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KK01

年金額の決定

 
KeyWords    本則による年金額の改定(厚生年金)、従前額改定率による従前額保障物価スライド特例措置
   各年度における再評価率表(令和5年度令和4年度令和3年度26年度25年度)
   従前額補償のための再評価率表(H6再評価率表⁾
 国民年金の年金額の改定方法についてはこちらを。
1,本則による年金額の改定(本来水準)
 老齢厚生年金の報酬比例部分の年金額(厚生年金保険法43条)
 =平均標準報酬月額×1,000分の7.125(生年月日読み替えあり)×平成15年4月1日前の被保険者月数+平均報酬報酬額×1,000分の5.481(生年月日読み替えあり)×平成15年4月1日以後の被保険者月数
 つまり、
 @平均標準報酬月額・平均標準報酬額は、最新年度の再評価率表に基づいて、過去の被保険者期間各年度の標準報酬月額と標準報酬額を現在年度に価値換算した上で、その平均値を採用する。
 A乗率はH12年改正(5%カット)後の値で一定値である。
 B物価・賃金の変動による年金額の改定は、毎年、その変動に応じて再評価率表を見直し、平均標準報酬月額・平均標準報酬額を計算し直すことによって行われる。

 再評価率の推移
@当該年度の再評価率は、原則として
 ・新規裁定者(65歳以上68歳未満までの者)は名目手取り賃金変動率を基準に改定
 ・既裁定者(68歳以降の者)は物価変動率(ただし、物価変動率が名目手取り賃金変動率を上回る場合は
  名目手取り賃金変動率)を基準に改定。(根拠条文はこちらを)
 このため、再評価率は新規裁定者と既裁定者では異なる。
A現在は調整期間中であり、本来ならばマクロスライド調整によって、再評価率は上記の値に調整率がかかることになるはずであるが、平成26年度までは本来水準の年金額よりも物価スライド特例水準の方が高いため、実際にはマクロスライド調整は行われていなかった。
 平成27年度からは適用される。
B再評価率の計算に必要な基礎データはこちらの通り。 
(0)  平成16年度値
 出発点となる16年度の再評価率表は、法律で決められた。
 17年以降は、この再評価率表に対して、以下のような再評価率を基準に、再評価率表が毎年改定される。
(1)  平成17年度値
・名目手取り賃金変動率=物価変動率×実質賃金変動率×可処分所得割合変化率 =1.0×1.003×1=1.003
・物価変動率=1.0、
・以上から
 新規裁定者(昭和13年4月2日以後生まれ)は1.003
 既裁定者(昭和13年4月1日以前生まれ)は1.000
(2)  平成18年度値
・名目手取り賃金変動率=物価変動率×実質賃金変動率×可処分所得割合変化率 =0.997×0.999×1=0.996
・物価変動率=0.997
以上により、新規裁定者、既裁定者とも、再評価率は=0.997(既裁定者が新規裁定者を上回ることは許さない)
(3)  平成19年度
・名目手取り賃金変動率=1.0
・物価変動率=1.003
・以上により、新規裁定者、既裁定者とも、再評価率=1.0 (既裁定者が新規裁定者を上回ることは許さない)
(4)  平成20年度値
・名目手取り賃金変動率=0.996
・物価変動率=1.0
・以上により、新規裁定者、既裁定者とも、再評価率=1.0 (新規裁定者の方が下がり方が大きいのは許さない)
(5)

 

