で直接労働者に、その全額を支払わなければならない」とあることによる。
 差押えについては、労働法コンメンタール「労働基準法上P345(差押え)」において、「行政官庁が国税徴収法の規定に基づいて行った差押処分に従って、使用者が労働者の賃金を控除のうえ当該行政官庁に納付することは、本条違反とはならない。民事執行法に基づく差押えについても、同じく本条に違反しない」としている。
 ただし、賃金の差押えといっても、全額ができるわけではなく、「手取り額の4分の3は残るように、ただし、手取り月額が44万円を超えるときは33万円が残るようにしなければならない」
27
4A
 賃金直接払の原則とは、24条1項に「賃金は、直接労働者に、その全額を支払わなければならない」とあることによる。
 これについては、 通達(S63.3.14基発150(直接払い))にあるように、「労働者本人以外のものに賃金を支払うことを禁止するものであるから、労働者の親権者その他の法定代理人に支払うこと、労働者の委任を受けた任意代理人に支払うことは、いずれも本条違反となり、労働者が第三者に賃金受領権限を与えようとする委任、代理等の法律行為は無効」とあり、ほとんど例外はない。(ただし、奥さんなど使者に対して賃金を支払うことは差し支えない)
 しかしながら、本肢にある「差押え」については、労働法コンメンタール「労働基準法上P345(差押え)」において、「行政官庁が国税徴収法の規定に基づいて行った差押処分に従って、使用者が労働者の賃金を控除のうえ当該行政官庁に納付することは、本条違反とはならない」とある。
 一旦、労働者に賃金の全額を支払ってしまったあとでは、差押えにならないから当たり前といえば当たり前の話。
18
2A
 24条1項によると、
 「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。ただし、法令に別段の定めがある場合又は過半数で組織する労働組合(ないときは過半数代表者)との書面による協定がある場合においては、賃金の一部を控除して支払うことができる」
 となっている。
 すなわち、法令又は労使協定に別段の定めがある場合は、一部控除ができるのである。
 もちろん、労働協約も労働組合との労使協定の1種であるから、過半数組織の労働組合であれば、労働協約によっても、その労働組合員の組合費等の控除ができる場合もあるが、24条1項ただし書きに、「労働協約に別段の定めがある場合」と規定されているわけではない。 
20
3E
 24条1項によると、
 「賃金は、その全額を支払わなければならない。ただし、法令に別段の定めがある場合又は過半数で組織する労働組合(ないときは過半数代表者)との書面による協定がある場合においては、賃金の一部を控除して支払うことができる」となっている。
 すなわち、労働協約による別段の定めではなく、法令又は労使協定に別段の定めがある場合に一部控除ができる。
 労働協約による別段の定めがある場合に許されるのは、実物給与である。
 もちろん、労働協約も労働組合との労使協定の1種であるから、過半数組織の労働組合であれば、労働協約によってもその労働組合員の組合費等を控除できる場合もあるが、「労働協約に別段の定めがある場合に限って」というのは、あきらかに誤りである。

5 6B
 24条1項によると、「賃金は、その全額を支払わなければならない。ただし、過半数で組織する労働組合(ないときは労働者の過半数を代表する者)との書面による協定がある場合においては、賃金の一部を控除して支払うことができる」となっている。
 本肢の場合、「いかなる事業場であれ・・・・」とあるが、過半数で組織する労働組合がない事業場を前提にしているのであろう。そうでなければ、この時点で誤りということになる。
 過半数組織の労働組合がない事業場にあっては、労働者の過半数を代表する者に要求される要件を満足する者が選定されているか否かが問題になる。
 これについては、施行規則6条の2に規定されているが、これを踏まえた通達(H11.1.29基発45(過半数代表者))のうち、本肢に関連ある部分に関しては、
 「労働者の過半数を代表する者は、次のいずれの要件も満たすものであること。
@41条2号に規定する監督又は管理の地位にある者でないこと
A法に基づく労使協定の締結当事者(すなわち、過半数労働代表者)を選出することを明らかにして実施される投票、挙手等の方法による手続により選出された者であり、使用者の意向に基づき選出されたものではないこと。
 なお、賃金からの一部控除の規定による過半数労働代表者については、当該事業場に上記@に該当する労働者がいない場合には、上記Aの要件を満たすことで足りるものであること」とある。
 つまり、問題文では、@にある監督又は管理の地位にある者でないこと、という要件が抜けているので、監督又は管理の地位にある者しかいない事業場においてのみ、正しいということになる。
 「いかなる事業場であれ」というのは誤り。
17
1B
 24条の賃金全額払の原則とは、「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない」ということで、賃金の一部を控除するには、
 @法令に別段の定めがある場合又は、
 A労使協定がある場合に限るというのが原則である。
 しかし使用者は、欠勤(有給休暇ではない休み)に対して賃金を支払う義務はなく、賃金締切日の関係で支払ってしまった2日分の賃金は明らかに過払いであるから、
 「本肢のごとく、前月分の過払賃金を翌月分で清算する程度は賃金それ自体の計算に関するものであるから、労働基準法第24条の違反とは認められない」(S23.9.14基発1357)とされている。
11
2

 チェックオフとは、労働組合費徴収の一つの方法であり、使用者が労働者に賃金を渡す前に賃金から組合費を差し引き、一括して組合に渡すやり方であるが、これは労働基準法上の(B)賃金の全額払の原則に抵触することとなるため、その実施のためには同法で定める要件を備えた労使協定の締結が必要となる。
[解説]
 労基法には、いわゆる賃金に関する5原則が定められている。
 「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。ただし、当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合においては、賃金の一部を控除して支払うことができる」
 チェックオフは賃金から組合費を天引きするものであるから、全額払いの原則に抵触することとなるため、実施するには労使協定の締結が必要となる。
 独身寮費や社宅使用料、社内預金等も同じである。
 これに対し、所得税、住民税や社会保険料などはの控除は、法令に別段の定めがあるので、控除することができるし、また義務でもある。
17
1C
 この判例は、いわゆるエッソ石油事件(最高裁第1小法廷(H5.3.25))であり、
 「チェック・オフ協定締結組合から脱退し別組合を結成した労働者が、会社がなおチェック・オフを継続して協定締結組合に組合費を支払ったのを違法であるとして訴えた」ものである。
 その判決要旨は、
 「24条1項ただし書の要件を具備するチェック・オフ協定の締結は、これにより、使用者のチェック・オフが同項本文所定の賃金全額払の原則の例外とされ、120条1号所定の罰則の適用を受けないという効力を有するにすぎないものであって、当然に使用者がチェック・オフをする権限を取得するものでないことはもとより、組合員がチェック・オフを受忍すべき義務を負うものではないと解すべきである。
 したがって、労働協約が締結されている場合であっても、使用者が有効なチェック・オフを行うためには、協定の外に、使用者が個々の組合員から、賃金から控除した組合費相当分を労働組合に支払うことにつき委任を受けることが必要である」
 すなわち、チェックオフを実際に行うためには、労使協定の締結だけでなく、個々の労働者からの委任が必要である。
 なお、賃金の口座振込みの場合においても、労働協約や労使協定では実施できず、個々の労働者の同意を必要とする。




24
2B
 チェック・オフ協定とは、使用者が労働組合費を賃金から天引きしてこれを労働組合に引き渡すという労使間の協定のこと。
 労働組合が組合員の代理人として使用者から組合費を受領すると解釈すれば、賃金直接払いの原則に抵触する恐れがあるし、使用者が組合員からの委任を受けて組合費を組合に支払うと解釈すれば、賃金全額払いの原則に抵触するなど、その性格や適法性については、種々の議論があるところ。
 これに関して、最高裁判例[いわゆるエッソ石油事件](H5.3.25)では、
 チェック・オフ協定締結組合から脱退し別組合を結成した労働者が、会社がなおチェック・オフを継続して協定締結組合に組合費を支払ったのを違法であるとして訴えた事件に対し、
 「チェック・オフ協定の締結は、これにより、使用者のチェック・オフが賃金全額払の原則の例外とされ、労基法による罰則の適用を受けないという効力を有するにすぎないものであって、それが労働協約の形式により締結された場合であっても、当然に使用者がチェック・オフをする権限を取得するものでないことはもとより、組合員がチェック・オフを受忍すべき義務を負うものではないと解すべきである」とした。
 さらに、「チェック・オフ開始後においても、組合員は使用者に対し、いつでもチェック・オフの中止を申し入れることができ、右中止の申入れがされたときには、使用者は当該組合員に対するチェック・オフを中止すべきものである」としたのである。




25
2C
 過去問解説(労働一般24-2B)にある通りで、最高裁判例[いわゆるエッソ石油事件](H5.3.25)によれば、
 「使用者が組合員の賃金から組合費を控除しそれを労働組合に引き渡す旨の、労働組合と使用者との間の協定(いわゆるチェック・オフ協定)は、それに反対する組合員にチェック・オフを受忍する義務を負わせるものではなく、組合員はいつでも使用者にチェック・オフの中止を申し入れることができる」とした。
26
3オ
 問題文にある「労働者の賃金債権」とは、労働者が労働した対償として「賃金を払え」と使用者に請求できる権利、一方、「使用者が労働者に対して有する債権」とは本肢の場合何を差すかまではふれていないが、労働者が故意あるいは過失によって起こした損害に対して、使用者が「損害賠償金を払え」と労働者に請求できる権利。
 相殺するとは、これらの債権債務関係を差し引き勘定にしようということ。
 この場合、労働者側が自らの自由意思に基づいて相殺しようというのなら問題はないが。使用者側から相殺しようとするのは、24条1項の「賃金の全額払いの原則」違反となり、禁止されている。
 本肢の論点は、労働者の故意・過失による不法行為(下記の判例では背任行為)が原因となった場合であっても、使用者側からの相殺は許されないと最高裁も判断しているのかということ。
 これについては最高裁判例[破産債権確定請求(S36.05.31)に、
 「労働者の賃金は、労働者の生活を支える重要な財源で、日常必要とするものであるから、これを労働者に確実に受領させ、その生活に不安のないようにすることは、労働政策の上から極めて必要なことであり、労働基準法二四条一項が、賃金は同項但書の場合を除きその全額を直接労働者に支払わねばならない旨を規定しているのも、右にのべた趣旨を、その法意とするものというべきである。
 しからば同条項は、労働者の賃金債権に対しては、使用者は、使用者が労働者に対して有する債権をも
つて相殺することを許されないとの趣旨を包含するものと解するのが相当である。
 このことは、その債権が不法行為を原因としたものであつても変りはない」とある。
12
4C
 この事例は、「9月分の給与と年末の勤勉手当について生じた過払い給与を翌年2月と3月分の給与から控除されたのに対し、この控除は24条の賃金全額払いの原則に違反し無効である」として控除分の支払いを求めたものである。(上告棄却、労働者敗訴、福島県教組事件 )
 最高裁判所の判例(第1小法廷S44.12.18)によると、
 「相殺は、24条1項但し書きによって除外される場合にあたらなくても、その行使の時期、方法、金額等からみて労働者の経済生活との関係上不当と認められないものであれば、同項による禁止には当たらない。
 この見地からすれば、許されるべき相殺は、過払いのあった時期と密着した時期になされ、あらかじめ労働者にそのことが予告されるとか、その額が多額にわたらないとかであり、労働者の経済生活の安定を脅かす恐れのない場合でなければならない」
21
2

 賃金の過払が生じたときに、使用者がこれを精算ないし調整するため、後に支払われるべき賃金から過払分を控除することについて、「適正な賃金を支払うための手段たる相殺は、[・・(略)・・]その行使の時期、方法、金額等からみて労働者の(B 経済生活の安定)との関係上不当と認められないものであれば、同項[労働基準法24条第1項]の禁止するところではないと解するのが相当である」とするのが最高裁判所の判例である。
 福島県教組事件に関する過去問12-4Cを焼き直し、択一式から選択式へと形式を変えて出題したものである。
 正解は、12-4Cの解説で明らかであるが、福島県教組事件事件の判決文をやや詳細にして、再掲敬してみる。  
 「労働基準法24条1項では、賃金は、同項但書の場合(注:法令に定めがある場合、労使協定がある場合)を除き、その全額を直接労働者に支払わなければならない旨定めており、
 その法意は、労働者の賃金はその生活を支える重要な財源で日常必要とするものであるから、これを労働者に確実に受領させ、その生活に不安のないようにすることが労働政策上から極めて必要であるとするにあると認められ、従つて、右規定は、一般的には、
 労働者の賃金債権に対しては、使用者は使用者が労働者に対して有する債権をもつて相殺することは許されないとの趣旨をも包含すると解せられる。
 賃金支払事務においては、一定期間の賃金がその期間の満了前に支払われることとされている場合には、支払日後、期間満了前に減額事由が生じたときまたは、減額事由が賃金の支払日に接着して生じたこと等によるやむをえない減額不能または計算未了となることがあり、あるいは賃金計算における過誤、違算等により、賃金の過払が生ずることのあることは避けがたいところであり、
 このような場合、これを精算ないし調整するため、後に支払わるべき賃金から控除できるとすることは、右のような賃金支払事務における実情に徴し合理的理由があるといいうるのみならず、
 労働者にとつても、このような控除をしても、賃金と関係のない他の債権を自働債権とする相殺の場合とは趣を異にし、実質的にみれば、本来支払わるべき賃金は、その全額の支払を受けた結果となるのである。
 このような事情と前記24条1項の法意とを併せ考えれば、
 適正な賃金の額を支払うための手段たる相殺は、同項但書によつて除外される場合にあたらなくても、
 の行使の時期、方法、金額等からみて労働者の経済生活の安定との関係上不当と認められないものであれば、同項の禁止するところではないと解するのが相当である。
 この見地からすれば、許さるべき相殺は、過払のあつた時期と賃金の清算調整の実を失わない程度に合理的に接着した時期においてされ、また、あらかじめ労働者にそのことが予告されるとか、その額が多額にわたらないとか、要は、労働者の経済生活の安定をおびやかすおそれのない場合でなければならないものと解せられる」
27
4B
 過去問解説(21-2選択)の通りであって、
 「過払いした賃金を精算ないし調整するため、後に支払われるべき賃金から控除することは、その金額が少額である限り、労働者の経済生活の安定をおびやかすおそれがないから24条1項の全額払に違反しない」といいきることはできず、「相殺を行う時期、方法、金額等からみて労働者の経済生活の安定を脅かすとは認められないもの」でなければならない。
 つまり、単純に金額が少なければいいだろうということではなく、金額が少なく、かつできるだけ早い時期であって、予め相殺するよと予告するあるいは分割するなど、労働者の経済生活への影響についてきめ細かな配慮をした上でないといけない。
29
6D
 この事例は、「9月分の給与と年末の勤勉手当について生じた過払い給与を翌年2月と3月分の給与から控除されたのに対し、この控除は24条の賃金全額払いの原則に違反し無効である」として控除分の支払いを求めたものである。
 これに対する最高裁判所の判例(S44.12.18)によれば、賃金の過払を精算ないし調整するため、後に支払われるべき賃金から控除(相殺)することについては、「許さるべき相殺は、過払のあつた時期と賃金の清算調整の実を失わない程度に合理的に接着した時期においてされ、また、あらかじめ労働者にそのことが予告されるとか、その額が多額にわたらないとか、要は、労働者の経済生活の安定をおびやかすおそれのない場合でなければならないものと解せられる」とある。
 小額であろうと、あまりにも遅くなってからではだめであるとしたのだ。
 ただし、本事例の場合は、「相殺は許される範囲内である」として、労働者側の主張は認められなかった。 

