3 労働基準法 解答の解説 Tome塾Homeへ
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3A
 問題文にある民法627条(期間の定めのない雇用の解約の申入れ)1項とは、
 「当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から2週間を経過することによって終了する」のことであり、期間の定めのない雇用契約は、いつでも解約を申入れることができ、その日から2週間後に解約となる。
 この申入れは、「当事者」とあるから使用者から申入れること(解雇)も、労働者側から申入れること(任意退職)もできる。
 「労働基準法20条は、この民法627条1項の特別法に当たる規定」とあるのは、通常何もなければ民法の規定が適用されるはずであるが、労働基準法20条にはこれとは異なる内容が定めてあるという意味であり、その場合は、「特別法は一般法に優先する」ことになる。
 労働基準法20条と民法627条の規定の違いは、「30日前」と「2週間前」の違いだけかというのが、本肢の論点。
 そもそも労基法20条の趣旨は、解雇が適法かどうかは別として、突然の解雇により労働者が被る経済的困窮を少しでも緩和するために、少なくとも30日前の予告(その間は、労働者は労働する義務が、使用者には賃金の支払義務がある)か、少なくとも30日分の平均賃金の支払い義務、あるいはこれらの組み合わせを、使用者に課したものである
 同条の冒頭にも「使用者は」とあり、その文章構成からいってもその趣旨からいっても、使用者にのみ適用されるものといえる。
 結論として、労働者が一方的に労働契約を解約する場合は、解雇にはあたらないので、労働基準法20条の適用はなく、「(使用者が)30日前に予告する」ことは求められていない。
 (解雇とは、労働契約を解約するという使用者側からの一方的な意思表示による。詳しくはこちらを参照のこと)
 本肢の場合は、労働者が民法に基づいて、少なくとも2週間前までに辞職の申入れを行う必要がある。   参考までに、上記にある民法の規定は、あくまでも「当事者が雇用の期間を定めなかったとき」の場合であり、いわゆる有期雇用の場合は、原則として、どちらからも中途での解約はできず、強行する場合は、契約不履行の問題が発生する可能性がある。


4D
 使用者が労働者を解雇しようとする場合においては、20条にあるように、「少くとも30日前にその予告をしなければならない。(ただし、天災事変その他やむを得ない事由、あるいは労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合は除く」
 この場合の予告期間の計算については、労働法コンメンタール「労働基準法上P303−308」予告の中の予告期間によると、「予告期間の計算については、本法に特別規定がないから民法の一般原則によることになり、解雇予告がなされた日は算入されず、その翌日から計算され、期間の末日の終了をもって期間の満了となるので、予告の日と、解雇の効力発生の日との間に、中30日間の期間を置く必要がある。
 また、30日間は労働日ではなく、暦日で計算されるので、その間に休日または休業日があっても延長されない」とある通り。
 よって、「休業日は当該予告期間には含まれない」とするは誤り。
 参考までに、例えば、6月30日に解雇(その日の終了をもって解雇の効力発生)するためには遅くとも5月31日には解雇の予告をしておかなければならない。
 この場合、6月1日から6月30日までの30日間が予告期間で、6月30日の終了をもって、すなわち7月1日午前0時に解雇の効力が発生する。

4
1

 労働基準法第20条により、いわゆる解雇予告手当を支払うことなく9月30日の終了をもって労働者を解雇しようとする使用者は、その解雇の予告は、少なくとも(A)8月31日までに行わなければならない。
 20条に、「使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも30日前にその予告をしなければならない。30日前に予告をしない使用者は、30日分以上の平均賃金を支払わなければならない。但・・・」とあり、解雇予告手当を支払うことなく解雇するためには、少なくとも30日前に解雇予告をしなければならない。
 この場合の予告期間の計算は、「暦日」で翌日起算である。
 よって、9月30日の終了をもって解雇するには、9月1日から9月30日までの30日間を予告期間として、8月31日までには解雇予告をしなければならない。(9月30日の夜12時をもって予告期間30日が満了となるので、10月1日午前0時から解雇が有効になる)
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3A
 「解雇予告の意思表示は一般的には取り消すことを得ない」とある。
 これについては、労働法コンメンタール「労働基準法上P303−308」予告の中の予告の取消において、
 「解雇の予告は、使用者が一方的になす労働契約解除の意思表示であって、これを取り消すことはできない。これは、使用者の単独行為たる予告を一方的に取り消し得るとすると、予告通知を受けた労働者の法律上の地位が極めて不安定な状態に置かれるからで、このような状態をもたらさない取消し、いいかえれば労働者の同意を得て取り消すことは差し支えないと解される」とある。
 上記の後段については、通達(S33.2.13 基発90号(20条関連)のその3))によると、
 「使用者が行った解雇予告の意思表示は一般的には取り消すことを得ないが、労働者が具体的事情の下に自由な判断によって同意を与えた場合には、取り消すことができるものと解すべきである」とある。

2
5ウ
 解雇予告の取消については、労働法コンメンタール「労働基準法上P303−308」予告の中の予告の取消において、
 「解雇の予告は、使用者が一方的になす労働契約解除の意思表示であって、これを取り消すことはできない。これは、使用者の単独行為たる予告を一方的に取り消し得るとすると、予告通知を受けた労働者の法律上の地位が極めて不安定な状態に置かれるからである」
 つまり、「お前はクビといわれれば、解雇無効の争いをしない限り、それに従わざるをえないから、それ相応に次の準備を進めているかもしれない。(すでに、再就職先を見つけているかもしれない)
 そのような状況において、使用者が一方的に取消しできるとなると、労働者はきわめて不安定な立場におかれることになるからである。
 しかしながら、「労働者が具体的事情の下に自由な判断によって(予告解雇の)同意を与えた場合はどうか」となると、通達(S33.2.13 基発90号(20条関連)のその3))において、
 「使用者が行った解雇予告の意思表示は一般的には取り消すことを得ないが、労働者が具体的事情の下に自由な判断によって同意を与えた場合には、取り消すことができるものと解すべきである」とされている。
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3D
 解雇予告とその取消しについては、通達(S33.2.13基発90号(20条関連)のその3)において、
 「使用者が行った解雇予告の意思表示は一般的には取り消すことを得ないが、労働者が具体的事情の下に自由な判断によって同意を与えた場合には、取り消すことができるものと解すべきである。
 しかし、解雇予告の意思表示の取り消しに対して、労働者の同意がない場合は、(取り消すことができないのだから)自己退職の問題は生じない」とある。
 ここで自己退職(任意退職)とは、「労働契約を解約するという労働者側からの一方的な意思表示によるのもので、解雇ではない」
 本肢の場合、一度解雇予告された労働者がその取り消しには同意していない。また、その労働者が労働契約を解約すると一方的な意思表示をしたわけでもない。
 よって、「自己退職(任意退職)したこととなる」はまるっきりの間違いで、予告期間を経過した日に解雇が成立したこととなる。
24
3ア

