5 労働基準法 解答の解説  Tome塾Homeへ
5A  12-4B14-3C14-3D15-3C16-5A16-5C17-7B18-5E19-3C23-6E26-3エ28-6A,B,C,D,E13-2選択 
5B  12-4D12-4E13-5D13-6C13-6D16-5B18-5B19-3D19-3E22-4E23-4E25-3B28-3C29-1E30-ABCDE令元ー6D令2-6D令4-7C令4-7D
 一般18-2C令3-2選択
5C  13-5B14-1B15-1A15-1E17-3B19-1D22-7B22-7C23-4D25-3A
5D  11-3A11-3E12-5B12-7A12-7B12-7C13-5A17-3A17-3C18-5D22-4D22-7A24-5D24-5E25-3E27-6ウ29-4A29-4E令2-6C令4-3B令4-3C令4-3D令4-3E  
 13選択14選択20-3選択
5E  11-3C11-7A11-7B12-5A13-5E13-7A13-7B13-7C14-4D15-6A16-5E17-2A17-3E17-7C18-3D18-3E18-5C18-6A20-4C20-4E21-6A21-6B21-6C21-6D21-6E22-4C23-4A23-4B23-4C24-5A24-5B24-5C25-3C26-5E27-6エ27-6オ28-4E29-1C29-1D30-1ウ令4-7A令5-2ア令5-2イ令5-2ウ令5-2エ令5-2オ
23-1選択24-2選択25-1選択26-2選択
13

 労働基準法第37条の規定に基づき支払うべき時間外、休日及び深夜の割増賃金の基礎となる賃金には、家族手当、通勤手当、(別居手当)、子女教育手当、住宅手当、臨時に支払われた賃金、1か月を超える期間ごとに支払われる賃金は算入しなくともよい。
[解説]37条5項に、
 「割増賃金の基礎となる賃金には、家族手当、通勤手当その他厚生労働省令で定める賃金(別居手当、子女教育手当、住宅手当、臨時に支払われた賃金、1箇月を超える期間ごとに支払われる賃金)は算入しない」とある
15
3C
 通達(S23.3.17基発461号)によると、
 「37条が割増賃金の支払を定めているのは、当然に通常の労働時間に対する賃金を支払うべきことを前提とするものであるから、月給又は日給の場合であっても、時間外労働についてその労働時間に対する通常の賃金を支払わねばならない」
 すなわち、時間外労働に対しては原則として、通常の賃金×(1+割増率)×時間外労働時間数を支払わなければならない。
28
6




 割増賃金について規定する37条では、「通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の2割5分以上5割以下の範囲内で政令で定める率以上で計算した割増賃金を支払わなければならない」とあり、これを受けて、割増賃金の計算の基礎となる賃金の求め方が、施行規則19条に定められている。
 本肢の場合は、月給制であるから、その4号に「月給の額を月における所定労働時間数(月によって所定労働時間数が異る場合には、1年間における1月平均所定労働時間数)で除した金額」とするとある。
 要するに、割増賃金の計算の基礎となる1時間当たりの賃金額=月給の額/「1月当たりの通常(所定)の労働時間」である。
 ただし、1月当たりの通常(所定)の労働時間といっても、大の月や小の月あるいは祭日その他の公休日の有無の関係上、月毎には多少異なるので、その場合は1月当たりの平均労働時間をとりなさいということ。
 本肢の場合は、年間所定労働日数が240日と決まっているので、これを12で割れば、1月当たりの平均所定労働日数(20日)が決まる。
 また、所定労働時間は午前9時から午後5時までとあるものの、正午から1時間は休憩時間とあるので、1日当たりの所定労働時間は7時間である。
 よって、割増賃金の計算の基礎となる1時間当たりの賃金額=月給の額(30万円)/「1月当たりの通常(所定)の労働時間」(240日/12(=20日)×7時間)
A:計算対象月の所定労働日数は21日であるが、他の月はこれと異なることがあるので、特定の月ではなく、1年平均の所定労働日数を採用すべき。(この方式だと、1時間当たりの賃金額が毎月異なることになる)
B:上記Aと同じ。また、1日当たりの所定労働時間も間違い。