3
3エ
  「労働基準法第24条第1項の禁止するところではないと解するのが相当と解される許さるべき相殺は、過払のあつた時期と賃金の清算調整…」とある。
 24条によれば、「賃金は全額支払う」のが原則であるが、たとえば、賃金の過払が生じたときに、使用者がこれを精算ないし調整するため、後に支払われるべき賃金から過払分を控除したいということは、実際問題についてありうることである。
 これについては、最高裁判所の判例(S44.12.18)によれば、「賃金の過払を精算ないし調整するため、後に支払われるべき賃金から控除(相殺)することについては、許さるべき相殺は、過払のあつた時期と賃金の清算調整の実を失わない程度に合理的に接着した時期においてされ、また、あらかじめ労働者にそのことが予告されるとか、その額が多額にわたらないとか、要は、労働者の経済生活の安定をおびやかすおそれのない場合でなければならないものと解せられる」とある。
18
2B
 この事例は、
 「サラ金から総額7,000万円余りの借金をし、破産申立を余儀なくされた労働者が退職を余儀なくされた際に、会社との合意に基づいて、その者の退職金と給与から、会社からかりていた借入金の一括返済にあてた(相殺)したことについて、破産管財人が「給与全額払いの原則に反した賃金控除である」として相殺の無効を主張した事例である。(上告棄却、破産管財人敗訴、日新製鋼事件)
 最高裁の判決(日新製鋼事件H2.11.26)は問題文の通りであるが、要約すれば、
  「使用者が労働者の同意を得て労働者の退職金債権に対してする相殺は、この同意が労働者の自由な意思に基づいてなされたものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するときは、労働基準法24条第1項本文の賃金全額払いの原則に違反しない。
 もっとも、右全額払の原則の趣旨にかんがみると、右同意が労働者の自由な意思に基づくものであるとの認定判断は、厳格かつ慎重に行われなければならないことはいうまでもないところである」
このような判例があるのかないのかについて予め学習して備えることはできない。しかしながら、過去問12-4Cについて学習しておれば、戸惑うことはあまりない。
 判決理由は異なっていても、相殺そのものが絶対的に禁止されているものではないことと、本事例の場合は、労働者が自らの自由意志で同意したのであるから、結果は容易に想像がつくはずである。 
30
6B
 24条による「賃金全額払の原則」とは、「賃金はその全額を支払わなければならない」とする原則のこと。ただし、その例外として、同条ただし書きに「法令に別段の定めがある場合、又は労使協定がある場合においては、賃金の一部を控除して支払うことができる」
 本肢は、「使用者が労働者の同意を得て労働者の退職金債権に対してする相殺についてはどうか」と聞いている。
  これについては、最高裁判決(日新製鋼事件H2.11.26)において、「この同意が労働者の自由な意思に基づいてなされたものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するときは、労働基準法24条第1項本文の賃金全額払いの原則に違反しない」としている。(ただし、「同意が労働者の自由な意思に基づくものであるとの認定判断は、厳格かつ慎重に行われなければならないことはいうまでもない」としていることにも注意を)
 会社から借りていた住宅ローンその他の借入金を、本人の同意を得て、退職金から控除することはよくあることだ。

3
3ウ
 「使用者が労働者に対して有する債権をもって労働者の賃金債権と相殺することに、労働者がその自由な意思に基づき同意した場合」は、最高裁判決(日新製鋼事件H2.11.26)において、
 「この同意が労働者の自由な意思に基づいてなされたものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するときは、労働基準法24条第1項本文の賃金全額払いの原則に違反しない。
 もっとも、右全額払の原則の趣旨にかんがみると、右同意が労働者の自由な意思に基づくものであるとの認定判断は、厳格かつ慎重に行われなければならないことはいうまでもないところである」としている通り。
21
4D
 過去問解説(21-2選択式)にもあるように、
 「労働者の賃金債権に対しては、使用者は使用者が労働者に対して有する債権をもつて相殺することは許されないとの趣旨をも包含すると解せられる」が、ケースによっては例外もあり得る。
(1)最高裁判例「解雇無効確認等請求事件」(S37.07.20)、
 「労働者は、労働日の全労働時間を通じ使用者に対する勤務に服すべき義務を負うものであるから、使用者の責に帰すべき事由によつて解雇された労働者が解雇期間内に他の職について利益を得たときは、右の利益が副業的なものであつて解雇がなくても当然取得しうる等特段の事情がない限り、民法536条2項但書に基づき、これを使用者に償還すべきものとするのを相当とする。(中略)
 労働者が使用者に対し解雇期間中の全額賃金請求権を有すると同時に解雇期間内に得た利益を償還すべき義務を負つている場合に、使用者が労働者に平均賃金の六割以上の賃金を支払わなければならないということは、右の決済手続を簡便ならしめるため償還利益の額を予め賃金額から控除しうることを前提として、その控除の限度を、特約なき限り平均賃金の四割まではなしうるが、それ以上は許さないとしたもの、と解するのを相当とする」 
 ここで、民法536条2項とは、
 「債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債務者は、反対給付を受ける権利を失わない。
 この場合において、自己の債務を免れたことによって利益を得たときは、これを債権者に償還しなければならない」 
 つまり、債権者(使用者)の責めに帰すべき事由によって債務((労働の提供)を履行することができなくなったときは、債務者(労働者)は、反対給付(賃金の支払いを受ける)を受ける権利を失わない。
 (労基法の休業手当とは異なり、民事裁判等でこの要求が認められれば賃金全額を得ることができる)
 そのかわりに、自己の債務を免れた(労働しなくてもよくなった)ことによって利益を得たときは、これを債権者に償還しなければならない。
 「よって、解雇無効期間中に他の職に就いて得た利益があれば、賃金額から控除して支払うことはできる。(ただし、平均賃金の4割を超えては控除してはならない)としている。 
 ⇒すなわち使用者が支払うべきは
 (解雇期間中の全額賃金)−(その期間に他社で得た利益(ただし、平均賃金の40%を限度))
(2)最高裁判例「あけぼのタクシー事件」(S62.04.2I)
 「使用者の責めに帰すべき事由によって解雇された労働者が解雇期間中に他の職に就いて利益を得たときは,
 使用者は,右労働者に解雇期間中の賃金を支払うに当たり右利益(以下「中間利益」という)の額を賃金額から控除することができるが,
 右賃金額のうち労働基準法12条1項所定の平均賃金の6割に達するまでの部分については利益控除の対象とすることが禁止されているものと解するのが相当である。
 したがって,使用者が労働者に対して有する解雇期間中の賃金支払債務のうち
 平均賃金額の6割を超える部分から当該賃金の支給対象期間と時期的に対応する期間内に得た中間利益の額を控除することは許される
ものと解すべきである」 
 なお、この事件は、
 組合役員として活発に活動して理由で懲戒解雇されたタクシー運転手が、解雇の無効と解雇期間中の賃金の支払いを求めて訴えを提起したものである。
 その解雇は不当労働行為であるとして無効になったが、その運転手は解雇無効期間中に、他のタクシー会社で運転手として勤務し,解雇前の平均賃金額を上回る収入を得ていたので、解雇無効期間中に対して支払うべき賃金の額が争いの中心になった。
 ⇒この結果使用者が支払うべきは
 (解雇期間中に支払うべき賃金)−(その期間に他社で得た利益(ただし、平均賃金の40%を限度))
23
3
選択
 「使用者の責めに帰すべき事由によって解雇された労働者が解雇期間中に他の職に就いて利益を得たときは、使用者は、右労働者に解雇期間中の賃金を支払うに当たり右利益は[…(略)…]の額を賃金額から控除することができるが、右賃金額のうち労働基準法12条1項所定の(C)平均賃金の6割に達するまでの部分については利益控除の対象とすることが禁止されているものと解するのが相当である」とするのが最高裁判所の判例である。
 最高裁判例[あけぼのタクシー事件](S62.04.01)によると、
 「使用者の責めに帰すべき事由によって解雇された労働者が解雇期間中に他の職に就いて利益を得たときは,
 使用者は,右労働者に解雇期間中の賃金を支払うに当たり右利益(以下「中間利益」という)の額を賃金額から控除することができるが,右賃金額のうち労働基準法12条1項所定の平均賃金の6割に達するまでの部分については利益控除の対象とすることが禁止されているものと解するのが相当である」
⇒「解雇期間中に他の職に就いて利益を得た」というくだりに違和感を感じる人は、その感覚は正しい。解雇された後だから、他の職に就いて賃金を得ることは当たり前だから。
 しかしながらこの事件は、「組合役員として活発に活動して理由で懲戒解雇されたタクシー運転手が、解雇の無効と解雇期間中の賃金の支払いを求めて訴えを提起したものである。
 その解雇は不当労働行為であるとして無効になったが、その運転手は解雇無効期間中に、他のタクシー会社で運転手として勤務し,解雇前の平均賃金額を上回る収入を得ていたので、解雇無効期間中に対して支払うべき賃金の額が争いの中心になった」のである。
令元
1
選択
 「使用者の責めに帰すべき事由によって解雇された労働者が解雇期間中に他の職に就いて利益を得たときは、使用者は、右労働者に解雇期間中の賃金を支払うに当たり右利益(以下「中間利益」という)の額を賃金額から控除することができるが、右賃金額のうち労働基準法12条1項所定の(A)平均賃金の6割に達するまでの部分については利益控除の対象とすることが禁止されているものと解するのが相当である」
 「使用者が労働者に対して有する解雇期間中の賃金支払債務のうち(A)平均賃金額の6割を超える部分から当該賃金の(B)支給対象期間と時期的に対応する期間内に得た中間利益の額を控除することは許されるものと解すべきであり、右利益の額が(A)平均賃金額の4割を超える場合には、更に(A)平均賃金算定の基礎に算入されない賃金(労働基準法12条4項所定の賃金)の全額を対象として利益額を控除することが許されるものと解せられる」
 「最高裁判所は、使用者がその責めに帰すべき事由による解雇期間中の賃金を労働者に支払う場合における、労働者が解雇期間中、他の職に就いて得た利益額の控除が問題となった事件において」とある。
 ここで、「解雇期間中他の職に就いて得た利益」の中身については、こちらを参照のこと。
 この事件は[あけぼのタクシー事件](S62.04.01)と呼ばれ、その判決文によると、
 「使用者の責めに帰すべき事由によって解雇された労働者が解雇期間中に他の職に就いて利益を得たときは,使用者は,右労働者に解雇期間中の賃金を支払うに当たり右利益(以下「中間利益」という)の額を賃金額から控除することができるが,右賃金額のうち労働基準法12条1項所定の平均賃金の6割に達するまでの部分については利益控除の対象とすることが禁止されているものと解するのが相当である」とした。
 さらに続けて、「使用者が労働者に対して有する解雇期間中の賃金支払債務のうち平均賃金額の6割を超える部分から当該賃金の支給対象期間と時期的に対応する期間内に得た中間利益の額を控除することは許されるものと解すべきであり、右利益の額が平均賃金額の4割を超える場合には、更に平均賃金算定の基礎に算入されない賃金労働基準法12条4項所定の賃金、一時金など臨時に支払われたる賃金)の全額を対象として利益額を控除することが許されるものと解せられる」
⇒「賃金から控除し得る中間利益は、その利益の発生した期間が右賃金の支給の対象となる期間と時期的に対応するものであることを要し、ある期間を対象として支給される賃金からそれとは時期的に異なる期間内に得た利益を控除することは許されない。
 そして、「中間利益の控除が許されるのは平均賃金算定の基礎になる賃金のみであり平均賃金算定の基礎に算入されない本件一時金は利益控除の対象にならないものとした原判決には、法律の解釈適用を誤つた違法がある」としたのだ。
⇒要するに、平均賃金の6割は保証しなければならないが、それを超える利益を得た場合は、平均賃金には算定されない臨時のものなども利益として認め、これを差し引きすることができる。
30
6D
 一般に、ストライキが実施されこれに参加した場合は、労務の提供を行っていないのであるから、その対償である賃金の請求権は発生しないのが原則であろう。これを「ノーワーク・ノーペイの原則」という。
 しかしながら、実際に賃金のどの部分ならカットできるかは難しい問題である。
 時間に対応する賃金は当然カットの対象になるとしても、住宅手当は、家族手当(世帯手当)は・・・となると、労使の話し合いによるとか、少なくとも就業規則に定めておくことが望ましいであろう。
 本肢は、ストライキに起因する家族手当のカットについて、「家族手当は賃金中生活保障部分に該当し、労働の対価としての交換的部分には該当しないのでストライキ期間中といえども賃金削減の対象とすることができない」として争われた問題である;
 これに対する最高裁判決(賃金S56.09.18)によれば、
 「上告会社(高裁では労働者側が勝訴したため会社側が上告人となった)のD造船所においては、○○までは就業規則の規定に基づき、それ以降は労働組合の意見を徴して、同様の取扱いが引続き異議なく行われてきたというのであるから、ストライキの場合における家族手当の削減は、労働慣行となつていたものと推認することができる。・・・・
 ストライキ期間中の賃金削減の対象となる部分の存否及びその部分と賃金削減の対象とならない部分の
区別は、当該労働協約等の定め又は労働慣行の趣旨に照らし個別的に判断するのを相当とする。
 よって、いわゆる抽象的一般的賃金二分論を前提とする被上告人らの主張は、その前提を欠き、失当である」として、労働者側からの訴えを退けた。
 ここで、「賃金二分論」とは、「賃金は@交換的部分すなわち具体的な労働の対価としての部分とA保証的部分(従業員たる地位に基づいて認めらた賃金部分)に分けられる」とする説のこと。これによれば、家族手当などの保証的部分は、ノーワーク・ノーペイの対象とはならないということになる。
21
4E
 24条2項に、
 「賃金は、毎月1回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない」とあり、この原則は年俸制の労働者にも適用される。
 しかしながら、あくまでも毎月1回、日を定めて払えとだけ規定しているのであって、
 年俸額がたとえば600万円の場合、各月に支払う額はきっちりその12分の1に均等化して50万円ずつ支払わないといけない、とまでは、法令で義務付けてはいない。
 ただし、それではある月は極端に低額でも差し支えないかというとそうではなく、当然ながら、27条にある「出来高払制の保障給」による限度がある。
 よって実務的には、年俸について労使双方が話し合うに当たっては、総額だけでなく、各月の支払い方法あるいは最低保障給についても決めておくことが望ましい。
 年俸制における報酬の支払い方法についてはいくつかのパターンがあるようだ。たとえば、
@各月払いの年間総額のみを定め、賞与はなしあるいは業績等に応じてそのつど決定して支払う方法
 本肢問題文にある、「通常の賃金の年額が600万円」とはこれに該当するものと思われる。
A各月払いと賞与月払いからなる年間総額を定める方法
 なお、この場合は通達((H12.3.8基収78号)で明らかのように、
 予め金額が確定したものは賞与とはいえず、当事者間では「賞与」と称しても、あくまでも賞与月払いの通常の賃金にすぎない。
 よってこの場合は当然、通常の月と賞与月では支払い額が異なることになるが、これも「毎月、1定期日払」の原則に違反しないとされている。
30
6C
 各月毎の賃金の支払方法については、24条2項に「毎月1回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない」とある。
 よって、年俸制を取る場合であっても、それが賃金である限り、労働者に支払う場合には、「毎月一回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない」ことになるが、各月の支払いを均等化して支払えとまでは、規定していない。
 ただし、極端に低額な月があるのは問題であるので、ばらつきがあるとしても、一定の限度があるであろう。
 また、年俸制でよく議論になるのは、たとえば、「年俸を16で割り、そのうち16分の1を毎月の支払とし、16分の4を賞与として、年2回、16分の2ずつ支払う」というような場合である。
 この場合、「賞与とはその額が予め定められていないもの」であるから、賞与とはいいながら、労基法上は賃金となるので、これも毎月支払わないといけないのではないか、ということになる。
 東京労働局の判断によると、「賞与と称する16分の4の額については、特定月の月俸の支払に加えて別に支払われる賃金であるから、16分の1を毎月支払っている限り、「毎月1回以上、一定期日払」の原則には反しない(つまり、各月の支払額は均等でなくても良い)」としている。