 
 解雇予告とその取消しについては、労働法コンメンタール「労働基準法上P303−308」予告の中の予告の取消において、
 「解雇の予告は、使用者が一方的になす労働契約解除の意思表示であって、これを取り消すことはできない。これは、使用者の単独行為たる予告を一方的に取り消し得るとすると、予告通知を受けた労働者の法律上の地位が極めて不安定な状態に置かれるからで、このような状態をもたらさない取消し、いいかえれば労働者の同意を得て取り消すことは差し支えないと解される」とある。
 そして、「このような状態をもたらさない取消し」については、通達(S33.2.13 基発90号(20条関連)のその3)がある。
 本肢の場合、一度解雇予告された労働者がその取り消しには同意していないので、「解雇予告の取り消しはなかったものとなり、当該予告期間を経過した日に、解雇が成立する」ことになる。
 なお、問題文には、「当該労働者は任意退職したこととなる」とあるが、任意退職とは、労働契約を解約するという労働者側からの一方的な意思表示によるのものであり、本肢の例では、そのような意思表示もされていないので、誤りである。、
18
7A
 この最高裁判例は細谷服装事件(最高裁第二小法判昭35.3.11)のことである。
 事件のあらましは、ある洋服製造会社の労働者が、昭和24年8月に解雇の通知を受けた。このとき、使用者は20条による解雇予告期間を置かず、予告手当も支払わなかった。
 そこで、労働者は8月分の未払い賃金及び退職金の支払いを求めて提訴したところ、一審の口頭弁論終結日に、未払賃金と予告手当が支払われたが、裁判では敗訴した。
 労働者は、未払賃金と予告手当を支払った時点(昭和26年3月)まで解雇の効力が発生していないと主張してこの間の賃金支払いと、未払賃金と予告手当不払いに対する付加金の請求について争ったのである。
 これに対し、解雇の時期についての判決文では、「使用者が労働基準法20条所定の予告期間をおかず、または予告手当の支払をしないで労働者に解雇も通知をした場合、その通知は即時解雇としては効力を生じないが、使用者が即時解雇に固執する趣旨でない限り、通知後同条所定の30日の期間を経過するか、または通知の後に同条所定の予告手当の支払をしたときは、そのいずれかのときから解雇の効力を生ずるものと解すべきである」とあり、問題文の通りである。
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2D
 問題文にある最高裁判所の判例とは、細谷服装事件((最高裁第二小判昭35.3.11)のことであり、
 解雇の時期についての判決によれば、
 「所定の予告期間を置かず予告手当の支払もしないで労働者に解雇の通知をした場合には、即時解雇が認められなければ解雇しないというのでない限り、その解雇通告は、その後30日の期間経過をもってその効力を生ずるものと解するを相当とすべきである」としている。
  なお、この事件のあらましについてはこちらを
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2B
 最高裁判例細谷服装事件(最高裁第二小判昭35.3.11)を思い出して欲しい。
 要するに、解雇予告期間もおかず、予告手当も支払わずに解雇の通告をしたことに対して、解雇の時期についての判決によれば、
 「使用者が労働基準法20条所定の予告期間をおかず、または予告手当の支払をしないで労働者に解雇も通知をした場合、その通知は即時解雇としては効力を生じないが、使用者が即時解雇に固執する趣旨でない限り、通知後同条所定の30日の期間を経過するか、または通知の後に同条所定の予告手当の支払をしたときは、そのいずれかのときから解雇の効力を生ずるものと解すべきである」
 よって、問題文に戻って、
 「使用者が解雇の予告をすることなく労働者を解雇した場合において、使用者が行った解雇の意思表示が解雇の予告として有効」とあるのは正しく、この場合、予告手当を払っていないので、通告してから30日後に解雇が成立することになる。
 逆にいうと、通告後30日間は労働契約はまだ有効であって、労働者は労働する義務が、使用者はそれに対して賃金を払う義務がある。
 本肢の場合、労働者が無理やり出勤すれば、これに仕事を与え、賃金を支払わなければならない。
 通達(S24.7.27基収1701)によると、「使用者の行った解雇の意思表示が解雇の予告として有効と認められ、かつ、その解雇の意思表示があったために予告期間中労働者が休業した場合は、使用者は解雇が有効に成立するまで日までの期間、休業手当を支払えばよい(支払わなければならない)」
 ここで、26条にある休業手当が出てくるのは、解雇予告も予告手当もなく、労働者を就業させないように追い込んだのは、「使用者の責に帰すべき事由による休業」とみなされるからである。
 ここでいう「休業」とは、「労働者が労働契約に従って労働する用意をし、かつ労働する意思があるにもかかわらず、その実現(その対償として賃金を得ることが)が拒否され、又は不可能となった場合のことである。
 したがって、事業場の全部あるいは一部において活動が停止された場合だけでなく、特定の労働者に対して、その就業を拒否するような場合も含まれる」
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4C
 問題文にある最高裁判例とは、細谷服装事件(最高裁第二小法判昭35.3.11)のことである。
 「解雇予告期間をおかず、又は解雇予告手当の支払をしないで労働者に解雇の意思表示をした場合」には、「その意思表示をどのように受け取るかは労働者の選択にまかされていると解するのが相当」であるかどうかは別として、「労働者は20条所定の解雇の予告がないとして、解雇は無効と主張する」には無理がある。
 細谷服装事件の場合も、解雇の時期についての判決によれば、
 「使用者が労働基準法20条所定の予告期間をおかず、または予告手当の支払をしないで労働者に解雇も通知をした場合、その通知は即時解雇としては効力を生じないが、使用者が即時解雇に固執する趣旨でない限り、通知後同条所定の30日の期間を経過するか、または通知の後に同条所定の予告手当の支払をしたときは、そのいずれかのときから解雇の効力を生ずるものと解すべきである」としている。
 なお、これに関しては、次のような通達(S24.5.13基収1483)もある。
 「法定の予告期間を設けず、又法定の予告に代る平均賃金を支払わないで行なった即時解雇の通知は即時解雇としては無効であるが、使用者が解雇する意思があり、かつ解雇が必ずしも即時解雇であることを要件としないと認められる場合には、その即時解雇の通知は法定の最短期間である30日経過後において解雇する旨の予告として効力を有するものである」
 つまり、解雇の予告がないとして無効を主張することはできない。
 なお、「解雇の無効を主張しないで解雇予告手当の支払を請求することができる」とある最後の部分については、当然正しい。
 また、即時解雇の意思表示から、解雇の効力が発生する30日後までは、使用者の責めに帰すべき事由による休業である、として休業手当を請求することも考えられる。
 解雇の無効を主張するには、手続きの瑕疵(手落ち)で争そうのではなく、旧労基法18条の2(現労働契約法16条)の「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない解雇は無効とする」の規定に則って争そうべきものと思われる。
22
2A
 問題文にある最高裁判例とは、55歳定年制の導入をめぐって争われた最高裁判例(秋田秋北バス事件(S43.12.25))のことである。
 解雇に関する判決によると、「本件就業規則は、停年に達したことによつて自動的に退職するいわゆる「停年退職」制を定めたものではなく、停年に達したことを理由として解雇するいわゆる 「停年解雇」制を定めたものと解すべきであり、これに基づく解雇は、労働基準法20条所定の解雇の制限に服すべきものである」とある。
 一般に定年制(上記判例でいう定年退職制)とは、通常は就業規則などにより、60歳以上の一定の年齢に達した日に退職すると定めれているものであり、その年齢に達した時は労働契約が自動的に終了する制度のことである。
 このような定年退職は解雇とは明確に異なるとされており、19条以下の解雇に関わる規定は適用されない。
 これに対して、「定年解雇制」とは、例えば就業規則の中に解雇事由の一つとして「定年に達したことによる解雇」を定め、解雇の意思表示をすることにより、労働契約を終了させる制度のこと。
 この場合は、上記判例により、20条の解雇予告の規定が適用される。
 なお、参考までに、解雇とは「労働法コンメンタール「労働基準法上P274-287抜粋のなかの「定年制」によれば、「定年制は厳密には、「定年に達したときに当然に労働契約が終了するもの(定年退職制)と「定年に達したときに解雇の意思表示をし、これによって契約を終了させるもの(定年解雇制)の2種類があるとされており、後者には本法の解雇に関する規制が適用されることとなる」とある。
 なお前者についても、定年(退職)制を就業規則で定めるといってもその具体的な記載方法、あるいは実際の労働慣行はまちまちであって、特に最近は、定年後も何らかの形で雇用が継続されることが多い。
 このようなケースの場合は、「定年制とはいえ、定年に達したときに解雇することがある」というような、契約解除権を留保した制度にすぎないと解される可能性もある。
 このような場合には、定年年齢に達した場合でも、これは解雇であると主張する労働者がでてくる可能性がある。
 定年解雇制は、このような再雇用をめぐるトラブルを防止するために、解雇予告義務のある定年制として採用している例が多い。
15
4E
 解雇予告期間期間中に業務上負傷し又は疾病にかかった場合の解雇については、通達(S26.06.25基収2609)によると、
 「解雇予告期間満了の直前にその労働者が業務上負傷し又は疾病にかかり、療養のために休業を要する以上は、たとえ1日ないし2日の軽度の負傷又は疾病であっても、労基法19条(解雇制限)の適用がある。
 負傷し又は疾病にかかり休業したことによって、前の解雇予告の効力の発生自体は中止されるだけであるから、その休業期間が長期にわたり解雇予告として効力を失うものと認められる場合を除き、治癒した日に改めて解雇予告をする必要はない」
 つまり、解雇予告をし、予告した日から30日経過すれば、解雇予告手当の支払いなく解雇可能のはずであったが、その30日間の間に業務上の疾病等による休業があった場合は、その疾病等による休業期間中及びその後30日間は絶対的に解雇できない。
 しかしながら、その前に行っていた解雇予告の効力はまだ残っているので、改めて予告しなくても、休業明け後30日間経過したときに解雇の効力が発生する。  
 なお、問題文には、「休業期間は当該解雇の予告期間の中に納まっているところから」とあるが、上記通達には「たとえ1日ないし2日の軽度の負傷又は疾病であっても、19条の適用がある」とあるので、誤り。
24
3エ
 過去問解説(15-4E)にある通りで、通達(S26.06.25基収2609)によれば、
 本肢の場合、「たとえ2日間の負傷であっても労基法19条(解雇制限)の適用がある。負傷し又は疾病にかかり休業したことによって、前の解雇予告の効力の発生自体は中止されるだけであるから、その休業期間が長期にわたり解雇予告として効力を失うものと認められる場合を除き、治癒した日に改めて解雇予告をする必要はない」
 つまり、2日間の休業期間中及びその後の30日間は解雇してはならないが、その前になした予告の効力は残っているので、休業明けの日に改めて解雇予告をしなくても、 その日から30日経過した日に解雇の効力が発生する。
 問題文には、「休業期間は当該解雇の予告期間の中に納まっているので・・・19条の適用はなく」とあるが、上記通達には「たとえ1日ないし2日の軽度の負傷又は疾病であっても、19条の適用がある」とあるので、誤り。
11
6A
 解雇予告の適用除外者については21条の通りであり、本肢にある「契約期間1年の労働契約を締結して使用している満15歳未満の労働者」は、適用除外者ではない。
 よって、解雇事由が20条ただし書きにある解雇予告除外認定事由すなわち、
・天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合、又は
・労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合
に該当しなければ、20条本文から、「使用者は解雇予告を行うか又は解雇予告手当を支払う必要がある」
 しかしながら、その際に、親権者又は後見人の承諾が必要であるという規定はない。
 参考ながら、児童の雇用については、56条1項により、15歳到達年度末が終了するまでは使用禁止であり、その例外として、同条2項に、「一定の事業以外の事業に係る職業で、児童の健康及び福祉に有害でなく、かつ、その労働が軽易なものについては、行政官庁の許可を受けて、満13歳以上の児童をその者の修学時間外に使用することができる。映画の製作又は演劇の事業については、満13歳に満たない児童についても、同様とする」とある。
 そして、親権者又は後見人の承諾が必要になるのは、この例外規定によって児童を使用する場合である。
17
5D
 「労働基準法第56条に定める最低年齢違反の労働契約のもとに就労していた児童」とある。
 ここで、56条1項では、「使用者は、児童が満15歳に達した日以後の最初の3月31日が終了するまで、これを使用してはならない」とあり、その例外として、同条2項に、「前項の規定にかかわらず、別表第1の1号から5号までに掲げる事業以外の事業に係る職業で、児童の健康及び福祉に有害でなく、かつその労働が軽易なものについては、行政官庁の許可を受けて、満13歳以上の児童をその者の修学時間外に使用することができる。映画の製作又は演劇の事業については、満13歳に満たない児童についても、同様とする」とある。
 そもそも、56条1項あるいは2項に違反している場合は、労働契約そのものが無効であるので即刻その状態を解消すべきである。
 この点について、通達(S23.10.18基収3102)によれば、
 「未就学児童が禁止されている労働に従事しているのを発見した場合、これに配置転換その他の措置を講ずるが、その事業場をやめさせねばならない時は、20条1項本文の規定により30日分以上の平均賃金を支払い、即時解雇しなければならない」とある。
 つまり、本肢のごとく法令違反の労働契約であっても、20条の解雇予告に関する規定は適用されるのであって、問題文に「そもそも当該労働契約が無効であるので、当該児童を解雇するに当たっては、同法20条の解雇予告に関する規定は適用されない」とあるのは誤りである。
23
3E
 使用者が解雇予告に関する20条の義務を免れる事由は、20条後段ただし書きにあるように、
 「@天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合、又は
  A労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合においては、この限りでない」の2つがあり、本肢は@に該当する。
 ここで、@の内容は19条(解雇制限)の場合と同じであり、労働法コンメンタール労働基準法(令和3年版)」天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能上p291-293によると、
 「「天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった」とは、「天災事変その他やむを得ない事由」と解されるだけでは十分ではなく、そのために「事業の継続が不可能」になることが必要であり、また逆に「事業の継続が不可能」になってもそれが「やむを得ない事由」に起因するものでない場合には、これに該当しない」とある。
 そして、これらを事業主が勝手に判断してもらっては困るので、20条3項に、
 「1項ただし書きの適用にあたっては、その事由について行政官庁(所轄労働基準監督署長)の認定を受けなければならない」とされている。 