 平成21年度値
・名目手取り賃金変動率=1,009
物価変動率=1.014
・以上により、 新規裁定者、既裁定者とも、再評価率=1.009 (既裁定者が新規裁定者を上回ることは許さない)
(6)  平成22年度値値
・名目手取り賃金変動率=0.974
・物価変動率=0.986
・以上により、 新規裁定者、既裁定者とも、再評価率=0.986 (新規裁定者の方が下がり方が大きいのは許さない)
(7)  平成23年度値
・名目手取り賃金変動率=0.978
・物価変動率=0.993
・以上により、新規裁定者、既裁定者とも、再評価率=0.993 (新規裁定者の方が下がり方が大きいのは許さない)
(8)  平成24年度値
・名目手取り賃金変動率=0.984
・物価変動率=0.997
・以上により、新規裁定者、既裁定者とも、再評価率=0.997 (新規裁定者の方が下がり方が大きいのは許さない)
(9)  平成25年度値
・名目手取り賃金変動率=0.994
・物価変動率=1.000
・以上により、新規裁定者、既裁定者とも、再評価率=1.000 (新規裁定者のみ下がるのは許さない)
(10)  平成26年度値
・名目手取り賃金変動率=1.003
・物価変動率=1.004
・以上により、新規裁定者、既裁定者とも、再評価率=1,003(既裁定者が新規裁定者を上回ることは許さない)
 ただし、既裁定者のうち、昭和13年4月2日以降生まれの者(平成17年度における新規裁定者)については、そのままであると本来水準による年金額が物価スライド特例水準よりも0,2%高くなる事態になったため、昭和16年改正法附則31条2項により、再評価率は、もとの値にみなし調整率0.998をかけた1.001とする。 
(11)  平成27年度値
・名目手取り賃金変動率=1.023
・物価変動率=1.27
・以上により、新規裁定者、既裁定者とも、再評価率=1.023(既裁定者が新規裁定者を上回ることは許さない)となるところ、
・物価スライド特例水準の廃止に伴って、初めてマクロ経済スライドが発動されることになった。
⇒平成27年度の調整率は、公的年金被保険者変動率(-0.6%、すなわち0.994)×0.997=0.991(-09%)
 よって、新規裁定者、既裁定者とも
 27年度の再評価率=1.023×0.991=1.014
(12)  平成28年度値
・名目手取り賃金変動率=0.998
・物価変動率=1.008
・以上により、新規裁定者、既裁定者とも、再評価率=1.000 (既裁定者がアップ、新規裁定者がダウンのときは、1.0とするルール)
・マクロ経済スライド調整率の適用はなし。
(13)  平成29年度値
・名目手取り賃金変動率=0.989
・物価変動率=0.999
・以上により、 新規裁定者、既裁定者とも、再評価率=0.999((新規裁定者、既裁定者ともダウンとなったが、既規裁定者のダウンの方が小さいので、新規裁定者も既裁定者と同じとするルール)
・年金額がダウンとなるため、マクロ経済スライド調整率の適用はなし
(14)  平成30年度値
・名目手取り賃金変動率=0.996
・物価変動率=1.005
・以上により、 新規裁定者、既裁定者とも、再評価率=1.000(既裁定者がアップ、新規裁定者がダウンのときは、1.0とするルール)
・年金額が上がらないため、マクロ経済スライド調整率の適用はなし
ただし、平成30年度以降は、マクロ経済スライドによる調整が行われなかった場合でも、未調整分については、翌年度以降に持ち越すことになった。
 平成30年度の調整率は、公的年金被保険者変動率(0.0%(1.0))×0.997=0.997(-0.3%)であるので、この分が31年度以降に持ち越しとなる。
(15)  平成31年度(令和元年度)値
・名目手取り賃金変動率=1.006
・物価変動率=1.010
・以上により、 新規裁定者、既裁定者とも1.0を超える(年金額がアップとなる)が、賃金の上がり方の方が小さいので、既裁定者もこれに合わせることになり、調整前の再評価率=1.006
・さらに、年金額があがるため、マクロ経済スライド調整率(31年度値は0.998)による調整がある。
 それに加えて、平成30年度のマクロ経済スライド調整率0.997が持ち越されているので、
 結局のところ、合計したマクロ経済スライド調整率は0.995(0.998×0.997)
・よって、 新規裁定者、既裁定者とも、再評価率=1.001(1.006×0.995)
(16)  令和2年度値
・名目手取り賃金変動率=1.003
・物価変動率=1,005
・以上により、賃金も物価も上がったが、賃金の上がりの方が小さいので既裁定者も賃金価変動率による改定となって、調整前の再評価率=1.003
・年金額があがるため、マクロ経済スライド調整率(令和2年度値は0.999)による調整がある。
 (ただし、未達成による前年度からの持越しはない)
・よって、新規裁定者、既裁定者とも、再評価率=1.002(1.003×0.999)
(17)  令和3年度値
・名目手取り賃金変動率=0.999
・物価変動率=1,0
・以上により、賃金が下がり、かつ物価は上がった場合は、改定せずとなるところ、令和3年度からの法改正により、「物価変動率が名目手取り賃金変動率を上回るとき(実質賃金がダウンのとき)は、名目手取り賃金のアップあるいは物価のアップにかかわりなく、名目手取り賃金変動率を基準とする」ことになった。
 これにより、既裁定者も賃金価変動率による改定となって、調整前の再評価率=0.999。
・令和3年度の調整率は、0.997であるが、年金額がダウンとなるため、調整率による調整はない。
 ただし、調整できなかった0.999は、未達分として翌年度以降に持ち越される。
・よって、新規裁定者、既裁定者とも、再評価率=0.999
(18)  令和4年度値
・名目手取り賃金変動率=0.996
・物価変動率=0.998
・令和3年度からの法改正により、「物価変動率が名目手取り賃金変動率を上回るとき(実質賃金がダウンのとき)は、名目手取り賃金のアップあるいは物価のアップにかかわりなく、名目手取り賃金変動率を基準とする」ことになった。
 これにより、既裁定者も賃金価変動率による改定となって、調整前の再評価率=0996。
・令和4年度の調整率は、0.998であるが、前年度までの未達分0.999が加わるので、合計で0.997。
  ただし、年金額がダウンとなるため、調整率による調整はなく、調整できなかった0.997は、未達分として翌年度以降に持ち越される。
・よって、新規裁定者、既裁定者とも、再評価率=0.996。 
 再評価率表の改定
・4年度前行まで:前年度再評価率表の値に名目手取り賃金賃金変動(0.996)をかけて書き換え
・3年度前行と前々年度前行:物価変動率(0.998)×可処分所得割合変化率(1.000)をかけて書き換え。
・前年度行:可処分所得割合変化率(1.000)をかけて書き換えする
・当該年度行:前年度再評価率表の最下段行の値に可処分所得割合変化率(1.000)をかけて設定する
(19)  令和5年度値
・名目手取り賃金変動率=1.028
・物価変動率=1.025
 これにより、新規裁定者は賃金価変動率による改定、既裁定者は物価変動率による改定となった。
・令和5年度の調整率は、0.997であるが、前年度までの未達分0.997が加わるので、合計で0.994。
・よって、新規裁定者の評価率=1.028×0.994=1.022
                 既裁定者の評価率=1.025×0.994=1.019。
 再評価率表の改定
・4年度前行まで:前年度再評価率表の値に、新規裁定者は1.022をかけ、既裁定者は1.019をかけて書き換え。
・3年度前行と前々年度前行:物価変動率(1.025)×可処分所得割合変化率(1.000)×調整率(未達分を含む)(0.994)=1.019をかけて書き換え。
・前年度行:可処分所得割合変化率(1.000)×調整率(未達分を含む)(0.994)=0.994をかけて書き換え。
・当該年度行:前年度再評価率表の最下段行の値に可処分所得割合変化率(1.000)×調整率(未達分を含む)(0.994)をかけて設定する