4
6イ
 賃金の支払期限については、24条2項に、「賃金は、毎月1回以上一定の期日を定めて支払わなければならない。ただし、臨時に支払われる賃金、賞与その他これに準ずるもので厚生労働省令で定める賃金については、この限りでない」とある。
 よって、臨時に支払われる賃金等で厚生労働省令で定める賃金については、毎月1回以上、期日を定めてとは要求されていない。
 また、労働法コンメンタール「労働基準法上P352(毎月払)」によると、「毎月1回以上」に関しては、「毎月とは、暦に従うものと解されるから、毎月1日から月末までの間に少なくとも1回は賃金を支払わなければならない。
 本条は、賃金の締切期間及び支払期限については、明文の定めは設けていないから、賃金締切期間については、必ずしも月の初日から起算し月の末日に締め切る必要はなく、例えば、前月の26日から当月の25日までを1期間とする等の定めをすることは差し支えなく、
 また、支払期限については、必ずしもある月の労働に対する賃金をその月中に支払うことを要せず、不当に長い期間でない限り、締切後ある程度の期間を経てから支払う定めをすることも差し支えない」とある。
20
3C
 24条2項に、
 「賃金は、毎月1回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない。ただし、臨時に支払われる賃金、賞与その他これに準ずるもので厚生労働省令で定める賃金については、この限りでない」とあり、毎月1回以上支払うのが原則である。
 ただし、同条のただし書きにある「臨時に支払われる賃金、賞与その他これに準ずるもので厚生労働省令で定める賃金」については、この原則によらなくてもよいことになっている。
 問題文にある「1か月を超える期間の出勤成績によつて支給される精勤手当」は施行規則8条の1号にあたり、上記の原則によらなくてもよい「厚生労働省令で定める賃金」に該当する。
⇒当然と言えば、当然のことである。
13
3E
 24条2項に、
 「賃金は、毎月1回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない」とあり、これが原則である。
 ここで、「一定期日を定めて」とは、労働法コンメンタール「労働基準法上P352(一定期日の定め)」によると、
 「期日が特定されとともに、その期日が周期的に到来するものでなければならない。必ずしも、月の「15日」等と暦日を指定する必要はないから、月給について、「月の末日」等とすることは差し支えないが、「毎月15日から20日までの間」等のように日が特定しない定めをすること、あるいは「毎月第2土曜日」のように月7日の範囲で変動するような期日の定めをすることは許さない」としている。
 よって、毎月の末日と定めることは許容されるが、毎月の第4金曜日というような特定された曜日に支払うことは、許容されない。
27
4E
 24条2項は、
 「賃金は、毎月1回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない」とあり、毎月・一定期日払の原則と呼ばれている。
 そして、「一定期日を定めて」とは、労働法コンメンタール「労働基準法上P352(一定期日の定め)」によると、
 「期日が特定されとともに、その期日が周期的に到来するものでなければならない。必ずしも、月の「15日」等と暦日を指定する必要はないから、月給について、「月の末日」等とすることは差し支えない」とある。
 実際問題としても、「月の末日」と定めることは多い。
令元
5C
 24条2項においては、「賃金は、毎月1回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない。ただし、臨時に支払われる賃金、賞与その他これに準ずるもので厚生労働省令で定める賃金については、この限りでない」とある。
 この場合の「一定期日を定めて」とあるのは、労働法コンメンタール「労働基準法上P352(一定期日の定め)」によると、「期日が特定されとともに、その期日が周期的に到来するものでなければならない。必ずしも、月の「15日」等と暦日を指定する必要はないが、「毎月15日から20日までの間」等のように日が特定しない定めをすること、あるいは「毎月第2土曜日」のように月7日の範囲で変動するような期日の定めをすることは許さない」としている。
⇒「毎月第2土曜日」とすれば、特定の日を定めたかもように見えるが、実際に暦でいう何日かというと、月によって最大で7日も変動するので、支払日を特定したとはいえない。
13
3C
 24条2項に、「賃金は、毎月1回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない」とある。
 たとえば、「毎月15日」と定めたところ、その日が休日に当たる場合の取扱いについては、労働法コンメンタール「労働基準法上P352(一定期日の定め)」によると、
 「所定支払日が休日に当たる場合は、その支払日を繰上げるまたは繰り下げることを定めるのは、一定期日払に違反しない」とある。
 よって、たとえば「毎月15日、ただし当該日が休日の場合は、15日後の直近の労働日とする」と定めることも差し支えない。

5
6C
 24条2項に、「賃金は、毎月1回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない」とある。
  たとえば、「毎月25日」と定めたところ、その日が休日に当たる場合の取扱いについては、労働法コンメンタール「労働基準法上P352(一定期日の定め)」によると、
 「所定支払日が休日に当たる場合は、その支払日を繰上げるまたは繰り下げることを定めるのは、一定期日払に違反しない」とある。
  ここで、「支払日を繰上げるまたは繰り下げることを定める」とあるのは、賃金の支払日は、毎月払の原則に反しない範囲で、就業規則等によって定めるものであり、たとえば、「毎月25日、ただし当該日が休日の場合は、25日後の直近の労働日とする」などと定めるのは、違法ではない。。
22
3
選択
 「賞与の対象期間の出勤率が90%以上であることを賞与の支給要件とする就業規則の規定における出勤率の算定に当たり、労働基準法第65条の定める産前産後休業等を出勤日数に含めない取扱いについて、「労働基準法65条[等]の趣旨に照らすと、これにより上記権利[産前産後休業の取得の権利]等の行使を抑制し、ひいては労働基準法等で上記権利等を保障した趣旨を実質的に失わせるものと認められる場合に限り、公序に反するものとして無効となる」とするのが最高裁判所の判例である。
 産後8週間休業し,これに引き続き子が1歳になるまでの間,勤務時間短縮措置を受けたところ,出勤率が90%以上であることを必要とする旨を定めた就業規則所定の賞与支給要件を満たさないとして,賞与が支給されなかったため,この就業規則の定めは,労働基準法65条等の趣旨に反し,公序に反するとして争いになったもの。
 最高裁判例「東邦学園賞与請求事件」(H15.12.04)によると、
 「90%条項は,労働基準法65条で認められた産前産後休業を取る権利及び育児休業法10条を受けて育児休職規程で定められた勤務時間の短縮措置を請求し得る法的利益に基づく不就労を含めて出勤率を算定するものであるが,
 労働基準法65条及び育児休業法10条の趣旨に照らすと,これにより上記権利等の行使を抑制し,ひいては労働基準法等が上記権利等を保障した趣旨を実質的に失わせるものと認められる場合に限り,公序に反するものとして無効となると解するのが相当である」とした。
 なお判決は、賞与の全額払いを認めた原審を破棄したもので、「産前産後休業の日数及び勤務時間短縮措置による短縮時間分は,欠勤として賞与額の減額の対象にはなり得る」という判断も下した。

・「公序に反する」:労基法等の公的な法律や公の秩序に反する場合など
 ⇒民法90条「公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする」
・「信義に反する」:個人(あるいは民間人)どうしで約束したこと(契約、就業規則など)を忠実に守ろうとはしない場合など
 ⇒民法1条2項 「権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない」
・「不法行為」:故意または過失によって他人の権利を侵し、損害を与えること。
 ⇒民法709条 「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う」
15
3B
 1か月の賃金支払期における端数処理については、通達(S63.3.14基発150号(端数処理)」の(3)1か月の賃金支払額における端数処理において、
 「次の二つの方法は、賃金支払の便宜上の取扱であるから、賃金の支払規定の違反として取り扱わない。なお、これらの方法をとる場合には、就業規則の定めに基づき行うよう指導されたい」
1  1か月の賃金支払額(賃金の一部を控除して支払う場合には、控除した額)に100円未満の端数が生じた場合に、50円未満の端数を切り捨て、それ以上を100円に切り上げて支払うこと。
2  1か月の賃金支払額に生じた1,000円未満の端数を翌月の賃金支払日に繰り越して支払うこと。
29
6C
 「1か月の賃金支払額(賃金の一部を控除して支払う場合に控除した額)に100円未満の端数が生じた場合」は、通達(S63.3.14基発150号(端数処理)」の(3)1か月の賃金支払額における端数処理により、
 「50円未満の端数を切り捨て、それ以上を100円に切り上げて支払う事務処理方法は、賃金支払の便宜上の取扱であるから、賃金の支払規定の違反として取り扱わない。なお、これらの方法をとる場合には、就業規則の定めに基づき行うよう指導されたい」とある。
 よって、本肢の場合は、24条(の全額払)違反とはならない。(切捨てのときもあれば切り上げのときもあるから、長い目でみればとんとんということか)
18
5A
 24条によると、法令による定めあるいは労使協定がある場合以外は、賃金は全額を支払わないといけない。
 ただし、1か月の賃金支払期における端数処理については、通達(S63.3.14基発150号(端数処理)」の(3)1か月の賃金支払額における端数処理において、
 「1,000円未満の端数を翌月の賃金支払日に繰り越して支払うことは、賃金支払の便宜上の取扱であるから、24条の賃金の全額支払規定の違反として取り扱わない。なお、これらの方法をとる場合には、就業規則の定めに基づき行うよう指導されたい」とある。
24
1A
 1か月の賃金支払額における端数処理については、通達(S63.3.14基発150号(端数処理)」の(3)1か月の賃金支払額における端数処理に、
 「次の方法は、賃金支払の便宜上の取扱いと認められるから、24条違反としては取り扱わない。なお、これらの方法をとる場合には、就業規則の定めに基づき行うよう指導されたい」 とあり、
・1か月の賃金支払額(賃金の一部を控除して支払う場合には控除した額)に生じた千円未満の端数を翌月の賃金支払日に繰り越して支払うことも、これに該当するとしている。
 つまり、千円未満をいつまでも払わないのはいけないが、翌月に端数分として精算するのは構わないということ。
 また、100円未満を50円単位で四捨五入することも、許されている。
 ということは、当月分を細かく計算したところ、328円の端数が出た場合、翌月分に300円を追加して払えばよいのだ。
26
4A
 賃金の支払期日については、24条2項から、
 「毎月1回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない」のが原則である。(ということは、労働者も特別の約束がある場合以外は、原則として、支払期日がくるまでは賃金支払いの請求ができないということ)
 しかしながら、労働者が一定の状態にあって困っているときには、25条
 「使用者は、労働者が出産、疾病、災害その他厚生労働省令で定める非常の場合の費用に充てるために請求する場合においては、支払期日前であっても、既往の労働(すなわち既に提供した労働)に対する賃金を支払わなければならない」と、使用者に非常時払の義務を課している。
 (月給制の場合は日割り計算となる)
 本肢にあるように、労働者が疾病にあった場合などがこれに該当し、使用者がこれを拒むと、120条1号により、30万円以下の罰金に処せられる。 
28
3D
 賃金の支払い時期については、24条2項から、「毎月1回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない」のが原則である。
 しかしながら、「出産、疾病、災害等の非常の場合」は、非常時払いについて規定した25条があり、
 「厚生労働省令で定める非常の場合に労働者が請求した場合は、支払期日前であっても、既往の労働に対する賃金を支払わなければならない」と、使用者に罰則付きで、非常時払の義務を課している。
 「既往の労働に対する賃金」とは、労働基準法(上)P358-359(既往の賃金)」によれば、「既往とは、通常は請求の時以前を指すが、特に請求があれば、(非常時払いの)支払の時以前と解すべきであろう。いずれにしても、使用者は特約のない限り、いまだ労務の提供のない期間に対する賃金を支払う義務はない。
 月給等で賃金が定められている場合には、「既往の労働に対する賃金」は、施行規則19条に規定する方法によって、これを日割計算して算定すべきである」とある。

5
6D
 労働者が出産、疾病、災害その他厚生労働省令で定める非常の場合の費用に充てるために(賃金の支払を)請求する場合、25条により、「使用者は、支払期日前であっても、既往の労働に対する賃金を支払わなければならない」
 その場合、賃金の支払方法については、労働基準法(上)P358-359(既往の賃金)」に、「25条による賃金の支払についても、24条1項(賃金支払の原則)の規定が適用される」とある。
 よって、既往の労働に対する賃金の非常時払いにあっても、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。(ただし、全額といっても、既往の賃金に該当する部分の全額であって、もし、労働者がその一部のみを請求した場合は、請求額の全額でよい)。
29
6B
 労働基準法25条により労働者が非常時払を請求できる事由については、25条に、「労働者が出産疾病災害その他厚生労働省令で定める非常の場合」とある。
 ここで、「その他厚生労働省令で定める非常の場合」については施行規則9条から、
 「労働者の収入によって生計を維持する者の出産、疾病、災害」も含まれる。
 参考までに、それ以外にも、本人又は労働者の収入によって生計を維持する者の結婚、死亡、やむを得ない事由による1週間以上の帰郷もある。 

3
3オ
 労働基準法25条により労働者が非常時払を請求できる事由については、25条に、「労働者が出産、疾病、災害その他厚生労働省令で定める非常の場合」とある。
 こで、「その他厚生労働省令で定める非常の場合」については施行規則9条に定められており、その1号に、「労働者の収入によって生計を維持する者が出産し、疾病にかかり、又は災害をうけた場合」とあり、これらも、非常時払いを請求しうる事由に含まれている。
 ここで、「労働者の収入によって生計を維持する者」については、厚生労働省編「労働基準法(上)P358(生計維持)」によると、「労働者が扶養の義務を負っている親族のみに限らず、労働者の収入で生計を営む者であれば、親族でなく同居人であっても差し支えないが、親族であっても独立の生計を営む者は含まれない」とある通り。
令元
5D
 「労働基準法25条により労働者が非常時払を請求しうる事由」とある。
 25条によれば、「使用者は、労働者が出産、疾病、災害その他厚生労働省令で定める非常の場合の費用に充てるために請求する場合においては、支払期日前であっても、既往の労働に対する賃金を支払わなければならない」とあり、「疾病」は非常時払を請求しうる事由の一つである。
 そして、この場合の「疾病」とは、厚生労働省編「労働基準法(上)P357(疾病等)」に、
 「疾病、災害は、業務上の疾病、負傷であると業務外のいわゆる私傷病であるとを問わない。洪水、火災等による災危も災害に含まれると解して差し支えない」とある。

4
6ウ
 25条によれば、「疾病」は、「使用者は、労働者が疾病その他厚生労働省令で定める非常の場合の費用に充てるために請求する場合においては、支払期日前であっても、既往の労働に対する賃金を支払わなければならない」とあり、「疾病」は非常時払を請求しうる事由の一つである。
 この場合の「疾病」については、厚生労働省編「労働基準法(上)P357(疾病等)」に「疾病は、業務上の疾病、負傷であると業務外のいわゆる私傷病であるとを問わない」とある。
12
3D
 前半部分は、金品の返還について定めた23条1項、2項により、
 「使用者は、労働者の死亡又は退職の場合において、請求があった場合においては、異議のない部分を7日以内に、賃金を支払い、積立金、保証金、貯蓄金その他名称の如何を問わず、労働者の権利に属する金品を返還しなければならない」とあり、正しい。
 後半部分については、通達(S26.12.27基収5483、S63.3.14基発150号)により、
 「退職手当は、通常の賃金の場合と異なり、あらかじめ就業規則などで定められた支払時期に支払えば、本条違反とはならない」