2
5エ
 使用者が解雇予告に関する20条の義務を免れる事由は、20条後段ただし書きにあるように、
 「@天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合、又は
  A労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合においては、この限りでない」の2つがある。
 このうち、「その他やむを得ない事由」とはいかなる事由かについては、通達(S63.3.14基発150(やむを得ない事由)において、「やむを得ない事由とは、天災事変に準ずる程度に不可抗力に基づきかつ突発的な事由の意味であり、経営者として、社会通念上採るべき必要な措置をもってしても通常いかんともなし難いような状況をいう」
 たとえば、次のごとき場合は、これに該当する。
イ:事業場が火災により焼失した場合(ただし、事業主の故意または重大な過失に基づく場合を除く)
ロ:震災に伴う工場、事業場等の倒壊、類焼等により事業の継続が不可能となった場合
 ・・・・・・・」とある。
 よって、本肢の場合、「天災事変その他やむを得ない事由には、使用者の重過失による火災で事業場が焼失した場合も含まれる」とあるのは誤り。

5
5E
 「19条及び20条にいう「やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合」」とある。
 19条(解雇制限)においては、「労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後30日間、産前産後の女性が65条の規定によって休業する期間及びその後30日間は、解雇してはならないただし、使用者が天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合は、この限りでない」とり、
 20条(解雇予告)においては、「使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも30日前にその予告をしなければならない。30日前に予告をしない使用者は、30日分以上の平均賃金を支払わなければならない。ただし、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合はこの限りでない」とある。
 この「やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合」の内容はいずれも同じであり、通達(S63.3.14基発150(やむを得ない事由)によれば、
 「天災事変に準ずる程度に不可抗力に基づきかつ突発的な事由の意味であり、経営者として、社会通念上採るべき必要な措置をもってしても通常いかんともなし難いような状況をいう」とあり、たとえば、「従来の取引事業場が休業状態となり、発注品がないために事業が金融難に陥った場合はこれに該当しない」としている。

7
3E
  「20条1項にいう「やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合」とある。
 20条(解雇予告)においては、「労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも30日前にその予告をしなければならない。30日前に予告をしない使用者は、30日分以上の平均賃金を支払わなければならない。ただし、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合はこの限りでない」とあることによるからである。
 されば、本肢の例が「天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能」に該当するか否かであるが、通達(S63.3.14基発150(やむを得ない事由)によれば、
 「やむを得ない事由とは、天災事変に準ずる程度に不可抗力に基づきかつ突発的な事由の意味であり、経営者として、社会通念上採るべき必要な措置をもってしても通常いかんともなし難いような状況をいう」とあり、その(2)の次のごとき場合は、これに該当しないとあって、イに、「事業主が経済法令違反のため(強制収容され、又は)購入した諸機械、資材等を没収された場合」と例示されている。
 よって、本肢の場合は、「20条1項にいう「やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合」には該当しないので、当該事業主が、これを理由として労働者を解雇しようとする場合には、少なくとも30日前にその予告をしなければならない等の同条同項に定める解雇の予告を行う必要がある。
21
2E
 20条から、「労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合 は、解雇予告は不要、よって当然解雇予告手当の支払義務も不要」である。
 この場合の「労働者の責に帰すべき事由」については、通達(S31.3.1基発111)において、
 「労働者の故意、過失又はこれと同視すべき事由であるが、判定に当たっては、労働者の地位、職責、継続勤務年限、勤務状況等を考慮の上、総合的に判断すべきであり、「労働者の責に帰すべき事由」が20条の保護を与える必要のない程度に重大又は悪質なものであり、従って又使用者をしてかかる労働者に30日前に解雇の予告をなさしめることが当該事由と比較して均衡を失するようなものに限って認定すべきものである」としている。
 また認定すべき事例のひとつとして、  「原則として極めて軽微なものを除き、事業場内における盗取、横領、障害等刑法犯に該当する行為のあった場合、  また一般的に見て「極めて軽微」な事案であっても、使用者があらかじめ不祥事件の防止について諸種の手段を講じていたことが客観的に認められ、しかもなお労働者が継続的に又は断続的に盗取、横領、障害等刑法犯又はこれに類する行為を行った場合・・・・」とある。
 よって、「帰責性が軽微な場合であっても、悪質なものは認定される(解雇予告の義務を免れる)ことはありうるが、問題文にあるように、「軽微な場合であっても(常に認定され)、20条所定の解雇予告及び予告手当の支払の義務を免れる」とまで断言することはできない。
15
4C
 問題文に「労働者によるある行為が20条1項但書の「労働者の責に帰すべき事由」に該当する場合」は、20条(解雇予告)本文による解雇予告は不要となるが、そのためには、同条3項にあるように、「解雇事由について、行政官庁の認定をうけなければならない」とある、
 問題文は続いて、「使用者が即時解雇の意思表示をし、当日に労働基準監督署長に解雇予告除外認定の申請をして翌日に認定を受けた」とある。
 この場合の即時解雇の効力については、通達(S63.3.14基発150(除外認定))によると、
 「19条及び20条による認定は、原則として解雇の意思表示をなす前に受けるべきものであるが、認定はただし書きに該当する事実があるか否かを確認する処分であって、認定されるべき事実がある場合には使用者は有効に即時解雇をなし得るものと解されるので、即時解雇の意思表示をした後、解雇予告除外認定を得た場合はその解雇の効力は使用者が即時解雇の意思表示をした日に発生すると解される。なお、使用者が認定申請を遅らせることは19条又は20条違反である」としている。
 よって、解雇予告認定と即時解雇意思表示の順番が後先になってしまったのであるが、「労働者の責に帰すべき事由の事実認定がなされたことから、その解雇の効力は使用者が即時解雇の意思表示をした日に発生する」とあるのは正しく、即時解雇の日にちが延びることはない。
18
7E
 解雇予告除外認定の性格について、通達(S63.3.14基発150(除外認定))によると、
 「19条及び20条による認定は、原則として解雇の意思表示をなす前に受けるべきものであるが、認定はただし書きに該当する事実があるか否かを確認する処分であって、認定されるべき事実がある場合には使用者は有効に即時解雇をなし得るものと解されるので、即時解雇の意思表示をした後、解雇予告除外認定を得た場合はその解雇の効力は使用者が即時解雇の意思表示をした日に発生すると解される。なお、使用者が認定申請を遅らせることは19条又は20条違反である」
 つまり、解雇の意思表示後に解雇予告除外認定申請を出すことは、本来のあるべき順番からすると逆ではあるが、解雇予告除外事由である「労働者の責に帰すべき事由」に該当する事実があると認定された場合は、即時解雇そのものは有効であるとしている。
 なお、「ただし書きに該当する事実があるか否かを確認する処分」とは、「天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となったという事実、又は労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合における、労働者の責に帰すべき事由の事実、があるか否かについて所轄労働基準監督署長が確認する行為のこと」
24
3イ
 解雇予告に関する規定20条の1項と3項から、
 「使用者が、労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合においては、その事由について行政官庁の認定を受けることにより、解雇予告、解雇予告手当いずれも不要で 即時解雇できる」
 しかしながら、即時解雇の意思表示した後に除外認定を受けた場合の扱いについては、通達(S63.3.14基発150(除外認定))によると、
 「解雇予告除外認定処分は但し書に該当する事実の有無を確認する処分であって、認定されるべき事実がある場合には、使用者は有効に即時解雇をなし得るものと解されるので、即時解雇の意思表示をした後、解雇予告除外認定を得た場合は、その解雇の効力は使用者が即時解雇の意思表示をした日に発生する」とされている。 
 つまり、認定と即時解雇意思表示の順番が後先になってしまったので、お叱りを受けるであろうが、事実認定がなされたので、「即時解雇の効力は、認定のあった日まで延びることはなく、解雇の意思表示がなされた当初の日に発生する。
12
3B
 即時解雇の場合の予告手当の支払時期については、通達(S23.3.17基発464(20条関連))によると、
 「即時解雇の場合の解雇の予告に代わる30日以上の平均賃金は、解雇の申渡しと同時に支払うべきものである」
 なお、即時解雇に固執しないで、解雇予告と解雇予告手当の支払いを併用する場合は、解雇予告手当の支払いは、解雇の日までに行われればよい。
30
2オ
 解雇予告手当の時効に関しては、通達(S27.05.17基収1906)に、
 「法20条に定める解雇予告手当は、解雇の意思表示に際して支払わなければ解雇の効力を生じないものと解されているから、一般には解雇予告手当については、時効の問題は生じない」とある通り。
 解雇予告手当の支払日は、
・即時解雇の場合は、30日分の解雇予告手当を、解雇を申し立てるときに払わなければ、予告手当の有効性はない。
・解雇予告から20日経過した日に解雇したいときは、その日に10日分の解雇予告手当を支払わなければ、予告手当の有効性はない。
 つまり、予告手当は支払ったときに、解雇日をその分だけ短縮できるが、ずっと支払わないでいると、短縮効果はなく、予告してから30日経過した日に解雇となる。
 以上のことから、問題文にある「解雇予告手当については時効の問題は生じないとされている」ことに、合点がいくであろう。 
16
3A
 問題文にある「算定すべき事由の発生した日」とは、12条の「平均賃金とはこの法律で平均賃金とは、これを算定すべき事由の発生した日以前3か月間にその労働者に対し支払われた賃金の総額を、その期間の(歴月の)総日数で除した金額をいう」とある、その算定事由発生日のことである。(ただし、算定事由発生日以前とあるが、発生した日は含まれないことにも注意を)
 そして、解雇の場合の算定事由発生日については、通達(S39.6.12基収2316)に、
 「20条の規定により、解雇の予告に代えて支払われる平均賃金を算定する場合における、算定すべき事由の発生した日は、労働者に解雇の通告をした日である。
 解雇の通告をした後において、当該労働者の同意を得て解雇日を変更した場合においても、同様(当初の解雇を予告した日)である」とある通り。

