22年度 法改正トピックス( 船員保険法に関する主要改正点)

 概要: 船員保険法は平成21年1月1日に全面的に書き換えられた。
     ここでそのうち主なもののみを掲載している。
  改正後 改正ポイント
 

 

目的等

 目的(1条)(H22.01.01)
 「この法律は、船員の職務外の事由による疾病、負傷若しくは死亡又は出産及びその被扶養者の疾病、負傷、死亡又は出産に関して保険給付を行うとともに、労働者災害補償保険による保険給付と併せて船員の職務上の事由又は通勤による疾病、負傷、障害又は死亡に関して保険給付を行うこと等により、船員の生活の安定と福祉の向上に寄与することを目的とする。
 改正前にあった
 「失業、職業に関する教育訓練の受講、雇用の継続が困難となる事由の発生、職務上の事由もしくは通勤による障害又は職務上に事由による行方不明に関する保険給付」を削除
 「労働者災害補償保険による保険給付と併せて船員の職務上の事由又は通勤による疾病、負傷、障害又は死亡に関して保険給付」を追加 
 ⇒失業等については雇用保険法を適用
 ⇒職務上災害、通勤災害については労災保険法を適用。船員保険法からの上乗せの給付もある。
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 管掌(4条)(H22.01.01)
 「船員保険は、健康保険法による全国健康保険協会が、管掌する」
 「2項 前項の規定により協会が管掌する船員保険の事業に関する業務のうち、
 被保険者の資格の取得及び喪失の確認、標準報酬月額及び標準賞与額の決定並びに保険料の徴収(疾病任意継続被保険者に係るものを除く)並びにこれらに附帯する業務は、厚生労働大臣が行う」
 業務(5条)(H22.01.01)
 「協会は、船員保険事業に関する業務として、次に掲げる業務を行う」
 @保険給付に関する業務 
 A保健事業及び福祉事業に関する業務  
 B前2号に掲げる業務のほか、船員保険事業に関する業務であって4条2項により厚生労働大臣が行う業務以外のもの
 C前3号に掲げる業務に附帯する業務  
 船員保険協議会(6条)(H22.01.01)
 「船員保険事業に関して船舶所有者及び被保険者(その意見を代表する者を含む)の意見を聴き、当該事業の円滑な運営を図るため、全国健康保険協会に船員保険協議会を置く」
 「2項 船員保険協議会の委員は、12人以内とし、船舶所有者、被保険者及び船員保険事業の円滑かつ適正な運営に必要な学識経験を有する者のうちから、厚生労働大臣が任命する」


 「3項 前項の委員の任期は、2年とする。ただし、補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする」
 船員保険の管掌は政府から全国健康保険協会へ。
 ただし、
・被保険者の資格の取得及び喪失の確認、
・標準報酬月額及び標準賞与額の決定
・保険料の徴収(疾病任意継続被保険者を除く)
 は、厚生労働大臣(実際には年金機構)が行う
 ⇒健康保険法と同様の仕組み
 
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保険給付の種類

 保険給付の種類(29条)(H22.01.01)
 「この法律による職務外の事由(通勤を除く)による疾病、負傷若しくは死亡又は出産に関する保険給付は、次のとおりとする」
 @療養の給付並びに入院時食事療養費、入院時生活療養費、保険外併用療養費、療養費、訪問看護療養費及び移送費の支給 
 A傷病手当金の支給
 B葬祭料の支給
 C出産育児一時金の支給、D出産手当金の支給
 E家族療養費、家族訪問看護療養費及び家族移送費の支給
 F家族葬祭料の支給、G家族出産育児一時金の支給
 H高額療養費及び高額介護合算療養費の支給
 「2項 職務上の事由若しくは通勤による疾病、負傷、障害若しくは死亡又は職務上の事由による行方不明に関する保険給付は、労働者災害補償保険法の規定による保険給付のほか、次のとおりとする」
 @休業手当金の支給、
 A障害年金及び障害手当金の支給
 B障害差額一時金の支給、C障害年金差額一時金の支給
 D行方不明手当金の支給
 E遺族年金の支給、
 F遺族一時金の支給、G遺族年金差額一時金の支給
 ⇒失業等給付、雇用継続給付、教育訓練給付については雇用保険法を適用
 ⇒職務外の事由(通勤を除く)による疾病、負傷若しくは死亡又は出産に関する給付は従来通り。
 ⇒職務上災害、通勤災害については労災保険法を適用し、船員保険法からの上乗せ給付もある。
 よって、職務上の事由・通勤による療養の給付、傷病手当金、葬祭料は原則として削除され、労災保険法による。
 ただし、傷病手当金にかわる休業手当金としての付加給付が船員保険法から支給される。
 