2
5オ
 「労働者の死亡又は退職の場合」とある。
 このような場合は、労働者の私物等の持ち物は当然として、労働者が受け取る権利があるものについては、23条1項にあるように、「権利者の請求があった場合においては、7日以内に賃金を支払い、積立金、保証金、貯蓄金その他名称の如何を問わず、労働者の権利に属する金品を返還しなければならない」
 その際、問題文にあるように、「賃金又は金品に関して争いがある場合においては」、同条2項にあるように、「異議のない部分を、7日以内に支払い、又は返還しなければならない」
 趣旨については、こちらを
 なお、「権利者]とは、一般的には、退職の場合は労働者本人、死亡の場合は、遺産相続人となるが、退職金については、退職金の受取人を就業規則等で定めておくこともありうる。
 また、「争いがある部分」については、7日以内とまでは義務づけられていないが、「払うべきものか、その場合の額はいくらか等を確定した上で、それらの履行日までに支払い又は返還しなければならない」
30
5A
 「23条に定める労働者の退職の際、その請求に応じて7日以内に支払うべき労働者の権利に属する金品」とある。
 この意味するところは、退職しても賃金の支払い、あるいはその者の権利(所有権、請求権など)などに基づく金品の返還を行わせないと、労働者の足止めになったり、あるいは退職後・死亡後の遺族の生活を逼迫させることになりかねないので、できるだけ早く決着させるための規定である。
 賃金については、退職時に請求できるもの全部が対象となり、一般的には退職までの賃金(既往の賃金)でよいが、「途中退職してもその月分の賃金は全額支払う」ことになっておれば、その額を7日以内に支払わなければならない。
 本肢は、「解雇予告手当は(賃金ではないが)、労働者の権利に属する金品に該当するものとして、7日以内の支払を要するものか否か」を論点にしている。
 これについては、通達(S27.05.17基収1906)において、「解雇予告手当は、解雇の意思表示に際して支払わなければ解雇の効力を生じないものと解される」とある。
 つまり、解雇予告手当を支払わない場合、即時解雇あるいは30日より短縮した日における解雇そのものが無効であるから、労働者が退職時に解雇予告手当を請求することは理論上はないということになる。
⇒即時解雇の意図があったが解雇予告手当を支払わなかった場合は、30日後に解雇が有効となるから、30日の賃金の請求権があることになる。
 また、10日後に解雇するといったが実際には20日分の解雇予告手当を支払わなかった場合、解雇が成立するとしても30日目以降であると考えられるので、20日分の賃金の支払義務が残る。
 要するに、これらの場合は、解雇予告手当の請求権ではなく、賃金の請求権があることになり、この方が金額も高い。
12
3E
 金品の返還について定めた23条は、労働者やその遺族の生活のことを考えた特例であって、通常の賃金支払いよりも支払義務条件を緩和させるためのものではない。
24
1B
  一般に、退職金を受け取るべき当人が死亡した場合、法に定めがない(本肢の場合は労働基準法がこれに該当するが、同法には定めがない)ときは、その一般法である「民法」の規定によることになる。
 そして、通常は「相続財産」の一部として、相続する権利があるものに支払われることになる。
 しかしながら、最高裁判例[退職金事件}(S55.11.27))によると、
 「と被上告人の職員の退職手当に関する規程は被上告人の職員に関する死亡退職金の支給、受給権者の範囲及び順位を定めているのであるが、右規程によると、死亡退職金の支給を受ける者の第一順位は内縁の配偶者を含む配偶者であつて、配偶者があるときは子は全く支給を受けないこと、直系血族間でも親等の近い父母が孫より先順位となり、嫡出子と非嫡出子が平等に扱われ、父母や養父母については養方が実方に優先すること、死亡した者の収入によつて生計を維持していたか否かにより順位に差異を生ずることなど、受給権者の範囲及び順位につき民法の規定する相続人の順位決定の原則とは著しく異なつた定め方がされているというのであり、これによつてみれば、右規程は、専ら職員の収入に依拠していた遺族の生活保障を目的とし、民法とは別の立場で受給権者を定めたもので、受給権者たる遺族は、相続人としてではなく、右規程の定めにより直接これを自己固有の権利として取得するものと解するのが相当である 。
 そうすると、右死亡退職金の受給権は相続財産に属さず、受給権者である遺族が存在しない場合に相続財産として他の相続人による相続の対象となるものではないというべきである」
 つまり、退職金についての規定がある場合は、それが、たとえ受給権者の範囲及び順位につき民法の規定する相続人の順位決定の原則とは著しく異なつた定め方がされている場合であっても、
 「受給権者たる遺族は、相続人としてではなく、当該規程の定めにより直接これを自己固有の権利として取得するものと解するのが相当である」
 さらに、このような場合は、「死亡退職金の受給権は相続財産に属さず、受給権者である遺族が存在しない場合に、相続財産として他の相続人による相続の対象となるものではない(誰にも支給されない)」 というべき」とまで言い切っている。
 よって、本肢に関しても、この判例に従えば、「労基法施行規則42条、43条」などとは関係なく、一定の妥当な趣旨に基づくルールがあれば、それに従ってよいということ。
 なお本肢は、死亡労働の退職金に関する通達(S25.07.07基収1786)
 「労働者が死亡したときの退職金の支払について別段の定めがない場合には民法の一般原則による遺産相続人に支払う趣旨と解されるが、労働協約、就業規則等において民法の遺産相続の順位によらず、施行規則42条、43条の順位による旨定めても違法ではない。
 従ってこの順位で支払った場合はその支払は有効である」を、そのまま出題したものに過ぎない。
 なお、施行規則42条、42条では
 「遺族補償を受けるべき者の順位は
 @労働者の配偶者(事実婚を含む)、
 A生計維持または生計同一の子、父母、孫及び祖父母
 B生計同一すらない、子、父母、孫及び祖父母
 C兄弟姉妹(生計維持あるいは生計同一があればその者を優先)
 ただし、労働者が遺言又は使用者に対する予告で、上記の範囲の中で特定の者を指定した場合は、その指定者を優先する」としている。
上記の判例や通達を知らなくても、労災、雇用、厚生年金、国民年金各法において、死亡に伴う保険給付や未支給の給付に関しては、一般には相続の対象にならず、受給権者の範囲や優先順位が民法とは異なる規定が設けられていることを思い起こせば、 それからの類推で正解が得られるはず。
17
1E
 本肢に関連するものとしては、いわゆる最高裁判例「ノースウエスト航空事件」(S62.7.17)がある。
 この事件は、「ストライキによる休業で労働できず、賃金の支払を受けなかったのは会社の責任であるとして、当該労働組合員以外の者が、この間の賃金の支払いを民法536条2項により請求し、これが認められない場合にも、労働基準法26条の「使用者の責に帰すべき事由」にあたるとして休業手当の支払いを求めた」ものである。
 これに対する判決の要旨は、
 「労働基準法26条が「使用者の責に帰すべき事由」による休業の場合に使用者が平均賃金の六割以上の手当を労働者に支払うべき旨を規定し、その履行を強制する手段として附加金や罰金の制度が設けられているのは、右のような事由による休業の場合に、使用者の負担において労働者の生活を右の限度で保障しようとする趣旨によるものであって、同条項が民法536条2項の適用を排除するものではない。
 休業手当の制度は、右のとおり労働者の生活保障という観点から設けられたものではあるが、賃金の全額においてその保障をするものではなく、しかも、その支払義務の有無を使用者の帰責事由の存否にかからしめていることからみて、労働契約の一方当事者たる使用者の立場をも考慮すべきものとしていることは明らかである。
 そうすると、労働基準法26条の「使用者の責に帰すべき事由」の解釈適用に当たつては、いかなる事由による休業の場合に労働者の生活保障のために使用者に前記の限度での負担を要求するのが社会的に正当とされるかという考量を必要とするといわなければならない。
 このようにみると、右の「使用者の責に帰すべき事由」とは、取引における一般原則たる過失責任主義とは異なる観点をも踏まえた概念というべきであつて、民法536条2項の「債権者の責に帰すべき事由」よりも広く、使用者側に起因する経営、管理上の障害を含むものと解するのが相当である」とある。 ・・・・・
 労働者の一部によるストライキが原因である等種々の状況を考慮すると、ストライキの結果上告会社が被上告人らに命じた休業は、上告会社側に起因する経営、管理上の障害によるものということはできないから、上告会社の責に帰すべき事由によるものということはできず、被上告人らは右休業につき上告会社に対し休業手当を請求することはできない」とした。  
24
1C
 過去問(17-1E)と同文の問題である。
 最高裁判例「ノースウエスト航空事件((S62.7.17)に、「労働基準法26条の使用者の責に帰すべき事由とは、取引における一般原則たる過失責任主義とは異なる観点をも踏まえた概念というべきであつて、民法536条2項の「債権者の責に帰すべき事由」よりも広く、使用者側に起因する経営、管理上の障害を含むものと解するのが相当である」とある。
 たとえば、労基法の場合は、「工場の経営難による休業」など、使用者の過失によるものでなくても含まれる場合がある。
 一方、民法536条2項は改定後は、「債権者(この場合は労働者を使用する使用者)の責めに帰すべき事由によって債務(労働の機会を提供する義務)を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行(賃金の支払い)を拒むことができない」とあり、「債権者の責めに帰すべき事由」には、使用者の無過失によるよるものは一般には含まれない。(民法によれば、使用者に故意又は過失等がない場合は、労働者が賃金を請求できなくてもやむを得ないとする)
 よって、労基法によるものの方が範囲が広い。
 ということは、労基法にいう使用者の責に帰すべき事由のみに該当するときは、休業手当(平均賃金の6割以上)のみ請求できる。 
 さらに、民法上の過失責任も問うことができれば、賃金全額の請求(休業手当+不足分)+その他の損失分(もしあれば)も請求できるのだ。
26
4B
 問題文にある「取引における一般原則たる過失責任主義」とは、我が国の民法がよって立つ大原則である@契約自由主義、A所有権絶対主義、B過失責任主義の一つであって、自由な取引活動(あるいは経済活動)の結果、他人に損害を及ぼしたとしても、その損害を発生させた行為に過失がなければ責任は負わないということ。
 しかしながら、最高裁判例「ノースウエスト航空事件((S62.7.17)によると、
 「使用者の責に帰すべき事由とは、取引における一般原則たる過失責任主義とは異なる観点をも踏まえた概念というべきであつて、民法536条2項の「債権者の責に帰すべき事由」よりも広く、使用者側に起因する経営、管理上の障害を含むものと解するのが相当である」とあり、労基法26条の休業手当の趣旨は、この民法の原則を修正して適用すべきであるとした。
 すなわち、経営、管理上の障害により休業せざるを得なくなった場合、使用者側に過失がなくても、休業手当として平均賃金の60%以上を支払う義務が発生する場合もある得るのである。
 なおこの場合において、使用者側に過失がある場合は、訴訟により、賃金の全額(残りの部分)およびそれ以外に被った損害を請求することも可能である。

21
3

 休業手当について定めた労働基準法第26条につき、最高裁判所の判例は、当該制度は「労働者の(C 生活保障)という観点から設けられたもの」であり、同条の「使用者の責に帰すべき事由」の解釈適用に当たつては、いかなる事由による休業の場合に労働者の(C 生活保障)のために使用者に前記[同法第26条に定める平均賃金の100分の60]の限度での負担を要求するのが社会的に正当とされるかという考量を必要とするといわなければならない」としている。
 最高裁判例「ノースウエスト航空事件((S62.7.17)からの出題である。
 本肢に関連する部分だけを判決文を要約すると
 「休業手当の制度は、労働者の生活保障という観点から設けられたものではあるが、賃金の全額においてその保障をするものではなく、しかも、その支払義務の有無を使用者の帰責事由の存否にかからしめていることからみて、労働契約の一方当事者たる使用者の立場をも考慮すべきものとしていることは明らかである。
 そうすると、労働基準法26条の「使用者の責に帰すべき事由」の解釈適用に当たつては、いかなる事由による休業の場合に労働者の生活保障のために使用者に前記の限度での負担を要求するのが社会的に正当とされるかという考量を必要とするといわなければならない」
⇒「考量」とは、かんがえはかる、考慮のこと(広辞苑)

3
4A
 労働基準法26条による休業手当は、「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならない」とするものであるが、民法をたてにとるまでもなく、使用者の責に帰すべき事由により休業せざるを得なくなったのだから、本来支払うべき賃金100%を支払うべきではないかという、疑問が残るであろう。
 この点に関して、通達(S22.12,15基発502)によると、
 「26条は使用者の責に帰すべき事由による休業の場合平均賃金の100分の60以上としており、債権者(本肢の場合は労働者を使用する権利のある使用者)の責に帰すべき事由に因って、債務(労働の機会を提供する債務)を履行することができない場合は、債務者(労働を提供する労働者)は反対給付(賃金)を受ける権利を失わない(改正後は、「債権者は反対給付の履行(賃金の支払い)を拒むことができない」)とする民法第536条の規定より不利な規定であると考えるが如何」というお伺いに対して、回答は、
 「本条は民法の一般原則が労働者の最低生活保障について不充分である事実に鑑み、強行法規で平均賃金の100分の60までを保障せんとする趣旨の規定であって、民法第536条第2項の規定を排除するものではないから、民法の規定に比して不利ではない」とした。
 つまり、労基法による平均賃金の100分の60以上の保証を得た上で、後の不足分については、民法の規定にのっとり、しかるべき方法で請求することは自由であり、賃金債権を全額確保したいとする権利を何ら制限するものではない、とした。

22
3E

 労働基準法26条に定める休業手当とは、
 「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならない」とある通り。
 では、「使用者の責に帰すべき事由」によるとは何かということになるが、一般的には過去問解説(17-1E)にあるように、「使用者の故意、過失又はこれと同一視されるものという民法による考え方よりも広い。ただし、不可抗力によるものは含まれない」とされている。
 本肢については、通達(S23.6.11基収1998)に
 「親工場の経営難から下請工場が資材、資金の獲得できず休業した場合は、使用者の責めに帰すべき事由に該当する」
 つまり、この場合は休業手当として平均賃金の60%以上を支払う義務が発生する。
26
4C
 問題文にいきなり、「労働基準法第26条にいう「使用者の責に帰すべき事由」には・・・・」とあり、26条が何をさすかがわからないと本肢は解けないかのごとく思われるが、実は、本肢の前の26-4Bに、「労働基準法第26条の定める休業手当の趣旨は、使用者の故意又は過失により労働者が休業を余儀なくされた場合」とある。
 (一般に、問題文に条文番号だけが記載されている場合であっても、落ち着いて対処すれば、番号まで覚えておく必要はない。重要なのは、条文の中身そのものにあるのだ)
 労働基準法26条における「使用者の責に帰すべき事由」とは、使用者の過失、あるいは無過失であっても一定の責任がある場合の話であるから、天災地変等の不可抗力によるものは、社会通念上日頃から措置を講じておくべきであったなどの特別の事情がない限り、含まれないであろう。
 一方、「親工場の経営難・・・」については、通達(S23.6.11基収1998)に
 「親工場の経営難から下請工場が資材、資金の獲得できず休業した場合は、使用者の責めに帰すべき事由に該当する」とある。
 つまり、「親工場の経営難」は当然予測できるものであり、かつ経営者として事前に対応策を講じていくべきものであるから、そのために休業に追い込まれた場合は、使用者の責任であって、休業手当として平均賃金の60%以上を支払わなければならない。
令3
4D
 26条に定める休業手当によれば、「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の100分の60以の手当を支払わなければならない」
 ここで、「使用者の責に帰すべき事由」とは、判例などにより、「使用者の故意、過失又は信義則上これと同視すべきものとされる民法の概念より広く、使用者側に起因する経営、管理上の障害を含む。ただし、不可抗力によるものは、含まれない」と解されているいる。
 本肢の場合は、通達(S23.6.11基収1998)において、「親会社からのみ資材資金の供給を受けて事業を営む下請工場において、現下の経済情勢から親会社自体が経営難のため資材資金の獲得に支障を来し、下請工場が所要の供給を受けることができず、しかも他よりの獲得もできないため休業した場合、その事由は法第26条の「使用者の責に帰すべき事由」とはならないものと解してよいか」というお伺いに対して、回答は、「質疑の場合は使用者の責に帰すべき休業に該当する」とした。
27
5D
 26条にある「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならない」とある。
 この場合の「休業」については、厚生労働省編「労働基準法(上)P369(休業)」によると、
 「「休業」とは、労働者が労働契約に従って労働の用意をなし、しかも労働の意思をもっているにもかかわらず、その給付の実現が拒否され、又は不可能となった場合をいう。したがって、事業の全部又は一部が停止される場合にとどまらず、特定の労働者に対して、その意思に反して、就業を拒否する場合も含まれる」とある。
 すなわち、使用者の責に帰すべき事由により事業の全部又は一部ができない場合だけでなく、労働者の責に帰すべき事由がないにもかかわらず、「お前はしばらく会社に来るな」という場合も休業手当の支払い義務が発生する。
 極端な場合は、通達(S24.7.27基収1701)にあるように、
 「使用者が予告なしで労働者を解雇した場合でも、解雇の意思表示が解雇の予告として有効と認められ、かつ、その解雇の意思表示があったために予告期間中労働者が休業した場合は、使用者は解雇が有効に成立するまで日までの期間、休業手当を支払わなければならない」