7
2B
 労働基準法20条に、「使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも30日前にその予告をしなければならない。30日前に予告をしない使用者は、30日分以上の平均賃金を支払わなければならない。但し・・・・」とある。
 ここで、平均賃金とは、12条に、「平均賃金とは、これを算定すべき事由の発生した日以前3か月間にその労働者に対し支払われた賃金の総額を、その期間の(歴月の)総日数で除した金額をいう」とある。
 そして、「20条に基づく解雇予告手当を算定する際の平均賃金算定事由発生日」は、通達(S39.6.12基収2316)の前段によれば、「労働者に解雇の通告をした日」である。
 これが、原則であるが、本肢では、「労働者に解雇の通告をした日後に、当該労働者の同意を得て解雇日を変更した場合であっても、平均賃金算定事由発生日は、当初の解雇を通告した日でよいか」と念押ししている。
 これについては、通達(S39.6.12基収2316)の後段に、「解雇の通告をした後において、当該労働者の同意を得て解雇日を変更した場合においても、同様(当初の解雇を予告した日)である」とある通り。
 例えば、当初は30日後に解雇すると通告した場合、労働者は30日間は労働の義務があり、それに対する賃金を得ることになる。
 もし、労働者の同意を得て、解雇を20日後に繰り上げた場合、労働者は20日間の労働の義務とそれに対する賃金を得るほか、10日分以上の解雇予告手当を得ることになる。
 もし、労働者の同意を得て、解雇を40日後に変更した場合、労働者は30日に加えてさらに10日間の労働の義務とそれに対する賃金を得ることになる。
 解雇日の繰上げ、繰下げを使用者が一方的に行うことは原則として許されないが、労働者の同意を得れば、可能である。
 その場合でも、解雇予告手当が発生する場合、平均賃金算定事由発生日は、「当初の解雇を通告した日である」 
18
7B
 解雇予告については、20条に、「少くとも30日前にその予告をしなければならない。30日前に予告をしない使用者は、30日分以上の平均賃金を支払わなければならない」とある。
 さらに同条2項に、「前項の予告の日数は、1日について平均賃金を支払った場合においては、その日数を短縮することができる」ことになっている。
 また、予告期間の計算に関しては、労働法コンメンタール「労働基準法上P303−308」の予告期間において、「予告期間の計算については、本法に特別規定がないから民法の一般原則によることになり、解雇予告がなされた日は算入されず、その翌日から計算され、期間の末日の終了をもって期間の満了となるので、予告の日と、解雇の効力発生の日との間に、中30日間の期間を置く必要がある。
 また、30日間は労働日ではなく、暦日で計算されるので、その間に休日または休業日があっても延長されない」とある。
 従って、8月27日(8月27日が終了するとき(8月27日深夜24時)をもって解雇しようとする場合で、8月14日に解雇予告したときは、翌日の8月15日から8月27日までは13日であるから、(少なくとも)不足する17日分の解雇予告手当の支払を必要とする。
16
3E
 解雇予告については、20条に、「少くとも30日前にその予告をしなければならない。 30日前に予告をしない使用者は、30日分以上の平均賃金を支払わなければならない」とある。
 さらに同条2項に、「前項の予告の日数は、1日について平均賃金を支払った場合においては、その日数を短縮することができる」ことになっている。
 予告期間の計算に関しては、労働法コンメンタール「労働基準法上P303−308」の予告期間において、
 「予告期間の計算については、本法に特別規定がないから民法の一般原則によることになり、解雇予告がなされた日は算入されず、その翌日から計算され、期間の末日の終了をもって期間の満了となるので、予告の日と、解雇の効力発生の日との間に、中30日間の期間を置く必要がある。
 また、30日間は労働日ではなく、暦日で計算されるので、その間に休日または休業日があっても延長されない」とある。
 本肢の場合、5月31日をもって解雇するために、5月13日に解雇予告をする場合、解雇予告日の5月13日から5月31日までを翌日起算で計算すると18日になる。
 よって、(少なくとも)30日との差である12日分の解雇予告手当てを支払わなければならない。
 参考までに、同じ月のA日からB日までの日数は、当日起算で(B-A+1)日、翌日起算で(B-A)日である。
 また、間にある月の日数は、大は31日、小は30日、2月は閏年でなければ28日。日数の計算は社労士試験では必須科目であるが、あわてずに、一月、一月正確に計算することである。
 なお、1年は通常は365日であるが、標準報酬月額を定めている健康保険法、厚生年金保険法では、1年は360日(30日×12か月)である。
24
3ウ
 過去問16-3Eの解説の通り。
 8月31日の終了をもって解雇するために8月15日に解雇予告する場合は、
 解雇予告日である8月15日から解雇日(その日が終了する午後24時をもって解雇する)としたい8月31日までは翌日起算で16日である。
 よって、(少なくとも)30日との差である14日分の解雇予告手当の支払が必要であるる。
26
2B
 20条に定める解雇予告の日数については、「少くとも30日前にその予告をしなければならない。
 30日前に予告をしない使用者は、30日分以上の平均賃金を支払わなければならない」ことになっている。
 さらに同条2項において、「前項の予告の日数は、1日について平均賃金を支払った場合においては、その日数を短縮することができる」とある通り。
13
2D
 解雇予告については、20条に、「少くとも30日前にその予告をしなければならない。 30日前に予告をしない使用者は、30日分以上の平均賃金を支払わなければならない」とあり、さらに同条2項に、「前項の予告の日数は、1日について平均賃金を支払った場合においては、その日数を短縮することができる」ことになっている。
 問題文にある「使用者が平均賃金の30日分の解雇予告手当を支払って労働者の解雇を行う意思表示をする場合」には、「解雇予告手当を支払った日数分を限度して、「解雇による労働契約の終了日を遡ることができる」ではなく、「支払った日数分、必要予告日数30日から短縮することができる」である。
 労働契約の終了日を遡る(終了日を予告日前にする)ことなど許されない。
 なお、問題文後段にある例も変であり、例えば、5月1日に平均賃金の30日分の解雇予告手当を支払って労働者の解雇の意思表示をする場合には、5月1日が終了する日すなわちその日深夜24時に労働契約が終了するいわゆる即日解雇ということになる。
12
3C
 20条に定める解雇予告の日数については、「少くとも30日前にその予告をしなければならない」とある。
 この解雇予告期間の計算に関しては、労働法コンメンタール「労働基準法上P303−308」の予告期間において、
 「予告期間の計算については、本法に特別規定がないから民法の一般原則によることになり、解雇予告がなされた日は算入されず、その翌日から計算され、期間の末日の終了をもって期間の満了となるので、予告の日と、解雇の効力発生の日との間に、中30日間の期間を置く必要がある。
 また、30日間は労働日ではなく、暦日で計算されるので、その間に休日または休業日があっても延長されない。
 よって、5月31日の終了をもって解雇の効力を発生させるためには、翌日起算、暦日で少なくともその30日前、すなわち遅くとも5月1日には解雇の予告をしなければならない
26
2E
 20条に定める解雇予告の日数については、「少くとも30日前にその予告をしなければならない」とあり、同2項から、予告手当を払えばその日数分短縮することができる。
 本肢の場合は、「平成26年9月30日の終了をもって、何ら手当を支払うことなく労働者を解雇しようとする」とあるから、翌日起算、暦日で少なくともその30日前には解雇予告をしなければならない。
 とすると、解雇予告日である9月1日から、9月30日(その日が終了する午後24時をもって解雇したい日)までは29日間しかなく1日足りない。
 遅くとも8月31日に解雇の予告をしなければ、20条1項に抵触することになる。
13
2E
 21条とその1号に、「(20条の規定は、日日雇い入れられる者には適用しない。ただし、1か月を超えて引き続き使用されるに至った場合はこの限りでない」とある。
 すなわち、日日雇い入れられる者であっても、1か月を超えて引き続き使用されるに至った場合には、解雇予告に関する規定は適用される。
