発展講座 高年齢者雇用安定法

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 高年齢者雇用確保措置の実施及び運用に関する指針 (平成24年11月9日厚生労働省告示第560)
 高年齢者就業確保措置の実施及び運用に関する指針(令和2年10月30日、厚生労働省告示351概要)
 
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 高年齢者雇用確保措置の実施及び運用に関する指針 (平成24年11月9日厚生労働省告示第560)
1 趣旨
 この指針は、高年齢者等の雇用の安定等に関する法律9条3項の規定に基づき、事業主がその雇用する高年齢者の65歳までの安定した雇用を確保するため講ずべき同条1項に規定する高年齢者雇用確保措置(定年の引上げ、継続雇用制度 (現に雇用している高年齢者が希望するときは、当該高年齢者をその定年後も引き続いて雇用する制度をいう) の導入又は定年の定めの廃止をいう) に関し、その実施及び運用を図るために必要な事項を定めたものである。

2 高年齢者雇用確保措置の実施及び運用
 65歳未満の定年の定めをしている事業主は、高年齢者雇用確保措置に関して、労使間で十分な協議を行いつつ、次の1から5までの事項について、適切かつ有効な実施に努めるものとする。

(1)高年齢者雇用確保措置
 事業主は、高年齢者がその意欲と能力に応じて65歳まで働くことができる環境の整備を図るため、法に定めるところに基づき、65歳までの高年齢者雇用確保措置のいずれかを講ずる。

(2) 継続雇用制度
 継続雇用制度を導入する場合には、希望者全員を対象とする制度とする。
 この場合において法9条2項に規定する特殊関係事業主により雇用を確保しようとするときは、事業主は、その雇用する高年齢者を当該特殊関係事業主が引き続いて雇用することを約する契約を、当該特殊関係事業主との間で締結する必要があることに留意する。
 
 心身の故障のため業務に堪えられないと認められること
、勤務状況が著しく不良で引き続き従業員としての職責を果たし得ないこと等就業規則に定める解雇事由又は退職事由 (年齢に係るものを除く) に該当する場合には、継続雇用しないことができる。
 就業規則に定める解雇事由又は退職事由と同一の事由を、継続雇用しないことができる事由として、解雇や退職の規定とは別に、就業規則に定めることもできる。
 また、当該同一の事由について、継続雇用制度の円滑な実施のため、労使が協定を締結することができる。
 なお、解雇事由又は退職事由とは異なる運営基準を設けることは高年齢者雇用安定法の改正の趣旨を没却するおそれがあることに留意する。
  ただし、継続雇用しないことについては、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であることが求められると考えられることに留意する。  

3 経過措置
 改正法の施行の際、既に労使協定により、継続雇用制度の対象となる高年齢者に係る基準を定めている事業主は、改正法附則3項の規定に基づき、当該基準の対象者の年齢を令和7年3月31日まで段階的に引き上げながら、当該基準を定めてこれを用いることができる。

4 賃金・人事処遇制度の見直し
 高年齢者雇用確保措置を適切かつ有効に実施し、高年齢者の意欲及び能力に応じた雇用の確保を図るために、賃金・人事処遇制度の見直しが必要な場合には、次の⒧から⑺までの事項に留意する。
 ⒧年齢的要素を重視する賃金・人事処遇制度から、能力、職務等の要素を重視する制度に向けた見直しに努めること。
 この場合においては、当該制度が、その雇用する高年齢者の雇用及び生活の安定にも配慮した、計画的かつ段階的なものとなるよう努めること。
 ⑵継続雇用制度を導入する場合における継続雇用後の賃金については、継続雇用されている高年齢者の就業の実態、生活の安定等を考慮し、適切なものとなるよう努めること。

⑶短時間勤務制度、隔日勤務制度など、高年齢者の希望に応じた勤務が可能となる制度の導入に努めること。

⑷継続雇用制度を導入する場合において、契約期間を定めるときには、高年齢者雇用確保措置が65歳までの雇用の確保を義務付ける制度であることに鑑み、65歳前に契約期間が終了する契約とする場合には、65歳までは契約更新ができる旨を周知すること。
 また、むやみに短い契約期間とすることがないように努めること。