3
4C
 「就業規則で「会社の業務の都合によって必要と認めたときは本人を休職扱いとすることがある」と規定し、更に当該休職者に対しその休職期間中の賃金は月額の2分の1を支給する旨規定する」とある。
 問題文では「このことは違法ではない」としているが、通達(S23.07.12基発1031号)によると、その適法性について、お伺いをたてたところ、回答は、
 「就業規則に問の如き規則を定めると否とにかかわらず、使用者の責に帰すべき事由による休業に対しては法第26条により平均賃金の100分の60以上の休業手当を支払わなければならない。従って「会社の業務の都合」が使用者の責に帰すべき事由による休業に該当する場合において、賃金規則に右に満たない額の賃金を支給することを規定しても無効である」とされた。
 よって、「当該休職者に対しその休職期間中の賃金として、(たとえ賃金規則等に従ったとしても)月額の2分の1だけを支給することは違法であり、平均賃金の6割以上の休業手当を支払う義務がある」
⇒厳密にいうと、「就業規則に規定した」こと自体が違法になるわけではなく、「就業規則の通り行動した」ときに初めて違法となる。
 しかし、実際問題として、従うこと自体が違法であるなら、その規則は改めるべき。
27
5E
 休電(計画停電)に伴う休業については、通達(S26.10.11基発696)によれば、
 「最近電力事情の悪化は、全国的問題となり、各方面に深刻な影響を与えつつあるのであるが、労働基準法の適用についても、幾多の困難な問題が生じている。・・・・
 よって、休電による休業については、原則として26条の使用者の責に帰すべき事由による休業に該当しないから休業手当を支払わなくとも26条違反とはならない」とある。
 さらに、最近においては、通達(S23.03.15基監発1号)において、
 「今般、平成23年東北地方太平洋沖地震により電力会社の電力供給設備に大きな被害が出ていること等から、不測の大規模停電を防止するため、電力会社において地域ごとの計画停電が行われている。・・・
 この場合、計画停電の時間帯における事業場に電力が供給されないことを理由とする休業については、原則として26条の使用者の責めに帰すべき事由による休業には該当しない」とした。

3
4E
 「新規学卒採用内定者の就労始期を繰り下げて自宅待機とした場合、休業手当は必要か」ということであるが、これについては、通達(S63.03.14基発150号、婦発47号)によると、
 「新規学卒者のいわゆる採用内定については、遅くも、企業が採用内定通知を発し、学生から入社誓約書又はこれに類するものを受領した時点において、過去の慣行上、定期採用の新規学卒者の入社時期が一定の時期に固定していない場合等の例外的場合を除いて、一般には、当該企業の例年の入社時期(4月1日である場合が多いであろう)を就労の始期とし、一定の事由による解約権を留保した労働契約が成立したとみられる場合が多いこと。したがって、そのような場合において、企業の都合によって就労の始期を繰り下げる、いわゆる自宅待機の措置をとるときは、その繰り下げられた期間について、労働基準法第26条に定める休業手当を支給すべきものと解される」とある。
26
4D
 一部労働者のストライキの場合については、通達(S2412.02基収3281)に、
 「労働組合が争議をしたことにより、同一事業場内の当該労働組合員以外の労働者の一部が労働を提供し得なくなった場合にその程度に応じて労働者を休業させることは差支えないが、その限度を超えて休業させた場合には、その部分については、法26条の使用者の責に帰すべき事由による休業に該当する」とある。
 よって、本肢の場合、「一部の労働者のストライキの場合に、残りの労働者(たとえば、他の労働組合員労働者や非組合員労働者)を就業させることが可能であるにもかかわらず、使用者がこれを拒否した」とあるから、ストライキのあおりを受けてやむなく休業となった者(たとえば、ストライキをした労働組合員のピケにより入場を阻止された者、流れ作業を行うことができなくなった者など)は仕方がない(使用者の責任ではない)としても、労働の意欲があり、就業させることができるにもかかわらず使用者が拒否した者については、「使用者の責に帰すべき事由」による休業に該当する。
 つまり、これに該当する者には、休業手当として平均賃金の60%以上を支払う義務が発生する。
 なお、ストライキに参加する気もない労働組合員に休業を命じても、使用者に責任はない。

5
6E
 本肢にある最高裁判例とは、「賃金(いわゆるノースウエスト航空事件)」(S62.7.17)である。
 事件の発端は、会社が別会社の社員を搭乗員として使用していることについて、労働組合は、職業安定法違法であり別会社の社員を自社社員として雇用するよう要求してストに突入。このストの影響で、会社は業務の一部を停止せざるを得なくなり、労働組合に所属していない一部の従業員の就労が不要になったため、休業を命じた。
 これに対して、「ストライキによる休業で労働できず、賃金の支払を受けなかったのは会社の責任であるとして、当該労働組合員以外の者が、この間の賃金の支払いを民法536条2項により請求し、これが認められない場合にも、労働基準法26条の「使用者の責に帰すべき事由」にあたるとして休業手当の支払いを求めた」ものである。
 問題文に「会社に法令違反の疑いがあったことから、労働組合がその改善を要求して部分ストライキを行った、同社がストライキに先立ち、労働組合の要求を一部受け入れ、一応首肯しうる改善案を発表したのに対し、労働組合がもっぱら自らの判断によって当初からの要求の貫徹を目指してストライキを決行した」とあるのは、このへんの経緯について述べたものである。
 続いて、問題文には、「法令違反の疑いによって本件ストライキの発生を招いた点及びストライキを長期化させた点について使用者側に過失があり、同社が労働組合所属のストライキ不参加労働者の労働が社会観念上無価値となったため同労働者に対して命じた休業は、労働基準法第26条の「使用者の責に帰すべき事由」によるものであるとして、同労働者は同条に定める休業手当を請求することができるとした」とある.
  しかしながら、これは、原審(高裁)の判決であって、最高裁判所による最終判断によれば、「会社に職業安定法に違反する疑いがあり、このことが本件ストライキの発生を招いたことは否定できないものの、組合の要求の趣旨を一部受け入れる改善案を発表し、これによつて職業安定法違反はなくなると説明していたので、それなりに首肯しえないものではない。
 これに対し、組合は、会社とは異なつた見解に立ち、右改善案によつても職業安定法違反の状態は除去されないとして、あくまでも当初の要求の貫徹を目指して本件ストライキを決行し、上告会社の業務用機材を占拠して飛行便の運行スケジユールの大幅な変更を余儀なくさせたというのであるから、本件ストイキは、もつぱら組合が自らの主体的判断とその責任に基づいて行つたものとみるべきであつて、上告会社側に起因する事象ということはできない
 そうすると、本件ストライキの結果、上告会社が被上告人らに命じた休業は、上告会社側に起因する経営、管理上の障害によるものということはできないから、上告会社の責に帰すべき事由によるものということはできず、被上告人らは右休業につき上告会社に対し休業手当を請求することはできない」として、原審の判断を覆したのである。
23
6A
 休業手当とは、26条
 「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならない」 によるもので、
 ここでいう「使用者の責に帰すべき事由」とは、一般には、「使用者の故意、過失又は信義則上これと同視すべきものとされる民法の概念より広く、使用者側に起因する経営、管理上の障害を含む 。ただし、不可抗力によるものは、含まれない」とされている。
 しかしながら、実際には個々のケースに応じて難しい判断を伴ことが多い。
 本肢については、通達(S63.03.14基発150(健康診断)において役所内でやり取りがあり、
 「労働安全衛生法第66条による一般健康診断の結果、私傷病を理由として医師の証明により休業を命じ、又は労働時間を短縮した場合、労働契約の不完全履行を理由として休業した時間に対しては賃金を支払わなくてもよいか、あるいは労働基準法26条による休業手当を支給しなければならないか」という問いに対する回答に、
 「労働安全衛生法66条の規定による健康診断の結果に基づいて、使用者が労働時間を短縮させて労働させたときは、使用者は、労働の提供のなかった限度において賃金を支払わなくても差し支えない」とある。「労働安全衛生法66条の規定による健康診断の結果に基づいて、使用者が労働時間を短縮させて労働させたときは、使用者は労働の提供のなかった限度において賃金を支払わなくても差し支えない。
 ただし、使用者が健康診断の結果を無視して労働時間を不当に短縮もしくは休業させた場合には、26条による休業手当を支払わなければならない場合の生ずることもある」
 つまり、賃金の支払義務がないので、休業手当は不要であるとした。
 要するに、私傷病(業務上の事由によらない傷病)が原因で、労働義務を完全には履行できないことは自己責任であって、事業主に賃金の支払を強制することはできない。
 ただし、問題文に「医師の証明の範囲内において」とあるのは、必要以上に長期間にわたる休業あるいは短時間勤務を強いると、その部分については「使用者の責に帰すべき事由」に該当すると見なされる(休業手当の支払義務が発生する)ことがあるので注意せよということ。
30
6E
 「労働安全衛生法第66条による健康診断の結果」とある。安衛法66条とはいわゆる一般健康診断(1項)、特殊健康診断(2項)、歯科医師による健康診断(3項)等について規定したものであり、その結果、異常の所見があった場合は、同66条の4により「医師等からの意見を聴取」し、同66条の5に基づいて、「労働時間の短縮等々の必要な措置を講じなければならない」
 本肢では、「私傷病のため医師の証明に基づいて使用者が労働者に休業を命じた」とある。
 この場合の賃金(休業手当を含む)の支払義務については、通達(S63.03.14基発150(健康診断)に、「健康診断の結果に基づいて、使用者が労働時間を短縮させて労働させたときは、労働の提供のなかった限度において賃金を支払わなくても差し支えない
 つまり、私傷病(業務上の事由によらない傷病)が原因で、労働義務を完全には履行できないことは自己責任であって、事業主に賃金の支払を強制することはできない、よって休業手当も不要であるということ。
⇒休業手当とは、事業主の責任に帰すべき事由によって労働の機会を失ったのだから、1日分まるまるとはいわないが、しかるべき賃金は支払う義務があるとしたことによるもの。
27
5C
 いわゆる休日振替については、通達(S63.3.14基発150(35条関係2))によると、「就業規則に、休日の振替を必要とする場合には休日を振り替えることができる旨の規定を設け、これによって、所定の休日と所定の労働日とを振り替えることができるか」という問いに対して、回答は、
 「就業規則において休日を定めるとともに、別に、休日の振替を必要とする場合には休日を振り替えることができる旨の規定を設け、これによって、休日を振り替える前にあらかじめ振り替えるべき日を特定して振り替えた場合は、当該休日は労働日となり、休日に労働させることにならない。
 以上によることなく、休日に労働を行った後に、その代償としてその後の特定の労働日の労働義務を免除するいわゆる代休の場合はこれに当たらない(すなわち、当初予定された休日における労働は割増賃金が発生する休日労働となる)」とある。
 つまり、本肢の場合、振替前の日曜日が労働日となり、振替後の水曜日が休日となるだけであって、水曜日が事業主の責に帰すべき事由による休業日とはいえない。
 実際の労働日(日曜日)に対して所定額の賃金の支払いがなされる限り、それ以外の補償義務はない。
18
2C
 休日の休業手当については、通達(S24.3.22基収4077)において、
 「使用者が26条によって休業手当を支払わなければならないのは、使用者の責に帰すべき事由によって休業した日から休業した最後の日までであり、その期間における35条の休日及び就業規則又は労働協約によって定められた35条によらざる休日を含むものと解せられるが如何」という質問に対する回答は、
 「休業手当は、民法536条2項によって全額請求しうる賃金の中、平均賃金の100分の60以上を保障せんとする趣旨であるから、労働協約、就業規則等又は労働契約により休日と定められている日については、休業手当を支給する義務は生じない」とある。
 そもそも休業手当の趣旨は、使用者の責めに帰すべき事由によって業務ができない場合に、業務ができれば貰えたであろう賃金の代わりとして、平均賃金の60%以上を使用者が保障する義務があるということだ。
 よって、就業規則などにより休日となっている日まで使用者が賃金を保障しなければならない、とすることはできないであろうと、容易に想像される。
 ところで、この問題文にある
 「休業手当は、民法第536条第2項によって全額請求し得る賃金のうち、平均賃金の100分の60以上を保障しようとする趣旨のものであるから」の部分は読みづらい。
 それと後半の「休日と定められている日については、休業手当を支給する義務は生じない」とはどうつながるのだろうか。
 民法536条2項とは、改正後によれば、「債権者(本肢の場合は労働者を使用する権利のある使用者)の責に帰すべき事由に因って、債務(労働の機会を提供する債務)を履行することができない場合は、債権者は反対給付の履行(賃金の支払い)を拒むことができない」 
 すなわち、使用者の責めに帰すべき事由によって債務の履行(賃金の支払)ができなくなったときは、反対給付(賃金の100%相当額)を受ける権利があるのだから、60%をもって足りるとする労基法のこの規定は、労働者にとって不利ではないかという反論が成立しそうである。
 しかし、通達(S22.12.15基発502)によると、
 「本条は民法の一般原則が労働者の最低生活保障について不十分である事実に鑑み、強行法規で平均賃金の100分の60までを保障せんとする趣旨であって、民法536条2項の規定を排除するものではない」
 つまり、100分の60については、裁判を起こさなくても労基法により保障する。
 それだけでは納得ができないときは、残りの100分の40について裁判でかたをつけてくれといっているのである。
 これらについて少し知識があると、「休日となっている日まで使用者が賃金を保障しなければならない」とはとてもいえそうにないと納得するであろう。 
29
6E
 労働基準法第26条に定める休業手当とは、「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合に、休業期間中に、平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならない」とあることによる。
  ここでいう「休業」とは、こちらにあるように「労働者が労働契約に従って労働の用意をなし、しかも労働の意思をもっているにもかかわらず、その給付の実現が拒否され、又は不可能となった場合」である。
 そして、同条には「休業期間中」とあるが、その意味するところは、通達(S24.3.22基収4077)にあるように、「民法536条2項(改正後によれば、「債権者(本肢の場合は労働者を使用する権利のある使用者)の責に帰すべき事由に因って、債務(労働の機会を提供する債務)を履行することができない場合は、債権者は反対給付の履行(賃金の支払い)を拒むことができない」に基いて、全額請求し得る賃金のうち、平均賃金の100分の60以上を保障せんとする趣旨のものであるから、労働協約、就業規則又は労働契約により休日と定められている日については、休業手当を支給する義務は生じない」とある。
 つまり、就業規則などによる所定休日に労働を行わなかったとしても、債権者(使用者)の責任によって債務((労働の機会の提供)ができなかったわけではないので、その反対給付(賃金)を受ける権利は発生せず、従って、使用者にも支払いの義務は発生しない。
 この点、労災保険法による休業補償給付、健康保険法による傷病手当金が賃金請求権とは関係なく公休日にも支給されるのとは違うことに注意を。