 これらのことについては、「労働法コンメンタール労働基準法(令和3年版)上(P333-340)」の「日日雇い入れられる者)」によると、「1日単位の契約期間で雇われ、その日の終了によって労働契約を終了する契約形式の労働者である。このような労働者は、使用された翌日は契約が存しないので、新たに翌日の契約が結ばれない限り、使用関係は継続せず、理論的には解雇の問題は発生する余地がないから、解雇予告制度は当然適用されない。 
 このような性質の契約形式についても、本条ただし書きにより、1カ月を超えて引き続き使用されるに至った場合は、解雇予告制度の適用があるとする規定に重点があると考えるのが妥当であろう」としている。
30
1
選択
 日日雇い入れられる者には労働基準法第20条の解雇の予告の規定は適用されないが、その者が(A)1か月を超えて引き続き使用されるに至った場合においては、この限りでない。
 労働基準法20条の解雇予告の規定では、「労働者を解雇しようとする場合は、少くとも30日前に予告を行うか、30日分以上の平均賃金を支払わなければならない」とされている。
 ただし、同21条によれば、「一定の労働者については、20条の規定は適用されない」ことになっており、その1号において「日日雇い入れられる者には20条の解雇の予告の規定は適用されない。ただし、1か月を超えて引き続き使用されるに至った場合はこの限りでない」とある。
15
4D
  「2か月の期間を定めて雇い入れた労働者を、雇入れ後1か月経過した日において、やむを得ない事由によって解雇」とある。
 その労働者にとっては、いかなる理由であろうと、解雇は解雇である。
 しかしながら、法律上、解雇の問題が発生するのは、その解雇そのものが有効か無効かということであるが、これは主として労働契約法の問題であり、労基法上では、主として解雇の手続きすわわち、解雇制限や解雇予告が適法に行われたか否かがが問題となる。
 これらのことについては、「労働法コンメンタール労働基準法(令和3年版)上(P333-340)」の2か月以内の期間を定めて使用される者において、
・契約期間の満了によって労働契約が終了するのは解雇ではないから、20条の規定が適用されないことは当然であるが、本条は、2か月以内の短期契約について、期間満了前に解雇する場合も20条の適用がないことを明らかにしたものである。
・(しかしながら)契約に期間の定めがある場合において、民法528条、労働契約法17条1項により、「やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない」とされ、無条件には解雇することができないことにも注意すべきである。
とある。
 本肢の場合、まず「2か月の期間を定めて雇い入れた労働者を、雇入れ後1か月経過した日に解雇」とあるが、21条2号から、「2か月以内の期間を定めて使用される者は、所定の期間を超えて引き続き使用されるに至った場合を除き、解雇予告の規定は適用されない
 また、「期間を定めて雇い入れた労働者を、契約期間前に契約解除することは、原則として違反で解雇の問題が発生するが、本肢の場合は、「やむを得ない事由による解雇」であって、行政官庁の認定を受けた場合、解雇の問題は発生しないものと思われる。
 結論として、本肢の場合、「やむをえない事由があろうがなかろうが、解雇予告は不要である。また、やむをえない事由があれば、解雇の問題も発生しない可能性がある」 
23
3D
 「6か月の期間を定めて使用される者が、期間の途中で解雇」の場合の20条所定の予告期間及び予告手当の適用・不適用に関しては、21条の2号から、
 「2か月以内の期間を定めて使用される者は、所定の期間を超えて引き続き使用されるに至った場合を除き、解雇予告の規定は適用されない」とある。
 本肢の場合、業務の内容が特定されていないが、もしこの者が、「季節的業務に期間を定めて使用される者」であれば、21条の3号から、「季節的業務に4か月以内の期間を定めて使用される者は、所定の期間を超えて引き続き使用されるに至った場合を除き、解雇予告の規定は適用されない」
 いずれにしても、「6か月の期間を定めて使用される者が、期間の途中で解雇された場合、最初から20条の適用がある」
19
4E
 季節的業務に期間を定めて使用される者に対する、解雇の予告に関する20条の規定の適用・不適用に関しては、21条の3号から、
 「季節的業務に4か月以内の期間を定めて使用される者は、所定の期間を超えて引き続き使用されるに至った場合を除き、解雇予告の規定は適用されない」
 本肢にある8月25日から10月30日までの雇用期間ということは、契約期間が2か月を超えてはいるが、「業務の種別が季節的業務であって、4か月以内の契約でありかつその契約期間中の解雇」であるから、解雇事由が何であろうと、解雇予告は不要ということになる。
 ただし、期間を定めて雇い入れた労働者を、契約期間前に契約解除することは、原則として違反で解雇の問題が発生するが、本肢の場合は、「やむを得ない事由による解雇」とあるから、解雇の問題は発生しないことを前提とした問題と思われる。 
 参考までに、「労働法コンメンタール労働基準法(令和3年版)上(P333-340)」の「季節的業務に4か月以内の期間を定めて使用される者」によると、「「季節的業務」とは、春夏秋冬の四季、あるいは結氷期、積雪期、梅雨期等の自然現象に伴う業務に限られ、夏季の海水浴場の業務、農業における収穫期の手伝い、冬の除雪作業、業業における魚の種類別の漁獲期業務などがその例である。(昔は、茶摘み、養蚕、酒の仕込などがよくいわれていた)。
 その季節の長さが4か月以内であることは必要ないが、契約期間は4か月以内であることを要する」とある。
11
6C
 試みの使用期間中の労働者に対する、解雇予告20条の規定の適用・不適用に関しては、21条の4号に、「試の使用期間中の者には20条の規定は適用されない。ただし、14日を超えて引き続き使用するに至った場合はこの限りでない」とある。
 すなわち、試みの使用開始後10日後に解雇であれば、解雇予告する必要はない。
 ここで、試の使用期間中の者とは 労働法コンメンタール「労働基準法(令和3年版)上(P333-340)における「試の使用期間中の者」によると、
・本採用決定前の試験的使用期間中の労働者であって、その期間中に勤務態度、能力、技能、性格等を見て正式に採用するか否かが決定されるものである。
 一般には、本採用に適しないと判断されたときは、その期間中といえども解雇し得るように、解約権が本採用者に比して広範に留保されている。
 なお、右留保された解約権を行使する場合は、本採用に適しないとする合理的事由が必要であると解される。
・試みの使用期間は、労働契約上の一態様であるから、就業規則又は労働契約において明確に定められている必要がある」とされている。
26
2C
 解雇予告についての規定20条では、「少くとも30日前にその予告をしなければならない。30日前に予告をしない使用者は、30日分以上の平均賃金を支払わなければならない」とある。
 しかしながら、この20条が適用されない者についての規定が21条に設けられており、
 「20条の規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない」とあり、
 その4号に、「試の使用期間中の者、ただし、14日を超えて引き続き使用されるに至った場合は除く」とある。
 すなわち、「試みの使用期間中の労働者を、雇入れの日から起算して14日以内に解雇する場合は、解雇の予告の規定20条は適用されない」
23
3C
 解雇予告についての規定20条では、「少くとも30日前にその予告をしなければならない。30日前に予告をしない使用者は、30日分以上の平均賃金を支払わなければならない」とある。
 しかしながら、この20条が適用されない者についての規定が21条に設けられており、21条の4号に、
 「試の使用期間中の者であっても、14日を超えて引き続き使用している場合は、解雇予告あるいは解雇予告手当に関する20条の適用がある」
 一般に、「試の使用期間中の者は、本採用に適しないと判断されたときは、その期間中といえども解雇し得るように、解約権が本採用者に比して広範に留保されており、試みの使用期間は、労働契約上の一態様であるから、就業規則又は労働契約において明確に定められている必要がある」ことになっている。
 しかし、この試用期間については(本肢では3か月)、その上限が厳密に規定されているわけではないが、労働能力や態度などから本採用にふさわしいか否かを判断するに必要は期間である、という趣旨を逸脱するような長期の期間は無効とされている。

