6 労働基準法 解答の解説 Tome塾Homeへ
6A  12-5C14-5A16-6A17-4A19-6A
6B  12-5D13-3B14-3B14-7E16-6B17-1D17-4B18-6E19-3A19-3B24-4E25-1A25-2イ26-3ウ27-2A27-2B27-2C27-2D27-2E令元-1A,B,C,D,E
6C  12-5E14-5C14-5D14-5E16-6C17-4C18-6B18-6C18-6D19-6B19-6C19-6D19-6E20-5B20-5E22-6A22-6C22-6E24-6ア24-6イ24-6ウ24-6エ25-2ウ25-2エ26-6A26-6B26-6C28-7A28-7B28-7C28-7D28-7E令元ー6E令4-7E
 26-1選択
6D  11-4D14-5B15-5C16-6E17-4D17-4E17-5C20-5A20-5C20-5D22-6B22-6D24-6オ25-2ア25-2オ令2-6E令3-2E令5-7D
 22-2選択23-2選択27-2選択29-1選択令5-2選択
12
5C
 そのような規定はない。
 多くの場合、有給休暇を残したまま退職することが多い。この場合、余った年次有給休暇の買い上げについては、「有給休暇の買い上げは原則として認められないが、法定休暇日数を超える分についての取扱いは、企業が任意に定めても差し支えない」ことになっている。
 また参考までに、退職予定者の計画的付与についても、
 「計画的付与は当該付与日が労働日であることを前提に行われるものであり、その前に退職することが予定されている者については、退職後を付与日とする計画的付与はできない。従って、そのような場合には、計画的付与前の年休の請求を拒否できない」(S63.3.14基発150)
17
4A
 有給休暇の比例付与に関する39条3項から、「1週間の所定労働日数が4日以下の労働者など(ただし、1週当たり所定労働時間が30時間以上の者を除く)の有給休暇の日数は比例付与されることになる」
 本肢の場合は、6か月間継続勤務した日において、週所定労働時間が32時間(4日×8時間)であるから、比例付与の対象とはならず、通常労働者と同じく10労働日を与えなければならない。
14
5A
 1週当たり所定労働日数が5日の場合、39条3項の1号により、有給休暇比例付与の対象とならない。
 よって、前者は10日、後者は7日(4/5.2×10=7.69・・・→7日)
19
6A
 いわゆる有給休暇の比例付与については、39条3項から、
 @週所定労働時間が30時間未満の者であって、
 A週所定労働日数が4日以下(週で所定日数が定められていない場合は、年間所定労働日数が216日以下)
 
の労働者に対して適用される。
 本肢の場合、一人は週所定労働時間が20時間と短いものの週所定労働日数が5日、他の者は週所定労働日数が3日と短いものの週所定労働時間が30時間であるから、いずれも比例付与の対象者ではなく、通常の労働者と同じ日数が付与されるべきである。
16
6A
 通達(S63.3.14 基発150号)によると、「39条3項の適用を受ける労働者が、年度の途中に所定労働日数が変更された場合、休暇は基準日において発生するので、はじめの日数のままと考える」とある。
 すなわち、基準日とは雇い入れの日から6か月間継続勤務した日の翌日であるが、その前日までの所定労働日数や出勤率によって付与日数が確定し、基準日には既に有給休暇の請求権利が発生している。よって、たとえ基準日である6か月間勤務した日の翌日に所定労働日数が変わったとしても、その影響は受けないものとされている。
19
3A
 平均賃金の計算方法は、12条の通りであり、
 原則は、平均賃金=3か月間の賃金総額/3か月間の総歴日数
 しかしこれだと、たとえば週3日間出勤して時間給で賃金が支払われる者だと、極端に低額になる場合がある。
 そこで、12条の1号にあるように、「賃金が日給、時間給、歩合給などによる場合」は
 平均賃金=3か月間の賃金総額×0.6/3か月間の中で実際に労働した総日数
についても計算し、どちらか多い方を採用することになっている。
27
2D
 平均賃金は12条にあるように、「算定事由発生日以前3か月間に支払われた賃金の総額を、3か月間の総日数で除した金額」で算定する(ただし、実際には算定事由発生日前3か月間である)。
 ただし、賃金締切日がある場合は、12条の2項により、
 「賃金締切日がある場合においては、直前の賃金締切日から起算する」とある通り。
 この点について、通達(S24.07.13基収2024)に、「賃金締切日が、毎月末日と定められている場合において、たとえば、6月30日に算定事由が発生したときは、なお直前の賃金締切日である5月末日よりさかのぼって3ヵ月の期間をとる」とある。
 算定事由発生日以前とあるが実際にはその日は含まれないので、例えば7月31日が算定事由発生日である場合、7月30日から3か月さかのぼることになるが、賃金締切日が月末の場合は、その直近の賃金締切日6月30日から3か月遡ることになる。
27
2E
 平均賃金は12条にあるように、「算定事由発生日以前3か月間に支払われた賃金の総額を、3か月間の総日数で除した金額」で算定する(ただし、実際には算定事由発生日前3か月間である)。
 ただし、賃金締切日がある場合は、12条の2項により、「直前の賃金締切日から起算する」とある。
 よって本肢の場合、基本給については、6月25日が算定事由発生日であるから、その直前の締切日である5月31日から遡った3か月(賃金支払期間3期分)が平均賃金の算定期間となることでよかろう。
 問題は、賃金締切日の違う時間外手当の取扱いであるが、通達(S26.12.27基収5926)によると、「賃金ごとに締切日が異なる場合、いずれを直前の賃金締切日とするかという問い合わせに対し、その場合の直前の賃金締切日は、それぞれ各賃金ごとの賃金締切日とする」とある。
 つまり本肢の場合、時間外手当については、6月25日が算定事由発生日であるから5月20日から遡った3か月(賃金支払期間3期分)が平均賃金の算定期間となる。
 最終的には、基本給によるものと時間外手当によるものを合算した金額が平均賃金となる。
令元

A
B
C
D
E

 平均賃金は12条にあるように、「算定事由発生日以前3か月間に支払われた賃金の総額を、3か月間の総日数で除した金額」で算定する(ただし、実際には算定事由発生日前3か月間である)
 ただし、賃金締切日がある場合は、12条の2項により、「直前の賃金締切日から起算する」とある。
 よって本肢の場合、基本給、通勤手当、職務手当については、7月20日が算定事由発生日であるから、その直前の締切日である6月25日から3か月遡った3月26日から6月25日までの3か月分が平均賃金の計算の基礎となる。(この間の歴日数は92日)
 次に、賃金締切日の違う時間外手当の取扱いであるが、通達(S26.12.27基収5926)によると、「賃金ごとに締切日が異なる場合、直前の賃金締切日はそれぞれ各賃金ごとの賃金締切日とする」とあることから、
 7月20日の直前の締切日である7月15日から3か月遡った4月16日から7月15日までの3か月分が平均賃金の計算の基礎となる。(この間の歴日数は92日。なお実際には、6月16日から7月15日までの時間外手当はまだ支払われていないが、額は確定していることに注意)
 よって、それぞれの賃金の総額を歴日数で割った金額を合計した額が、求める平均賃金となる。
B:賃金締切日の違う時間外手当の取扱いに誤りがある。時間外手当については、7月15日締めり(支払いは7月31日であるが金額は確定しているので、これも含めた3月分でないといけない)
C:通勤手当を除くというルールはない。額をその期間の歴日数91で除した金額を加えた金額が平均賃金となる。
D:Bの間違いとCの間違い。
E:時間外手当を除くというルールはない。
14
3B
 12条の2項によると、
 「期間は、賃金締切日がある場合においては、直前の賃金締切日から起算する」
 さらに、通達(S23.4.22基収1065号)によると、
 「雇入後3か月未満の労働者について平均賃金を算定すべきに 事由が発生した場合には、雇入れ後の期間(日数)とその期間中の賃金の総額で算定する。この場合でも、賃金締切日があるときは、直前の賃金締切日から起算する」とある。
 また、通達(S27.4.21基収1371号)によると、
 「直前の賃金締切日より計算すると、算定期間が一賃金締切期間に満たなくなる場合に ついては、事由の発生日から計算を行うこととする」とある。
 よって、「雇入後3か月未満の労働者の平均賃金を算定する場合、賃金締切日があるときは、直前の賃金締切日から起算して、賃金総額/雇入れから直前賃金締切日までの日数とする。ただし、その日数が一賃金締切期間(通常は1か月)に満たない場合は、算定事由発生日から起算する」
 問題文では、「すべて算定事由発生日以前」とあり、すべてとするのが誤り。
13
3B
 12条3項において、「平均賃金の計算においては、業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業した期間、産前産後の休業期間その他の期間(使用者の責めに帰すべき事由による休業期間、育児休業・介護休業期間、試用期間)については、その日数及びその期間中の賃金を控除する」とあるが、通勤災害による療養のための休業については、対象となっていない
労基法においては、療養補償、休業補償、障害補償、遺族補償、葬祭料は業務上災害に限られ、通勤災害は対象になっていない。
27
2B
 12条1項による平均賃金の算定において、賃金総額と3か月という期間から、賃金及び日数を控除することができるのは、12条3項にある通りで、業務上災害による休業期間中などがあるが、7条に基づく公民権の行使による休業期間は対象となっていない。
 参考までに、労働委員会、法令に基づく審議会の委員として出席することなどは公民権の行使として保障されているが、その間は有給であるか無給であるかは、当事者が自由に決めることとされている。
27
2A
 平均賃金の算定基礎となる賃金総額から除かれるものについては、12条4項から、
 「臨時に支払われた賃金及び3か月を超える期間ごとに支払われる賃金並びに通貨以外のもので支払われた賃金で一定の範囲に属しないもの」である。(そのほかに、同条3項にあるように、業務上災害による休業期間中の賃金(及び日数)など、賃金と日数両方とも控除されるものもある)
 「通勤手当及び家族手当」などが算定基礎から除かれるのは、時間外労働などに対するの割増賃金であって、平均賃金の話ではない。(37条5項を参照のこと)
19
3B
 12条3項の各号から、平均賃金の計算において日数及び賃金を控除する対象期間は、
 @業務上災害による休業期間、A産前産後の休業期間、B使用者の責めによる休業期間、C育児・介護休業期間、D試用期間である。
 Cに関して、「子の看護休暇」は対象外である。
24
4E
 前段については、平均賃金について定義した12条に、
 「この法律で平均賃金とは、これを算定すべき事由の発生した日以前3か月間にその労働者に対し支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で除した金額をいう 」の通り。
 後段については、12条4項に、
 「1項の賃金の総額には、臨時に支払われた賃金及び3か月を超える期間ごとに支払われる賃金並びに通貨以外のもので支払われた賃金で一定の範囲に属しないものは算入しない」 とある。
 つまり、算定期間内に支給されたものであろうとなかろうと、3か月を超える期間ごとに支払われる賃金は、平均賃金には算定しない。
 たまたま期間内に支払われたか否かによって差が出てこないようにということである。
17
1D
 まず、前段については、賃金となるもの、ならないものの例3の通りで
 「労働協約において、あらかじめ貨幣賃金のほかにその支給が約束されているものいわゆる実物給与」は賃金である。
 本肢の場合は、「労働協約」により予め支給が約束されたものかどうかは明確にされていないが、賃金の支払い原則について規定した24条により、
 「実物給与は法令若しくは労働協約に別段の定めがある場合 のみ合法」とされているので、ここでは特に問題にはしないことにする。
 次に、この6か月通勤定期券は平均賃金の中に取り込むべき賃金であるか否かであり、12条4項に、
 「1項の賃金の総額には、臨時に支払われた賃金及び3か月を超える期間ごとに支払われる賃金並びに通貨以外のもので支払われた賃金で一定の範囲に属しないものは算入しない」 とあることがひっかかかる。
 ここにある「通貨以外のもので支払われた賃金で一定の範囲」とは、同条5項により、
 「賃金が通貨以外のもので支払われる場合、1項の賃金の総額に算入すべきものの範囲及び評価に関し必要な事項は、厚生労働省令で定める」とあ って、具体的には、施行規則2条1項
 「法令又は労働協約の別段の定めに基づいて支払われる通貨以外のものとする」とある。
 よって、堂々巡りのようになるが、結局のところ「労働協約 においてその支給が約束されている通勤乗車券は賃金であり、かつ平均賃金の中に算定すべき賃金でもある」ことになる。
 次にクリアすべきことは、後段にある「この通勤定期券は6か月ごとに支払われる賃金」とあるところ。
 これについては、通達(S25.1.18基収130)に、
 「労働協約 により支給している定期券は賃金であり、これを賃金台帳に記入し、又6ヵ月定期乗車券であっても、これは各月分の賃金の前払いとして認められるから、平均賃金算定の基礎に加えなければならない」とされている。
 つまり、6ヵ月定期乗車券であっても各月分の賃金の前払いであるから、3か月間を超える期間ごとに支払われる賃金には該当しないので、6で割った金額を各月に割り振って、平均賃金の算定基礎としなければならない。
26
3ウ
 まず「6か月定期乗車券」が賃金であることについては、労働協約において、あらかじめ貨幣賃金のほかにその支給が約束されているものいわゆる実物給与は賃金であり、通達(S32.2.13基発90号)においても、
 「労働組合と締結した労働協約による6箇月通勤定期乗車券は、各月の賃金の前払いである」としている。
 そして、この「6か月定期乗車券」を平均賃金の算定の基礎とすべきか否かについては、通達(S25.1.18基収130)に、
 「労働協約 により支給している定期券は賃金であり、これを賃金台帳に記入し、又6ヵ月定期乗車券であっても、これは各月分の賃金の前払いとして認められるから、平均賃金算定の基礎に加えなければならない」とされている。
 つまり、6ヵ月定期乗車券であっても各月分の賃金の前払いであるから、3か月間を超える期間ごとに支払われる賃金には該当しないので、6で割った金額を各月に割り振って、平均賃金の算定基礎としなければならない。