C:計算対象月の歴日数を7で割って、1月当たりの週の数を求め、これに1週間当たりの労働時間40時間を掛けたものと思われるが、見当違い。
E:1年の歴日数365日を7で割り、さらに12で割って、1月当たりの週の数を求め、これに1週間当たりの労働時間40時間を掛けたものと思われるが、見当違い。
16
5C
 施行規則19条1項6号により、
 「出来高払制その他の請負制によって定められた労働者の場合は、その賃金算定期間(賃金締切日がある場合には、賃金締切期間)において出来高払制その他の請負制によって計算された賃金の総額を、当該賃金算定期間における総労働時間数で除した金額を、割増賃金の基礎とする」
 「所定労働時間数」で割るのではなく、「実際の総労働時間数」で割る。
18
5E
 この問題はちょっと難しい。
 まず、割増賃金の基礎となる賃金の計算方法については、過去問16-5Cの通りで、「賃金の総額を賃金算定期間における総労働時間数で除した金額」であり、この点は正しい。
 通常の労働者であれば、時間外手当における1時間当たりの賃金は、「通常支払われる賃金+割増賃金」、すなわち、通常の賃金×(1+割増率)となる。
 ところが、出来高払制その他の請負制によって定められた労働者に対しては、次のような通達(H11.3.31基発168がある。
 「問:出来高払制その他の請負制によって定められた労働者に対しては、施行規則19条1項6号により求めた賃金に延長労働時間数を乗じた金額の12割5分を支払うべきであるか、2割5分で差し支えないか?
 答:見解後段の通り」
者の時間外労働については、割増賃金だけを支払えばよく、根っこの100%は支払う必要がない。
理由は、出来高払賃金や請負賃金の中に、すでに時間外分も見込んだものが入っているから、あとは延長時間に対する最低限度の保障に相当する分だけでよい。
12
4B
 通達(S23.11.22基発1681号)によると、
 「「ある作業中に、やむを得ない事情により特殊な危険作業(例えば高圧電流の通じる線を取り扱う作業)に従事する場合、これに対してその日は特に危険作業手当を支給することになっているが、 これはその労働者の通常の労働日に対する賃金とは関係のない臨時的なものと考えられるので、割増賃金の基礎となる賃金に算入しなくとも差し支えないと思うが如何」という質問に対する回答として、
 「危険作業が32条(労働時間)及び40条(法定労働時間の特例)の労働時間外に及ぶ場合においては、(所定内時間帯に行えば支払うことになっている)危険作業手当てを、37条の割増賃金に算入して計算した割増賃金を支払わなければならない」
16
5A
 通達(S23.11.22基発1681号)にあるように、同通達とほとんど同文の問題である。
26
3エ

 割増賃金の算定基礎とならない賃金については、37条5項に、
 「時間外労働・休日労働及び深夜業の割増賃金の基礎となる賃金には、家族手当、通勤手当その他厚生労働省令で定める賃金は算入しない」とある通り。
 通勤手当が労働とは直接関係のない個人的事情に基づいて支払われる賃金であるからというのも、そのひとつの理由である。
 ただし参考ながら、細かい点についてはいろいろとあり、通達(S22.09.13発基17)によると、
 「家族手当、通勤手当、別居手当、子女教育手当は、名称にかかわらず実質によって判断すること」とあり、通勤手当に関しては、通達(S23.02.20基発297)に、
 「実際距離に応じて通勤手当が支給されるが、最低300円は距離にかかわらず支給されるような場合においては、実際距離によらない300円は割増賃金の基礎に算入するものと解してよい。
 ただし、通勤手当、家族手当等、割増賃金の基礎より除外し得るものを(あえて)算入することは使用者の自由である」としている。
14
3C
 通達(H11.3.31 基発170号)によると、
 「住宅の形態ごとに一律に定額で支給することとされているものは、37条の住宅手当には含まれない」
 すなわち、個々の住宅毎に実際に要する費用をベースに算定された住宅手当でないと、割増賃金の計算から除外できない。
 ⇒そもそも本来の住宅手当や家族手当などを割増賃金の計算から除外する趣旨は、属人性の強い手当(その人の身分や家族の状況に応じて支給する手当)を除外しようとすることにある。
 つまり同じ1時間の時間外労働をした場合の割増賃金の額が属人性に左右されるのは適当ではない、という判断に基づいているのだ。