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職務上
あるいは通勤に関する給付

 休業手当金(85条)(H22.01.01新設)
 「休業手当金は、被保険者又は被保険者であった者が職務上の事由又は通勤による疾病又は負傷及びこれにより発した疾病につき療養のため労働することができないために報酬を受けない日について、支給する。
 休業手当金の額は、次の各号に掲げる期間(2号から4号までに掲げる期間においては、同一の事由について労働者災害補償保険法の規定による休業補償給付又は休業給付の支給を受ける場合に限る)の区分に応じ、
 1日につき、当該各号に定める金額とする」 
 ⇒ 法改正前は傷病手当金の中に、
 @職務外の事由によるもの
 A職務上の事由又は通勤によるものが含まれていたが、
 法改正後は、Aは労災保険法からの休業(補償)給付として給付される部分と、これに対して船員保険法から上乗せ給付する休業手当金に分割された。
法改正前の傷病手当金
 職務上の事由又は通勤による疾病又は負傷  4月の範囲内:1日あたり、標準報酬日額の全額
 4月を超過 :1日あたり、標準報酬日額の100分の60
 上記に関して、療養の給付、保険外併用療養費・訪問看護療養費に係る療養を受けなくなった日以後1月の範囲内  1日あたり、標準報酬日額の100分の60
 職務外の事由による疾病又は負傷  1日あたり、標準報酬日額の3分の2(法改正 H19.4.1)
 
 障害年金(87条)(H22.01.01)
 「被保険者であった間に発した職務上の事由又は通勤による疾病又は負傷及びこれにより発した疾病により労働者災害補償保険法の規定による障害補償年金、障害年金、傷病補償年金又は傷病年金を受ける者に対し、同法に規定された年齢階層別最高限度額が最終標準報酬日額より少ないときは、厚生労働省令で定める障害等級に該当する障害の程度に応じ、障害年金を支給する」
 
 改正前
 労災法の障害(補償)年金(傷病が治癒した後も一定の障害等級にある者に対する給付)と、傷病(補償)年金(傷病が1年6箇月を経過しても治癒)せず、一定の障害等級にある者に対する給付)をあわせたものに相当する給付がなされていた。
 法改正により、それぞれに対して労災保険法からの給付がなされ、
 「年齢階層別最高限度額が最終標準報酬日額より少ないときに限り」船員保険からも上乗せ給付されることになった。
 
 遺族年金(97条)(H22.01.01)
 「被保険者又は被保険者であった者が、職務上の事由又は通勤により死亡した場合であって、労働者災害補償保険法の規定により遺族(補償)年金が支給され、かつ、最高限度額が最終標準報酬日額より少ないときは、その遺族に対し、遺族年金を支給する」
 法改正により、遺族年金は労災保険法から給付され、
 「年齢階層別最高限度額が最終標準報酬日額より少ないときに限り」船員保険からも上乗せ給付されることになった










 国庫負担(112条)(H22.01.01)
 「国庫は、政令で定めるところにより、職務上の事由又は通勤による疾病又は負傷及びこれにより生じた疾病のうち政令で定めるものについて、
 労働者災害補償保険法の規定による療養(補償)給付に係る療養を受けた日から起算して3年を経過しても治癒しない場合における、職務上の事由・通勤に対して支給される「自宅以外の場所における療養に必要な宿泊及び食事の支給、及び休業手当金に要する費用並びに障害年金及び障害(補償)年金に要する費用であって船員法に規定する障害手当に相当するものを超えるもののうち障害年金に要する費用の一部を負担する」  
改正前は
 「国庫は求職者等給付の支給に要する費用の一部、及び雇用継続給付の支給に要する費用 の一部を負担する」とあったが、これらは雇用保険法において国庫負担されることになり、
 船員保険法においては、労災保険法に加えた上乗せ給付の一部について国庫負担することになった。
 一般保険料率(120条)(H22.01.01)
 「一般保険料率は、疾病保険料率と災害保健福祉保険料率とを合計して得た率とする」
 「2項 前項の規定にかかわらず、後期高齢者医療の被保険者等である被保険者及び独立行政法人等職員被保険者にあっては、一般保険料率は、災害保健福祉保険料率のみとする」  
 疾病保険料率(121条)(H22.01.01
 「疾病保険料率は、1000分の40から1000分の110までの範囲内において、協会が決定するものとする」
 災害保健福祉保険料率(122条)(H22.01.01
 「災害保健福祉保険料率は、1000分の10から1000分の35までの範囲内において、協会が決定するものとする」

 一般保険料率は
  @失業保険適用者 A失業保険適用除外者  
  B後期高齢者医療保険者で失業保険適用者   
  C後期高齢者医療保険者で失業保険適用除外者に分かれていたが、失業保険適用者については雇用保険法から徴収されることになった。
 また、
 「一般保険料率は、疾病保険料率と災害保健福祉保険料率にわけ、それぞれについて、協会が法の範囲内で決定することになった」

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