4
6ア
  「通貨以外のもので支払われる賃金も、原則として労働基準法第12条に定める平均賃金等の算定基礎に含まれる」とある。
 これに関しては、12条5項に、「賃金が通貨以外のもので支払われる場合、1項(平均賃金算定のため)の賃金の総額に算入すべきものの範囲及び評価に関し必要な事項は、厚生労働省令で定める」とあって、
 施行規則2条1項に、「賃金の総額に算入すべきものは、法24条1項ただし書の規定による法令又は労働協約の別段の定めに基づいて支払われる通貨以外のものとする」とある通り。
 さらに、具体的にその現物をいくらの額として算入するかについては、施行規則2条2項に、「通貨以外のものの評価額は、法令に別段の定がある場合の外、労働協約に定めなければならない」とあり、法令に別段の定めがある場合のほかは、労働協約で評価額を定めておかなければならない。
25
1A
 91条とは、「就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、総額が1賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えてはならない」のこと。
 ここで、平均賃金は、12条から、
 「算定すべき事由の発生した日以前3か月間にその労働者に対し支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で除した金額」のこと。(3か月間とは90日のことではなく、歴日で3か月、また、事由の発生した日以前とあるが、一般的には発生した日は含まれない)
 本肢は、この3か月をいつからさかのぼって計算するかということであるが、「平均賃金を算定するときの起算日」の表にあるように、「減給の制裁の場合は、減給をする旨の意思表示が相手方に到達した日」である。
 「減給制裁の事由が発生した日」でもなく、「減給の制裁が決定された日」でもない。
 これについては、通達(S30.07.19基収5875)に、
 「法91条の規定における平均賃金については、減給の制裁の意思表示が相手方に到達した日をもって、これを算出すべき事由の発生した日とする」とある。
 要するに、減給の制裁は「なぜするのか、いくらするのか」が相手に伝わらなければ意味がないのだ。
 参考までに、月給制の場合は、この日の直前の賃金締切日である。
27
2C
 業務上災害が原因で死亡した場合、使用者は79条による遺族補償として、平均賃金の1000日分を支払わなければならない。(実際には、事業主に代わって労災保険法から遺族補償給付がなされる)
 この場合の平均賃金の算定は、12条から、「算定すべき事由の発生した日以前3か月間賃金の総額総日数」から行われるが、本肢はこの3か月をいつからさかのぼって計算するかということである。
 これについては、「平均賃金を算定するときの起算日」の表にあるように、施行規則48条により、「災害補償を行う場合には、死傷の原因たる事故発生の日又は診断によつて疾病の発生が確定した日を、平均賃金を算定すべき事由の発生した日とする」とある。(実際には、起算日その日は含まれない)
 なお、労災保険法による肩代わり給付においても、「平均賃金」は「給付基礎日額」と称せられるがその内容は同じで、8条に、「平均賃金を算定すべき事由の発生した日は、 業務災害及び通勤災害に規定する負傷若しくは死亡の原因である事故が発生した日、又は診断によって業務災害及び通勤災害に規定する疾病の発生が確定した日とする」とある。
12
5D
 年次有給休暇を取得した日に対する賃金は、39条9項の通りで、
・労使協定に特段の定めがない場合は、就業規則その他これに準ずる物により定めた金額、すなわち、平均賃金又は通常の賃金、
・労使協定があるときは、これにより定めた健康保険法の標準報酬月額の30分の1に相当する金額(10円単位での四捨五入)
 いずれも、時間単位年休の場合は、これらの金額を当日の所定労働時間で割った額を支払うことになっている。
 なお、問題文には「労働者の指定するところにより支払わなければならない」とあるが、複数の支払い方法がある場合、どれにすべきは任意であるが、その都度選択するのではなく、どの方法によるかを予め就業規則で定めておかなければならない。(労使協定で定めた場合は、それに従わなければならない)
25
2イ
 年次有給休暇中の賃金については、39条9項に、
 「有給休暇の期間又は有給休暇の時間については、就業規則その他これに準ずるもので定めるところにより、平均賃金、所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金又はこれらの額を基準として厚生労働省令で定めるところにより算定した額の賃金を支払わなければならない。
 ただし、過半数組織労働組合あるいは労働者の過半数代表者との書面による協定により、健康保険法に定める標準報酬月額の30分の1に相当する金額又は当該金額を基準として厚生労働省令で定めるところにより算定した額を支払う旨を定めたときは、これによらなければならない」とある。
 つまり、平均賃金等から労働者の指定するところに従って支払うのではなく、以下の決められた額を支払わなければならない。
@労使協定がない場合
 就業規則等で定めた金額(平均賃金又は所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金、時間単位年休の場合は平均賃金又は通常の賃金を当日の所定労働時間で割った額、のいずれか決められた額)
A労使協定がある場合
 労使協定で定めた額(標準報酬月額/30、時間単位年休の場合はその額を当日の所定労働時間で割った額)
17
4B
 前段の有給休暇の権利は、基準日(6ヵ月継続勤務した日の翌日)に発生するもので、そのための条件は39条1項により
 「基準日の前日の属する期間(雇入れの日から起算して6ヵ月継続勤務した期間)に全労働日の8割以上出勤する必要がある」
 本肢の場合、この条件に合格しているが週所定労働日が4日以下であるので、その日数は基準日前日における所定労働日数に応じて39条3項により比例付与される。 
 次に年次有給休暇中の賃金については、「就業規則により、所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金を支払うこととしている」のであるから、本肢の場合、1日当たり6時間の賃金を支払う必要がある。


 本肢は何でもない問題のように見えるが、皮肉なことに、良くできる人にとっては少し厄介でもある。それは、「途中で所定労働条件が変わった場合の有給休暇の付与日数は、基準日以降に所定労働日数が変わっても、基準日時点で確定している日数である」ということが、本肢の伏線になっており、ひっかけの要因になっていることである。
 これは、あくまでも6か月間以上継続勤務することによって初めて与えられる有給休暇だけの話であり、 39条9項における平均賃金や所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金は、その時点、時点での額を採用しなければならない。
16
6B
 通達(S63.3.14 基発150号)によると、
 「変形労働時間制を採用している事業場における時給制労働者の変形期間中における39条の通常の賃金は、各日の所定労働時間に応じて算定される」とある。
 よって、1日あたりの平均所定労働時間に応じてではなく、「各日の所定労働時間」に応じて算定されるべきである。
 要するに、その日休まずに所定労働時間労働したとしてもらえる賃金の額
18
6E
 年次有給休暇中に賃金については、39条9項により、
「@平均賃金A所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金、B労使協定による健康保険法の標準報酬月額の30分の1のいずれかによる」とされている。
 このうち、所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金と就業規則で定めた場合の、出来高払制その他の請負制によって賃金にあっては、施行規則25条6号(すなわち本肢と同文)によることになっている。
 たとえば、賃金算定期間が1か月で、その間に出来高払い分(あるいは請負払い分)が20万円、労働時間が200時間であれば、1時間当たり1,000円となり、1日平均所定労働時間が8時間の場合の通常の賃金は8,000円である。
 問題の解答としてはここまででよいが、実際には労基法27条による出来高払制の保障給があるであろうから、これが1月88,000円で1月あたりの所定労働日数が22日であるとすると、さらに4,000円上乗せした額が通常の賃金となる。
14
7E
 39条違反は同条7項(使用者による時季指定)義務を除く)、119条1号により6箇月以下の懲役又は30万円以下の罰金、24条違反(本肢の場合は賃金全額払いの原則に違反)は120条1号により30万円以下の罰金であり、前者の方が重い。
 なお、39条違反とは、
・労働者の請求する時季に、時季変更権を行使しうる正当な事由がないにもかかわらず、有給休暇を与えない、あるいは無理やり時季を変更させる場合だけでなく、
・休暇を与えた場合であっても、所定の賃金支払い日に、所定の額より減額して支給すれば、有給休暇を与えなかったと同様に39条違反になる、と解されている。
26
6B
 本肢でいう最高裁判例とはいわゆる「白石営林署事件」であり、この判例では年次有給休暇に関して多くのことを判示しているが、事件の概要等については、過去問(14-5D)の解説にゆずるとして、年次有給休暇の利用目的に関して、同判例では、
 「年次休暇の利用目的は労基法の関知しないところであり、休暇をどのように利用するかは、使用者の干渉を許さない労働者の自由である、とするのが法の趣旨であると解するのが相当である」としている。
 なお、参考ながら、欧米での有給休暇は一定のシーズンに長期間取ることが多く、逆に病気欠勤日に有給休暇を当てることを禁止している国もあり、傷病によって労働不能となった日を年次有給休暇とすることは想定していない。
 上記判例においても、「39条5項のいわゆる「時季指定権・変更権」の規定において、時期といわず、時季という語を用いているには、本来は季節をも念頭においたものであることは、疑いを容れないところであり、この点からすれば、労働者はそれぞれ、各人の有する休暇日数のいかんにかかわらず、一定の季節ないしこれに相当する長さの期間中に纒まつた日数の休暇をとる旨をあらかじめ申し出で、これら多数の申出を合理的に調整したうえで、全体としての計画に従つて年次休暇を有効に消化するというのが、制度として想定されたところということもできる」とある。
 ただし、我が国では、39条1項において、「分割して与える」ことも認めており、むしろ細分化して取るのがむしろ慣行となつているので、「時季」という言葉にこだわる必要はないといえる。
 また、療養休業中の有給休暇取得も許されている。(S24.12.28基発1456号を参照のこと)