23
3B

 かっては、労働基準法18条の2において、
 「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」とあったが、平成20年3月31日をもってこの規定は削除され、現在では、同文の規定が労働契約法16条に移された。
 解雇の有効・無効の判断については、労働法コンメンタール「労働基準法上P270(有効・無効の判断)」にも「最終的には引き続き裁判所が行うものであって、本条の規定に基づき解雇の効力を争う事案については、104条1項に定める申告の対象とはならないものである」とある。
 つまり、労基法時代も現在の労働契約時代にあっても、解雇が有効か無効かの判断を最終的に行うのは裁判所であって、裁判の結果によっては、賃金や損害賠償金の支払いなどが発生することはありうるが、労基法あるいは労働契約法に基づく罰則が適用されることはない。
29
3D
 「労働者が業務上の傷病により治療中」とある。
 この場合は、19条により、「業務上負傷による休業期間中及び(職場復帰後)30日間は解雇してはならない」が適用されるようにも思える。
 しかるに本肢は「治療中であっても休業しないで就労している場合」とある。
 これについては、通達(S24.04.12基収1134)に、「業務上負傷し又は疾病にかかり療養していた労働者が完全に治癒したのではないが、稼働し得る程度に回復したので出勤し、元の職場で平常通り稼働していたところ、使用者が就業後30日を経過してこの労働者を法20条に定める解雇予告手当を支給して即時解雇した場合、法19条に違反するか」というお伺いに対して、
 「設問の場合は、法19条に抵触しない」という回答であった。
 すなわち、本来はまだ休むべきところ、納期が近いので・・・・などと無理して職場復帰した場合、職場復帰後30日後には解雇制限が解除されてしまう。
 なお、問題文の場合は、一度も休まずに就労している場合であろうが、これだと休業期間中がないので復帰後30日間もなく、いつ解雇しても19条違反にはならない。
30
2エ
 前段の「労働基準法では、使用者は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後30日間は、解雇してはならないと規定している」とあるのは、19条にある通り。
 後段にある「解雇予告期間中に業務上負傷し又は疾病にかかりその療養のために休業した場合」であるが、この場合の解雇制限規定については、通達(S26.06.25基収2609)によれば、
 「解雇予告期間満了の直前にその労働者が業務上負傷し又は疾病にかかり、その療養のために休業を要する以上は、たとえ1日ないし2日の軽度の負傷又は疾病であっても、19条の適用がある
 つまり、解雇予告期間中であろうと、まだ解雇されたわけではないので、労働者の地位にあり、かつ、実際に業務に従事していたときの業務上傷病による休業であるならば、(たとえ1日、2日と軽微なものであっても)19条による解雇制限の規定が適用されるのである。
 ただし、同通達後段にあるように「負傷し又は疾病にかかり休業したことによって、前の解雇予告の効力の発生自体は中止されるだけであるから、その休業期間が長期にわたり解雇予告として効力を失うものと認められる場合を除き、治癒した日に改めて解雇予告をする必要はない
 つまり、治癒した日までとその後の30日間は解雇制限がかかるが、あらためて解雇予告しなくても、治癒後30日間を経過すれば、解雇は有効となる。

7
3D
 業務上負傷等びよる解雇制限については、19条に、「使用者は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後30日間(並びに、産前産後の女性が65条の規定によって休業する期間及びその後30日間)は、解雇してはならない。ただし・・・」とある。
 本肢の場合は、「事業主が同一人でないX社とY社に使用される労働者が・・・」という特殊な事例である。
 「労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後30日間」に関しての
労基法コンメンタール上p287によれば、
 「業務外の私傷病による休業期間については解雇が制限されず、また、業務上の傷病により治療中であってもそのために休業しないで出勤している場合は解雇の制限を受けない。
 また本条の「業務上」とは、当該企業の業務により負傷し、又は疾病にかかった場合を意味するものであり、他の企業の業務により負傷し、又は疾病にかかった場合は、本条の業務上とはいえない」とある。
 よって、事業主が同一人でないX社とY社に使用される労働者が、X社の業務により負傷した場合は、その療養のために休業する期間及びその後30日間については、X社は当該労働者を解雇してはならないが、Y社には解雇制限の規定は適用されない。
令元
4C
 「女性労働者が出産予定日より6週間(多胎妊娠の場合にあっては、14週間)前以内であっても、・・・65条に基づく産前の休業を請求しないで就労している」とある。
 つまり、65条によれば、「6週間(多胎妊娠の場合にあっては、14週間)以内に出産する予定の女性は(産前の)休業を請求できる」のであり、そうすれば、19条により、「休業期間及びその後30日間は解雇制限にかかる」はずである。
 ところが、問題文には、「産前の休業を請求しないで就労している」とある。
 このような場合、通達(S25.06.16基収1526)に、「6週間以内に出産する予定の女性労働者が休業を請求せず引き続き就業している場合は、19条の解雇制限期間にはならないが、その期間中は女性労働者を解雇することのないよう指導されたい」とある。
 つまり、「産前の休業を取らずにがんばって就労している場合は、19条の解雇制限は受けない(その期間中に解雇しても、行政指導はあるかもしれないが、違法ではない)
 この点については、「産前産後の女性が65条の規定によって休業する期間及びその後30日間」に関して:労基法コンメンタール上p288においても、
 「65条の産前産後の休業における産前の休業は、労働者の請求があった場合にはじめて使用者に付与義務が発生するものであるから、出産予定日より6週間(多胎妊娠の場合にあっては。14週間)前以内であっても労働者が休業せずに就労している場合には、解雇が制限されない」とある。

5
3C
 「6週間以内に出産する予定の女性労働者が休業を請求せず引き続き就業している場合」とある。
 このような場合の解雇制限については、通達(S25.06.16基収1526)に、「6週間以内に出産する予定の女性労働者が休業を請求せず引き続き就業している場合は、19条の解雇制限期間にはならないが、その期間中は女性労働者を解雇することのないよう指導されたい」とある通り。
26
2D
 19条に定める産前産後の女性に関する解雇制限とは、
 「産前産後の女性が65条の規定によって休業する期間及びその後30日間は、解雇してはならない」のこと。また、同条に定める除外事由とは、「天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合」のこと。
 本肢の論点は、「除外事由が存在しない状況において、産後8週間を経過しても休業している女性の場合」に対してはどう取り扱うかということ。
 この点については、「産前産後の女性が65条の規定によって休業する期間及びその後30日間」に関して:労基法コンメンタール上p288において、「産後の休業は、出産当日の翌日から8週間が法定の休業期間であるから、これを超えて休業している期間は、たとえ出産に起因する休業であっても、本条にいう「休業する期間」には該当しない。
 また、産後6週間を経過すれば労働者の請求により就業させることができるが、これにより就業している期間も本条にいう「休業する期間」には該当しない。
 したがって、その後30日間の起算日は、産後8週間経過した日又はすれ産後8週間経過しなくても6週間経過後その請求により就労させている労働者についてはその就労を開始した日となる」とある。
 すなわち本肢の場合、「産後8週間を経過しても休業している場合は、産後8週間及び産後8週間経過した日後の30日間が解雇してはならない期間となる。
13
2A
 19条の解雇制限の中に、育児休業者、介護休業者にかかわる規定はない。
 育児休業期間中であろうと介護休業期間であろうと、あるいはなかろうと、産前産後の女性が65条(産前産後の休業)の規定によって休業する期間及びその後30日間が解雇制限期間である。
 なお、育児・介護休業法においては、育児休業の場合は10条、介護休業の場合は16条において、
 「事業主は、労働者が育児休業(介護休業)申出等をし、若しくは育児休業(介護休業)をしたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない」とある。
 しかし、この規定は、いかなる理由があっても育児休業又は介護休業をする期間及びその後30日間は解雇してはならないとするものではない。
 この点については、通達(H3.12.20基発712)においても、「現育児・介護休業法10条(及び16条)は、労働者が育児休業(介護休業)申出等をし、若しくは育児休業(介護休業)をしたことを理由とする解雇を制限したものであり、育児休業(介護休業)期間中の解雇を一般的に制限したものではなく、育児休業(介護休業)期間中の労働者を解雇しようとする場合には20条(解雇予告)に規定する手続きが必要である」としている。
26
2A
 19条1項とは、解雇制限の規定であって、
 「使用者は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後30日間、並びに、女性が産前産後休業する期間及びその後30日間は、解雇してはならない。
 ただし、使用者が、打切補償を支払う場合、又は、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合においては、この限りでない」とある。
 この解雇制限と定年制との関係については、通達(S26.08.09基収3388)に、
 「就業規則に定めた定年制が労働者の定年に達した翌日をもってその雇用契約は自動的に終了する旨を定めたことが明らかであり、かつ、従来この規定に基づいて定年に達した場合に当然雇用関係が消滅する慣行になっていて、それを従業員に徹底させる措置をとっている場合は、解雇の問題は生ぜず、したがってまた法第19条の問題を生じない」とある。
 つまり、たとえ業務災害により休業している期間中に定年時期を迎えたとしても、定年は定年であって解雇ではない。
 なお、参考までに、解雇とは「労働法コンメンタール「労働基準法上P274-287抜粋のなかの「定年制」によれば、「定年制は厳密には、「定年に達したときに当然に労働契約が終了するもの(定年退職制)と「定年に達したときに解雇の意思表示をし、これによって契約を終了させるもの(定年解雇制)の2種類があるとされており、後者には本法の解雇に関する規制が適用されることとなる」とある。
 本肢は、定年退職制に関する出題である。
13
2C
 「一定の事業に限ってその完了に必要な期間を契約期間とする労働契約を締結している労働者・・・・解雇制限の規定・・・」とある。
 このような「労働契約期間の満了と解雇制限」については、通達(S63.3.14基発150(19条関係))に、
 「一定の期間又は一定の事業の完了に必要な期間までを契約期間とする労働契約を締結していた労働者の労働契約は、他に契約期間満了後引き続き雇用関係が更新されたと認められる事実がない限り、その期間満了とともに終了する。
 したがって、業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業している期間中の者の労働契約も
、その期間満了とともに労働契約は終了するのであって、法19条1項の適用はない」としている。
 この点に関して、労基法コンメンタール上p274に
 「解雇とは、労働契約を将来に向かって解約する使用者側の一方的意思表示である。したがって、労働関係の終了事由のうちでも、労使間の合意による解約、労働契約に期間の定めがある場合の期間満了、労働者側からするいわゆる任意退職等は、解雇ではない」とある。
 すなわち、本肢の場合、「特段の事由がなければ、解雇制限の規定の適用はない」
15
2B
 「一定の期間を契約期間とする労働契約により雇い入れられた労働者が・・・・契約期間の途中で業務上負傷し、療養のため休業する場合・・・・労働契約の契約期間…」とある。
 このような「労働契約期間の満了と解雇制限」については、通達(S63.3.14基発150(19条関係))に、
 「一定の期間又は一定の事業の完了に必要な期間までを契約期間とする労働契約を締結していた労働者の労働契約は、他に契約期間満了後引き続き雇用関係が更新されたと認められる事実がない限り、その期間満了とともに終了する。
 したがって、業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業している期間中の者の労働契約も
、その期間満了とともに労働契約は終了するのであって、法19条1項の適用はない」としている。
 この点に関して、労基法コンメンタール上p274に
 「解雇とは、労働契約を将来に向かって解約する使用者側の一方的意思表示である。したがって、労働関係の終了事由のうちでも、労使間の合意による解約、労働契約に期間の定めがある場合の期間満了、労働者側からするいわゆる任意退職等は、解雇ではない」とある。
 すなわち、解雇ではなく、19条1項の解雇制限が適用されないのであれば、定められた期間の終了ともとに、この者の雇用契約は自動的に終了となるのであって、それ以上に雇用期間を延長する義務はない。   
 なお、参考ながら、同コンメンタールにおいても、「しかしながら、現実には短期契約を反復更新し相当長期間にわたって労働関係が継続している場合には、特に改めて最終期間である旨の表示又は期間満了時に今回は更新しない旨の特別の意思表示がなければ、期間が満了しても労働契約が終了するか否か明確でないこととなり、解雇との関係が問題となる場合がある」としている。
 よって、現実的には、「引き続き雇用関係の更新が期待されるなどの特段の事由がなければ」というただし書きが必要かもしれない。
13
2B
 問題文にある19条1項の解雇制限とは、「使用者は、労働者が業務上負傷し又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後30日間(並びに、産前産後の女性が65条の規定によって休業する期間及びその後30日間)は、解雇してはならない。ただし、使用者が
81条の規定によって打切補償を支払う場合、又は、
・天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合においては、
 この限りではない(解雇制限の規定は適用されない)
 また、問題文にある「労働者災害補償保険法19条によって打切補償を支払ったものとみなされた場合」とは、
・療養開始後3年経過した日において傷病補償年金を受けている場合は、3年経過日に、
・3年経過日以後において傷病補償年金を受けることとなった場合は、受けることとなった日に、
 
