30年度 法改正トピックス(厚生年金保険法に関する主要改正点)
  改正後 改正ポイント
10

年金
 老齢厚生年金の支給要件(42条)(H29.08.01)
 「老齢厚生年金は、被保険者期間を有する者が、次の各号のいずれにも該当するに至つたときに、その者に支給する」
@65歳以上であること。
A保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が10年以上であること。
 保険料納付済期間+保険料免除期間が、「25年以上」から「10年以上」に
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 老齢厚生年金の支給要件等の特例(附則14条)(H29.08.01)
 「被保険者期間を有する者のうち、その者の保険料納付済期間、保険料免除期間及び国民年金法附則に規定する合算対象期間を合算した期間が10年以上である者は、42条(老齢厚生年金の支給要件)並びに附則7条の3(特別支給の老齢厚生年金がない者の繰上げ)の1項、8条(特別支給老齢厚生年金の受給資格要件)、13条の4(報酬比例部分支給開始前の繰上げ)の1項、28条の3(旧共済組合員期間を有する者に対する特例老齢年金)の1項及び29条(脱退一時金)の1項の規定の適用については、42条2号に該当するものとみなし、被保険者期間を有する者のうち、その者の保険料納付済期間、保険料免除期間及び合算対象期間を合算した期間が25年以上である者は、58条1項(4号(長期要件による遺族厚生年金)に限る)及び附則28条の4(旧共済組合員期間を有する者の遺族に対する特例遺族年金)の1項の規定の適用については、保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が25年以上であるものとみなす」
 保険料納付済期間+免除期間+合算対象期間が10年以上ある者は、 保険料納付済期間+免除期間が10年以上あるとみなし、老齢厚生年金、特別支給の老齢厚生年金、特例老齢年金の受給権が発生する。
 ただし、長期要件による遺族厚生年金、特例遺族年金については、従来と同じく25年以上必要である。  
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遺族厚生年金  支給要件(58条) (H29.08.01)
 「遺族厚生年金は、被保険者又は被保険者であった者が次の各号のいずれかに該当する場合に、その者の遺族に支給する。
 ただし、第1号又は第2号に該当する場合にあっては、
 死亡した者につき、死亡日の前日において、死亡日の属する月の前々月までに国民年金の被保険者期間があり、かつ、当該被保険者期間に係る保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が当該被保険者期間の3分の2に満たないときは、この限りでない」
4号:老齢厚生年金の受給権者(保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が25年以上ある者に限る)又は保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が25年以上であるが、死亡したとき
 4号は、「老齢厚生年金の受給権者又は受給資格期間を満足する者が、死亡したとき 」から、「老齢厚生年金の受給権者(保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が25年以上ある者に限る)又は保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が25年以上であるが、死亡したとき」に。
 すなわち、長期要件による遺族厚生年金の受給資格は、受給資格期間の短縮化に関係なく、従来どおり。(条文の記述は改正されたが、内容は従来どおり)
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 特例遺族年金(附則28条の4) (H29.08.01)
 「厚生年金1号被保険者期間が1年以上であり、かつ保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が25年に満たない者で、被保険者期間と旧共済組合員期間とを合算した期間が20年以上ある者が死亡した場合において、その者の遺族が遺族厚生年金を受給権を取得しないときは、その遺族に特例遺族年金を支給する」
 「かつ42条2号に該当しない者」から、「かつ保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が25年に満たない者」に改正。