⑸職業能力を評価する仕組みの整備とその有効な活用を通じ、高年齢者の意欲及び能力に応じた適正な配置及び処遇の実現に努めること。

⑹勤務形態や退職時期の選択を含めた人事処遇について、個々の高年齢者の意欲及び能力に応じた多様な選択が可能な制度となるよう努めること。
 この場合においては、高年齢者の雇用の安定及び円滑なキャリア形成を図るとともに、企業における人事管理の効率性を確保する観点も踏まえつつ、就業生活の早い段階からの選択が可能となるよう勤務形態等の選択に関する制度の整備を行うこと。

⑺継続雇用制度を導入する場合において、継続雇用の希望者の割合が低い場合には、労働者のニーズや意識を分析し、制度の見直しを検討すること。

5 高年齢者雇用アドバイザー等の有効な活用
 高年齢者雇用確保措置のいずれかを講ずるに当たって、高年齢者の職業能力の開発及び向上、作業施設の改善、職務の再設計や賃金・人事処遇制度の見直し等を図るため、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構に配置されている高年齢者雇用アドバイザーや雇用保険制度に基づく助成制度等の有効な活用を図る。 

 高年齢者就業確保措置の実施及び運用に関する指(令和2年10月30日、厚生労働省告示351概要)
第1 趣旨
 この指針は、高年齢者等の雇用の安定等に関する法律10条の2の44項の規定に基づき、事業主がその雇用する高年齢者(法9条2項の契約に基づき、当該事業主と当該契約を締結した特殊関係事業主に現に雇用されている者を含み、高年齢者等の雇用の安定等に関する法律施行規則4条の4に規定する者を除く)の65歳から70歳までの安定した雇用の確保その他就業機会の確保のため講ずべき法10条の2の4項に規定する高年齢者就業確保措置(定年の引上げ、65歳以上継続雇用制度(その雇用する高年齢者が希望するときは、当該高年齢者をその定年後等(定年後又は継続雇用制度の対象となる年齢の上限に達した後をいう)も引き続いて雇用する制度をいう)の導入、定年の定めの廃止又は創業支援等措置をいう)に関し、その実施及び運用を図るために必要な事項を定めたものである。

第2 高年齢者就業確保措置の実施及び運用
 65歳以上70歳未満の定年の定めをしている事業主又は継続雇用制度(高年齢者を70歳以上まで引き続いて雇用する制度を除く)を導入している事業主は、高年齢者就業確保措置に関して、労使間で十分な協議を行いつつ、次の1から5までの事項について、適切かつ有効な実施に努めるものとする。
1高年齢者就業確保措置
 事業主は、高年齢者がその意欲と能力に応じて70歳まで働くことができる環境の整備を図るため、法に定めるところに基づき、高年齢者就業確保措置のいずれかを講ずることにより65歳から70歳までの安定した就業を確保するよう努めなければならない。
 高年齢者就業確保措置を講ずる場合には、次の(1)から(4)までの事項に留意すること。
(1) 努力義務への対応
イ 継続雇用制度に基づいて特殊関係事業主に雇用されている高年齢者については、原則として、当該高年齢者を定年まで雇用していた事業主が高年齢者就業確保措置を講ずること。
 ただし、当該事業主と特殊関係事業主で協議を行い、特殊関係事業主が高年齢者就業確保措置を講ずることも可能であること。その際には、特殊関係事業主が高年齢者就業確保措置を講ずる旨を法10条の2の3項の契約に含めること。
ロ 一つの措置により70歳までの就業機会を確保するほか、複数の措置を組み合わせることにより65歳から70歳までの就業機会を確保することも可能であること。
(2) 労使間での協議
イ 高年齢者就業確保措置のうちいずれの措置を講ずるかについては、労使間で十分に協議を行い、高年齢者のニーズに応じた措置が講じられることが望ましいこと。
ロ 雇用による措置に加えて創業支援等措置を講ずる場合には、雇用による措置により努力義務を実施していることとなるため、創業支援等措置を講ずるに当たり、同条1項の同意を得る必要はないが、過半数労働組合等の同意を得た上で創業支援等措置を講ずることが望ましいこと。
ハ 高年齢者就業確保措置のうち複数の措置を講ずる場合には、個々の高年齢者にいずれの措置を適用するかについて、個々の労働者の希望を聴取し、これを十分に尊重して決定すること。
(3)対象者基準
イ 高年齢者就業確保措置を講ずることは、努力義務であることから、措置(定年の延長及び廃止を除く)の対象となる高年齢者に係る基準(対象者基準)を定めることも可能とすること。
ロ 対象者基準の策定に当たっては、労使間で十分に協議の上、各企業等の実情に応じて定められることを想定しており、その内容については原則として労使に委ねられるものであり、当該対象者基準を設ける際には、過半数労働組合等の同意を得ることが望ましいこと。

