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5B 賃金支払確保法
 関連過去問 13-1A14-3C17-3E

  

1.目的(1条)
 「この法律は、景気の変動、産業構造の変化その他の事情により企業経営が安定を欠くに至った場合及び労働者が事業を退職する場合における賃金の支払等の適正化を図るため、貯蓄金の保全措置及び事業活動に著しい支障を生じたことにより賃金の支払を受けることが困難となった労働者に対する保護措置その他賃金の支払の確保に関する措置を講じ、もって労働者の生活の安定に資することを目的とする」  
   
 
  2.1 貯蓄金の保全措置(3条)
 「事業主(国及び地方公共団体を除く)は、労働者の貯蓄金をその委託を受けて管理する場合において、貯蓄金の管理が労働者の預金の受入れであるときは、厚生労働省令で定める場合を除き、毎年3月31日における受入預金額について、同日後1年間を通ずる貯蓄金の保全措置(労働者ごとの同日における受入預金額につき、その払戻しに係る債務を銀行その他の金融機関において保証することを約する契約の締結、その他の当該受入預金額の払戻しの確保に関する措置で厚生労働省令で定めるもの)を講じなければならない」
 ここで、厚生労働省令で定める措置とは、
 「@銀行等との債務保証契約、A信託会社等の信託契約、B質権又は抵当権の設定、C預金保全委員会(半数づつの労使代表からなる)を設置して3ヵ月毎に報告、貯蓄金管理勘定で経理処理」(施行規則2条)
2.2 貯蓄金の保全措置に係る命令(4条)
 「労働基準監督署長は、前条の規定に違反して事業主が貯蓄金の保全措置を講じていないときは、厚生労働省令で定めるところ(文書)により、当該事業主に対して、期限を指定して、その是正を命ずることができる」
2.3 退職手当の保全措置(5条)
 「事業主(中小企業退職金共済法に規定する退職金共済契約を締結した事業主その他の厚生労働省令で定める事業主を除く)は、労働契約、労働協約、就業規則その他これらに準ずるものにおいて労働者に退職手当を支払うことを明らかにしたときは、当該退職手当の支払に充てるべき額として厚生労働省令で定める額について、3条の厚生労働省令で定める措置に準ずる措置を講ずるように努めなければならない
 ここで、保全措置を要しない事業主とは、
 「@退職金共済契約事業主、A適格退職年金契約事業主、B厚生年金基金設立事業主、C確定給付企業年金実施事業主、D特殊法人等厚生労働大臣指定事業主、E過半数組織労働組合(過半数労働代表者)との協定により別段の定めをした事業主」(施行規則4条)
 また、退職手当の支払に充てるべき額とは、「全員が自己都合退職したときの退職手当の4分の1以上など」(施行規則5条)
3.退職労働者の賃金に係る遅延利息(6条)
 「事業主は、その事業を退職した労働者に係る賃金(退職手当を除く)の全部又は一部をその退職の日(退職の日後に支払期日が到来する賃金にあっては、当該支払期日)までに支払わなかった場合には、当該労働者に対し、当該退職の日の翌日からその支払をする日までの期間について、その日数に応じ、当該退職の日の経過後まだ支払われていない賃金の額に年14.6パーセントを超えない範囲内で政令で定める率を乗じて得た金額を遅延利息として支払わなければならない」
退職手当の遅延ではないことに注意。
 「2項 前項の規定は、賃金の支払の遅滞が天災地変その他のやむを得ない事由で厚生労働省令で定めるものによるものである場合には、その事由の存する期間について適用しない」
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1A
 「賃金の支払の確保等に関する法律」では、就業規則等で労働者に退職手当を支払うことを明らかにした事業主は、企業の倒産などによる未払いの防止を図るために、一定の額について所定の保全措置を講ずるように努めなければならないこととしている。法人税法に基づく適格退職年金契約を締結した事業主であっても、当該保全措置を講ずることを必要としている。

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3E
 事業主は、賃金支払確保法第5条の規定に基づき、退職手当の全額について保全措置を講じなければならない。

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正しい 誤り
未払い賃金の立替払

 

4. 未払賃金の立替払(7条) 法改正(H22.01.01)
 「政府は、労災保険の適用事業に該当する事業の事業主(厚生労働省令で定める期間(1年)以上の期間にわたって当該事業を行っていたものに限る)が破産手続開始の決定を受け、その他政令で定める事由に該当することとなった場合において、当該事業に従事する労働者で政令で定める期間内に当該事業を退職したものに係る未払賃金)があるときは、民法の規定にかかわらず、当該労働者の請求に基づき、当該未払賃金に係る債務のうち政令で定める範囲内のものを当該事業主に代わって弁済するものとする」
 立替払い額は未払い賃金の80%(年齢別上限あり)」(施行令4条)
 年齢区分 未払い賃金上限額 立替上限額
 30歳未満  110万円   88万円
30歳以上45歳未満  220万円  196万円
 45歳以上  370万円   296万円
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3C
 賃金の支払の確保等に関する法律施行令が一部改正され、立替払の対象となる未払賃金の限度額が、平成14年1月1日以後の退職者から引き上げられることとなった。すなわち 、立替払の対象となる未払賃金の限度額を、退職日において30歳未満である者は70万円から110万円に、30歳以上45歳未満である者は130万円から220万円に、45歳以上である者は170万円から370万円に、引き上げたものである。これにより、例えば、退職日の年齢が50歳で未払賃金が400万円ある退職者の立替払額は、改正前の136万円から改正後は296万円になった。

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罰則 5.罰則
 「18条 事業主が4条の規定による命令に違反したときは、30万円以下の罰金に処する」