使用者は、打切補償を支払ったものとみなされるので、この場合も解雇制限は解除となる。
 よって、結論として、解雇制限の適用が解除されるのは、
 「打切補償を支払った場合(労災保険法19条によって打切補償を支払ったものとみなされた場合も含む)だけでなく、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合も(行政官庁の認定が必要)、解雇制限の規定の適用が除外される。
19
4B
 19条に、「使用者は、労働者が業務上負傷し又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後30日間(並びに、産前産後の女性が65条の規定によって休業する期間及びその後30日間)は、解雇してはならない」とあるが、続いて、同条のただし書きにより
81条の規定によって打切補償を支払う場合、又は、
・天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合においては、
解雇制限の規定は適用されない。
 ここで、「81条の規定によって打切補償を支払う場合」に関して:労基法コンメンタール上p290-291によれば、「業務上の災害補償が労災保険によってなされる場合は打切り補償を支払う必要がないことになるが、労災保険法19条により、「療養開始後3年経過した日において傷病補償年金を受けている場合は、3年経過日に、3年経過日後において傷病補償年金を受けることとなった場合は、受けることとなった日に、使用者は、打切補償を支払ったものとみなされるので、この場合も解雇制限は解除となる」とある。
 また問題文後段にある、「天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となりその事由について行政官庁の認定を受けた場合」については、「天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合」同コンメンタール上p291-293に
 「この除外事由は、その性質上個々の具体的事実に基づいて判断する必要があり、また第一次的にせよ使用者の一方的判断に委ねる場合には実際上労働者が損害を被ることも多くなる関係からこれを防止する必要もあるので、本条2項においてはその事由の存否について所轄労働基準監督署長の認定を受けるべきことを規定している」とある。 
27
3E
 業務上災害の場合の解雇制限(解雇してはならない)の例外については、19条1項ただし書きから
打切補償を支払う場合(労災保険法第19条によって打切補償を支払ったものとみなされた場合も含む)、
・天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合でかつ同条2項により、その事由について行政官庁の認定を受けた場合
 のいずれかに限られ、これらに該当しない場合は、労働者が業務上の傷病のため、労働能力を喪失している休業期間、及び労働能力の回復に必要なその後の30日間は、労働者を解雇してはならない。
28
1
選択
A: 問題文に、「労働基準法19条1項の解雇制限」とあり、中段に「| A |として相当額の支払がされても傷害又は疾病が治るまでの間は労災保険法に基づき必要な療養補償給付がされる」とあり、また「19条1項ただし書の適用・・」とあることから、19条1項の条文を逐条的に暗記していなくても、Aは打切補償であることを思い出さなければならない。
B:そうすれば、「療養補償給付を受ける労働者が、療養開始後| B |を経過しても疾病等が治らない場合には・・・・・| A ||の支払をすることにより・・・」とあるBは3年であることも容易にわかるはず。
 なお、本肢は最高裁判例[地位確認等請求反訴事件(H27.06.08)]に関するものである。
 その原審の東京高等裁判所の判決では、「労働基準法81条(打切補償)は,同法75条(使用者による療養補償)の規定によって補償を受ける労働者が療養開始後3年を経過しても負傷又は疾病が治らない場合において,打切補償を行うことができる旨を定めており,
 労災保険法に基づく療養補償給付及び休業補償給付を受けている労働者については何ら触れていないこと等からすると,労働基準法の文言上,労災保険法に基づく療養補償給付及び休業補償給付を受けている労働者が労働基準法81条にいう同法75条の規定によって補償を受ける労働者に該当するものと解することは困難である」とし、
 使用者による療養補償がなされていない場合は、打切補償により解雇は無効とした。
 これに対して最高裁は問題文にあるように、「労働基準法において使用者の義務とされている災害補償は、これに代わるものとしての労災保険法に基づく保険給付が行われている場合には、それによって実質的に行われているものといえるので、使用者自らの負担により災害補償が行われている場合とこれに代わるものとしての労災保険法に基づく保険給付が行われている場合とで、労働基準法19条1項ただし書の適用の有無につき取扱いを異にすべきものとはいい難い」として、原判決を破棄し、差し戻しにしたのである。
11
6B
 問題文前段の「産前産後の女性が65条の規定によって休業する期間及びその後30日間」については、19条にあるように、解雇してはならないが、 使用者が、81条の規定によって打切補償を支払う場合、又は、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合においては、この限りでない」とある。
 つまり、65条に基づく休業期間及びその後30日間に当該女性労働者を解雇することは、原則として禁じられているが、天災事変その他やむを得ない事由のため事業の継続が不可能となった場合は、解雇制限にはかからない。
 「やむを得ない事由」の例についてはこちらを。
 ただし、「事業に継続が不可能となった」と事業主が勝手にきめてもらっては困るので、同2項において、
 「天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合においては、その事由について行政官庁の認定を受けなければならない」としていることにも注意を。
21
2C
 19条1項から、
 「産前産後の女性が労働基準法第65条の規定によって休業する期間及びその後30日間は、解雇制限期間である」
 しかしながら、同条にはただし書きがあって、
 「天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合においては、この限りでない」とある。
  つまり、産前産後の女性が65条の規定によって休業する期間及びその後30日間は、原則は解雇してはならない期間であるが、やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合は、解雇ができる。
 なお、 やむを得ない事由のために事業の継続が不可能になった場合については、事業主が勝手に判断してはならず、19条2項にあるように、「解雇予告・解雇制限除外認定申請書」を提出して、所轄労働基準監督署長の認定を受けなければならないことに注意を。
30
5C
 産前産後の休業期間における解雇制限については、19条1項に、「産前産後の女性が65条(産前産後の休業)の規定によって休業する期間及びその後30日間は、解雇してはならない。ただし、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合においては、この限りでない」とある。
 本肢は、「使用者が税金の滞納処分を受けて事業廃止に至った場合は、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合に該当し、解雇制限がかからない」かどうかを問うている。
 「その他やむを得ない事由のため」とはどのような場合かについては、通達(S63.3.14基発150(やむを得ない事由))によれば、
 「天災事変に準ずる程度に不可抗力に基づきかつ突発的な事由の意味であり、(2)のロに「税金の滞納処分を受け事業廃止に至った場合」はこれに該当しないとある。
 よって、本肢の場合、65条の規定によって休業する産前産後の女性労働者を、定められた期間中は解雇することはできない。
15
2D
 22条1項の通りで、
 「使用者は、労働者が退職の場合において、使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金又は退職の事由(退職の事由が解雇の場合にあっては、その理由を含む)について証明書を請求した場合においては、遅滞なくこれを交付しなければならない」
11
2E
 退職時の証明については、22条1項に
 「労働者が、退職の場合において、使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金又は退職の事由(退職の事由が解雇の場合にあっては、その理由を含む)について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない」とあり、前段については正しい。
 なお、本肢出題後、平成15年からは、2項による解雇予告期間中の証明書発行が追加された。
 そして、3項に、「22条の1項、2項いずれの証明書についても、労働者の請求しない事項を記入してはならない」とある。つまり、退職した事由あるいは解雇の理由などは不要であるという申し出であれば、これらを記載してはならない。