2 65歳以上継続雇用制度
 65歳以上継続雇用制度を導入する場合には、次の(1)から(4)までの事項に留意すること。
(1) 65歳以上継続雇用制度を導入する場合において法第10条の2第3項に規定する他の事業主により雇用を確保しようとするときは、事業主は、当該他の事業主との間で、当該雇用する高年齢者を当該他の事業主が引き続いて雇用することを約する契約を締結する必要があること。
(2)他の事業主において継続して雇用する場合であっても、可能な限り個々の高年齢者のニーズや知識・経験・能力等に応じた業務内容及び労働条件とすべきことが望ましいこと。
(3) 他の事業主において、継続雇用されることとなる高年齢者の知識・経験・能力に係るニーズがあり、これらが活用される業務があるかについて十分な協議を行った上で、(1)の契約を締結する必要があること。
(4) 心身の故障のため業務に堪えられないと認められること、勤務状況が著しく不良で引き続き従業員としての職責を果たし得ないこと等就業規則に定める解雇事由又は退職事由(年齢に係るものを除く)に該当する場合には、継続雇用しないことができること。
 就業規則に定める解雇事由又は退職事由と同一の事由を、継続雇用しないことができる事由として、解雇や退職の規定とは別に、就業規則に定めることもできること。また、当該同一の事由について、65歳以上継続雇用制度の円滑な実施のため、労使が協定を締結することができること。
 ただし、継続雇用しないことについては、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であることが求められると考えられること。

3 創業支援等措置
 創業支援等措置を講ずる場合には、次の(1)から(3)までの事項に留意すること。
(1)措置の具体的な内容
イ 法10条の2の2項の2号ロ又はハに掲げる事業に係る措置を講じようとするときは、事業主は、社会貢献事業を実施する者との間で、当該者が当該措置の対象となる高年齢者に対して当該事業に従事する機会を提供することを約する契約を締結する必要があること。
ロ 法第10条の2の2項の2号ハの援助は、資金の提供のほか、法人その他の団体が事務を行う場所を提供又は貸与すること等が考えられること。
ハ 法第10条の2の2項の2号に掲げる社会貢献事業は、社会貢献活動その他不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与することを目的とする事業である必要があり、特定又は少数の者の利益に資することを目的とした事業は対象とならないこと。
 また、特定の事業が不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与することを目的とする事業に該当するかについては、事業の性質や内容等を勘案して個別に判断されること。
ニ 雇用時における業務と、内容及び働き方が同様の業務を創業支援等措置と称して行わせることは、法の趣旨に反するものであること。
(2) 過半数労働組合等の合意に係る留意事項
イ 過半数労働組合等に対して、創業支援等措置による就業は労働関係法令による労働者保護が及ばないことから、高年齢者等の雇用の安定等に関する法律施行規則4条の5の1項に規定する創業支援等措置の実施に関する計画(実施計画)に記載する事項について定めるものであること及び当該措置を選択する理由を十分に説明すること。
ロ 実施計画に記載する事項については、次に掲げる点に留意すること。
 創業支援等措置は、労働契約によらない働き方となる措置であることから、個々の高年齢者の働き方についても、業務の委託を行う事業主が指揮監督を行わず、業務依頼や業務従事の指示等に対する高年齢者の諾否の自由を拘束しない等、労働者性が認められるような働き方とならないよう留意すること。(その他は略)
ハ 実施計画に記載した内容に沿って、個々の高年齢者の就業機会が確保されるよう努める必要があること。