 新年度再評価率表の作成方法 
X年度(例えば令和5年度)の再評価率表(書き換え)
被保険者期間 生年月日区分
S33年度前 S4年度
以前
S5年度 S6年度 S13年度からS30年度まで S31年度以降
S33年度            
S34年度            
・・・・            
X-3年度            
X-2年度            
X-1年度            
X年度            
X-1年度(例えば令和4年度)の再評価率表(既作成)
被保険者期間 生年月日区分
S33年度前 S4年度以前 S5年度 S6年度   S13年度からS29年度まで S30年度以降
S33年度
34年度            
・・・・            
X-3年度            
X-2年度            
X-1年度            
@一般行(1行目から(X-4)年度までの行については、
 X年度の一般行の値=(X-1)年度の一般行の値×名目賃金変動率×可処分所得割合変化率(0.998))×調整率×前年度の特別調整率で書き換え
Aただし、一番右の列はその年度の新規裁定者であるので、X年度の一番右の列を追加し、その列については
 X年度の一般行の値=(X-1)年度の一般行の値×物価変動率(物価変動率が名目賃金変動率を上回るときは名目賃金変動率)×可処分所得割合変化率(0.998))×調整率×前年度の特別調整率とする。
B特殊行(X年度行⁾については、(X-1)年度再評価率表にはないので、新たに設定して追加する。
Cその他の特殊行((X-1)年度行、(X-2)年度行、(X-3)年度行)の値は、一般行とは異なるルールで決定する。 
2 従前額改定率による従前額保障
@平成12年改正法附則21条1項のH16改正前:「平成12年改正後の乗率により計算した額が、改正前の乗率により計算した額に1.031を乗じた額に満たないときは、後者の従前額を用いる」
⇒H12法改正により給付乗率を5%カットしたが、年金額の急激な減額を避けるために、
 給付乗率を5%カット前、H6の再評価率表による報酬を適用したときの年金額×1.031と、給付乗率を5%カット後、当該年度の再評価率表による報酬を適用したときの年金額を計算し、高い方を採用することに。
A平成12年改正法附則21条1項のH16改正後:「平成12年改正後の乗率により計算した額が、改正前の乗率により計算した額に従前額改定率を乗じた額に満たないときは、後者の従前額を用いる」
⇒上記と同じ趣旨。ただし、定数1.031のかわりに従前額改定率を用い、毎年政令により改定する。
B)従前額改定率の改定
 「同4項 従前額改定率は、毎年度、厚生年金保険法43条の3(基準年度以降の再評価率の改定)の1項(調整期間にあっては、43条の5の1項、4項又は5項)の規定の例により改定する
・すなわち、調整期間における従前額改定率は、基準年度以後算出率物価変動率(ただし物価変動率の上昇率が名目手取り賃金変動率より大きいときは、名目賃金変動率)×調整率×前年度の特別調整率、を基準に改定される。
CH16年度のスタート時点の従前額改定率は1.001(=1.031×0.971)
 最近の従前額改定率の改定状況
・令和2年度
 物価変動率=1.005、名目賃金変動率=1.003、調整率=0.999、前年度の特別調整率=1.0から
 1.003×0.999=1.002で改定。
 元年度従前額改定率=1.000(S13.04.02以降生まれ0.998)であるから、
  従前額改定率=1.002(S13.04.02以降生まれ1.000)
・令和3年度
 物価変動率=1.0、名目賃金変動率=0.999、調整率は適用せずから、0.999で改定。
 2年度従前額改定率=1.002(S13.04.02以降生まれ1.000)であるから、
  従前額改定率=1.001(S13.04.02以降生まれ0.999)
・令和4年度
 物価変動率=0.998、名目賃金変動率=0.996、調整率は適用せずから、0.996で改定。
 3年度従前額改定率=1.001(S13.04.02以降生まれ0.999)であるから、
  従前額改定率=0.997(S13.04.02以降生まれ0.995)
・令和5年度
 物価変動率=1.025、名目賃金変動率=1.028、調整率=0.997、前年度の特別調整率=0.997から、   
 1.025×0.997×0.997=1.019で改定
   4年度従前額改定率=0.997(S13.04.01以前生まれ0.995)であるから、
   従前額改定率=1.016(S13.04.02以降生まれ1.014))
DH6再評価率表
・H6再評価率表は、毎年、最後の段(当該年度に該当するが段)だけが新たに追加される。
 その値は、平成12年改正法附則別表第一備考により、「平成17年度以後の各年度に属する月の項の政令で定める率は、当該年度の前年度に属する再評価率を、厚生年金保険法第43条の2第1項1号の率(物価変動率)に同項2号の率(実質賃金変動率)を乗じて得た率で除して得た率を基準として定める。
 