22
2D

 退職時の証明については、22条1項に
 「労働者が、退職の場合において、証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない」とあり、証明書書への記載を請求できる事項についても、同条同項の前段に、「使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金又は退職の事由(退職の事由が解雇の場合にあっては、その理由を含む)」とあり、ここまでは正しい。
 しかし、その3項に、
 「証明書には、労働者の請求しない事項を記入してはならない」とある。
 この点については、通達(H15.12.26基発1226002)のA解雇の理由においても、「解雇された労働者が解雇の事実のみについて使用者に証明書を請求した場合、使用者は、解雇の理由を証明書に記載してはならなず、解雇の事実のみを記載する義務がある」
 よって、問題文にある、「解雇の事実のみについて証明書を請求した場合であっても、使用者は、解雇の理油を記載しなければならない」とするのは、間違い。

4
5E
 22条1項に基づく証明書とは、「労働者が、退職の場合において、使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金又は退職の事由(退職の事由が解雇の場合にあっては、その理由を含む)について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない」とある、いわゆる退職証明書のことである。
 そして、同条には、証明する事項が法定されているが、同条3項に、「1項(退職時証明書)、2項(解雇理由証明書)の証明書には、労働者の請求しない事項を記入してはならない」とある。
 この点については、通達(H15.12.26基発1226002)のA解雇の理由においても、「解雇された労働者が解雇の事実のみについて使用者に証明書を請求した場合、使用者は、解雇の理由を証明書に記載してはならなず、解雇の事実のみを記載する義務がある」
 よって、「労働者が法定記載事項の一部のみが記入された証明書を請求した場合は、それ以外の事項を記載してはならない。
 一方、労働者から記入事項を明示せずに請求した場合は、法定記載事項すべてを記載することを請求した者と解されるが、本人に確認することが望ましいであろう。
 労働者から法定記載事項について請求された場合は、使用者はこれを拒むことはできない。
 法定記載事項以外の事項について請求があった場合は、必ずしもこれに応ずる義務はない。
29
3C
 退職後において、労働者が退職に関する証明書を請求した場合、使用者は22条1項により、「使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金又は退職の事由(解雇の場合は解雇理由を含む)証明書を遅滞なく発行しなければならない」
 本肢は「退職1年後に請求した場合、使用者の交付義務はなくなる」かどうかと聞いている。
 時効については、115条に、「この法律の規定による賃金の請求権はこれを行使することができる時から5年間、この法律の規定による災害補償その他の請求権(賃金の請求権を除く)はこれを行使することができる時から2年間行わない場合においては、時効によつて消滅する」とある。
 22条の証明書については、その他の請求権に該当するもので、通達(H11.3.31基発169(時効関連))においても、
 「退職時証明については、請求権の時効は115条により、2年と解するがどうか」というお伺いに対し、「その通り。すなわち、請求できる時から2年間である」という回答であった。

5
5D
 退職時の証明の求めとは、22条1項に「労働者が、退職の場合において、使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金又は退職の事由(退職の事由が解雇の場合にあっては、その理由を含む)について証明書を請求した場合」とあることによる。
 この証明を求める回数については、通達(H11.3.31基発169(回数関連))に、「退職時の証明を求める回数については制限はない」とある。
 時効消滅しない限り、労働者(であった者)が何回請求しても、使用者はこれを交付する義務がある。                 
令元
4E
 「労働者が自己の都合により退職した場合には・・・・労働者が証明書を請求したとしても・・」とある。
 22条1項によれば、「労働者が、退職の場合において、退職に関する証明書を請求した場合、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない」
 ここで、退職時証明書の請求権発生要件(退職の場合)について、労働法コンメンタール「労働基準法上P325」によれば、「退職の場合とは、労働者の自己退職の場合に限らず、使用者より解雇された場合や契約期間の満了により自動的に契約が終了する場合も含まれ、退職原因の如何を問わない。また、請求の時期は、必ずしも退職と同時に請求しなけれければならないものではない」とある。
16
3C

 

 
 通達 (H15.10.22 基発1022001)のAによれば、 
 「22条2項の規定は、解雇予告の期間中に解雇を予告された労働者から請求があった場合に、使用者は遅滞なく、当該解雇の理由を記載した証明書を交付しなければならないものであるから、解雇予告の義務がない即時解雇の場合には、適用されないものであること。
 この場合、即時解雇の通知後に労働者が解雇の理由についての証明書を請求した場合には、使用者は、1項に基づいて解雇の理由についての証明書の交付義務を負うものと解すべきものであること」とある。
 すなわち、本肢の場合は、即時解雇すなわち解雇予告期間がないので、2項は適用しようがなく、1項を適用すれば、同様の証明書が得られることになる。 
22
2C
 常識から判断すれば正解はわかるはずであるが、通達(H11.3.31基発169(22条関連)によれば、 「退職時の証明は、労働者が請求した事項についての事実を記載した証明書を遅滞なく交付してはじめて22条1項の義務を履行したものと認められる。
 また、労働者と使用者との間で退職の事由について見解の相違がある場合、使用者が自らの見解を証明書に記載し労働者の請求に対し遅滞なく交付すれば、基本的には労働基準法22条1項違反とはならないものであるが、それが虚偽であった場合(使用者がいったん労働者に示した事由と異なる場合等)には、同項の義務を果たしたことにはならないものと解する」とある通り。
15
4B
 退職の事由(解雇の場合はその理由)についての証明書を発行しなければならないのは、解雇を予告した日から退職の日までの間に労働者が請求した場合(22条2項)、あるいは退職後に請求した場合(22条1項)であって、
 解雇の意思表示を書面でしなければならないという規定はない。
 「民法540条 契約又は法律の規定により当事者の一方が解除権を有するときは、その解除は、相手方に対する意思表示によってする」とあり、民法においても意思表示の形式は問うていない。すなわち、口頭であっても構わない。 

22
2E

 22条4項は、
 「使用者は、あらかじめ第三者と謀り、労働者の就業を妨げることを目的として、労働者の国籍、信条、社会的身分若しくは労働組合運動に関する通信をし、又は第1項及び第2項の証明書に秘密の記号を記入してはならない」
 ここで、「通信」とはたとえば、その業界等でふさわしくない行動をしたものなどをいわゆる「ブラックリスト」として作成し、配布することなどをいう。
 通達(S22.09.13発基17(ブラックリスト))によれば、
 「22条4項は、いわゆるブラックリストの回覧のごとき、予め計画的に就業を妨げることを禁止する趣旨である」
 さて、本肢の論点は、4項にある「国籍、信条、社会的身分若しくは労働組合運動」が、その項目だけに法律の効果が及ぶ限定列挙(制限列挙)であるか、単なる例示列挙であって、例示されていない項目まで及ぶか、ということである。
 これについては、通達(22.12.25基発502(禁止事項))において、
 「22条4項の「国籍、信条云々」は例示であるか。例示であるとすれば例示以外の事項についても、予め第3者とはかり、就業を妨げることを目的としておれば、通信は不可能となるが、例示でないとすれば通信が可能になると解せられる」という問に対し、回答は、
 「22条4項の、「国籍、信条云々は制限列記事項であって例示ではない」
 つまり、列記事項(労働者の国籍、信条、社会的身分若しくは労働組合運動に関する事項)は禁止である、列記事項以外のものは禁止されていない。
30
5E
 「労働基準法第22条第4項は、「使用者は、あらかじめ第三者と謀り、労働者の就業を妨げることを目的として、労働者の国籍、信条、社会的身分若しくは労働組合運動に関する通信」をしてはならないと定めている」とあるが、この部分は22条4項にある通り。(上記以外にも証明書に秘密の記号を記入することも禁止されている)
 さて、問題の核心は後段にある「禁じられている通信の内容として掲げられている事項は、例示列挙であり、これ以外の事項でも当該労働者の就業を妨害する事項は禁止される」のところ。
 制限(あるいは許可)事項が複数個ある場合でこれらを列挙した場合、その意味するところは、次の2通りがある。
@限定列挙列挙された事項にのみ適用がある。
A例示列挙:単なる例であり、これらに類するほかの事項にも適用がある。
 本肢の場合、通達(22.12.25基発502(禁止事項))によれば、「国籍、信条、社会的身分若しくは労働組合運動に関する通信は、制限列記(限定列挙)事項であって例示(列挙)ではない」とあり、列記されていない事項であれば、22条4項違反ではないとした。
 ここで、「労働組合活動に関する通信」とは、当該労働者の所属労働組合、組合における地位、組合活動状況等に関する通信。
 よって、たとえばタクシー運転手の採用に当たって、交通違反の回数や運転技術、素行などについて問い合わせをしたり、問い合わせに答えるなどの通信を業者間で行うことは、一応、22条4項違反とはされない。