 よって、いくつかの区分はあったとしても共通的に支給される手当であれば、その名称にかかわらず、割増賃金算定の対象となる。
19
3C
 前段については、割増賃金の算定基礎とならない賃金について規定した37条5項に、
 「割増賃金の基礎となる賃金には、家族手当、通勤手当その他厚生労働省令で定める賃金は算入しない」とあり、この点は正しい。
 しかし後段については通達(H11.3.31 基発170号)によると、
 「住宅の形態ごとに一律に定額で支給することとされているものは、住宅手当には含まれない」
 すなわち、個々の住宅毎に実際に要する費用をベースに算定された住宅手当でないと、割増賃金の計算から除外できない。 
23
6E
 前段については、割増賃金の算定基礎とならない賃金について規定した37条5項に、
 「割増賃金の基礎となる賃金には、家族手当、通勤手当その他厚生労働省令で定める賃金は算入しない」とあり、この点は正しい。
 しかし後段については、通達(S22.11.5基発231)において、
 「扶養家族数又はこれを基礎とする手当ならびにこの手当額を基準として算出したその他の手当は名称のいかんを問わず家族手当として取扱う。
 独身者に対していくばくかが支払われているときは、その手当は家族手当とは関連のないものであり、又扶養家族ある者に対し、その家族数に関係なく一律に支給されている手当は家族手当とはみなされないから、割増賃金の基礎にいれるべきである」
 ⇒そもそも本来の住宅手当や家族手当などを割増賃金の計算から除外する趣旨は、属人性の強い手当(その人の身分や家族の状況に応じて支給する手当)を除外しようとすることにある。
 つまり同じ1時間の時間外労働をした場合の割増賃金の額が属人性に左右されるのは適当ではない、という判断に基づいているのだ。
 よって、いくつかの区分はあったとしても共通的に支給される手当であれば、その名称にかかわらず、割増賃金算定の対象となる。
14
3D
 通達(H12.3.8基収78号)によると、
 「割増賃金算定の基礎から除外される賞与とは、支給額があらかじめ確定されていないものをいい、支給額が確定しているものは、これに当たらない。
 よって、年俸制で毎月払い部分と賞与部分を合計してあらかじめ年俸額が確定している場合は、賞与部分を含めた年俸額の12分の1を1か月平均の所定労働時間数で除した金額を算定基礎として、割増賃金を支払う必要がある」としている。
問題文にある「これらの賞与は、割増賃金の計算の基礎となる賃金から除外することはできない」とある部分については若干補足を要する。 
困ったことに、割増賃金算定の基礎から除外されるのは施行規則21条の通りであり、賞与という言葉は出てこない。
 しかしながら、「支給額が予め確定されていない賞与は臨時に支払われる賃金、1か月を超える期間ごとに支払われる賃金と同様に、割増し賃金の計算からは除外される」のは、
 24条2項において、
 「臨時に支払われる賃金、 賞与その他これに準ずるもので厚生労働省令で定める賃金は毎月1回以上支払わなくてもよい」とあることによる。
 そして、このときの賞与とは、
 「定期又は臨時に、原則として労働者の勤務成績に応じて支給されるものであって、その支給額が予め確定されてゐないものを云ふこと。定期的に支給され、且その支給額が確定してゐるものは、名称の如何にかゝはらず、これを賞与とはみなさないこと」(S22.9.13基発136)とされている。
 また、1か月を超える期間ごとに支払われる賃金の例としては、施行規則8条において、
 「1か月を超える期間の出勤成績によって支給される精勤手当など」があげられている。 
17
7B
 過去問(14-3D)の解説の通りで、通達((H12.3.8基収78号)により、
 「割増賃金算定の基礎から除外される賞与とは、支給額があらかじめ確定されていないものをいい、支給額が確定しているものは、これに当たらない。平均賃金も同様である」
 よって本肢の場合、年俸の16分の4の12分の1すなわち48分の1を月例給与である16分の1に加えて(年俸総額を12月で割ることと同じ)、割増賃金(および平均賃金)の算定の基礎としなければならない。
18
5B
 「使用者が、33条により災害時等の場合に行政官庁の許可を得て、又は36条により労使協定を行政官庁に届けて、時間外労働や休日労働をさせた場合には、割増賃金を支払わなければならない」というのが、37条の規定である。