4
7E
 有給休暇の取得と承認に関しては、最高裁判例{白石営林署事件S48.03.02)があり、この判決文において、
 「労基法39条1、2項の要件が充足されたときは、当該労働者は法律上当然に右各項所定日数の年次有給休暇の権利を取得し、使用者はこれを与える義務を負うのである。
 この年次休暇権を具体的に行使するにあたつては、同法は、まず労働者において休暇の時季を「請求」すべく、これに対し使用者は、同条3項(現5項⁾但書の事由が存する場合には、これを他の時季に変更させることができるものとしている。
 かくのごとく、労基法は同条3項(現5項⁾において「請求」という語を用いているけれども、
・年次有給休暇の権利は、同条1、2項の要件が充足されることによつて法律上当然に労働者に生ずる権利であつて、労働者の請求をまつて始めて生ずるものではなく、また、
・(具体的な行使にあたって)同条3項(現5項⁾にいう「請求」とは、休暇の時季にのみかかる文言であつて、その趣旨は、休暇の時季の「指定」にほかならないものと解すべきである」とある。
 すなわち、「年次有給休暇の権利は、要件が充足されている限り法律上当然に労働者に生ずる権利であり、年次休暇の成立要件として、労働者による「休暇の請求」や、これに対する使用者の「承認」の観念を容れる余地はない」
24
6ア
 年次有給休暇の趣旨については過去問解説(22-6A)にあるように、いろいろな議論がありうるが、
 最高裁判所判例「白石営林署事件(S48.03.02)」 の判決文の中に、
 「年次有給休暇の権利は、労基法39条1項、2項の要件の充足により、法律上当然に労働者に生ずるものであつて、その具体的な権利行使にあたつても、年次休暇の成立要件として 「使用者の承認」という観念を容れる余地はない。
 年次休暇の利用目的は労基法の関知しないところであり、休暇をどのように利用するかは、使用者の干渉を許さない労働者の自由である、とするのが法の趣旨であると解するのが相当である」とある。
 また、この判決を受けて、通達(S48.03.06基収110)に、
 「年次有給休暇を労働者がどのように利用するかは労働者の自由である」としている。
 また、療養中の場合の年次有給休暇に関しては、上記よりもずっと前の時期の通達(S24.12.28基発1456)において、
 「年次有給休暇を労働者が病期欠勤等に充当することは許される」とある。
28
7A
 休職期間中における年次有給休暇の請求権については、通達(S31.2.13基収489)に、
 「休職を命じられた社員は、休職発令と同時に従来配属されていた所属を離れ、以後は単に会社に籍があるにとどまり、会社に対して全く労働の義務が免除されることになる場合、労働義務がない日について年次有給休暇を請求する余地がないことから、これらの休職者は、年次有給休暇請求権の行使ができないものと解される」
⇒求職扱いとなる前の療養などに伴う休業期間中であれば、請求権は認められる。(労働不要となるのは同じであるが、有給休暇が認められれば、所定の賃金が支払われる)
28
7D
 育児休業期間中の有給休暇の取扱いについては、通達(H3.12.20基発72)に、
 「年次有給休暇は、労働義務のある日についてのみ請求できるものであるから、育児休業申出後には、育児休業期間中の日について年次有給休暇を請求する余地はない。
 また、育児休業申出前に育児休業期間中の日について、時季指定や労使協定に基づく計画的付与が行われた場合には、当該日には年次有給休暇を取得したものと解され、当該日に係る賃金支払日については、使用者に所要の賃金支払の義務が生じる」とある。
 すなわち、育児休業期間中は労働義務がない日であるから、年次有給休暇を請求することはできない。
 ただし、既に計画的付与が確定していた日、あるいは時季変更権の行使により有給休暇の取得日が確定していた日が、たまたま育児休業期間中になってしまった場合には、使用者の約束に基づくものであるから、年次有給休暇としての賃金支払い義務が生じる。
14
5D
 これに関連する事例「白石営林署事件」の概要は以下の通り。
  「労働者Xは、帰る間際に、翌日と翌々日に年次有給休暇を取ることを休暇簿に記載した。そして、Xは、その両日に出勤しないで、他の営林署で行われたストライキ支援活動に参加した。
 Xの上司である署長は、Xの年次有給休暇を認めずに欠勤扱いとして、2日分の賃金を差し引いて賃金を支払った。そこでXは、国に対して、差し引かれた分の賃金の支払いなどを求めた。1審、2審ともXが勝訴し、国が上告した」
 判例(最高裁第2小法廷S48.3.2)によると(抜粋)、
 「@年次有給休暇の権利は、39条の要件を満たせば法律上当然に労働者に生ずるものである。
 A年次有給休暇をどのように利用するかは、使用者の干渉を許さない労働者の自由である。
 Bいわゆる一斉休暇闘争は、年次有給休暇に名を借りた同盟罷業にほかならないので、年休の行使でもなく、使用者の時季変更権もありえず、参加した労働者の賃金請求権もない。
 C他の事業場における争議行為に休暇中の労働者が参加したか否かは、当該事業場の争議行為の場合と異なり、有給休暇の成否に影響を及ぼさない。
 D事業の正常な運営を妨げるか否かの判断(時季変更権の行使)は、当該労働者の所属する事業場を基準として判断すべきである」
22
6E
 最高裁判例「白石営林署事件(S48.03.02)」によると、
 「年次有給休暇をどのように利用するかは、使用者の干渉を許さない労働者の自由である。
 ところで、いわゆる一斉休暇闘争とは、これを、労働者がその所属の事業場において、その業務の正常な運営の阻害を目的として、全員一斉に休暇届を提出して職場を放棄・離脱するものと解するときは、その実質は、年次休暇に名を藉りた同盟罷業にほかならない。
 したがつて、その形式いかんにかかわらず、本来の年次休暇権の行使ではない」とし、さらに続けて
 「これに対する使用者の時季変更権の行使もありえず、一斉休暇の名の下に同盟罷業に入つた労働者の全部について、賃金請求権もが発生しないことになる」とした。
 なお、過去問(14-5D)と異なるのは、本肢の問題は、他の事業場ではなく自分の所属する事業場の争議行為に、年次有給休暇をとって参加した点にある。
19
6B
 「白石営林署事件」に関連した出題であるが、過去問14-5Dの焼き直しでもある。
 この判例によると、
 @年次有給休暇の権利は、39条の要件を満たせば法律上当然に労働者に生ずるものである。
 A年次有給休暇をどのように利用するかは、使用者の干渉を許さない労働者の自由である。
 B他の事業場における争議行為に休暇中の労働者が参加したか否かは、当該事業場の争議行為の場合と異なり、有給休暇の成否に影響を及ぼさない。
 C事業の正常な運営を妨げるか否かの判断(時季変更権の行使)は、当該労働者の所属する事業場を基準として判断すべきである」
 よって本肢の場合、
 「過去問(22-6E)にあるように同じ事業場における一斉休暇闘争ではなく、他の事業場の争議行為に年次有給休暇をとって参加した。
 この場合は、年次有給休暇に名を借りた同盟罷業 とはいえないので、年次有給休暇権の行使である」と認めた。
 その年次有給休暇について時季変更権を行使することは可能であるが、その際は、その労働者の所属する事業場において、業務に支障をきたすやむをえない事情があるかどうかで判断すべきである。
 本肢はそこまでのことを問うているわけではない。
 なお、「同盟罷業」とはストライキのことで、そのこと事態が違法であるわけではない。
20
5B
 39条によると、
 「使用者は、その雇入れの日から起算して6箇月間継続勤務し全労働日の8割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した10労働日の有給休暇を与えなければならない」とあり、
 3か月しか経過しない労働者には有給休暇を与える義務はない。
 あくまでも労働基準法39条に基づく年次有給休暇の話である。
 実務においては、就業規則等により入社初日から年次有給休暇権が発生しても、一向に問題はない。
24
6ウ
 年次有給休暇権の発生要件の一つである「継続勤務」とは、39条
 「使用者は、その雇入れの日から起算して6箇月間継続勤務し・・・・」とある6ヵ月間継続勤務のことを指す。
 この継続勤務とは必ずしも出勤を意味するものではなく、通達(S63.03.14基発150)に、
 「継続勤務とは労働契約の存続期間、すなわち在籍期間をいう。
 継続勤務か否かについては勤務の実態に即し実質的に判断すべきものであり、次に掲げるような場合を含むこと。
 この場合、実質的に労働関係が継続している限り勤務年数を通算する」とあり、
 「会社が解散し、従業員の待遇等を含め、権利義務関係が新会社に包括承継された場合」などが例として挙げられている。
25
2ウ
 年次有給休暇の付与要件の一つである「継続勤務」とは、39条
 「使用者は、その雇入れの日から起算して6箇月間継続勤務し・・・・」とある6ヵ月間継続勤務のことを指す。
 この継続勤務とは必ずしも出勤を意味するものではなく、通達(S63.03.14基発150)に、
 「継続勤務とは労働契約の存続期間、すなわち在籍期間をいう。
 継続勤務か否かについては勤務の実態に即し実質的に判断すべきものであり、次に掲げるような場合を含むこと」とあって、
 「休職とされていた者が復職した場合」は実質的に労働関係が継続している限り、含まれるとされている。
   つまり、私傷病による休職であっても、その期間は継続勤務期間に含まれる。
 私傷病による休職期間中は、業務上の傷病による休職とは違って、「出勤した日」とは取り扱われないことに注意を。
 (ただし、私傷病による休職期間が欠勤と同じ扱いか、労働を免除された日すなわち出勤率の分母、分子いずれからも除外されるかどうかは、その休職が就業規則等によって認められたものであるかどうかによる)
22
6A
 前段にある年次有給休暇の趣旨については、[労働基準法上、厚生労働省労働基準局編 発行労務行政社]によれば、
 「39条は、労働者の心身の疲労を回復させ、労働力の維持培養を図るため、また、今日、ゆとりある生活の実現にも資するという位置づけから、休日のほかに毎年一定日数の有給休暇を与えることを想定している」(P557)。 また、
 「年次有給休暇制度の本来の趣旨は、一定の季節ないしこれに相当する長さの期間中にまとまった日数の休暇を取ることを制度として想定したものとすることができる旨の最高裁判決もある。
 また、あくまでも休養のため付与されるものであるから、遅刻、早退に充当されることは望ましくないと解される」(P576)などとある。
 確かに、外国では、有給休暇のうち一定部分については連続して付与(フランスでは11日以上連続)、あるいは一定期間中に付与(スウエーデンでは6月から8月までに4週間)すべきという決まりになっているようだ。
 しかしながら、わが国では、最高裁判例(白営林署事件)にあるように、
 「年次有給休暇の権利は、39条の要件を満たせば法律上当然に労働者に生ずるものであって、それをどのように利用するかは、使用者の干渉を許さない労働者の自由である」としている。
 つまりは「使用者は少なくとも年に5日は連続して付与しなければならない」などという義務はなく、あるのは、
 「取得事由を問わず、(時季変更権が行使できる場合を除いて)請求された時季に付与しなければならないこと」
 なお、5日で思い出すべきは、計画的付与においても最低5日はフリーにしないといけないこと、時間単位有給休暇は5日が限度であることなど。
26
6A
 年次有給休暇の趣旨については、[労働基準法上、厚生労働省労働基準局編 発行労務行政社P557)]に、
 「39条は、労働者の心身の疲労を回復させ、労働力の維持培養を図るため、また、今日、ゆとりある生活の実現にも資するという位置づけから、休日のほかに毎年一定日数の有給休暇を与えることを想定している」とある通り。
16
6C
 39条2項のただし書きについては、
 「全労働日の8割以上出勤した場合に限るとの規定は、当該年に有給休暇を付与するか否かを判断することを明示的に規定するものであって、加算要件は意味しない」(H12.1.1基発1号)
 すなわち、その年に有給休暇を与えるか否かは出勤率によるが、与えるとなれば、過去の年度の出勤率には関係なく、継続勤務年数に応じて表で与えられた日数を与えなければならない。
 よって、本肢の場合、6か月経過日から3年経過しているので、途中の出勤状態に関わりなく、10+4労働日の休暇を与えなければならない。
 ちなみに、14年10月から15年9月までは0日(14年10月1日に一度は発生したとしても、この期間中は休職中のため行使できない)、15年10月から16年9月までは0日(前1年間出勤なしのため新たに発生する日数はない。ただし、14年10月1日に発生した日数があれば、その分は行使できる)で、
 16年10月から17年9月までが14労働日となる。
28
7E
 「所定労働時間が年の途中で変更になった場合」とある。
 しかし、年次有給休暇の付与日数は所定労働時間の長短によって変わることはない。(付与日数が変わるのは、1週間の所定労働日数が通常の労働者よりも短かくなった場合である)
 ただし、時間単位の有給休暇を持っている場合は、どうなるかというのが本肢の論点。
 ここで、時間単位の有給休暇とは39条4項によるもので、労使協定を結ぶことにより、有給休暇日数のうち、5日以内の分については時間単位で取得できるようにしたものである。
 本肢の例では、「(1日当たりの所定労働時間が8時間の時の)年次有給休暇の残余が10日と5時間であった」とある。このことは、10日と5/8日残っていることになる。
 ということは、1日当たりの所定労働時間が4時間と1/2になったときは、10日はかわらないものの、端数は5/8ではなく2.5/4すなわち、2.5時間(実際には端数切り上げで3時間)とするのが、理屈にあっている。
 この点、通達(H21.10.05基収1005-1)においても、
 「年の途中で所定労働時間数の変更があった場合、時間単位年休の時間数はどのように変わるのか。時間単位の端数が残っていた場合はどのようになるのかというお伺いに対して、
 時間単位年休として取得できる範囲のうち、1日に満たないため時間単位で保有している部分については、当該労働者の1日の所定労働時間の変動に比例して時間数が変更されることとなる。
 例えば、所定労働時間が8時間から4時間に変更され、年休が3日と3時間残っている場合は、3日と3/8日残っていると考え、以下のとおりとなる。
 3日(1日当たりの時間数は8時間)と3時間 ⇒3日(1日当たりの時間数は4時間)と2時間(比例して変更すると1.5時間となるが、1時間未満の端数は切り上げる)」としている。
24
6イ
 年次有給休暇の買上げ予約については、通達(S30.11.30基収4718)で、
 「年次有給休暇の買上げの予約をし、これに基づいて法39条の規定により請求しうる年次有給休暇の日数を減じ、ないし請求された日数を与えないことは、法39条の違反である」としている。
 つまり、有給休暇は与えるべきものであって、金銭の支払によってこれを代替することは、たとえ労働者の自由な意思によって合意された場合であっても違法である。
 ただしこの通達では、買上げ行為そものを否定しているとは受け取れないという意見もあり、たとえば、39条の法定日数を超えて与えられた有給休暇日数部分については、買上げ をしても39条違反ではないであろう。
 また、退職時に、残された勤務日数では消化できない有給休暇日数分を金銭で解決してもやむを得ないのではないか、として認められるケースもありうる。
22
6C
 年次有給休暇の時間単位での取得は、平成22年4月から認められるようになったもので、その趣旨については、通達(H21.05.29基発0529001)にある通りで、
 「年次有給休暇については、取得率が5割を下回る水準で推移しており、その取得の推進が課題となっている一方、現行の日単位による取得のほかに、時間単位による取得の希望もみられるところである。
 このため、まとまった日数の休暇を取得するという年次有給休暇制度本来の趣旨を踏まえつつ、仕事と生活の調和を図る観点から、年次有給休暇を有効に活用できるようにすることを目的として、労使協定により、年次有給休暇について5日の範囲内で時間を単位として与えることができることとしたものであること」とある。
 また、39条4項においても、
 