3
4B
 26条によれば、使用者が休業手当を支払わなければならないのは、「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合に、休業期間中に、平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならない」とある。
 「休業期間中に・・・」とあるから、問題文にあるように「休業した日から休業した最終の日までで」であることは間違いない。
 よって、論点は「35条の休日及び労働協約、就業規則又は労働契約によって定められた同法35条によらない休日を含むか否か」ということ。
 これについては、通達(S24.3.22基収4077)によれば、「民法536条2項(改正後によれば、「債権者(本肢の場合は労働者を使用する権利のある使用者)の責に帰すべき事由に因って、債務(労働の機会を提供する債務)を履行することができない場合は、債権者は反対給付の履行(賃金の支払い)を拒むことができない」に基いて、全額請求し得る賃金のうち、平均賃金の100分の60以上を保障せんとする趣旨のものであるから、労働協約、就業規則又は労働契約により休日と定められている日については、休業手当を支給する義務は生じない」としている。
 つまり、就業規則などによる所定休日に労働を行わなかったとしても、債権者(使用者)の責任によって債務(労働の機会の提供)ができなかったわけではないので、その反対給付(賃金)を受ける権利は発生せず、従って、使用者にも支払いの義務は発生しないという理屈である。
27
5A
 「使用者の責に帰すべき事由によって、水曜日から次の週の火曜日まで1週間休業させた」とある。
 この場合は、26条により、「使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならない」
 ただし、休業期間は1週間であるが、その期間内に所定休日が2日含まれているので、この点をどう考えるかである。
 これについては、通達(S24.3.22基収4077)に、
 「26条の休業手当は、民法第536条第2項によって全額請求し得る賃金のうち、平均賃金の100分の60以上を保障せんとする趣旨のものであるから、労働協約、就業規則又は労働契約により休日と定められている日については、休業手当を支給する義務は生じない」とある。
 つまり、本肢の場合、所定労働日の5日分についてのみ、業務ができれば貰えたであろう賃金の代わりとして、平均賃金の60%以上を使用者が保障する義務があるということ。
27
5B
 「使用者の責に帰すべき事由により労働時間が4時間に短縮された」とある。
 そのような場合であっても、26条により、「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、平均賃金の100分の60以上の手当の支払い義務が発生する」
 本肢のように、1日全部ではなく、その一部の時間のみ休業となった場合は、通達(S27.8.7基収3445)によると、
 「1日の所定労働時間の一部のみを休業とした場合、現実に就労した時間に対して支払われる賃金が平均賃金の100分の60に満たない場合には、その差額を支払わなければならない」とある。
 つまり、賃金+休業手当が必ず平均賃金の60%以上にならないといけない。
 本肢の場合、平均賃金の60%は6,000円、実際の労働時間に応じて支払われた賃金が7,500円であるので、休業手当を支払わなくても違法ではない。
 なお、本肢において、日給が15,000円で所定労働時間が8時間であるから、4時間労働した場合の支払い賃金額が7,500円を下回る場合(たとえば6,000円)は、26条違反ではなくても24条違反となる。
 また、一部労働した場合の休業手当(使用者の補償義務)と休業補償給付(労災保険による保険給付)では額の計算の仕方が異なることにも注意を。

5
1
A
B
C
D

E
 26条の休業手当とは、「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならない」によるもの。
 特に、本肢の場合は、「使用者の責に帰すべき事由により半日休業した場合」とある。
 このような場合は、通達(S27.8.7基収3445)に、「一日の所定労働時間の一部のみを休業とした場合、現実に就労した時間に対して支払われる賃金が平均賃金の100分の60に満たない場合には、その差額を(つまり、合計で100分の60以上となるように)支払わなければならない」とある。
 よって、Bの「半日は出勤し労働に従事させており、労働基準法第26条の休業には該当しない」は誤りである。
 上記の通達に従って、使用者が休業手当として支払うべき金額を計算すると、「現実に就労した時間に対して支払われた賃金は5,000円」、「平均賃金の100分の60は、7,000×0.6=4,200円」で、差額は発生していない。
 つまり、使用者が休業手当として支払うべき金額は発生しない。
13
4D
 休業手当の支払時期に関する通達(S25.4.6基収207、S63.3.14基発150)によると、
 「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合における休業手当については、休業手当を賃金と解し、労基法24条2項に基づく所定賃金支払日に支払うべきである」
 よって、休業手当は賃金であるから24条1項も当然適用される。
19
2D
 休業手当の支払時期に関する通達(S25.4.6基収207、S63.3.14基発150)によると、
 「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合における休業手当については、休業手当を賃金と解し、労基法24条2項に基づく所定賃金支払日に支払うべきである」
⇒直接的には、労働していないのだから労働の対償とはいえないが、使用者の責任で労働できないのであって、もし何もなければ当然労働に服し賃金を得ていたであろうと考えられる。
 なお、賃金であるかないかは、その支払いが24条による5原則を適用すべきか否か、その原則に違反したときは罰則が課せられてしかるべきか否か、によっても判断できる場合がある。


5E
 「労働基準法第26条に定める休業手当は、賃金とは性質を異にする特別の手当」とある。
 しかしながら、通達(S25.4.6基収207、S63.3.14基発150)によると、「「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合における休業手当については、休業手当を賃金と解し、労基法24条2項に基づく所定賃金支払日に支払うべきである」とある。
13
4E
 通達(S61.6.6基発333号)によると、
 「派遣中の労働者の休業手当について、26条の使用者の責に帰すべき事由があるかどうかの判断は、派遣元の使用者についてなされる。したがって、派遣先の事業場が天災地変等の不可抗力によって操業できないために、派遣労働者を就業させることができない場合であっても、それが使用者の責に帰すべき事由に該当しないことは必ずしもいえず、派遣元の使用者について、当該労働者を他の事業場に派遣する可能性等を含めて判断し、その責に帰すべき事由に該当しないかどうかを判断する」
18
2E
 過去問(13-4E)の解説の通りである。
 なお、この問題を解く当然の前提として、一般的には、天災地変等の不可抗力によって操業できない場合は、使用者の責に帰すべき事由とはならない、ということを頭にいれておかないと、問題文が読みづらいものになる。
 しかしながら派遣社員の場合は、派遣先についてどういうことがおきようと関係なく、派遣元の使用者に責任があるのかないのかで判断されるということ。


2

 労働基準法第27条は、出来高払制の保障給として、「
使用者は、(C)労働時間に応じ一定額の賃金の保障をしなければならない」と定めている。
 27条に 、「出来高払制その他の請負制で使用する労働者については、使用者は、労働時間に応じ一定額の賃金の保障をしなければならない」とある通り。
 その趣旨については、通達(S63.3.14基発150)を参照のこと。
 ただし、27条には保障給の額については規定されていないので、保障給の定めがないとしても、使用者が罰せられるだけであって、労働者側から保障給を請求することはできない、とされている。
26
4E
 出来高払制の保障給については27条に、
 「出来高払制その他の請負制で使用する労働者については、使用者は、労働時間に応じ一定額の賃金の保障をしなければならない」とある。
 つまり、保障給は「労働時間に応じた一定額である必要があり、時間給が原則であって、労働時間には関係なく1か月に一定額を保障するというのは、27条にいう出来高払いの保障給ではない。
 また、その出来高や成果に応じた賃金の支払いだけでは十分でないから設けられたものである。
 その趣旨については、通達(S63.3.14基発150)に、
 「労働者の責に基づかない事由によって、実収賃金が低下することを防ぐ趣旨である。
 よって、労働者に対し、常に通常の実収賃金と余りへだたらない程度の収入が保障されるように保障給の額を定めるよう指導すること。
 なお、本条の趣旨は全額請負給に対しての保障給のみならず、一部請負給についても基本給を別として、その請負給について保障すべきものであるが、賃金構成からみて固定給の部分が賃金総額の大半(概ね6割程度以上)を占めている場合には、「請負制で使用する」場合には該当しない」とある。
 なお、上記において、「労働者の責に基づかない事由」としては、当人の技量や意欲等が原因ではなく、材料が粗悪であったあるいは材料が不足していたなどにより、労働したにもかかわらず出来高が減少したなどが該当する。
 また、27条違反(つまり、保障給の定めがない、あるいは定めがあるがこれを支払わない場合)については、「30万円以下の罰金」に処せられる。
 ただし、27条には保障給の額については規定されていないので、保障給の定めがないとしても、使用者が罰せられるだけであって、労働者側から保障給を請求することはできない、とされている。 
28
3E
 出来高払制の保障給とは、27条にあるように、「労働時間に応じた一定額の賃金を保障するもの」である。
 したがって労働時間1時間当たりいくらという時間給が原則であって、労働者の実労働時間の長短と関係なく1か月について一定の額を保障するものではない。

4
6オ
 27条による出来高払制の保障給は、「労働時間に応じた一定額である必要があり、時間給が原則である」
 そしてその趣旨については、通達(S63.3.14基発150)にあるように、「労働者の責に基づかない事由によって、実収賃金が低下することを防ぐ趣旨である。よって、労働者に対し、常に通常の実収賃金と余りへだたらない程度の収入が保障されるように保障給の額を定めるよう指導すること」とある。
 なお、具体的な保障給の金額などについては、労働法コンメンタール「労働基準法」(厚生労働省労働基準局編)の373P〜374Pに、「保障給の金額は、一定の労働については常に一定していることを要するが、本条の一定額とは、個々の労働者について、その行う労働が同種のものである限りは常に一定の金額を保障すべきであることをいうと解されるので、同種の労働を行っている労働者が多数ある場合に、個々の労働者の技量、経験、年齢等に応じて、その保障給額に差を設け、また同一の労働者に対しても、別種の労働に従事した場合には、異なる金額の保障給を支給することとすることは差し支えない」とある。
 つまり、同じ労働者については、同種の労働を行う限り一定額であるべき。(別種の労働を行う場合は別の一定額を適用してもよい)
 ただし、労働者が複数いる場合は、技量、経験、年齢等に応じて、労働者ごとに、別々の一定額を定めてもよい。
⇒労働者間の横並び保障ではない。
13
4B
 そもそも出来高払制の保障給とは、当該労働者が労働したにもかかわらず、出来高が減少したなどにより実質収入が低下した場合に、その労働時間に応じて一定の保障をするというものである。
 通達(S22.9.13)においては、「27条は労働者の責にもとづかない事由によって、実収賃金が低下することを防ぐ主旨である」とある。
 本肢の場合、使用者の責めに帰すべき事由によって休業するのであるから、出来高払制の保障給ではなく、26条による休業手当を支払わなければならない。
 なお参考までに、通達(S22.11.11基発1639号)によると、
 「労働者が使用者の責に帰すべき事由によらず休業した場合、労働しなかったのであるから、使用者は賃金の支払義務はなく、27条の保障給も当然支払うことを要しない」 ことになっている。 
17
1A
 27条において、「出来高払制その他の請負制で使用する労働者については、使用者は、労働時間に応じ一定額の賃金の保障をしなければならない」とあり、少なくとも労働時間に応じた保障を行う義務があるが、実際にどの程度保障しなければならないかは、明記されていない。
 この保障給の本来の趣旨からいうと、「本条は労働者の責にもとづかない事由によって、実収賃金が低下することを防ぐ主旨であるから、労働者に対し、常に通常の実収賃金と余りへだたらない程度の収入が保障されるやうに額を定めるやうに指導すること」(S22.9.13発基17)とある。
 本肢の場合、労働時間に応じた保障であること、保障額も26条の休業手当のレベルに相当していることから、27条に違反しているとは考えにくい。
20
6A
 前段については、64条の2の1号から、
 「使用者は、妊娠中の女性及び坑内で行われる業務に従事しない旨を使用者に申し出た産後1年を経過しない女性については、坑内で行われるすべての業務に就かせてはならない」とあり正しい。
 後段については、また、同2号から、
 「前号に掲げる女性以外の満18歳以上の女性については、坑内で行われる業務のうち人力により行われる掘削の業務その他の女性に有害な業務として厚生労働省令で定めるものに就かせてはならない」とあるから、妊産婦以外の女性であっても、完全に男性と同様というわけにはいかない。
 坑内労働といっても、最近は、地下鉄などのトンネル工事がふえてきたし、女性の土木技術者も増えてきた。
 よって、女性土木技術者がシールド工法によるトンネル工事などの管理・監督業務を行なうことは認められるようになった。(女性労働基準規則1条)
 ただし、作業員のような力仕事はだめだということである。
 なお、18歳未満の者の坑内労働については、63条により、男女を問わず禁止である。 

5
3A
 前段については、63条に「使用者は、満18歳に満たない者を坑内で労働させてはならない」とある通りで、男女を問わずこれが原則である。
 後段の18歳以上の妊婦等については、64条の2に「使用者は、次の各号に掲げる女性を当該各号に定める業務に就かせてはならない」とあり、その1号に、
 「妊娠中の女性及び坑内で行われる業務に従事しない旨を使用者に申し出た産後1年を経過しない女性:坑内で行われるすべての業務」とある。
 つまり、問題文にある「妊娠中の女性」については、その通りであるが、「坑内で行われる業務に従事しない旨を使用者に申し出た女性」については、産後1年を経過しない女性に限られ、1年を過ぎた女性については、もう少し緩やかな規制となる。
 すなわち、1年を過ぎた女性には、2号が適用され、「坑内で行われる業務のうち人力により行われる掘削の業務その他の女性に有害な業務として厚生労働省令で定めるもの」を就業させてはならない。
11
7C
 64条の2により
 妊娠中の女性、坑内で行われる業務に従事しない旨を使用者に申し出た産後1年を経過しない女性、の坑内業務は認められない。
 しかし、それ以外の18歳以上の女性については、従来は、
 「臨時の必要のため坑内で行われる業務で厚生労働省令で定めるものに限り認められる」とあったが、平成19年4月の法改正により、64条の2の2号にあるように、
 「坑内で行われる業務のうち人力により行われる掘削の業務その他の女性に有害な業務として厚生労働省令で定めるものはさせてはならない」となり、臨時の必要のための一定の作業だけが例外的に認められることはなくなった。
15
7A
 坑内労働の禁止に関しては63条により、
 「使用者は、満18歳に満たない者を坑内で労働させてはならない」とあり、正しい。
 しかし、満18歳以上の女性については、過去問(11-7C)の解説の通りで、
 妊娠中の女性と使用者に申し出た産後1年を経過しない女性の坑内業務は認められないが、それ以外の女性については、認められる範囲が若干拡大された。
25
4ウ
 妊産婦等に係る危険有害業務の就業制限に関する64条の3の1項に、
 「使用者は、妊娠中の女性及び産後1年を経過しない女性(妊産婦)を、重量物を取り扱う業務、有害ガスを発散する場所における業務その他妊産婦の妊娠、出産、哺育等に有害な業務に就かせてはならない」
 とあり、労働基準法による「妊産婦」とは、「妊娠中の女性及び産後1年を経過しない女性」のことである。
27
3

 労働基準法第64条の3では、(C)妊娠中の女性及び産後1年を経過しない女性を「妊産婦」とし、使用者は、当該女性を、重量物を取り扱う業務、有害ガスを発散する場所における業務その他妊産婦の妊娠、出産、哺育等に有害な業務に就かせてはならないとしている。
 64条の3に、「使用者は、妊娠中の女性及び産後1年を経過しない女性(妊産婦)を、重量物を取り扱う業務、有害ガスを発散する場所における業務その他妊産婦の妊娠、出産、哺育等に有害な業務に就かせてはならない」とある通り。
15
7D
 妊産婦等に係る危険有害業務の就業制限に関する64条の32項 に、
 「妊産婦の就業が禁止される業務のうち、女性の妊娠又は出産に係る機能に有害である業務として厚生労働省令で定めたものについては、妊産婦以外の女性に関してもこれに就かせてはならない」とある。
 ここで、「妊産婦以外の女性」とは、妊娠中の女性及び産後1年を経過しない女性以外の女性すなわち、妊娠中とか産後とかを問わずすべての女性労働者のことであり、女性労働基準規則3条から、
 「これらの者を就かせてはならない業務は、同基準規則2条の@及びQのイ、ロ、ハに掲げる業務とする」
 つまり、
・年齢区分別の一定以上の重量物を取り扱う業務、
・特定化学物質予防規則の適用をうける14種の化学物質を発散する場所において、作業環境測定の結果、第三管理区分に区分された場所における作業を行う業務など
・鉛中毒予防規則の適用を受ける鉛・鉛化合物を発散する場所において、作業環境測定の結果、第三管理区分に区分された場所における作業を行う業務など。
・有機溶剤中毒予防規則の適用を受ける12種の有機溶剤等を発散する場所において、作業環境測定の結果、第三管理区分に区分された場所における作業を行う業務など。

2
3A
 「労働基準法第64条の3に定める危険有害業務の就業制限」とあり、64条の3は主として妊産婦の就業制限が規定されているが、本肢のポイントは、「単に、女性を・・・」とあることに注意を。
 確かに、64条の3の2項に、「妊産婦の就業が禁止される業務のうち、女性の妊娠又は出産に係る機能に有害である業務として厚生労働省令で定めたものについては、妊産婦以外の女性に関してもこれに就かせてはならない」とある。
 ここで、「妊産婦以外の女性」とは、妊娠中の女性及び産後1年を経過しない女性以外の女性すなわち、妊娠中とか産後とかを問わずすべての女性労働者のことであり、女性労働基準規則3条から、
 「表1の年齢区分別制限を超える重量物を取り扱う業務は、いかなる女性も就かせてはならない」
 同表によれば、「30キログラム以上の重量物を取り扱う業務は、年齢に関わらず、就労させてはいけない」
 (就労禁止業務の一覧において、@は禁止パターンXXXXである)