 それでは、災害時等の場合でも行政官庁の許可を得ずに、又は労使協定を締結せずあるいは届出せずに、時間外労働や休日労働をさせた場合には、労働時間に関する規定の違反には該当したとしても、割増賃金の支払義務はないのではないか、といっているのである。
 つまりは、法に書いてないことで義務を課したり罰するのはおかしくはないか、と問うているのである。
 これについては、36条協定なしに時間外労働をさせて割増賃金を支払わなかった使用者に対して119条の罰則を適用したところ、これを不服として争った「小島撚糸事件」の最高裁判例(小島撚糸事件S35.7.14)がある。その判決文によれば、
 「法33条または36条所定の条件を充足した時間外労働ないしは休日労働に対して、使用者が割増賃金支払の義務あることは法37条1項の明定するところであるが、右条件を充足していない違法な時間外労働等の場合はどうであろうか。
 法はこの点明示するところがないが、適法な時間外労働等について割増金支払義務があるならば、
違法な時間外労働等の場合には一層強い理由でその支払義務あるものと解すべきは事理の当然とすべきであるから、法37条1項は右の条件が充足された場合たると否とにかかわらず時間外労働等に対し割増賃金支払義務を認めた趣意と解するを相当とする。
 そうだとすれば、右割増賃金の支払義務の履行を確保しようとする法119条1号の罰則は時間外労働等が適法たると違法たるとを問わず、適用あるものと解すべきは条理上当然である」
 すなわち、「法37条1項は所定の手続き条件が充足された場合たると否とにかかわらず、時間外労働等に対し割増賃金の支払義務があるとしている」
23
4E
 この問題は、過去問解説(18-5B)を知らないと、何を議論しているかがわからないかもしれない。
 割増賃金について規定した37条をよく読むと、
 「使用者が、33条(災害等による臨時の必要がある場合の時間外労働等)又は36条1項(時間外及び休日の労働)の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、・・・・割増賃金を支払わなければならない」とある。
 これを逆手にとって、行政官庁の許可を得ずに又は労使協定を締結せずあるいは届出せずに、時間外労働や休日労働をさせた場合には、労働時間に関する規定の違反には該当したとしても、割増賃金の支払義務はないのではないかと、最高裁まで争った小島撚糸事件というのがあったのだ。
 その結果は、「33条又は36条に規定する手続きを経ずして時間外又は休日の労働をさせた場合においても、使用者は、37条1項に定める割増賃金の支払い義務を免れない」とした。。

2
6D
  「労働基準法第37条は、「使用者が、第33条又は前条第1項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合」における割増賃金の支払について定めている」とあるのは、その通り。
 次に、「労働基準法第33条又は第36条所定の条件を充足していない違法な時間外労働ないしは休日労働」とある。
 この場合の、33条の所定の条件とは、「災害時等臨時の必要がある場合に時間外労働又は休日労働を行わせるためには、行政官庁の許可を受けること」、また36条の所定の条件とは、「災害時等でないときに、時間外労働又は休日労働を行わせるためには、労使協定を締結して行政官庁に届出ること」である。
 ところが、割増賃金の支払い義務について規定した37条には、先にものべたように、「33条又は36条1項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合において・・・・」とあるので、このような手続きをせずに、時間外労働や休日労働をさせた場合は、37条の適用はないのではないかと主張して、最高裁まで争った事案がある。
 その結果は、最高裁判例(小島撚糸事件S35.7.14)の判決文にあるように、「33条又は36条所定の条件を充足していない違法な時間外労働ないしは休日労働に対しても、使用者は37条1項により割増賃金の支払義務があり、その義務を履行しないときは119条1号の罰則の適用(37条違反により、6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金)を免れない」とした。

22
4E