 すなわち、42条2号が今回の改正で、「保険料納付済期間と免除期間とを合算した期間が25年」から「10年」に短縮化されたが、長期要件による遺族厚生年金には10年化は適用しないため、「25年に満たない者」と条文の字句のみ変更した(内容は変らず)
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個人番号  個人番号(マイナンバー)の利用 (H30.03.05)
 紆余曲折があったが、日本年金機構は個人番号利用事務等実施者として認められ、平成30年3月5日から、地方公共団体情報システム機構からマイナンバー、氏名・住所・生年月日など(機構保存本人確認生情報)の提供を受けることができ、また、これらを年金に関する事務に利用することができるようになった。
 
 これにより、年金の請求を、基礎年金番号ではなくて個人番号で行うことが可能になったほか、被保険者や受給者からの氏名変更届、旧現況届などの届出は不要になった。
 ただし、基礎年金番号とマイナンバーとの紐づけが正しくできていない者には、「個人番号等登録届」の届出が求められる。
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届出
・被保険者
 氏名変更の申出(施行規則6条) (H30.03.05)
 「被保険者(適用事業所に使用される高齢任意加入被保険者及び第四種被保険者等を除き、厚生労働大臣が住民基本台帳法の既定により機構保存情報の提供を受けることができない者に限る。次条において同じ)は、その氏名を変更したときは、速やかに変更後の氏名を事業主に申し出るとともに、年金手帳を事業主に提出しなければならない」 
 被保険者が氏名を変更した場合の事業主への申出は、「機構保存情報の提供を受けることができる者」は不要となった。
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 住所変更の申出(施行規則6条の2) (H30.03.05)
 「被保険者(適用事業所に使用される高齢任意加入被保険者及び第四種被保険者等を除き、厚生労働大臣が住民基本台帳法の規定により機構保存情報の提供を受けることができない者に限る)は、その住所を変更したときは、速やかに、変更後の住所及び変更の年月日を事業主に申し出なければならない」
 被保険者が住所を変更した場合の事業主への申出は、氏名変更の場合と同様。
届出
・受給権者
 氏名変更届(施行規則37条) (H30.03.05)
 「老齢厚生年金の受給権者(厚生労働大臣が住民基本台帳法の規定により機構保存本人確認情報の提供を受けることができる者を除く)は、その氏名を変更したときは、10日以内に、次の各号に掲げる事項(変更前及び変更後の氏名、生年月日、住所、個人番号又は基礎年金番号、年金コードなど)を記載した届書を、機構に提出しなければならない」
 氏名変更の理由の届(遺族厚生年金)(施行規則70条の2) (H30.03.05新規)
 「遺族厚生年金の受給権者は、その氏名を変更した場合であって前条の規定による氏名変更届の提出を要しないときは、当該変更をしたときから10日以内に、次の各号に掲げる事項(氏名、生年月日、住所、個人番号又は基礎年金番号、氏名変更の理由)を記載した届書を、機構に提出しなければならない」
 個人番号変更届(施行規則38条の2)(H30.03.05新規)
 「老齢厚生年金の受給権者は、その個人番号を変更したときは、速やかに、所定の事項(氏名、生年月日、住所、変更前後の個人番号、変更年月日)を記載した届書を、機構に提出しなければならない」 
 老齢厚生年金・障害厚生年金の受給権者の氏名変更届は、機構保存本人確認情報の提供を受けることができる者は不要に。
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 遺族厚生年金受給権者が氏名変更したときは、氏名変更届が必要な者あるいは必要でない者いずれであっても、氏名変更の理由について、それを証明する戸籍抄本その他の証明書を添えて、届けなければならないことに。
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・老齢厚生年金・障害厚生年金・遺族厚生年金受給権者が個人番号を変更したときは、個人番号変更届が必要となった。
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・被保険者については、「速やかに」事業主に申出(施行規則6条の3)、事業主から機構に「速やかに」届出(施行規則21条の4)
マクロ経済スライドの
見直し
 調整期間中における再評価率の改定:マクロ経済スライド(43条の4) 新規裁定者 (H3004.01)