3 .物価スライド特例措置(16年改正法27条)
 「厚生年金保険法による年金たる保険給付については、平成16年改正後の厚生年金保険法、平成12年改正法等の規定により計算した額が、 これらの改正前の規定により計算した額に特例による物価スライド率(H16を0.988とし、前年の消費者物価指数が直近の当該改定が行われた年の前年の物価指数を下回るに至つた場合においては、改定前の率にその低下した比率を乗じて得た率)を乗じて得た額に満たない場合は、改正前の厚生年金保険法等の規定はなおその効力を有するものとし、改正後の厚生年金保険法等の規定にかかわらず、当該額をこれらの給付の額とする」
⇒「厚生年金保険法により計算した額平成12年改正法附則21条の平成16年改正にり計算した年金額が、 これらの改正前の規定により計算した額に特例による物価スライド率(H16を0.988)を乗じた額に満たない場合は、後者を給付の額とする。
⇒物価スライド特例措置による年金額を、毎年、基本的には物価変動率により改定する。
・ただし、前年の物価が上がった場合は改定しない。
・前年の物価が下がった場合でかつ、直前に改定があった年の前年の物価水準よりも下がった場合は、その物価水準の差だけ改定する物価スライド率は毎年改定する。
 16年度値
 16年度値は0.988とする。
 ここで0.988とは、平成12年度から16年度(実際の物価水準からいうと11年から15年)の物価下落率合計値2.9%(物価水準は0.971)から、年金額が特例により据置きとなった12年度から14年度(実際は11年から13年)の物価下落率合計値1.7%をかさ上げした値。
 17年度値は0.988
 16年の物価変動率は0.0であったので、スライド率は0.988のままである。
 18年度値は0.985
 17年の物価下落率は0.3%(物価水準は0.997)であったので、スライド率は0.988×0.997=0.985
 19年度値は0.985(不変)
 