 最高裁判例[割増賃金等事件}(H06.06.13)によると、
 「上告人らに支給された前記(毎月1日から末日までの間の月間水揚高に一定の歩合を乗じた金額を翌月の5日に支払うとする)歩合給の額が、上告人らが時間外及び深夜の労働を行った場合においても増額されるものではなく、
 通常の労働時間の賃金に当たる部分と時間外及び深夜の割増賃金に当たる部分とを判別することもできないものであったことからして、
 この歩合給の支給によって、上告人らに対して法37条の規定する時間外及び深夜の割増賃金が支払われたとすることは困難なものというべきであり、
 被上告人は、上告人らに対し、本件請求期間における上告人らの時間外及び深夜の労働について、法37条及び労働基準法施行規則19条1項6号の規定に従って計算した額の割増賃金を支払う義務がある」としている。
 すなわち、完全歩合制であろうとなかろうと、時間外労働及び深夜労働を行った場合には法令で定められ率による増額がなされなければならず、その際、通常の労働時間の賃金と割増賃金の部分とを判別することができるものでなければ、支払義務を果たしたとはいえないとした。
 ここで、施行規則19条1項6号とは、
 「出来高払制その他の請負制によって定められた賃金の場合は、その賃金算定期間において出来高払制その他の請負制によって計算された賃金の総額を当該賃金算定期間における総労働時間数で除した金額を、割増賃金額の基礎とすること」

3
2
選択
 最高裁判所は、歩合給の計算に当たり売上高等の一定割合に相当する金額から残業手当等に相当する金額を控除する旨の定めがある賃金規則に基づいてされた残業手当等の支払により労働基準法第37条の定める割増賃金が支払われたといえるか否かが問題となった事件において、次のように判示した。
 「使用者が労働者に対して労働基準法37条の定める割増賃金を支払ったとすることができるか否かを判断するためには、割増賃金として支払われた金額が、(B)通常の労働時間の賃金に相当する部分の金額を基礎として、労働基準法37条等に定められた方法により算定した割増賃金の額を下回らないか否かを検討することになるところ、その前提として、労働契約における賃金の定めにつき、(B)通常の労働時間の賃金に当たる部分と同条の定める割増賃金に当たる部分とを判別することができることが必要である[…(略)…]。
 そして、使用者が、労働契約に基づく特定の手当を支払うことにより労働基準法37条の定める割増賃金を支払ったと主張している場合において、上記の判別をすることができるというためには、当該手当が時間外労働等に対する対価として支払われるものとされていることを要するところ、当該手当がそのような趣旨で支払われるものとされているか否かは、当該労働契約に係る契約書等の記載内容のほか諸般の事情を考慮して判断すべきであり[…(略)…]、その判断に際しては、当該手当の名称や算定方法だけでなく、[…(略)…]同条の趣旨を踏まえ、C)当該労働契約の定める賃金体系全体における当該手当の位置付け等にも留意して検討しなければならないというべきである」
 最高裁判例[賃金請求事件(いわゆる国際自動車事件)(R02.03.30)からの出題である。
 同社の賃金規則によると、
@(売上高―ある一定経費)×歩合率の計算
A時間外勤務手当、深夜勤務手当、休日出勤手当など手当金の計算
 そして、通常は@+Aを支給するところ、@―Aを歩合給とし、これにAを割増金と称して加えた額を支給することになっていたようである。
B:37条に定める割増賃金を支払ったとすることができるか否かを判断するためには、(最高裁判例[割増賃金等事件}(H06.06.13)]にもあるように、
 「労働契約における賃金の定めにつき、(B)通常の労働時間の賃金に当たる部分と同条の定める割増賃金に当たる部分とを判別することができることが必要である」
C:使用者が、労働契約に基づく特定の手当を支払うことにより37条の定める割増賃金を支払ったと主張している場合において、上記の判別をすることができるというためには、当該手当が時間外労働等に対する対価として支払われるものとされていることを要し、労働契約書等の記載内容のほか諸般の事情を考慮して判断すべきであって、当該手当の名称や算定方法だけでなく、同条の趣旨を踏まえ、(C)当該労働契約の定める賃金体系全体における当該手当の位置付け等にも留意して検討しなければならないというべきである。
