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標準報酬月額・標準賞与額

 
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 標準報酬月額、標準賞与額は健康保険料納付のベースになる重要な数値であり、中でも標準報酬月額は出産手当金などの給付のベースにもなっている。
 なお、厚生年金保険法においても標準報酬月額、標準賞与額はほぼ同様(いずれも上限額が違うだけ)に取り扱われている。ただし、厚生年金保険法では標準賞与額も年金額など給付のベースになっている。
 ここでは、健康保険法と厚生年金保険法の両方について、学習する。
 
1.標準報酬月額(健康保険法40条)
 「標準報酬月額は、被保険者の報酬月額に基づき、等級区分(次項の規定により等級区分の改定が行われたときは、改定後の等級区分)によって定める」
⇒ 現時点では50等級区(58,000円から1,390,000円まで)(H28.4.1から)
1’標準報酬月額(厚生年金保険法20条)
 「同文」
⇒ 現時点では32等級区(88,000円から650,000円まで) 
 
   基礎知識
 毎月の保険料を、その月の報酬額に保険料率をかけた額で決めるとなると、毎月変動することになって取扱い業務が煩雑になる。
 そこで、ある幅をもった等級区分を設定し、その区分内の小さな変動は無視する扱いとする。 たとえば、報酬額が175,000円から185,000円の間にある者は、11級で標準報酬月額は180,000円として保険料を 決める。
 この標準報酬月額を定める方法に資格取得時決定定時決定随時改定育児休業終了時改定保険者算定があり、これらによって等級が変わらない限り、保険料も変わらない。
 報酬月額の届出(健康保険法施行規則25条)
 「毎年7月1日現に使用する被保険者の報酬月額に関する届出は、7月10日までに、健康保険被保険者報酬月額算定基礎届を 日本年金機構又は健康保険組合に提出することによって行うものとする。ただし、
 @6月1日から7月1日までの間に被保険者資格を取得した者、
 A7月から9月までのいずれかの月から標準報酬月額を改定され、又は改定されるべき被保険者が除く)以下略」
⇒ 算定基礎届は定時決定のために使用される。
 @の場合は資格取得時決定、Aの場合は随時改定又は育児休業終了時改定が優先されるため、定時決定は行なわれない。よって、算定基礎届も不要。
報酬月額の届出(厚生年金保険法施行規則18条)
 届出様式は「厚生年金保険被保険者報酬月額算定基礎届」となっているが、健康保険の算定基礎届と同じ様式である。被保険者が同時に 全国健康保険協会管掌健康保険の 被保険者であれば、それまでの両方の標準報酬月額を併記すればよい。
 注意 事業主が船舶所有者である場合は7月10日まで一斉に届け出ることは不要。
2.標準報酬月額の弾力的調整(健康保険法40条)
 「2項 毎年3月31日における標準報酬月額等級の最高等級に該当する被保険者数の被保険者総数に占める割合が100分の1.5を超える場合において、その状態が継続すると認められるときは、その年の9月1日から、政令で、当該最高等級の上に更に等級を加える標準報酬月額の等級区分の改定を行うことができる。
 ただし、その年の3月31日において、改定後の標準報酬月額等級の最高等級に該当する被保険者数の同日における被保険者総数に占める割合が100分の0.5を回ってはならない」
⇒50等級にいる人が全体の1.5%超過となってしかもこれが継続すると認められるときは、51等級を作っても良いが、該当者が0.5%もいないほど高い水準にしてはいけないということ。
 「3項 厚生労働大臣は、前項の政令の制定又は改正について立案を行う場合には、社会保障審議会の意見を聴くものとする」
 標準報酬月額の弾力的調整(厚生年金保険法20条2項)
 「毎年3月31日における全被保険者の標準報酬月額を平均した額の100分の200に相当する額が標準報酬月額等級の最高等級の標準報酬月額を超える場合において、その状態が継続すると認められるときは、その年の9月1日から、健康保険法の等級区分を参酌して、政令で、当該最高等級の上に更に等級を加える標準報酬月額の等級区分の改定を行うことができる」
⇒全厚生年金被保険者の標準報酬月額の年度末平均値について、平成27年度末は319,721円でその2倍値639,442円が当時の厚生年金保険法の標準報酬月額最高等級の62万円を超え、その後もこの傾向が続き令和2年度末まで至ったので、令和2年9月より、健康保険法の35等級(65万円)を参酌して、32等級(65万円)が設けられることになった。 
 
3.標準報酬月額算定の特例:保険者算定(44条)
 「保険者等は、被保険者の報酬月額が、定時決定、資格取得時決定、育児休業等を終了した際の改定若しくは産前産後休業を終了した際の改定の規定によって算定することが困難であるとき、又は、算定した額が著しく不であると認めるときは、これらの規定にかかわらず、その算定する額を当該被保険者の報酬月額とする」  
⇒ その算定する額とは、保険者が算定した額のこと。
 「3項 同時に二以上の事業所で報酬を受ける被保険者について報酬月額を算定する場合においては、各事業所について算定した額の合算額をその者の報酬月額とする」
 (注) 合算するのは報酬月額であって、合算後の報酬月額に基づき、標準報酬月額を算定する。
 保険者算定の例(H6.11.9保発124等、H15.2.27庁保険発5)
定時決定  4、5、6月の3か月間において、3月分以前の給料の遅配分を受け、又は、さかのぼった昇給によって数月分の差額を一括して受ける等、通常受けるべき報酬以外の報酬を当該期間に受けたとき  
 4、5、6月いずれかの月において低額の休職給を受けた場合  
 4、5、6月のいずれかの月においてストライキによる賃金カットがあった場合  
 4、5、6月のいずれかの月も報酬支払基礎日数17日(一定の短時間労働被被験者の場合は11日)未満の場合
 4、5、6月 のいずれかの月も欠勤で報酬が全くない場合
⇒ 3か月とも低額である場合は従来の報酬月額。そうでない場合は、9月以降において受けるべき報酬月額(たとえば、4,5,6月のうち正常に支給を受けた額等から推定)
随時改定  昇給が遡及しあたtめ、それに伴う差額支給によって報酬月額に変動が生じた場合
 ⇒ 随時改定されるべき月以降において受けるべき報酬月額の値をもってする。
休業手当  一時帰休、自宅待機、休業等により休業手当のみが支給された場合
 ⇒ 休業手当を報酬月額とする。
 ⇒ 一時帰休等が解消されたときは随時改定
休職中  休職期間中に、給与の支給がなされる場合は、求職前の標準報酬月額による。(S27.1.25保文発420)
3.標準賞与額(45条)
 「保険者は、被保険者が賞与を受けた月において、その月に当該被保険者が受けた賞与額に基づき、これに千円未満の端数を生じたときは、これを切り捨てて、その月における標準賞与額を決定する。
 この場合において、当該標準賞与額が2百万円(標準報酬月額の等級区分の改定が行われたときは、政令で定める額)を超えるときは、これを2百万円(標準報酬月額の等級区分の改定が行われたときは、政令で定める額)とする」