18年の物価変動率は+0.3%、すなわち物価は若干上昇した。
 しかし、この特例措置によれば、物価が上がっても据置きである。
 よって、平成19年度に適用する物価スライド率は0.985(不変)である。
 20年度値は0.985(不変)
 
19年の物価変動率は0.0%。
 よって、平成20年度に適用する物価スライド率は0.985(不変)である。
   21年度値は0.985(不変)
 
20年の物価変動率は指数はプラス1.4%であった。
 しかし、物価が上がっても据置きである。
 よって、平成21年度に適用する物価スライド率は0.985(不変)である。
 22年度値は0.985(不変)
 前年度の物価変動率はマイナス1.4%であった。
 よって、平成22年度の年金額は、 この物価変動率に応じて減額になるはずであるが、
 物価スライド特例措置(16年改正法27条)の適用により、
 「減額改定が発生する場合には、直近の減額改定がなされた年度(平成18年度)の前年(平成17年)の物価水準と比較して、この水準を下回った場合に限り、その下回った分を減額する」ことになるが、
 18年度後は19年度(18年)に+0.3%、20年度(19年)は0%、21年度(20年)は+1.4%、22年度(21年)年は-1.4%であって、結局は17年に比べてまだ0.3%高いのことから、
 平成22年度に適用する物価スライド率は0.985(不変)である。
 23年度値は0.981(0.4%ダウン)
 前年度の物価変動率はマイナス0.7%であった。
 よって、平成23年度の年金額は、この物価変動率に応じて減額になるはずであるが、
 物価スライド特例措置(16年改正法27条)の適用により、
 「減額改定が発生する場合には、直近の減額改定がなされた年度(平成18年度)の前年(平成17年)の物価水準と比較して、この水準を下回った場合に限り、その下回った分を減額する」ことになるが、
 18年度後は19年度(18年)に+0.3%、20年度(19年)は0%、21年度(20年)は+1.4%、22年度(21年)は-1.4%、23年度(22年)は−0.7%であって、結局は17年に比べて0.4%ダウンした。
 よって、平成23年度に適用する物価スライド率は0.981(0.4%ダウン)
 これにより、23年度の年金額は0.4%のダウンとなる。
   24年度値は0.978(0.3%ダウン)
 前年度の物価変動率はマイナス0.3%(0.997)であった。
 物価スライド特例措置(H16改正法附則7条)の適用により、
 「減額改定が発生する場合には、直近の減額改定がなされた年(平成23年度)の前年(平成22年)の物価水準と比較して、この水準を下回った場合に限り、その下回った分を減額する」ことになる。
 よって、平成24年度に適用する物価スライド率は0.978(0.3%ダウン)
 これにより、24年度の年金額は0.3%のダウンとなる。
 25年度値(9月まで)は0.978(かわらず)
 前年度の物価変動率は0.0%。
 よって、平成25年度9月までに適用する物価スライド率は0.978(不変)である。
 25年度値(10月以降)は0.968(1.0%ダウン)
 物価スライド特例による年金額と本則による年金額とのギャップが2.5%あるので、これを3年間かけて強制的に解消することになり、平成25年10月からの物価スライド率を1.0%ダウンさせては0.968に。
 これにより、平成25年10月からの年金額は、1%のダウンとなる。(物価スライド特例による年金額と本則による年金額とのギャップは1.5%に縮まる)
 26年度値は0.961(0,7%ダウン)
 