「使用者は、過半数代表者等との書面による協定により、
@時間単位有給休暇を与えることができる労働者の範囲
A時間単位有給休暇を与えることができる日数(5日以内に限る) など
を定めた場合、協定で定めるところにより、時間を単位として有給休暇を与えることができる」とある。
24
6エ
 年次有給休暇は39条1項、2項から、一定の要件を満足する労働者に対して、少なくとも法定日数の有給休暇を与えないといけないとされ、本来的には暦日単位で付与すべきものとされてきた。
 しかしながら、過去問解説(22-6C)にあるように平成22年4月に法改正があり、39条4項を設けて、
 
「使用者は、過半数代表者等との書面による協定により、
@時間単位有給休暇を与えることができる労働者の範囲
A時間単位有給休暇を与えることができる日数(5日以内に限る) など
 を定めた場合、協定で定めるところにより、時間を単位として有給休暇を与えることができる」ことにした。
 なお、計画的付与の制度がある場合でも「5日」は個人が自由に取得できる有給休暇として残しておかなければならないが、その5日を時間単位での取得が可能とすることができる。


6E
 年次有給休暇は1労働日(暦日)単位で付与するのが原則であり、「半日単位による年次有給休暇の付与」については、労働基準法には規定されていないので、使用者としては、これを請求されても、法的には与える義務はない。
 しかしながら、年次有給休暇取得の促進に役立つものであるという行政解釈のもとに、従来から、労使間納得のもとに実施されてきた経緯がある。
 その後、時間単位での有給休暇(39条4項)の創設など平成22年の法改正にともなって出された通達(H21.
05.29基発0529-001) においても、
 「年次有給休暇の半日単位による付与については、年次有給休暇の取得促進の観点から、労働者がその取得を希望して時季を指定し、これに使用者が同意した場合であって、本来の取得方法による休暇取得の阻害とならない範囲で適切に運用される限りにおいて、問題がないものとして取り扱うこととしているところであるが、この取扱いに変更はないものであること」として、これをあらためて追認した。
半日単位の有給休暇は、39条4項による時間単位での有給休暇の枠組みの中でも実施できるが、本肢で問題としているのは、規定外(規格外)の慣習的な有給休暇であって、労使協定の締結なしに実施できるとして行政解釈により認められているものである。
 ただし、正式な有給休暇の消化日数として、1回当たり0.5日とカウントされる。
20
5E
  附則136条に、
 
「使用者は、39条1項から4項までの規定による有給休暇を取得した労働者に対して、賃金の減額その他不利益な取扱いをしないようにしなければならない」とある。 
 しかしながら、「不利益な取扱いの理由について行政官庁の認定を受けた場合は、この規定は適用されない」などというような規定はない。
このようなナンセンスな規定などあるはずがないことは、常識から考えても明らかであるが、本肢が5番目のEにあることに着目したい。もしかして本肢は、AからDまでの中で誤りであるらしいとする肢をみつけ、最後のEまで読まずに解答してしまう受験生をからかったのかもしれない。
  肢は、さっとでもよいから全部は読んでみること。
25
2エ
 労働基準法第136条の規定とは、実際は本則ではなく附則で、附則136条に、
 