⇒(C)については、法令等に関する知識というよりも国語力の問題である。
 つまり、本質的には歩合給に問題があるが、法による規制が明らかな割増賃金の不払いで争ったともいえる。
   結局、同判例の判決文の結論は、「本件賃金規則の定める上記の仕組みにおける歩合給(@−A)には、その一部に時間外労働等に対する対価として支払われるものが含まれているとしても、その実質において、通常の労働時間の賃金である歩合給として支払われるべき分を相当程度含んでいるものと解さざるを得ない。
 そして、割増金として支払われる賃金のうちどの部分が時間外労働等に対する対価に当たるかを判別することはできないこととなる。
 したがって、被上告人の上告人らに対する割増金の支払により、労働基準法37条の定める割増賃金が支払われたということはできない。
 そうすると,本件においては,Aの割増金は,割増賃金に当たらず,通常の労働時間の賃金に当たるものとして,労働基準法37条等に定められた方法により上告人らに支払われるべき割増賃金の額を算定すべきである。
⇒結局、割増金と称して支給していた金額までも(その一部に時間外割増賃金が含まれていたかもしれないが)通常の労働時間の賃金であるとされ、それを加えた賃金に割増率を掛けた時間外手当の支払いが要求された。
 なお、この判決文は原審差し戻しであって、最終決着にはまだ至っていない。


7C
  年俸制における時間外労働割増賃金については、最高裁判例{地位確認等請求事件(H29.07.07)}によると、
 「労働基準法37条が時間外労働等について割増賃金を支払うべきことを使用者に義務付けているのは,使用者に割増賃金を支払わせることによって,時間外労働等を抑制し,もって労働時間に関する同法の規定を遵守させるとともに,労働者への補償を行おうとする趣旨によるものであると解される。
 同条の上記趣旨によれば,割増賃金をあらかじめ基本給等に含める方法で支払う場合においては,上記の検討の前提として,労働契約における基本給等の定めにつき,通常の労働時間の賃金に当たる部分と割増賃金に当たる部分とを判別することができることが必要であり,上記割増賃金に当たる部分の金額が労働基準法37条等に定められた方法により算定した割増賃金の額を下回るときは,使用者がその差額を労働者に支払う義務を負うというべきである。
 事実関係等によれば,上告人と被上告人との間においては,本件時間外規程に基づき支払われるもの以外の時間外労働等に対する割増賃金を年俸に含める旨の本件合意がされていたものの,このうち時間外労働等に対する
割増賃金に当たる部分は明らかにされていなかったというのである。
 そうすると,本件合意によっては,上告人に支払われた賃金のうち時間外労働等に対する割増賃金として支払われた金額を確定することすらできないのであり,上告人に支払われた年俸について,通常の労働時間の賃金に当たる部分と割増賃金に当たる部分とを判別することはできない。
 したがって,被上告人の上告人に対する年俸の支払により,上告人の時間外労働及び深夜労働に対する割増賃金が支払われたということはできない」とした。
 参考までに、この医療法人の時間外規程は,・時間外手当の対象となる業務は,原則として,病院収
入に直接貢献する業務又は必要不可欠な緊急業務に限ること,・通常業務の延長とみなされる時間外業務は,時間外手当の対象とならないこと等とあり、
 本件時間外規程に基づき支払われるもの以外の時間外労働等に対する割増賃金について,年俸に含まれることが合意されていたが,上記年俸のうち時間外労働等に対する割増賃金に当たる部分は明らかにされていなかった。
  また、実際に支払われた時間外手当においても、深夜労働を理由とするものはあったが、時間外労働を理由とするものはなかった。
13
6C
 「遅刻した分だけ残業させたとしても、1日の労働時間が法定労働時間を超えていなければ、割増賃金の支払いは要さない」(H11.3.31基発168号)
 本肢の場合、休憩時間を除いた労働時間は8時間であるので、法定労働時間である8時間を超過していないので、割増賃金を支払う必要はない。


18
2C
 深夜業については37条4項により、
 「午後10時から午前5時までの間で労働させた場合においては、その時間の労働については、2割5分以上の率の割増賃金を支払わなければならない」とある。