前年度の物価変動率は0.4%のアップ。
 よって、従来の物価スライド特例による年金額は物価が上昇した場合は反応しないはずであるが、25年度当初時点での物価スライド特例による年金額と本則による年金額とのギャップ2.5%を3年間かけて強制的に解消することになり、H26年度も乖離率を1%縮小させる。
 ただし、本則の年金水準が0.3%上がった(ギャップが0.3%縮小した)ので、物価スライド率は0.7%のダウンとした。(物価スライド特例による年金額と本則による年金額とのギャップは0.5%になる)
    27年度以降、物価スライド特例措置は廃止。
 物価スライド特例措置による年金額(参考:26年度値)
 特別支給老齢厚生年金定額部分

 1,676円×0.961×被保険者期間月数

 加給年金額(配偶者及び2人の子)  222,400円
 (231,400円×0.961)
 加給年金額(3人目以降)    74,100円
 ( 77,100円×0.961)
 障害厚生年金最低保障額  579,700円 
 (603,200×0.961)
 中高齢寡婦加算

 579,700円 
 (603,200×0.961)


年金額の本来水準と物価スライド特例水準の乖離、再評価率従前額改定率 
年度前年の対前年物価変動率
(備1)
年金額の物価スライド特例水準
(=物価スライド率)
年金額の
本来水準(備2)
本来水準ー物価スライド特例水準(備3) 再評価率(備4)
従前額保障改定率
(備5)
11(基準)   1.0 1.0 1.0   1.031
12 -0.3% 1.0(注1) 0.997
(1.0×0.997)
-0.3%   1.028
(1.031×0.997)
13 -0.7% 1.0(注1) 0.990
(0.997×0.993)
-1%   1.021
(1.031×0.990)
14 -0.7% 1.0(注1) 0.983
(0.990×0.993)
-1.7%   1.013
(1.031×0.983)
15 -0.9% 0.991 0.974
(0.983×0.991)
-1.7%   1.004
(1.031×0.974)
16 -0.3% 0.988 0.971
(0.974×0.997)
-1.7% 1.0  1.001
(1.031×0.971)
17 0% 0.988 0.971 -1.7% 1.0
 ただし、昭和13年4月2日以後生まれは1.003 
1.001
18 -0.3% 0.985 0.968
(0.971×0.997)
-1.7% 0.997
0.998
(1.001×0.997)
19 +0.3% 0.985(注2) 0.968
(0.968×1.0)(注5)
-1.7% 1.0 0.998
(0.998×1.0)
20 0% 0.985 0.968
(0.968×1.0)
-1.7% 1.0 0.998
(0.998×1.0)
21 +1.4% 0.985(注2) 0.977
(0.968×1.009)(注5)
-0.8% 1.009 1.007
(0.998×1.009)
22 -1.4% 0.985(注3) 0.963
(0.977×0.986)(注6)
-2.2% 0.986 0.993
(1.007×0.986)
23 -0.7% 0.981(注4) 0.956
(0.963×0.993)(注6)
-2.5% 0.993 0.986
(0.993×0.993)
24 -0.3% 0.978(注4') 0.953
(0.956×0.997)(注6)
-2.5% 0.997 0.983
(0.986×0.997)
25
当初
0% 0.978 0.953
(0.953×1.0)(注7)
-2.5% 1.00.983
(0.983×1.0)
25
下期
0.968(注8)   -1.57%
 
26 0.4% 0.961(注9)
0.956
(0.953×1.003)(注10)
-0.5% 1.003
(昭和13年4月2日以降生まれは1.001)(注11)
0.986
(0.983×1.003)
(昭和13年4月2日以降生まれは0.984)
27 2.7% 0.970
(0.956×1.014)
+に転換 1.014(注12) 1,000
(0.986×1.014)
 (昭和13年4月2日以降生まれは0.998(0.984×1.014))