「使用者は、39条1項から4項までの規定による有給休暇を取得した労働者に対して、賃金の減額その他不利益な取扱いをしないようにしなければならない」とあり、
 
「してはならない」とする強制義務とはされていない。
 強制義務ではないから、罰則規定もない。
 なお、これに関しては、最高裁判例[沼津交通賃金請求事件(H05.06.25)]があり、この判決文によると、
 「労働基準法134条が、使用者は年次有給休暇を取得した労働者に対して賃金の減額その他不利益な取扱いをしないようにしなければならないと規定していることからすれば、使用者が、従業員の出勤率の低下を防止する等の観点から、年次有給休暇の取得を何らかの経済的不利益と結び付ける措置を採ること(注:本事件では、有給休暇を取得した場合は皆勤手当を減額する措置)は、その経営上の合理性を是認できる場合であつても、できるだけ避けるべきであることはいうまでもないが、右の規定は、それ自体としては、使用者の努力義務を定めたものであつて、労働者の年次有給休暇の取得を理由とする不利益取扱いの私法上の効果を否定するまでの効力を有するものとは解されない。
 また、右のような措置は、年次有給休暇を保障した労働基準法39条の精神に沿わない面を有することは否定できないものではあるが、その効力については、その趣旨、目的、労働者が失う経済的利益の程度、年次有給休暇の取得に対する事実上の抑止力の強弱等諸般の事情を総合して、年次有給休暇を取得する権利の行使を抑制し、ひいては同法が労働者に右権利を保障した趣旨を実質的に失わせるものと認められるものでない限り、公序に反して無効となるとすることはできないと解するのが相当である」とした。
 つまり、年次有給休暇を取らせないようにすることは禁止されているが、有給休暇を取らなかった者の方が手当面で優遇するなどの措置などについては、その趣旨、目的、労働者が失う経済的利益の程度、年次有給休暇の取得に対する事実上の抑止力の強弱等ケースバイケースで判断される(有効となる場合もある)のだ。
26
6C
 労働基準法第39条第6項に定めるいわゆる労使協定による有給休暇の計画的付与によれば、「労働者の過半数代表者などとの書面による協定によって、有給休暇を与える時季を定めたときは、有給休暇の全日数のうち5日を超える部分については、時季指定権・時季変更権の規定にかかわらず、その定めにより有給休暇を与えることができる」ものである。
 一方、年次有給休暇の時間単位での取得は、平成22年4月から認められるようになったもので、その趣旨等については、通達(H21.05.29基発0529001)の通りであり、同通達によると、計画的付与との関係については、
 「時間単位年休は、労働者が時間単位による取得を請求した場合において、労働者が請求した時季に時間単位により年次有給休暇を与えることができるものであって、39条6項の規定による計画的付与として時間単位年休を与えることはできない」としている。
 つまり、年次有給休暇は本来は暦日単位で取得すべきところ、時間単位での取得については、労働者側からの希望等もあって、労使協定により一定事項を定めた上、労働者が個別にその都度請求することによって初めて認められるものであり、計画的に与えらるものであってはならないとしている。
 なお、有給休暇の全日数のうち、少なくとも5日は計画的ではなく自由な意思にもとづく取得に残しておかなければならないので、その部分については時間単位取得も可能としてよい。
14
5E
 全労働日の取扱いについては、通達(H25.07.10基発0710-3)の通りであり、
・所定の休日に労働させたとしてもその日は全労働日に含まれない。
・労働者の責に帰すべき事由によるとはいえない不就労日は原則的には全労働日に含まれ、出勤日数にもカウントする。
・ただし、労働者の責に帰すべき事由によるとはいえない不就労日であっても、当事者間の衡平等の観点から出勤日数に算入するのが相当でないものは、全労働日に含まれない。
 たとえば、使用者側に起因する経営、管理上の障害による休業日、正当な同盟罷業その他正当な争議行為により労務の提供が全くなされなかった日など。 
 よって、前段は正しいが、後段にある「使用者側に起因する経営上の障害による休業の日」も全労働日に含まれない。
19
6E
 全労働日の取扱いについては通達(H25.07.10基発0710-3)の通りであり、全労働日に含まれない日とは、
 @所定休日に労働した日
 A不可抗力による休業日
 B使用者側に起因する経営、管理上の障害による休業日
 C正当な同盟罷業その他正当な争議行為により労務の提供が全くなされなかった日
 争議行為には、同盟罷業(ストライキ)、怠業(サボタージュ)、職場占拠(ピケ)などがある。
 正当な争議行為であれば、刑事・民事とも一定の範囲で免責が認められている。
 争議行為の正当性については、諸説の争いがあるが、
 @目的の正当性:労働条件の維持や向上を目的とするものであれば認められるでしょう。
 A手段・方法の正当性:労働組合の統制が取れたものであることが要求される。通常は労働組合員の無記名投票による過半数以上の決議があれば問題はない。
 しかし、いかなる場合も、暴力の行使は正当ではないとされている。
28
7B
 使用者に年次有給休暇の付与義務が発生するのは、39条にあるように、「全労働日の8割以上出勤した労働者」に対してである。
 このことに関して、通達(H25.07.10基発0710-3)では、
 「年次有給休暇の請求権の発生について、法39条が全労働日の8割出勤を条件としているのは、労働者の勤怠の状況を勘案して、特に出勤率の低い者を除外する立法趣旨であることから、全労働日の取扱いについては、次の通りとする」とあり、その1において、
 「年次有給休暇算定の基礎となる全労働日の日数は就業規則その他によって定められた所定休日を除いた日をいい、各労働者の職種が異なること等により異なることもあり得る。
 したがって、所定の休日に労働させた場合には、その日は、全労働日に含まれないものとする」とある。
 この場合、就業規則で定められた休日が、法定休日を上回っていたとしても、いわゆる公休日は全労働日には含まれないし、その日に労働させたとしても、全労働日でもなければ出勤日でもない
 参考までに、振替休日の場合は、もともとの公休日が労働日となり、振替えられた不就労日が公休日となる。
 一方、代休を取得した場合は、その代休日は全労働日、出勤日いずれからも除かれる。
26
1
選択
 最高裁判所は、労働基準法第39条に定める年次有給休暇権の成立要件に係る「全労働日」(同条第1項、第2項)について、次のように判示した。
 「法39条1項及び2項における前年度の全労働日に係る出勤率が8割以上であることという年次有給休暇権の成立要件は、法の制定時の状況等を踏まえ、労働者の責めに帰すべき事由による欠勤率が特に高い者をその対象から除外する趣旨で定められたものと解される。
 このような同条1項及び2項の規定の趣旨に照らすと、前年度の総暦日の中で、就業規則や労働協約等に定められた休日以外の不就労日のうち、労働者の責めに帰すべき事由によるとはいえないものは、不可抗力や使用者側に起因する経営、管理上の障害による休業日等のように当事者間の衡平等の観点から出勤日数に算入するのが相当でなく全労働日から除かれるべきものは別として、上記出勤率の算定に当たっては、出勤日数に算入すべきものとして全労働日に(含まれるもの)と解するのが相当である。
 無効な解雇の場合のように労働者が使用者から正当な理由なく就労を拒まれたために就労することができなかった日は、労働者の責めに帰すべき事由によるとはいえない不就労日であり、このような日は使用者の責めに帰すべき事由による不就労日であっても当事者間の衡平等の観点から出勤日数に算入するのが相当でなく全労働日から除かれるべきものとはいえないから、法39条1項及び2項における出勤率の算定に当たっては、出勤日数に算入すべきものとして全労働日に(含まれるもの)というべきである」
 本肢は、最高裁判決[年次有給休暇請求権存在確認等請求事件](H25.06.06)からの出題である。
 この裁判は、解雇により2年余にわたり就労を拒まれた被上告人が、解雇の無効の勝訴判決が確定して復職した後,合計5日間の労働日について年次有給休暇を請求したところ、39条2項の年次有給休暇権の成立要件を満たさないとして5日分の賃金を支払われなかったため,年次有給休暇権を有することについて争われたものである。
 その判決文の要旨は出題文の通り(こちらでも紹介している)。
 要するに、例えば、裁判所の判決により解雇が無効と確定した場合や、労働委員会による救済命令を受けて会社が解雇の取消しを行った場合の解雇日から復職日までの不就労日などは、従来の見解では、「使用者の責めに帰すべき理由により労働できなかった日」に該当するから、全労働日には該当しないとしていた。
 しかしながらこれらは、労働者の責めに帰すべき事由でもないことから、災害など不可抗力による休業、使用者側に起因する経営管理上の障害による休業、正当なストライキなど、労使間のバランスの観点から出勤日数に参入するのは適当ではないものを除き、出勤日数に算入すべきものとして全労働日に含まれるべきものとした。
 すなわち、従来は解雇無効を勝ち取ったとしても、それまでの間は出勤していないのだから全労働日は0であり、有給休暇を請求する余地はないとしていたが、この判決で、全労働日に含まれることになった。
 それだけでは、出勤率は0のままであるが、判決文の意味するところから、通達(H25.07.10基発0710-3)により、解雇から解雇無効確定の間は出勤した日として出勤率を計算することになり、請求通りの有給休暇が認められたのである。
17
4C
 39条10項から、
・業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業した期間
・育児・介護休業法に規定する育児休業又は介護休業をした期間、
・産前産後の女性が65条の規定によって休業した期間は、
  出勤したものとみなされる。
 一方、使用者側に起因する経営、管理上の障害による休業日については、通達(H27.07.10基発0710-3)にあるように、
 労働者の責に帰すべき事由によるとはいえない不就労日であっても、次に掲げる日のように、当事者間の衡平等の観点から出勤日数に算入するのが相当でないものは、全労働日に含まれないものとする。(すなわち、出勤した日でもない)
@不可抗力による休業日
A使用者側に起因する経営、管理上の障害による休業日
B正当な同盟罷業その他正当な争議行為により労務の提供が全くなされなかった日
19
6C
 39条10項から、
@業務上災害による休業期間、
A育児・介護休業期間、
B産前産後の休業期間
 は、出勤したものとみなされる。
 さらに本肢にはないが、年次有給休暇日についても出勤したものとみなして出勤率を求める。
12
5E
 39条10項から、
 「業務災害による療養休業期間、育児休業期間及び介護休業期間、産前産後休業期間は出勤した日として取り扱われる」
 一方、通達(S23.7.31基収2675号)によると、
 「生理日の就業が著しく困難な女性に対する措置として就業させなかった期間は、労基法上出勤したものとはみなされないが、当事者の合意により、出勤したものとみなすことは差し支えない」
 解答は微妙なところもあるが、法律上当然という訳には行かないので誤りとする。
18
6C
 年次有給休暇を取得できるか否かは、39条1項、2項により、出勤率が8割以上ないといけない。
 労基法ではこの出席率の算定に当たって、労働者保護の観点から、いくつかのやむをえない休業については、その間を、休業にも関わらず出席とみなす規定がある。
 それが、39条10項である。
 同項によると、「子の看護休暇を取得した期間」は(自動的には)出勤とはみなされる日に該当していない。
 ただし、労使間の取り決めにより、出勤日に含めるあるいは含めないとすることができる日(全労働日から除外するか否かも取り決めることができる日)の3にあるように、「子の看護休暇」は労使間の取り決めによって、出勤した日とみなす取扱いとすることは可能である。
18
6B
 まず、この問題を解くためには予備知識が必要である。
 それは、年次有給休暇を取得できるか否かは、39条1項、2項により、出勤率が8割以上ないといけないこと、そして、39条10項により、
 「産前産後の女性が第65条の規定によって休業した期間は、出勤した日として取り扱われる日である」こと。
 これらの知識を確認した上で、通達(S23.7.31 基収2675)
 「6週間以内に出産する予定の女性が、労働基準法第65条の規定により休業したところ、予定の出産日より遅れて分娩し、産前休業の期間が、結果的には産前6週間を超える休業は、法第39条第1項及び第2項の規定の適用については、出勤として取り扱わなければならない」
 つまり、出産予定日が何日遅れようと、実際の出産日当日までが産前であり、そこまでは産前休業としてよい。
 よって、そこまでの産前休業は出勤とみなすべき。
28
7C
 年次有給休暇は労働する義務がある日に取得するものであるから、当然に「全労働日」に含まれる。
 一方、その日は休暇を取得したのだから「出勤した日」ではない、とすると、欠勤と同じことになってしまい、違和感がある。
 この点については、通達(S22.9.13発基17号)の4に、「年次有給休暇としての休業日数は、39条1項、2項の規定の適用については、出勤したものとして取り扱うこと」とある。
14
5C
 斉一的取扱いをしたい場合は、通達(H6.1.4基発1号)により、
 「年次有給休暇の付与要件である8割出勤の算定は、短縮された期間は全期間出勤したものとみなす」とある。
 よってこの問題の場合、本来ならば基準日が6ヵ月経過した7月1日であるため、1月1日から6月30日(基準日前日)までの出勤率を見ないといけない。しかし、斉一的取扱いをするために4月1日を基準日としたい場合には、短縮された期間である4月1日から6月30日までの労働日は全て出勤したものと見なし、あくまでも6ヵ月間における出勤率で判定しなければならない。
有給休暇の付与日数は、6ヵ月経過、1年6ヵ月経過、2年6ヵ月経過・・・・によって異なることから、労働者の採用月日がまちまちであると管理が複雑になる。斉一的取扱いとは、このような場合、全員の基準日を例えば4月1日として処理することである。この場合、法定で定められた日数以上は必ず付与しなければならないほか、出勤率の算定にも注意する必要があるということ。
 なお、4月1日入社の新人労働者に対しては、4月1日を基準日として最初から10労働日を与えるケース、4月1日には取り合えず例えば3労働日付与し、10月1日から残りの7労働日を付与(分割付与)し翌年以降は4月1日だけを基準日とするケース、すべて法定通りとするなど種々のケースが見受けられる。いずれも合法である。
19
6D
 本肢は過去問14-5Cの焼き直しである。
 斉一的取扱いをしたい場合は、通達(H6.1.4基発1号)により、
 「年次有給休暇の付与要件である8割出勤の算定は、短縮された期間は全期間出勤したものとみなす」とある。
 よって、「毎年1月1日を基準日として統一したい場合、10月1日入社労働者に対しては、10月1日から12月31日までは実績、1月1日から3月31日までは全出勤として、6か月間の出勤率を計算し判定することになる。
18
6D
 紹介派遣中は派遣元事業所の労働者である。その後、派遣先事業所に雇用されるようになったとしても、雇用契約を結ぶ前の紹介派遣中の期間までさかのぼって、勤務した期間としなければならないという義務規定はない。
20
5A
 「白石営林署事件」に関する最高裁判例(48.3.2)によると、
 「労基法39条1、2項の要件が充足されたときは、当該労働者は法律上当然に右各項所定日数の年次有給休暇の権利を取得し、使用者はこれを与える義務を負うのであるが、この年次休暇権を具体的に行使するにあたつては、同法は、まず労働者において休暇の時季を「請求」すべく、これに対し使用者は、同条3項(現5項)但書の事由が存する場合には、これを他の時季に変更させることができるものとしている。
 かくのごとく、労基法は同条3項(現5項)において「請求」という語を用いているけれども、年次有給休暇の権利は、前述のように、同条1、2項の要件が充足されることによつて法律上当然に労働者に生ずる権利であつて、労働者の請求をまつて始めて生ずるものではなく、また、同条3項(現5項)にいう「請求」とは、休暇の時季にのみかかる文言であつて、その趣旨は、休暇の時季の「指定」にほかならないものと解すべきである」とある 。
 さらには、
 「休暇の時季の決定を第一次的に労働者の意思にかからしめていることを勘案すると、労働者がその有する休暇日数の範囲内で、具体的な休暇の始期と終期を特定して右の時季指定をしたときは、客観的に39条3項(現5項)但書所定の事由が存在し、かつ、これを理由として使用者が時季変更権の行使をしないかぎり、右の指定によつて年次有給休暇が成立し、当該労働日における就労義務が消滅するものと解するのが相当である。
 すなわち、これを端的にいえば、休暇の時季指定の効果は、使用者の適法な時季変更権の行使を解除条件として発生するのであつて、年次休暇の成立要件として、労働者による「休暇の請求」や、これに対する使用者の「承認」の観念を容れる余地はないものといわなければならない」
 つまりは、権利は当然に発生する。その権利を行使するにあたっては、「有給休暇を何日にとるか」ということを事前に指定すればよいのであって、請求により成立するようなものではない。
 ただし、時季変更権というものもあるが、これについては過去問(20-5C)を。
 また、「白石営林署事件」の概要とその他の論点については、過去問(14-5D)の解説を。
22
6B
 問題文にある最高裁判例とは「白石営林署事件」(S48.03.02)のことであり、同判例によると、
 「労働者がその有する休暇日数の範囲内で、具体的な休暇の始期と終期を特定して右の時季指定をしたときは、客観的に39条3項(現5項)但書所定の事由が存在し、かつ、これを理由として使用者が時季変更権の行使をしないかぎり、右の指定によつて年次有給休暇が成立し、当該労働日における就労義務が消滅するものと解するのが相当である。
 すなわち、これを端的にいえば、休暇の時季指定の効果は、使用者の適法な時季変更権の行使を解除条件として発生するのであつて、
 年次休暇の成立要件として、労働者による「休暇の請求」や、これに対する使用者の「承認」の観念を容れる余地はないものといわなければならない」
 なお、39条5項に「請求」とあるが、これは休暇の時季にのみかかる文言であつて、その趣旨は、休暇の時季の「指定」のことである。
23
2
選択
 年次有給休暇の時季指定の効果は、使用者の適法な時季変更権の行使を(解除条件)として 発生するのであって、年次休暇の成立要件として、労働者による「休暇の請求」や、これに対する使用者の「承認」の概念を容れる余地はないものといわなければならない」とするのが、最高裁判所の判例である。
 問題文にある最高裁判例とは「白石営林署事件」(S48.03.02)のことであり、同判例によると、
 「労働者がその有する休暇日数の範囲内で、具体的な休暇の始期と終期を特定して右の時季指定をしたときは、客観的に39条3項(現5項)但書所定の事由が存在し、かつ、これを理由として使用者が時季変更権の行使をしないかぎり、右の指定によつて年次有給休暇が成立し、当該労働日における就労義務が消滅するものと解するのが相当である。
 すなわち、これを端的にいえば、休暇の時季指定の効果は、使用者の適法な時季変更権の行使を解除条件として発生するのであつて、年次休暇の成立要件として、労働者による「休暇の請求」や、これに対する使用者の「承認」の観念を容れる余地はないものといわなければならない」
 (なお、39条5項に「請求」とあるが、これは休暇の時季にのみかかる文言であつて、その趣旨は、休暇の時季の「指定」のことである)
 ここで、
 「解除条件」とは、将来の発生する(かもしれない)条件が実際に起きたときに、効力を消滅させる(解除する)条件。
⇒たとえば、「遺族基礎年金の受給は、子の18歳到達年度末終了を解除条件としてなされる」   
 「停止条件」とは、将来発生する(かもしれない)条件が実際に起きたときに、効力を発生させる(それまでは停止しておく)条件。
⇒たとえば、「遺言の効力は被相続人の死亡を停止条件として発生する」
20
5C
 「弘前電報電話局職員戒告事件」に関する最高裁判例(S62.7.10)において、
 「年次有給休暇の権利は、労働基準法39条1、2項の要件の充足により法律上当然に生じ、労働者がその有する年次休暇の日数の範囲内で始期と終期を特定して休暇の時季指定をしたときは、使用者が適法な時季変更権を行使しない限り、右の指定によつて、年次休暇が成立して当該労働日における就労義務が消滅するのであつて、そこには、使用者の年次 休暇の承認なるものを観念する余地はない(白石営林署事件判決(S48.3.2))
 この意味において、労働者の年次休暇の時季指定に対応する使用者の義務の内容は、労働者がその権利としての休暇を享受することを妨げてはならないという不作為を基本とするものにほかならないのではあるが、年次休暇権は労基法が労働者に特に認めた権利であり、その実効を確保するために附加金及び刑事罰の制度が設けられていること、及び休暇の時季の選択権が第一次的に労働者に与えられていることにかんがみると、同法の趣旨は、
 使用者に対し、できるだけ労働者が指定した時季に休暇を取れるよう状況に応じた配慮をすることを要請しているものとみることができる」
 さらには、
 「労基法39条5項ただし書にいう「事業の正常な運営を妨げる場合」か否かの判断に当たつて、代替勤務者配置の難易は、判断の一要素となるというべきであるが、特に、勤務割による勤務体制がとられている事業場の場合には、重要な判断要素であることは明らかである。
 したがつて、そのような事業場において、使用者としての通常の配慮をすれば、勤務割を変更して代替勤務者を配置することが客観的に可能な状況にあると認められるにもかかわらず、使用者がそのための配慮をしないことにより代替勤務者が配置されないときは、必要配置人員を欠くものとして事業の正常な運営を妨げる場合に当たるということはできないと解するのが相当である」