 「調整期間における再評価率の改定については、前2条の規定にかかわらず、名目手取り賃金変動率に、調整率(1号に掲げる率に2号に掲げる率を乗じて得た率(当該率が1を上回るときは1)に、当該年度の前年度の特別調整率を乗じて得た率を乗じて得た率(当該率が1を下回るときは1。この条において「算出率」という)を基準とする」  
 「5項 特別調整率とは、1号の規定により設定し、2号の規定により改定した率をいう」
 @平成29年度における特別調整率は、1とする。
 A特別調整率については、毎年度、名目手取り賃金変動率に調整率を乗じて得た率を算出率で除して得た率(名目手取り賃金変動率が1を下回るときは、調整率)を基準として改定する。 
1項:
・新規裁定者の調整期間中の改定は、原則として、算出率(名目手取り賃金変動率×調整率×前年度の特別調整率)を基準に行うことに。すなわち、
・調整率による調整を行った年金額が前年度を上回る場合は、調整率に加えて特別調整率(過去の調整率の未達成分の累計値)による調整を行う。
・ただし、調整率と特別調整率による調整は、年金額が前年と同額となるまでを限度とする。 
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 5項:特別調整率の新設
・名目手取り賃金変動率が1以上のとき
 まず、調整率分を調整し未達成部分があるときは、その未達成部分を特別調整率に加えて、次年度に持ち越す。
 調整率分全部を調整しても年金額が前年度の額を上回っているときは、続いて特別調整率分による調整を行い、未達成部分があるときは、その未達成部分を次年度の特別調整率とする。
・名目手取り賃金変動率が1未満のとき
 年金額が下がるため調整は行われないので、調整率全部を未達成として、特別調整率に加え次年度に持ち越す。
 調整期間中における基準年度(68歳到達年度)以後の再評価率の改定:マクロ経済スライド(43条の5) 既裁定者 
 「調整期間における基準年度以後再評価率の改定については、 前条の既定にかかわらず、1号に掲げる率に2号に掲げる率を乗じて得た率(当該率が1を下回るときは1。「基準年度以後算出率」という)を基準とする」
@物価変動率(物価変動率が名目手取り賃金変動率を上回るときは、名目手取り賃金変動率)
A調整率に当該年度の前年度の基準年度以後特別調整率(当該年度が基準年度である場合にあつては、当該年度の前年度の前条5項に規定する特別調整率、次項@及び3項Aにおいて同じ))を乗じて得た率

 「5項 基準年度以後特別調整率とは、1号の規定により設定し、2号の規定により改定した率をいう」
@基準年度における基準年度以後特別調整率は、イに掲げる率にロに掲げる率を乗じて得た率とする。
 イ:基準年度の前年度の前条5項に規定する特別調整率
 ロ:物価変動率(物価変動率が名目手取り賃金変動率を上回るときは名目手取り賃金変動率)×調整率/基準年度以後算出率で除して得た率(物価変動率又は名目手取り賃金変動率が1を下回るときは調整率)
A基準年度以後特別調整率については、毎年度、前号ロに掲げる率を基準として改定する。
1項。
・既裁定者の調整期間中の改定は、原則として、算出率(物価変動率×調整率×前年度の基準年度以後特別調整率)を基準に行うことに。
 ただし、物価変動率が名目手取り賃金変動率を上回るときは、名目手取り賃金変動率×調整率×前年度の基準年度以後特別調整率で改定する。(新規裁定者と同様)
 すなわち、
・調整率による調整を行った年金額が前年度を上回る場合は、調整率に加えて基準年度以後特別調整率(過去の調整率の未達成分の累計値)による調整を行う。
・ただし、調整率と基準年度以後特別調整率による調整は、年金額が前年と同額となるまでを限度とする。
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 5項:基準年度以降特別調整率の新設
・基準年度の前年度の基準年度以後特別調整率はないので、基準年度の前年度の特別調整率を出発点とする。
・物価変動率(名目手取賃金変動率の方が小さいときは名目賃金変動率)が1以上のとき
 まず、物価変動率×調整率分を調整し未達成部分があるときは、その未達成部分を基準年度以降特別調整率に加えて、次年度に持ち越す。
 調整率分全部を調整しても年金額が前年度の額を上回っているときは、続いて基準年度以降特別調整率分による調整を行い、未達成部分があるときは、その未達成部分を次年度の基準年度以降特別調整率とする。
・物価変動率率(名目手取賃金変動率の方が小さいときは名目賃金変動率)が1未満のとき
 年金額が下がるため調整は行われないので、調整率全部を未達成として、基準年度以降特別調整率に加え次年度に持ち越す。