28 0.8%     1.000 1,000
 (昭和13年4月2日以降生まれは0.998)

29 -0.1%     0.999 0.999
 (昭和13年4月2日以降生まれは0.997)

30 0.5%     1.000(注13) 0.999
 (昭和13年4月2日以降生まれは0.997)
31 1.0%     1.001(注14) 1000
(昭和13年4月2日以降生まれは0.998)

2
0.5%     1.002 1.002
 (昭和13年4月2日以降生まれは1.000)

3
0.0%     0.999 1.001
 (昭和13年4月2日以降生まれは0.999)

4
-0.2%
      0.996 0.997
 (昭和13年4月2日以降生まれは0.995)

5
2.5%       1.022
(既裁定者1.019)
1.016
 (昭和13年4月2日以降生まれは1.014)

備1:たとえば平成12年度の年金額は11年の物価水準((10年との比較)によって改定の要否を判断する。
備2:年金額の本来水準とは、平成11年度を1.0とし、12年度から16年度までは、前年度値×物価変動率
 17年度以降は、前年度値×再評価率としたときの年金額(物価スライド特例水準とこの水準との差が常に問題になっている。
備3:この乖離率はあくまでも昭和12年4月1日以前生まれの者に対する値である。
 詳しくはこちらを
備4:厚生年金保険法においては、年金額の改定は再評価率の改定により行うが、この再評価率の改定は国民年金法における改定率の改定とほぼ同様の仕組みで行われる。条文規定はこちらを
備5:従前額保障改定率は、11年度値1.031とし、12年度から16年度までは、前年度値×物価変動率
   17年度以降は、前年度値×既裁定者の改定率(ここで、1.031とは6年度を基準とした11年度の物価水準)
注1:特例措置により物価スライドは実施せず。
注2:物価が上昇した場合は、改定せず。
注3:物価は下がったが、改定された至近年度18年度(17年の物価水準)よりもまだ0.3%高いので改定せず。
注4:物価が下落し、改定された至近年度18年度(17年の物価水準)より0.4%ダウンとなったので、0.4%ダウンの改定。
注4':物価が下落し、改定された至近年度23年度(22年の物価水準)より0.3%ダウンとなったので、0.3%ダウンの改定
注5:物価は上がったが、賃金上昇率の方が少なかったので、賃金で改定(19年度は0.0%、21年度は0.9%)
注6:物価も賃金も下がったが、物価の下がり方の方が小さいので、物価で改定。
注7:賃金が下がったが、物価はそれほどは下がらなかった(実際にはかわらず)ので、物価で改定(不変) 
注8:物価スライド特例による年金額が本則による年金額より2.5%高いので、これを3年かけて本則の水準にそろえるため、強制的に物価スライド率を1%さげた。
注9:25年度当初時点での物価スライド特例による年金額が本則による年金額より2.5%高いので、これを3年かけて本則の水準にそろえるため、強制的にH26年度の乖離率を1%縮小((だし、本則の年金水準が0.3%上がった(乖離率が0.3%縮小した)ので、物価スライド特例による年金額は0.7%のダウンに)
注10:賃金も物価も上がったが、賃金の上がり方が物価の上がり方よりも小さいので、名目賃金変動率に応じた改定となり0.3%アップ
注11:昭和13年4月2日以後生まれの者については、このままだと、本来水準の年金額の方が物価スライド特例水準の年金額よりも0.2%上回ることになるため、物価スライド特例水準と同じレベルにするため、再評価率にみなし調整率0.998をかけて調整する。
 すなわち、この年代の者の再評価率の改定は、他の年代の者にくらべてさらに0.998をかけた値とする。従前額改定保障率についても同様。(この経緯の詳細はこちらを)
注12:再評価率は1,023となるところ、スライド調整率0.991による調整により、1.014に。
注13:賃金ダウン、物価アップのため、年金額は改定されず。(ただし、その後の法改正により、この特例は以後、削除となった)
注14:再評価率は1,006となるところ、スライド調整率0.995による調整により、1.001に。