5
7D
 「労働基準法39条5項ただし書」とは、「使用者は、有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない。ただし、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる」によるもの。
 この場合の「事業の正常な運営を妨げる場合」か否かの判断についての最高裁判所の判例に「弘前電報電話局職員戒告事件」に関する最高裁判例(S62.7.10)がある。
 これによると、「労基法39条5項ただし書にいう「事業の正常な運営を妨げる場合」か否かの判断に当たつて、代替勤務者配置の難易は、判断の一要素となるというべきであるが、特に、勤務割による勤務体制がとられている事業場の場合には、重要な判断要素であることは明らかである。
 したがつて、そのような事業場において、使用者としての通常の配慮をすれば、勤務割を変更して代替勤務者を配置することが客観的に可能な状況にあると認められるにもかかわらず、使用者がそのための配慮をしないことにより代替勤務者が配置されないときは、必要配置人員を欠くものとして事業の正常な運営を妨げる場合に当たるということはできないと解するのが相当である」とした。
 そしてさらに、「年次休暇の利用目的は労基法の関知しないところであるから、勤務割を変更して代替勤務者を配置することが可能な状況にあるにもかかわらず、休暇の利用目的のいかんによってそのための配慮をせずに時季変更権を行使することは、利用目的を考慮して年次休暇を与えないことに等しく、許さ
れないものであり、右時季変更権の行使は、結局、事業の正常な運営を妨げる場合に当たらないものとして、無効といわなければならない」と判断を下した。
 なおこの事件の発端は、「Aが勤務割において日勤勤務に当たつていた日に年次休暇の時季指定をしたところ、その上司は、Aの日ごろの言動等から、成田空港反対現地集会に参加して違法行為に及ぶおそれがあると考え、参加を阻止するために年次休暇の取得をやめさせようと企図して、あらかじめ代替勤務を申し出ていた職員を説得してその申出を撤回させたうえ、Aには出勤しなければ必要な最低配置人員を欠くことになるとして、時季変更権を行使した。
 しかしAは、当日出勤せずに成田空港反対現地集会に参加した。そこで、局側は、欠勤を理由に戒告処分にし、賃金1日分減給とした」というもの。
22
2
選択
 「労働者が長期かつ連続の年次有給休暇を取得しようとする場合においては、それが長期のものであればあるほど…(略)…事業の正常な運営に支障を来す蓋然性が高くなり、使用者の業務計画、他の労働者の休暇予定等との(事前の調整)を図る必要が生ずるのが通常」であり、労働者がこれを経ることなく、「その有する年次有給休暇の日数の範囲内で始期と終期を特定して長期かつ連続の年次有給休暇の時季指定をした場合には、これに対する使用者の時季変更権の行使については…(略)…使用者にある程度の裁量的判断の余地を認めざるを得ない」とするのが最高裁判所の判例である。
 年次有給休暇については、最高裁判例「白石営林署事件」(S48.03.02)において、
 「年次有給休暇の権利は、法律上当然に生じ、労働者がその有する年次休暇の日数の範囲内で始期と終期を特定して休暇の時季指定をしたときは、使用者が適法な時季変更権を行使しない限り、年次休暇が成立するのであって、使用者の年次 休暇の承認なるものを観念する余地はない」とあり、
 使用者がこれに対抗できるのは、39条5項による時季変更権であるが、これも「事業の正常な運営を妨げる場合」に限られるなどその行使は限定的であるべきとされている。
 本肢は、ある新聞記者が約1か月の長期連続休暇を申し出た(有給休暇日数は繰越し分を含めると最大で40日となることもある)、使用者側が時季変更権を行使したことにより、争いとなったもので、最高裁判例「時事通信社事件」(H04.06.23)によると、
 「労働者が長期かつ連続の年次有給休暇を取得しようとする場合においては、それが長期のものであればあるほど、使用者において代替勤務者を確保することの困難さが増大するなど事業の正常な運営に支障を来す蓋然性が高くなり、使用者の業務計画、他の労働者の休暇予定等との事前の調整を図る必要が生ずるのが通常である。
 しかも、使用者にとっては、労働者が時季指定をした時点において、その長期休暇期間中の当該労働者の所属する事業場において予想される業務量の程度、代替勤務者確保の可能性の有無、同じ時季に休暇を指定する他の労働者の人数等の事業活動の正常な運営の確保にかかわる諸般の事情について、
 これを正確に予測することは困難であり、当該労働者の休暇の取得がもたらす事業運営への支障の有無、程度につき、蓋然性に基づく判断をせざるを得ないことを考えると、
 労働者が、右の調整を経ることなく、その有する年次有給休暇の日数の範囲内で始期と終期を特定して長期かつ連続の年次有給休暇の時季指定をした場合には、これに対する使用者の時季変更権の行使については、右休暇が事業運営にどのような支障をもたらすか、右休暇の時期、期間につきどの程度の修正、変更を行うかに関し、使用者にある程度の裁量的判断の余地を認めざるを得ない」とした。
 つまり、「時季変更権の行使は事業の正常な運営を妨げる場合に限定されるべき」とはいっても、余りにも長期間休暇の場合、先の先まできちっと業務の支障の程度を見通すことは困難であるから、「ある程度は使用者の裁量的判断に任さざるを得ない」としたのだ。
 結局、本件の場合、「労働者も事前に調整を行うべきであって、他に代わりうる専門家がいないなどの事情を考慮すると、2週間2回にわけて別々に休暇を取るようにと、後半2週間の時季変更は適法であると判断したのだ。
「事前の調整」とは専門用語でも法律用語でもない。国語の問題を出したかったのかな?
 29
1
選択
 最高裁判所は、労働者が長期かつ連続の年次有給休暇の時季指定をした場合に対する、使用者の時季変更権の行使が本肢にある最高裁判所の判例は、選択式22年の2のにおいても出題された最高裁判例「時事通信社事件」(H04.06.23)である。
 同判決文によれば、「労働者が長期かつ連続の年次有給休暇を取得しようとする場合においては、それが長期のものであればあるほど、使用者において代替勤務者を確保することの困難さが増大するなど事業の正常な運営に支障を来す蓋然性が高くなり、使用者の業務計画、他の労働者の休暇予定等との事前の調整を図る必要が生ずるのが通常である」とあり、
 そのことから、「労働者が、右の調整を経ることなく、その有する年次有給休暇の日数の範囲内で始期と終期を特定して長期かつ連続の年次有給休暇の時季指定をした場合には、これに対する使用者の時季変更権の行使については、右休暇が事業運営にどのような支障をもたらすか、右休暇の時期、期間につきどの程度の修正、変更を行うかに関し、使用者にある程度の裁量的判断の余地を認めざるを得ない」とした。
 よって、A事業の正常な運営B裁量的判断
A:有給休暇に対する使用者の時季変更権は、39条5項ただしがきの「請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる」に基づくものであることを思い出すべき。
B:「使用者にある程度の( )の余地を認めざるを得ない」という文脈からもわかる。
24
6オ
 過去問解説(22-2選択)の前段部分にあるように、最高裁判例「白石営林署事件」(S48.03.02)において、
 「年次有給休暇の権利は、法律上当然に生じ、労働者がその有する年次休暇の日数の範囲内で始期と終期を特定して休暇の時季指定をしたときは、使用者が適法な時季変更権を行使しない限り、年次休暇が成立する」とあり、
 労働者が時季指定権を行使する際に、事前の調整が必要などということはいっていない。
 しかし、それでは時季指定さえすれば年次有給休暇は自動的に成立するかというとそうではなく、使用者が適法に時季変更権を行使できる場合もある。
 特に、「長期かつ連続の有給休暇」となると、実際上はいろいろな問題が生じる可能性がある。
 そして、過去問解説(22-2選択)の後段部分にあるように、時事通信社事件の最高裁判決では、
 「労働者が、右(事前)の調整を経ることなく、その有する年次有給休暇の日数の範囲内で始期と終期を特定して、長期かつ連続の年次有給休暇の時季指定をした場合には、これに対する使用者の時季変更権の行使については、右休暇が事業運営にどのような支障をもたらすか、右休暇の時期、期間につきどの程度の修正、変更を行うかに関し、使用者にある程度の裁量的判断の余地を認めざるを得ない」とした。
 つまり、「長期かつ連続の有給休暇を事前の調整なしで請求した場合は、使用者が、ある程度の裁量的判断をもって時季変更権を行使することも止むを得ない」としたのである。
 それでは、本肢にはどういう論点(切り口)で答えればよいかであるが、問題文は、「長期かつ連続の年次有給休暇を取得しようとする場合には、事前の調整を経なければ、時季指定権を行使することができない」とあって、事前の調整なしでは時季指定権そのものが認められないと読める。
 しかしそれは明らかに論理に飛躍がある。
 時事通信社事件の判例では、「事前調整なしに時季指定権が行使された場合の時季変更権の適法性の範囲等」について、判断を下したのである。
 すなわち、長期かつ連続の有給休暇を取得しようとする場合において、事前調整なしに行使された時季指定権であっても、それ自体は有効であるのだ。
 後は、使用者による時季変更権とどう折り合いをつけるかということ。
過去問(22-2選択)の解答 ・解説だけを覚えていると不正解になる。
本肢の論点はどこにあるかを読みとらないといけない。
14
5B
 [その年度においてそれぞれの労働者が取得可能な年次有給休暇の日数を通知」するのよいとして、「その請求予定時季を聴かなければならない」とあるが、年次有給休暇の取得を請求する(請求とは時季を指定することであり、取得そのものは申し出とされている)のはあくまでも労働者側の自由な意思に任さなければならない。
 つまり、「請求予定時季を聴く」という義務もなければ、権利もない。
 ただし、 年次有給休暇の取得率が余りにも低い(あるいは取得しにくい状況にあるとも考えられる)ことから、平成31年度に法改正があり、使用者は労働者の有給休暇取得日数について、積極的な関与しなければならないことになった。
 具体的には39条7項8項にあるように、「与えるべき有給休暇日数が10日以上である労働者について、労働者側からの指定、計画的付与によっても5日間以上とならない場合は、合計で5日以上となるように、使用者は時季を指定して与えなければならない。
 さらにこれに違反すると、30万円以下の罰金が科せられることに。
11
4D
 時季変更権については、39条5項
 「使用者は、有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない。
 ただし、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる」とある通り。
 なお、前半部分については、附則136条
 「使用者は、有給休暇を取得した労働者に対して、賃金の減額その他不利益な取扱いをしないようにしなければならない」による。
27
2
選択
 最高裁判所は、労働基準法第39条第5項(当時は第3項)に定める使用者による時季変更権の行使の有効性が争われた事件において、次のように判示した。
 「労基法39条3項(現行5項)ただし書にいう「事業の正常な運営を妨げる場合」か否かの判断に当たつて、(B)代替勤務者配置の難易は、判断の一要素となるというべきであるが、特に、勤務割による勤務体制がとられている事業場の場合には、重要な判断要素であることは明らかである。したがつて、そのような事業場において、使用者としての通常の配慮をすれば、勤務割を変更して(B)代替勤務者を配置することが客観的に可能な状況にあると認められるにもかかわらず、使用者がそのための配慮をしないことにより(B)代替勤務者が配置されないときは、必要配置人員を欠くものとして事業の正常な運営を妨げる場合に当たるということはできないと解するのが相当である。
 そして、年次休暇の利用目的は労基法の関知しないところである〔……〕から、勤務割を変更して(B)代替勤務者を配置することが可能な状況にあるにもかかわらず、休暇の利用目的のいかんによつてそのための配慮をせずに時季変更権を行使することは、利用目的を考慮して年次休暇を与えないことに等しく、許されないものであり、右時季変更権の行使は、結局、事業の正常な運営を妨げる場合に当たらないものとして、無効といわなければならない」
 本肢は、最高裁判例[懲戒処分無効確認等(いわゆる弘前電報電話局事件)](S62.07.10)からの出題である。
 この事件は、ある労働者Aから有給休暇の申し出があったが、課長は、Aが成田空港反対現地集会に参加して違法行為に及ぶおそれがあると考えてその参加を阻止するため、予め代替勤務を申し出ていた職員を説得してその申出を撤回させたうえ、Aに対し時季変更権を行使したものである。
 しかしながら、Aは同日出勤せずに成田空港反対現地集会に参加し、懲戒処分を受けたことから、有給休暇の時季変更権、特に「事業の正常な運営を妨げる場合」をめぐって、争いになったのである。
 なお、39条5項では、「使用者は、有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない。ただし、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる」とされている。
 結論は、上記問題文にある通りで、「使用者としての通常の配慮をすれば、勤務割を変更して代替勤務者を配置することが客観的に可能な状況にあると認められるにもかかわらず、使用者がそのための配慮をしないことにより代替勤務者が配置されないときは、必要配置人員を欠くものとして事業の正常な運営を妨げる場合に当たるということはできないと解するのが相当である」とした。