2
3B
 「64条の3に定める危険有害業務の就業制限に関して、使用者は、女性を・・・・」とある
 64条の3は主として妊産婦の就業制限について、規定されており、その例外として、同条2項に、「厚生労働省令で定めたものについては、妊産婦以外の女性に関してもこれに就かせてはならない」とある。
 本肢は、「(単に)女性を、さく岩機、鋲打機等身体に著しい振動を与える機械器具を用いて行う業務に就かせてはならない」とあるから、「身体に著しい振動を与える機械器具を用いて行う業務」が、上記2項にいう「妊産婦以外の女性に関してもこれに就かせてはならない業務であるか」という問題。
 しかしながら、この業務は、女性労働基準規則2条により「妊娠中の女性を就かせてはならない業務」の24であり、かつ、女性労働基準規則2条2項の「産後1年未満の女性について制限する業務」でもあるが、女性労働基準規則3条による「妊娠中あるいは産後を問わず、いかなる女性に対しても制限する業務」ではない。
 (就労禁止業務の一覧において、24は禁止パターンXXX〇である)
23
7D
 妊産婦の危険有害業務への就業制限については、64条の3に規定があり、
 「使用者は、妊娠中の女性及び産後1年を経過しない女性を、重量物を取り扱う業務、有害ガスを発散する場所における業務その他妊産婦の妊娠、出産、哺育等に有害な業務に就かせてはならない」
 これだと一定業務については全面的に制限されているようにも見えるが、実際には同3項に、
 「業務の範囲及びこれらの規定によりこれらの業務に就かせてはならない者の範囲は、厚生労働省令で定める」とあって、具体的には、女性労働基準規則2条において、
 @妊婦について制限する業務
 A産後1年未満の女性について制限する業務、本人が申し出た場合のみ制限する業務が規定されており、。
 さらに、女性労働基準規則3条において、「妊娠中あるいは産後を問わず、いかなる女性に対しても制限する業務」が規定されている。。
 このうち、本肢にある「労働安全衛生法施行令1条3号に規定するボイラーの取扱いの業務」は基準規則2条にあるAの業務のことであり、同基準規則2条2項に
 「AからKまで、NからPまで及びRから23までに掲げる業務については、産後1年を経過しない女性が当該業務に従事しない旨を使用者に申し出た場合に限って就かせてはならない業務」とされている。
 (就労禁止業務の一覧において、Aは禁止パターンXX〇〇である)。

2
3C
 64条の3に定める危険有害業務の就業制限に関しては、具体的には、女性労働基準規則2条において、
 @妊婦について制限する業務
 A産後1年未満の女性について制限する業務、本人が申し出た場合のみ制限する業務が規定されており、。
 さらに、女性労働基準規則3条において、「妊娠中あるいは産後を問わず、いかなる女性に対しても制限する業務」が規定されている。
 このうち、本肢にある「つり上げ荷重が5トン以上のクレーンの運転の業務」は、女性労働基準規則2条のCに該当するので、「妊娠中の女性を就かせてはならない業務」である。
 なお、参考までに、同業務は、同基準規則2条2項から、「産後1年を経過しない女性が当該業務に従事しない旨を使用者に申し出た場合に、就かせてはならない業務」でもある。
 (就労禁止業務の一覧において、Cは禁止パターンXX〇〇である)

2
3E
 64条の3に定める危険有害業務の就業制限に関しては、具体的には、女性労働基準規則2条において、
 @妊婦について制限する業務
 A産後1年未満の女性について制限する業務、本人が申し出た場合のみ制限する業務が規定されており、
 さらに、女性労働基準規則3条において、「妊娠中あるいは産後を問わず、いかなる女性に対しても制限する業務」が規定されている。
 このうち、本肢にある「動力により駆動される土木建築用機械の運転の業務」はFの業務であるが、同基準規則2条2項に、「AからKまで、NからPまで及びRから23までに掲げる業務については、産後1年を経過しない女性が当該業務に従事しない旨を使用者に申し出た場合に、これに就かせてはならない」とある。
 つまり、「産後1年を経過しない女性が、動力により駆動される土木建築用機械の運転の業務に従事しない旨を使用者に申し出た場合、その女性を当該業務に就かせてはならない」
 (就労禁止業務の一覧において、Fは禁止パターンXX〇〇である)

2
3D
 64条の3に定める危険有害業務の就業制限に関しては、具体的には、女性労働基準規則2条において、
 @妊婦について制限する業務
 A産後1年未満の女性について制限する業務、本人が申し出た場合のみ制限する業務が規定されており、。
 さらに、女性労働基準規則3条において、「妊娠中あるいは産後を問わず、いかなる女性に対しても制限する業務」が規定されている。
 このうち、本肢にある「高さが5メートル以上の場所で、墜落により労働者が危害を受けるおそれのあるところにおける業務」は、女性労働基準規則2条のMに該当するので、「妊娠中の女性を就かせてはならない業務」であるが、同基準規則2条2項にある「産後1年を経過しない女性に対しては、当人の申し出の有無に関わらず、(LとM)就労制限業務からは外されている」
 つまり、「高さが5メートル以上の場所で、墜落により労働者が危害を受けるおそれのあるところにおける業務は、妊娠中の女性を除き、これに就かせてもよい」
 (就労禁止業務の一覧において、Mは禁止パターンX〇〇〇である)
 なお、問題文に「65条による休業期間を除く」とあるのは、産後の休業期間のことで、産後1年を経過しない女性とはいっても、産後休業中の者に、無理やりこれらの業務を強いることはできない。
18
3B
 産前産後の休業に関する65条の2項によると、
 「産後8週間を経過しない女性を就業させてはならない。ただし、6週間経過の女性が請求かつ医師が認めた業務に就かせることは、差し支えない」とある。
 問題の意図は妊娠100日目の分娩が産後に該当するか否かでになる。
 そこで、問題文の前半にわざわざ、「出産とは、妊娠4か月以上(1か月は、28日として計算する)の分娩(生産のみならず死産をも含む)をいう」と書いてある。
 これについては、通達(S23.12.23基発1885)において、
 「出産は妊娠4か月以上(1か月は28日と計算する)の分娩とし、生産(セイザン)のみならず死産をも含むものとする」とあるので、正しい。
 すると、問題は「妊娠100日目」の計算であるが、これは昔でいう数え計算で、最初の28日目までが1か月、56日目までが2か月、84日目までが3か月、よって100日目とは4か月のなかばということになる。
 つまり、これは出産ということになる。
 出産後少なくとも6週間は、本人が出勤したいといっても使用者は強制的に休業させなければならない。
25
4イ
 過去問解説(18-3B)の通りで、
 妊娠100日目とは、昔でいう数え計算で、最初の4週間(28日)目までが1か月、それ以降4週間ごとに1月と数えていくと、12週間(84日)目までが3か月、85日目から4か月に入り、100日目とは4か月のなかばということ。
 「出産とは、妊娠4か月以上の分娩で死産も含む」ことから、少なくとも(死)産後6週間までは絶対的に産後休業を与えなければならない。
29
2

 産前産後の就業について定める労働基準法第65条にいう「出産」については、その範囲を妊娠(C)4か月以上(1か月は28日として計算する)の分娩とし、生産のみならず死産も含むものとされている。
 産前産後の休業に関する労働基準法65条における出産については、通達(S23.12.23基発1885)によれば、「出産は妊娠4か月以上(1か月は28日と計算する)の分娩とし、生産(セイザン)のみならず死産をも含むものとする」とある。
 4か月以上とは、妊娠から85日目(3×28+1)以降のこと。
令3
6A
 65条の「出産」の範囲については、通達(S23.12.23基発1885)に、「出産は妊娠4か月以上の分娩をいい、1か月は28日と計算する」とある。
 84日(28日×3)で3か月が終了。85日から4か月に入って、112日(28日×4)までが4か月、113日から5か月に入って・・・・・・となる。
 すなわち、4か月以上とは85日以上のこと。
令3
6B
 65条の「出産」の範囲については、通達(S23.12.23基発1885)に、「出産は妊娠4か月以上(1か月は28日と計算する)の分娩とし、生産(セイザン)のみならず死産をも含むものとする」とある。
 本肢にある「妊娠中絶」については、通達(S26.04.02婦発113)に、「65条の「出産」の範囲は妊娠4か月以上の分娩である、従って、妊娠中絶であっても、妊娠4か月以後行った場合には、65条2項(産後の休業)の適用がある」としており、「出産の範囲に妊娠中絶が含まれることもありうる」
 参考までに、産前6週間の期間は、自然の分娩予定日を基準として計算するものであるから、出産予定日の6週間前に至っていないか、既に請求して休業中であるか、請求せず就業中であるかのいずれかであり、改めては発生しない。
 一方、産後8週間の期間は現実の出産日の翌日からであるから、妊娠4か月以降に妊娠中絶をすれば、その翌日から産後の休業となる。

5
3B
 「女性労働者が妊娠中絶を行った場合」とある。
 まず、産前6週間の休業期間については、自然の分娩予定日を基準として計算するものであるから、出産予定日の6週間前に至っていないか、既に請求して休業中であるか、請求せず就業中であるかのいずれかであり、中絶による問題は改めては発生しない。
 次に、産後の休業期間については、通達(S26.04.02婦発113)に、「65条の「出産」の範囲は妊娠4か月以上の分娩である、従って、妊娠中絶であっても、妊娠4か月以後行った場合には、65条2項(産後の休業)の適用がある」としている。
 参考までに、妊娠4か月以後とは、1か月は28日と計算するので、84日(28日×3)で3か月が終了。85日目から4か月に入って112日(28日×4)までが4か月となる。
 すなわち、4か月以上とは妊娠85日以上のこと。
令3
6D
 産前の休業については、65条1項に、「6週間(多胎妊娠の場合にあっては、14週間)以内に出産する予定の女性が休業を請求した場合においては、その者を就業させてはならない」とあって、請求が就業禁止のための要件になっている。
 よって、「6週間(14週間)全部か一部かを問わず、当該女性労働者の請求がなければ、65条1項による就業禁止には該当しない」ことになる。

3
6C
 問題文前段の産後休業期間については、65条2項「使用者は、産後8週間を経過しない女性を就業させてはならない。ただし、産後6週間を経過した女性が請求した場合において、その者について医師が支障がないと認めた業務に就かせることは、差し支えない」とある通り。
 後段にある「出産当日」については、就業の絶対禁止期間である産後に属すると考えがちであるが、産前の休業期間について規定した65条1項に、「6週間(多胎妊娠の場合にあっては、14週間)以内に出産する予定の女性が休業を請求した場合においては、その者を就業させてはならない」とあって、出産予定日を基準として6週間(14週間)以内を産前休業期間としていることから、「出産当日は産前期間である」
 この点については、通達(S25.03.31基収4057)においても、「出産当日は産前6週間に含まれる」としている。
 よって、実際の出産日が予定日より遅くなった場合でも、産前の休業期間は(予め請求がなされている限り)自動的に実際の出産日まで延長される。
 実際の出産日の翌日から、絶対就業禁止の産後休業期間に入る。
20
6B
 産前産後の休業に関する65条の2項に、
 「使用者は、産後8週間を経過しない女性を就業させてはならない。ただし、産後6週間を経過した女性が請求した場合において、その者について医師が支障がないと認めた業務に就かせることは、差し支えない」とある。
 請求のいかんにかかわらず絶対的に就業禁止なのは、産後6週間までである。
19
7A
 産前産後の休業に関する65条の2項によると、
 「産後8週間を経過しない女性を就業させてはならない。ただし、産後6週間を経過した女性が請求した場合において、その者について医師が支障がないと認めた業務に就かせることは差し支えない」とある。
 要するに、産後6週間だけは母体保護の観点から請求の有無にかかわらず絶対休業である。
 6週間経過後は、本人の請求+医師の許可があれば、就労可能となる。
 本肢で見落としてはいけないことは、「監督・管理の地位にある女性及び産後6週間経過した女性」とあり、監督・管理者には6週間経過という条件がついていないことである。
 いくら重責にある女性といえども、「監督・管理の地位にある女性も含めて、産後6週間だけは絶対休業」である。
19
7B
 65条第3項によると、
 「使用者は、妊娠中の女性が請求した場合においては、他の軽易な業務に転換させなければならない」とある。
 「産後1年を経過しない女性」にまで適用されるものではない。
 軽易な業務への転換義務の趣旨については、通達(S61.3.20基発151、婦発69)に、「原則としてその女性が請求した業務に転換させる趣旨であるが、新たに軽易な業務を創設して与える義務まで課したものではない」とある。
26
6D
 産前産後の休業の規定に関連して、65条第3項に、
 「使用者は、妊娠中の女性が請求した場合においては、他の軽易な業務に転換させなければならない」とある。
 ただし、この規定は具体的な業務をあげて、その業務に就かせることを禁止したものではなく、「妊娠中の女性が請求した」ことを条件に、原則として、その事業場内にあってその女性が希望する業務に転換させる趣旨であり、通達(S61.3.20基発151、婦発69)にあるように、「新たに軽易な業務を創設して与える義務まで課したものではない」とされている。
 この場合、事業場内にその女性が希望するような軽易な業務がどうしてもないときは、やむを得ず休業に至ることもあり得るが、その場合でも一般的には、「使用者の責に帰すべき事由による休業」にはならないとされている。
 また、これに関連して、問題文にある「医師が他の軽易な業務に転換させなくても支障がないと認めた場合には、他の軽易な業務に転換させなくても差し支えない」というようなルールはない。
 参考までに、産前産後の休業に関連して医師の出番があるのは、65条2項
 「使用者は、産後8週間を経過しない女性を就業させてはならない。ただし、産後6週間を経過した女性が請求した場合において、その者について医師が支障がないと認めた業務に就かせることは、差し支えない」とある場面である。
15
6C
 通達(S61.3.20基発151)にあるとおり、
 管理監督者に該当するものにも適用されないのは、労働時間、休憩及び休日に関する規定であり、65条3項は適用される。
17
5E
 通達(S61.3.20基発151、婦発69)によると、
 「法第65条第3項は原則としてその女性が請求した業務に転換させる趣旨であるが、新たに軽易な業務を創設して与える義務まで課したものではない」とある。

3
6E
 65条3項とは、「使用者は、妊娠中の女性が請求した場合においては、他の軽易な業務に転換させなければならない」
 これを補足する通達(S61.3.20基発151、婦発69)によれば、
 「法第65条第3項は原則としてその女性が請求した業務に転換させる趣旨であるが、新たに軽易な業務を創設して与える義務まで課したものではない」とある。
25
4オ
 66条2項に、「使用者は、妊産婦が請求した場合においては、第33条第1項(災害時等における時間外・休日労働)及び第3項(公務のための臨時の時間外労働・休日労働)並びに第36条第1項(労使協定による時間外労働・休日労働)の規定にかかわらず、時間外労働をさせてはならず、又は休日に労働させてはならない」とある通り。
 参考までに、フレックスタイム制を除く変形労働時間制においても、妊産婦が請求した場合は、法定労働時間を超えて労働させてはならない。