 これは時間外労働の有無とは関係なく、深夜帯に労働させれば必ず発生するものであり、本肢の場合、この時間帯の労働時間7時間については、2割5部以上の深夜割増賃金を支払う義務がある。
 一方、あとの1時間であるが、全体の労働時間が8時間であるから、1日あたりの法定労働時間8時間を超えて労働させたわけではないので、いわゆる2割5部以上の時間外割増賃金を支払う義務は発生しない。
 ただし、所定労働時間7時間を1時間超過しているので、1時間分の賃金は余分に支払う必要がある。この分も時間外手当であるが、37条による割増賃金とはいわないことに注意を。
それにしても、まことにお粗末な問題である。
労働基準法によれば、6時間を超えて労働させれば45分以上の休憩を与えないといけない。本肢では、就業規則で「所定内労働時間が、午後10時から午前5時までと定められている」とあるが、休憩時間はどこにいったのであろうか。どこかこの間に休憩時間があるとすれば、以降の労働時間数は皆んなウソということになる。 困った問題だ。
13
6D
 変形労働時間制を採用していない場合は、労働時間が1週40時間、1日8時間いずれかを超過していないかチエックする必要がある。
 本肢の場合、月曜日、火曜日、木曜日に1日当たり労働時間が8時間を超過しているので、これらの日について割増賃金を支払う必要がある。  
13
5D
 通達(S25.9.14基収2983号)によると、
 「使用者の具体的に指示した仕事が、客観的にみて正規の勤務時間ではなされ得ないと認められる場合のごとく、超過勤務の黙示の指示によって、法定労働時間を超えて勤務した場合には、時間外労働となる」
12
4E
 割増賃金支給対象となる休日についての通達(S63.3.14基発150)によると、
 「割増賃金の対象となる休日は労基法35条の休日(すなわち、毎週少くとも1回の休日又は4週間を通じ4日以上の休日)のみである。
 ただし、35条の休日以外の休日の労働により週の法定労働時間を超える場合には、時間外労働の割増賃金(2割5分以上)の支払を要する」
 つまり、法定休日をどの日にするか就業規則などで定めておくことが望ましいが、定めてない場合は、その日を休日としないと「1週間に1日」あるいは「4週間に4日」に違反する日が法定休日であり、その日に労働させた場合が「休日労働」になる。
 本肢の場合、例えば 土・日が所定休日であるのに、その2日とも休日労働させた場合、その土日が同じ週にあれば、
 最初の土曜の場合に休日を与えなくても後の日曜に法定休日を与えればそれでよいはずである。
 しかるに、その日曜日も労働させたのであるから、日曜日のみが法定休日となる。
 よって、「休日労働にとして3割5分以上の割増賃金の支払いが必要とされるのはそのうちの1日(日曜日)のみであり、残る1日(土曜日)の賃金については、もし1週40時間を超えておれば、2割5分以上の割増賃金、超えていなければ割増賃金は不要であるが、就業規則の定め等当事者の合意でそれ以上の賃金を支払ってもよい」
 なお、1週の初めは日曜日が通常であるから(月曜開始と定めても構わないが)、土・日と2日連続で労働しても、別の週になるのでそれだけでは法定休日労働は発生しない。
 法定休日についてはこちらも参照のこと


6D
 本肢は、時間外手当を月ごとに実績に基づいて計算し、支払うにではなく、予め定めた定額によって支払う方式に関する問題である。
 訴えたのは、ある薬剤師で、時間外手当のかわりに、時間外労働30時間分として、毎月定額の業務手当が支給されていた。しかしながら、実際の時間外労働時間の把握が不十分であったことなどから、このみなし時間外手当は無効として残業代を請求する訴訟をおこした。
 これに対する最高裁判例{損害賠償請求事件 (H30.07.19)}によれば、
 「(原審では)いわゆる定額残業代の支払を法定の時間外手当の全部又は一部の支払とみなすことができるのは,・・・・要因がない場合に限られる。
 
本件の場合は、業務手当を上回る時間外手当が発生しているか否かを被上告人が認識することができないものであり,業務手当の支払を法定の時間外手当の全部又は一部の支払とみなすことはできないとしているが、原審の上記判断は是認することができない」とある。
 つまり、問題文は、最高裁が否定した内容である。