5
2
選択
 最高裁判所は、労働者の指定した年次有給休暇の期間が開始し又は経過した後にされた使用者の時季変更権行使の効力が問題となった事件において、次のように判示した。
 「労働者の年次有給休暇の請求(時季指定)に対する使用者の時季変更権の行使が、労働者の指定した休暇期間が開始し又は経過した後にされた場合であつても、労働者の休暇の請求自体がその指定した休暇期間の始期にきわめて接近してされたため使用者において時季変更権を行使するか否かを事前に判断する時間的余裕がなかつたようなときには、それが事前にされなかつたことのゆえに直ちに時季変更権の行使が不適法となるものではなく、客観的に右時季変更権を行使しうる事由が存し、かつ、その行使が(B)遅滞なされたものである場合には、適法な時季変更権の行使があつたものとしてその効力を認めるのが相当である」
 本肢は、最高裁判例[給料、いわゆる電電公社此花電報電話局事件](S57.03.18)からの出題である。
 争いの経緯は、ある上告人(実際には状況が似ている2人がいる)が当日早朝、電話により宿直職員を通じて、理由を述べず、同日一日分の年次休暇を請求し、出勤しなかった。
 所属長は、事務に支障が生ずるおそれがあると判断したが、休暇を必要とする事情を聴くために直ちに連絡したところ、午後三時ごろ、出社した同人が理由を明らかにすることを拒んだため、直ちに年次休暇の請求を不承認とする意思表示をした。
 そして、いずれも欠勤扱いにしたため、未払い賃金についての争いとなった。
 これに対する判決文は、上記問題文にある通りであり、結論として、「年次有給休暇が開始された後であっても、労働者からの休暇の請求自体が休暇期間の始期にきわめて近いため、時季変更権を行使するか否かを事前に判断する時間的余裕がなかつたときは、客観的に右時季変更権を行使しうる事由が存し、かつ、その行使が遅滞なくされた場合には、適法な時季変更権の行使があつたものとしてその効力を認めるのが相当である」とした。
 すなわち、選択すべき語句は「遅滞なく」である。
 なお、本肢にかかわる基本的な知識として、39条5項に、「使用者は、有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない。ただし、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる」と規定されていることを忘れてはならない。
25
2オ
 39条4項の規定とは、
 「過半数組織労働組合あるいは労働者の過半数代表者との書面による協定により、所定の事項を定めた場合において、協定に掲げる範囲に属する労働者が有給休暇を時間を単位として請求したときは、協定に掲げる日数(5日以内)については、時間を単位として有給休暇を与えることができる」とするもの。
 そして、同条5項による時季変更権とは、
 「使用者は、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる」によるもの。
 わずか1時間という短時間の年次有給休暇を請求してきたときの時季変更権の可否については、通達(H21.05.29基発0529001)に、「時間単位年休についても、使用者の時季変更権の対象となる」とあり、「短時間であってもその時間に年次有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げるときは、同条第5項のいわゆる時季変更権を行使することができる」とした。
 参考ながら、同通達によれば、「労働者が時間単位による取得を請求した場合に日単位に変更することや、日単位による取得を希望した場合に時間単位に変更することは、時季変更に当たらず、認められない」ともある。