5
3D
 災害等による臨時の必要がある場合の時間外労働等を規定した33条1項によると、「災害その他避けることのできない事由によって、臨時の必要がある場合においては、使用者は、行政官庁の許可を受けて、その必要の限度において、労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる。ただし、事態急迫のために行政官庁の許可を受ける暇がない場合においては、事後に遅滞なく届け出なければならない」
 この規定の年少者への適用については、通達(S23.07.05基収1685)によれば、
 「年少者を33条1項の規定により、労働時間を延長し又は休日に労働させる場合には、年少者に関する労働時間、休日労働及び深夜労動の規制は適用されない」
 すなわち、年少者(18歳未満)であっても、33条1項の適用により、18歳以上の者と同様に、時間外労働、休日労働、深夜労働をさせることができる。
 次に、妊産婦が請求した場合においては、妊産婦の請求による就業禁止について規定した66条2項により、「使用者は、妊産婦が請求した場合においては、非常時災害時等の時間外・休日労働をさせてはならない」とあって、33条1項の適用はない。
29
7D
 妊産婦の時間外労働、休日労働については、66条2項にあるように、「妊産婦が請求した場合には、労使協定があったとしても、時間外労働・休日労働をさせてはならない」
 また、深夜業についても、66条3項に、「妊産婦が請求した場合には深夜業をさせてはならない」
 さらに、妊産婦が管理監督者等の場合は通達(S61.3.20基発151)に、「労働時間に関する規定が適用されないため、66条1項、2項は適用の余地ないが、3項の規定は適用され、これらの者が請求した場合にはその範囲で深夜業が制限される」とある。
 よって、すべての妊産婦について、時間外労働、休日労働、深夜業が自動的に禁止となるのではない。
 なお、「妊産婦」とは、「妊娠中の女性及び産後1年を経過しない女性」のこと。
13
7E
 66条3項により、
 「使用者は、妊産婦が請求した場合においては、深夜業をさせてはならない」とある。
14
4C
 66条1項によると、「妊産婦が請求した場合においては、時間外労働又は休日労働をさせてはならない」とあるが、41条によると、
 「労働時間・休憩・休日及び、年少者・妊産婦等について定める労働時間・休憩・休日に関する規定は、監督若しくは管理の地位にある者など一定の者に適用しない」とある。
 なお参考までに、通達(S61.3.20基発151号)によると、
 「労基法41条に該当するものである妊産婦には、労働時間に関する規定が適用されないため、66条1項及び2項の規定は適用の余地がない。ただし、3項は適用され、これらの者が請求した場合にはその範囲で深夜業が制限される」とある。
 つまり、妊産婦であっても監督・管理者である場合は、時間外労働・休日労働はあってもやむをえないが、深夜業は請求さえすれば拒否できる。
19
7D
 過去問14-4Cなどの焼き直しである。
 66条1項によると、「妊産婦が請求した場合においては、時間外労働又は休日労働をさせてはならない」とあるが、41条によると、
 「労働時間・休憩・休日及び、年少者・妊産婦等について定める労働時間・休憩・休日に関する規定は、監督若しくは管理の地位にある者など一定の者に適用しない」とある。
 問題文にはやたらと条文番号が多いが、33条1項、3項は非常災害時の時間外労働、36条1項は時間外・休日労働、41条2号は労働時間等規定の適用除外についての規定であるが、これらの番号を覚えていなくても解答できる。
20
6C
 66条2項に、
 「使用者は、妊産婦(妊娠中の女性及び産後1年を経過しない女性)が請求した場合においては、非常時災害時等の時間外・休日労働、36条による時間外・休日労働をさせてはならない」とある。
 本肢のポイントは「41条各号に掲げる者」の取り扱いであるが、通達(S61.3.20基発151)に、
 「妊産婦のうち、41条に該当する者(管理監督者など)については、労働時間に関する規定が適用されないため、36条による時間外・休日労働拒否の請求の余地はない」とある。
「労働基準法36条第1項に基づく労使協定が締結されている場合であっても」というところに惑わされてはならない。
そもそも36協定が締結されていなければ、妊産婦であろうとなかろうと、請求しようとしまいと、36条による時間外・休日労働をさせてはならないのだから。

3
5D
 「労働基準法第32条(労働時間)又は第40条(労働時間及び休憩の特例)に定める労働時間の規定は、事業の種類にかかわらず監督又は管理の地位にある者には適用されない」とある。
 これは、41条に「4章(労働時間、休憩、休日及び年次有給休暇)、6章(年少者)及び6章の2(妊産婦等)で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号のいずれかに該当する労働者については適用しない」とあって、その2号に「監督管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者」とあることによる。
 なお、妊産婦の請求による就業禁止については、66条の1項「妊産婦が請求した場合は、変形労働時間制の規定にかかわらず、1週間に40時間、1日に8時間を超えて労働させてはならない」
 また、同条2項に「妊産婦が請求した場合は、非常時災害時等の時間外・休日労働、36条による時間外・休日労働をさせてはならない」とあるが、通達(S612.3.20基発151)によれば、
 「労基法41条に該当するものである妊産婦には、労働時間に関する規定が適用されないため、66条1項及び2項の規定は適用の余地がない。ただし、3項は適用され、これらの者が請求した場合にはその範囲で深夜業が制限される」とある。
 要するに、「監督又は管理の地位にある妊産婦については、本人から請求があったとしても、時間外労働又は休日労働をさせることができる」
15
6B
 過去問(14-4C)の解説の通りで、
 「妊産婦である管理監督者が請求した場合であっても、時間外労働、休日労働をさせることはできるが、深夜業はさせてはならない」
17
5B
 66条2項3項により、
 「使用者は、妊産婦が請求した場合においては、33条1項(非常時災害時等の時間外・休日労働)、同3項(公務のために臨時の必要がある場合の時間外・休日労働)、36条1項(36協定による時間外・休日労働)ならびに深夜業をさせてはならない」とある。
 一方、41条2号の管理監督者に該当するものに対しては、通達(S612.3.20基発151)において、
 「労基法41条に該当するものである妊産婦には、労働時間に関する規定が適用されないため、66条1項及び2項の規定は適用の余地がない。ただし、3項は適用され、これらの者が請求した場合にはその範囲で深夜業が制限される」とある。
 すなわち、管理監督者に適用されないのは、労働時間、休憩及び休日に関する規定であって、深夜業の禁止規定は適用される。
17
2B
 38条の3の規定(専門業務型裁量労働制)における労働時間のみなしに関する規定とは、「労使協定により、専門業務型裁量労働制に該当する業務を定め、この業務の遂行に必要とされる時間を定めた場合は、この業務に従事した労働者は、協定で定めた時間労働したものと見なす」ということであり、施行規則24条の2の2において、「38条の3の規定は、4章の労働時間に関する規定の適用に係る労働時間の算定について適用する」とあるから、4章にある労働時間に関する規定は、このみなし労働時間に対して適用される。
 一方、通達(H12.1.1基発1)によると、「専門業務型裁量労働制に係る労働時間のみなしに関する規定は、4章の労働時間に関する規定の適用に係る労働時間の算定について適用されるものであり、6章の年少者及び6章の2の妊産婦等の労働時間に関する規定の適用に係る労働時間の算定については適用されない。
 また、労働時間の見なしに関する規定が適用される場合であっても、休憩、深夜業、休日に関する規定の適用は排除されない」とある。
 すなわち、妊産婦や年少者などに対しては、「協定で定めたみなし労働時間」は適用せず、実際に労働した時間によって、労働時間の限度や時間外の規制を行うということ。
 38条の4(企画業務型裁量労働制)についても、同様の論理である。
12
7D
 通達(S61.3.20基発151号)によれば、
 「妊娠中の女子については、66条に基づく請求及び65条3項に基づく軽易な業務への転換の請求のいずれか一方又は双方を行うことを妨げるものではない」
 つまり、両方を同時に請求することはできないということはない。
19
7C
 過去問12-7Dの焼き直しである。
 まず、65条3項により、「妊娠中の女性は軽易な業務への転換の請求できる」
 また、66条3項により、「妊娠中の女性(この場合は産後1年を経過しない女性も含めて)は、深夜業(時間外・休日労働も含めて)拒否の請求ができる」
 これらのうちどれかを選択すべきかどうかについては、通達(S61.3.20基発151号)により、
 「軽易な業務への転換の請求、深夜業拒否の請求のいずれか一方だけではなく、双方を行うことができる」
15
6D
 67条によると、「生後満1年に達しない生児を育てる女性は、34条の休憩時間のほか、1日2回各々少なくとも30分、その生児を育てるための時間を請求することができる」とある。男性労働者には認められていない。
労基法は母乳しか認めないという狭い了見ではなく、母親とのスキンシップが大事であるとするがためか? ただし、この場合の女性は実の母親とは限らない(生みの親に限るという説もある)となると女性のみと限定し、かつそれを社労士問題に出す意図はどこにあるのだろうか。
 「その後の追記」 産後1年以内の女性が、いっときの間でも労働から開放されることは、肉体的にも精神的にも必要なことである。単に授乳だけの問題ではないとも解される。
30
2
選択
 生後満1年に達しない生児を育てる女性は、労働基準法第34条の休憩時間のほか、1日2回各々少なくとも(B)30分、その生児を育てるための時間を請求することができる。
 「生児を育てるための時間」すなわち育児時間については、労働基準法67条に、「生後満1年に達しない生児を育てる女性は、第34条の休憩時間のほか、1日2回各々少なくとも30分、その生児を育てるための時間を請求することができる」とあり、
 請求がなされた場合は、同2項から、「育児時間中は、その女性を使用してはならない」とされている。
20
6D
 67条1項、2項から、
 「生後満1年に達しない生児を育てる女性は、1日2回各々少なくとも30分の育児時間を請求することができ、その育児時間中は、その女性を使用してはならない」とある。
 注意すべきは、67条が適用されるのは女性に限る、ということ。
 参考までに、67条違反に対する罰則は119条により、「6箇月以下の懲役又は30万円以下の罰金」とかなり重い。
17
5A
 「67条は、1日の労働時間を8時間とする通常の勤務態様を予想し、その間に1日2回の育児時間の付与を義務づけるものであって、1日の労働時間が4時間以内である場合には、1日1回の育児時間の付与をもって足りる法意と解する」(S36.1.9基収8996)とある。
問題文にわざわざ「労働時間の長さにかかわらず」とあることに着目すべき。問題文において、条文が正確に書いてあり、しかもその条文通りに解釈すると、正解が得られないという皮肉な例である。
19
7E
 67条の「生後満1年に達しない生児を育てる女性は、第34条の休憩時間のほか、1日2回各々少なくとも30分、その生児を育てるための時間を請求することができる」と本肢の問題文
 「生後満1年に達しない生児を育てる女性は、第34条の休憩時間のほか、労働時間の途中において、1日2回各々少なくとも30分、その生児を育てるための時間を請求することができる」を注意深く読み比べると、
 問題文には「労働時間の途中において」という文言が追加されている。
 試験場において、これに気づくか、気づいたとして対処できるかということになると、かなり難しい。
 育児時間をいつ与えると合法であるかについては、通達(S33.6.25 基収4317)において、
 「育児の時間を勤務時間の始め又は終わりの時間に請求した場合、その時間に労働させることは違反である」としている。
 つまり、労働時間の途中と限定されているわけではなく、「請求者が要求したときに与えればよい」と解される。
 なお同通達によれば、育児時間の間を有給とするか無給とするかも自由とされている。
 また、「1回30分とは請求があった場合就業させ得ない時間であり、従って託児所の施設がある場合、往復時間を含めて30分の育児時間が与えられていれば違法ではないが、往復の所要時間を除き実質的な育児時間が与えられることが望ましい」(S25.7.22基収2314)
15
6E
 育児を行う者等への特別な配慮について、労基法施行規則12条の6によると、
 「使用者は、法第32条の2(1か月単位の変形労働時間制)、第32条の4(1年単位の変形労働時間制)、又は第32条の5(1週間単位の非定型的変形労働時間制)の規定により労働者に労働させる場合には、育児を行う者、老人等の介護を行う者、職業訓練又は教育を受ける者の他、特別の配慮を要する者については、これらの者が育児等に必要な時間を確保できるような配慮をしなければならない」
 よって、フレックスタイム制については、適用対象にはなっていない。
14
4E
 育児・介護休業法23条1項において、
 「事業主は、その雇用する労働者のうち、1歳に満たない子を養育する労働者で育児休業をしないものにあっては、労働者の申出に基づく勤務時間の短縮、その他の当該労働者が就業しつつその子を養育することを容易にするための措置を、1歳から3歳に達するまでの子を養育する労働者にあっては、育児休業の制度に準ずる措置、又は勤務時間の短縮等の措置を講じなければならない」
としており、始業時刻、終業時刻についての措置はこれによる。
 しかし、この措置により労基法67条の適用が免れるという定めはない。
20
6E
 68条には、
 「生理日の就業が著しく困難な女性が休暇を請求したときは、その者を生理日に就業させてはならない」とあるが、
 「有給で休暇を与えよ」とまでは規定していない。
 休暇中の賃金については、通達(S23.6.1基収1898)に
 「一般に休暇中の賃金は、労働契約、労働協約又は就業規則で定めるところによって、支給しても支給しなくても差し支えない」とされている。
 さらには、通達(S63.3.14基発150)によると、
 「休暇の日数については、生理期間、その他の苦痛の程度あるいは就労の難易は各人によって異なるものであり、客観的な一般基準は定められない。従って、就業規則その他によりその日数を限定することは許されない。
 ただし、有給の休暇の日数を定めておくことは、それ以上の休暇を与えることが明らかにされていれば差し支えない」ともある。
23
7E
 前段については、68条に、
 「生理日の就業が著しく困難な女性が休暇を請求したときは、その者を生理日に就業させてはならない」とあり、正しい。
 後段については、最高裁判例[未払賃金(NBC工業事件)](S60.07.16)によると、
 「68条は、所定の要件を備えた女子労働者が生理休暇を請求したときは、その者を就業させてはならない旨規定しているが、年次有給休暇については同法39条7項においてその期間所定の賃金等を支払うべきことが定められているのに対し、
 生理休暇についてはそのような規定が置かれていないことを考慮すると、その趣旨は、当該労働者が生理休暇の請求をすることによりその間の就労義務を免れ、その労務の不提 供につき労働契約上債務不履行の責めを負うことのないことを定めたにとどまり、
 生理休暇が有給であることまでをも保障したものではないと解するのが相当である。
 したがつて、生理休暇を取得した労働者は、その間就労していないのであるから、 労使間に特段の合意がない限り、その不就労期間に対応する賃金請求権を有しないものというべきである」
 なお参考までに、同判例によると、
 「生理休暇は、同法65条所定の産前産後の休業と異なり、平均賃金の計算や年次有給休暇の基礎となる出勤日の算定について特別の扱いを受けるものとはされておらず、
 これらの規定に徴すると、同法68条は、使用者に対し生理休暇取得日を出勤扱いにすることまでも義務づけるものではなく、これを出勤扱いにするか欠勤扱いにするかは原則として労使間の合意に委ねられているものと解することができる 」としている。
26
6E
 68条に定める生理日の休暇の日数については、通達(S63.3.14基発150)に、
 「生理期間、その間の苦痛の程度あるいは就労の難易は各人によって異なるものであり、客観的な一般的基準は定められない。
 したがって、就業規則その他によりその日数を限定することは許されない。
 ただし、有給の休暇の日数を定めておくことは、それ以上の休暇を与えることが明らかにされていれば差し支えない」とある。
 なお、この休暇は、通達(S61.03.20基発151、婦発69)によれば、必ずしも暦日単位で行われなければならないものではなく、半日又は時間単位で請求した場合は、その範囲で就業させてはならないものである。
29
7E
 前段については、68条に「請求したときは、その者を生理日に就業させてはならない」とある通り。
 後段にある請求方法については、通達(S23.05.05基発682)によると、
 「生理日の就業が著しく困難という就業困難の挙証責任は女性労働者にあると思うが如何。なお、この場合その挙証について客観的な妥当性例えば医師の診断書等を欠く場合において使用者はこれを拒否し得るか」というお伺いに対して、回答は
 「生理日の就業が著しく困難な女性が休暇を請求したときは、その者を生理日に就業させてはならないが、その手続を複雑にすると、この制度の趣旨が抹殺されることになるから、原則として特別の証明がなくても女性労働者の請求があった場合には、これを与えることにし、特に証明を求める必要が認められる場合であっても、右の趣旨に鑑み、医師の診断書のような厳格な証明を求めることなく、一応事実を推断せしめるに足れば充分であるから、例えば同僚の証言程度の簡単な証明によらしめるよう指導されたい」とある。