3
2E
 「39条に従って、労働者が日を単位とする有給休暇を請求したとき」とある。
 有給休暇は、通常は日単位で取得するものである。
 しかしながら、その例外として、同条4項によれば、「過半数組織労働組合あるいは労働者の過半数代表者との書面による協定により、所定の事項を定めた場合において、協定に掲げる範囲に属する労働者が有給休暇を時間を単位として請求したときは、協定に掲げる日数(5日以内)については、時間を単位として有給休暇を与えることができる」
 そこで本肢は、「使用者が時季変更権を行使して、日単位による取得の請求を時間単位に変更することができるか否か」について問うている。
 これについては、通達(H21.05.29基発0529001)に、
 「時間単位年休についても、39条5項の規定により、使用者の時季変更権の対象となるものであるが、労働者が時間単位による取得を請求した場合に日単位に変更することや、日単位による取得を希望した場合に時間単位に変更することは、時季変更に当たらず、認められないものであること。
 また、事業の正常な運営を妨げるか否かは、労働者からの具体的な請求について、個別的、具体的に客観的に判断されるべきものであり、あらかじめ労使協定において時間単位年休を取得することができない時間帯を定めておくこと、所定労働時間の中途に時間単位年休を取得することを制限すること、1日において取得することができる時間単位年休の時間数を制限すること等は認められない」ともある。 
16
6E
 通達(S49.1.11 基収5554)によると、
 「当該の年次有給休暇の権利が労働基準法に基づくものである限り、当該労働者の解雇予定日を超えての時季変更は行えないものと解する」
 つまり、解雇であろうとなかろうと、退職後は労基法の保護をうけられる労働者ではなくなるから、解雇後に休暇を与える、ということは保護に欠けることになるので、通用しない。
 「この法律の規定による賃金(退職手当を除く)、災害補償その他の請求権は2年間、この法律の規定による退職手当の請求権は5年間行わない場合においては、時効によって消滅する」
 とあり、有給休暇の時効は2年であるから、2年以内のものについてもあわせて退職前に請求できる。
20
5D
 39条6項によれば、
 「使用者は、過半数組織労働組合(ない場合は、労働者の過半数代表者)との労使協定により、有給休暇を与える時季に関する定めをしたときは、5日を超える部分については、労使協定の定めにより有給休暇を与えることができる」とある。
 本肢では特に「労働者の時季指定にかかわらず」の部分が正しいかどうかがポイントになるが、これについては、通達(S63.3.14基発150)により、
 「計画的付与の場合には、時季指定権及び時季変更権ともに行使できない」とある。
 つまり、協定によって計画的に付与された有給休暇は、必ずその日に実行されなければならないことになっており、労働者側も使用者側もこれを変更することはできない。
25
2ア
 フレックスタイム制については32条の3にあるように、
 「就業規則等により、その労働者に係る始業及び終業の時刻をその労働者の決定にゆだねることとした労働者については、過半数組織労働組合あるいは労働者の過半数代表者との書面による協定により、一定の事項を定めたときは、定められた期間を平均し1週間当たりの労働時間が法定労働時間を超えない範囲内において、1週間において40時間、1日において8時間を超えて労働させることができる」とする変形労働時間制の一種である。
 一方、有給休暇の計画的付与とは、39条6項から、
 「過半数組織労働組合あるいは労働者の過半数代表者との書面による協定により、有給休暇を与える時季に関する定めをしたときは、有給休暇の日数のうち5日を超える部分については、その定めにより有給休暇を与えることができる」とあり、
 周囲の気兼ねなく年次有給休暇を取れるように労使間が取り決めた、有給休暇の取得(付与)方法の一つである。
 一般に、労働時間に関する変形労働時間制の規定と、年次有給休暇に関する規定とは、相互に調整すべき事項はない。
 つまり、フレックスタイム制の適用を受ける労働者であっても、39条の年次有給休暇の規定は6項も含めて当然に適用される。
22
6D
 39条6項に定めによる年次有給休暇の計画的付与とは、
 「過半数組織労働組合(ない場合は、労働者の過半数代表者)との労使協定により、有給休暇を与える時季に関する定めをしたときは、5日を超える部分については、労使協定の定めにより有給休暇を与えることができる」とある通りで、
 労使協定によって有給休暇の取得日を予め計画的に定め、気兼ねなく有給休暇が取れるようにすることによって、有給休暇の取得率を上げようとする苦肉の策である。
 付与時期を計画的に定める方式については、通達(S63.01.01基発1)に、
@事業場全体の休業による一斉付与方式(この場合は、具体的な付与日を定める)
A 班別の交替制付与方式(この場合は、班毎の具体的な付与日を定める)
B年次有給休暇付与計画表による個人別付与方式(この場合は、計画表を作成する時期や、手続き等を定める)
 等が考えられるとしており、
 必ずしも、「事業場全体で一斉に付与しなければならない」というものではない。
17
4D
 39条6項とは、
 「労使協定により、有給休暇を与える時季に関する定めをしたときは、前項の規定にかかわらず、その定めにより有給休暇を与えることができる」、
 いわゆる有給休暇の計画的付与に関する規定であり、通達(S63.3.14基発150)により、
 「計画的付与の場合には、時季指定権及び時季変更権は、ともに行使できない」とある。
 よって、この協定を締結することによって、個々の労働者のいわゆる時季指定権の行使を制約することができるので、協定に加えて就業規則上の根拠を必要とすることはない。ただし、使用者側の時季変更権も行使できない。
 すなわち、協定によって計画的に付与された有給休暇は、必ずその日に実行されなければならない。
 ここで、問題文にある免罰的効力とは、本肢の場合、
 「その協定に従って計画的に有給休暇を与えても、有給休暇の付与に関する労基法39条違反による刑事罰(6箇月以下の懲役又は30万円以下の罰金)を科せられることはない」ということ。
 一般的には、刑事罰には処せられないとしても、労働者と民事上の争いになったときは、労使協定だけでは負けることがあるので、労働協約や就業規則などによって労働者と取り決めを行っておく必要があることが多いが、計画的付与の場合は必要ないとされている。
そもそも「年次有給休暇の取得率を上げて労働時間の短縮を図るために、有給休暇の取得日を課単位、係単位などで同じ日に定め、気兼ねなく有給休暇が取れるようにする」という苦肉の策でもある。
 一方では、個人的理由による休暇を、希望する日に取得できるようにもしておきたいということから、少なくとも5日は、計画的付与の対象からはずさなければならないことになっている。
「計画的付与」は労働者の時季指定権の行使を制約することを目的としたものではないが、結果的にはそうなっている。
  あくまでも、すべての日について「労働者の自由意思に任すべき」であって、計画的付与そのものに反対する意見もある。
 一方、ヨーロッパ先進国で見られる夏季の長期バカンスなどは、この計画的付与の1種である。
17
5C
  通達(H3.12.20基発72)によると、「年次有給休暇は、労働義務のある日についてのみ請求できるものであるから、育児休業申出後には、育児休業期間中の日について年次有給休暇を請求する余地はない。また、育児休業申出前に育児休業期間中の日について、時季指定や労使協定に基づく計画的付与が行われた場合には、当該日には年次有給休暇を取得したものと解され、当該日に係る賃金支払日については、使用者に所要の賃金支払の義務が生じる」とある。
15
5C
 通達(S63.3.14基発150)の通りで、
 「計画的付与の場合には、時季指定権及び時季変更権は、ともに行使できない」
17
4E
  39条6項により、  
 「労使協定により有給休暇を与える時季に関する定めをしたときは、5日を超える部分については、前項の規定にかかわらず、その定めにより有給休暇を与えることができる」とある。
 問題は、繰越しされた3日の取り扱いであるが、通達(S63.3.14基発150)によると、「繰越し分を含めて5日を超える部分が対象となる」としている。逆に、「年次有給休暇の日数が足りない、あるいはない労働者を含めて計画的に付与する場合には、付与日数を増やすなどの措置が必要である」(S63.1.1基発1)
 要するに、形はどうであれ、計画的付与以外の、時季指定権を行使しうる有給休暇日数が少なくとも5日確保できればよいのである。
  よって、本肢の場合10日(12+3−5)を計画的付与とすることができる。

2
6E
 「使用者は、労働基準法第39条第7項の規定により労働者に有給休暇を時季を定めることにより与えるに当たって」とある。
 39条7項によれば、「有給休暇日数が10労働日以上である労働者に対して、1項(雇入れから6か月後に10日)、2項(その後1年経過毎に加算した日数)、3項(比例付与による日数)の規定による有給休暇日数のうち5日については、基準日(6箇月経過日から1年ごとに区分した各期間の初日)から1年以内の期間に、労働者ごとにその時季を定めることにより与えなければならない
 すなわち、「有給休暇日数が10日以上である労働者に対しては、5日間は、使用者は労働者ごとにその時季を指定して与えなければならない」という。
 本来ならば、有給休暇は労働者が時季を選定して取得するものであるが、有給休暇の消化が余りにも低調であるため、5日間は使用者が時季を決めてでも取らせろという。
 (ただし、実際には、39条8項により、「労働者側からの指定(あるいはそれに代わる時季変更権に基づく変更指定)、計画的付与によっても5日間以上とならない場合に限り、合計で5日以上となるようにするということ)
 このように、使用者が時季を指定する有給休暇は、多少筋が悪い制度ともいえるので、使用者が時季を指定するに当たっては、施行規則24条の6により、
 「使用者は、法39条7項の規定により労働者に有給休暇を時季を定めることにより与えるに当たつては、あらかじめ、同項の規定により当該有給休暇を与えることを当該労働者に明らかにした上で、その時季について当該労働者の意見を聴かなければならない」ことし、さらに、同2項により、「使用者は、前項の規定により聴取した意見を尊重するよう努めなければならない」としている。