 肝心の最高裁の判断によれば、「割増賃金の額は,労働基準法37条等に定められた方法により算定された額を下回らない額の割増賃金を支払うことを義務づけるにとどまるものと解され,労働者に支払われる基本給や諸手当にあらかじめ含めることにより割増賃金を支払うという方法自体が直ちに同条に反するものではなく,使用者は,労働者に対し,雇用契約に基づき,時間外労働等に対する対価として定額の手当を支払うことにより,同条の割増賃金の全部又は一部を支払うことができる。
 雇用契約においてある手当が時間外労働等に対する対価として支払われるものとされているか否かは,雇用契約に係る契約書等の記載内容のほか,具体的事案に応じ,使用者の労働者に対する当該手当や割増賃金に関する説明の内容,労働者の実際の労働時間等の勤務状況などの事情を考慮して判断すべきであり、原審が判示するような事情が認められることを必須のものとしているとは解されない」とした。
 そして、本件の場合についての結論として、「本件雇用契約に係る契約書及び採用条件確認書、賃金規程において,月々支払われる所定賃金のうち業務手当が時間外労働に対する対価として支払われる旨が記載されていた。また,各従業員との間で作成された確認書にも,業務手当が時間外労働に対する対価として支払われる旨が記載されていた。さらに,被上告人に支払われた業務手当による額は、実際の時間外労働等の状況による額と大きくかい離するものではない。これらによれば,被上告人に支払われた業務手当は,本件雇用契約において,時間外労働等に対する対価として支払われるものとされていたと認められる」とある。
29
1E
 休日労働、時間外労働の割増賃金については、37条1項から、「労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその休日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の2割5分以上5割以下の範囲内で政令で定める率(時間外労働の場合は2割5分以上、休日労働の場合は3割5部以上)の割増賃金を支払わなければならない」とある。
 そして、時間外労働+深夜業の場合は、施行規則20条により5割以上、
 休日労働+深夜業の場合は同2項により6割以上。
 しからば、「休日労働が8時間労働を超えた場合」とあるが、休日労働は1時間であろうと12時間であろうと、休日労働であって、8時間を超えたからといって割増率を合算しなければならないとする規定はない。
 この点については、通達(S22.11.月21基発366)においても、「36条1項の協定によって休日の所定労働時間を8時間と定め始業午前7時より終業午後4時とした場合(休憩1時間)、午後4時を超えて労働させた場合の時間については6割以上の割増賃金を支払うものと解されるが如何」というお伺いに対し、回答は
 「協定において休日の労働時間を8時間と定めた場合の割増賃金については、8時間を超えても深夜業に該当しない限り3割5分増で差支えない」とある。
16
5B

 
 通達(H6.5.31基発331に、
 「休日は原則として暦日を指し、午前0時から24時までをいう」とあり、休日の起算は暦日による。
 本肢の場合、午後5時以降午後10時(または11時)までが平日時間外、午後10時(11時)以降午前0時までが平日深夜時間外労働、午前0時以降午前5時(または6時)までが休日深夜、午前5時(6時)以降正午までが休日労働となる。
19
3D
 通達(H6.5.31基発331)に「休日の起算は暦日による」とある。
  つまり午前0時(深夜12時)が境界である。
 本肢の場合、午前8時から午後5時までの労働時間は8時間(休憩時間の1時間を除く)であるから、午後5時以降の労働に対しては法定による時間外割増賃金の支払いが必要になる。
 午後5時から午後10時までは平日時間外労働であるから、2割5分以上の割増賃金、
 午後10時から午前0時までが平日深夜時間外労働であるから、5割以上の割増賃金。
 午前0時を超えると法定休日に入るから、そこからは時間外労働とはいわず休日労働となり、午前0時から午前2時までは休日労働かつ深夜作業となるので、6割以上の割増賃金を支払わなければならない。
30
3
A
B
C
D
E
 35条による法定休日の原則は「毎週少なくとも1回の休日」であるから問題ない。
 また、休憩時間については、34条により「労働時間が6時間を超える場合は少なくとも45分、8時間を超える場合は少なくとも1時間必要」であるが、本肢の場合、時間外がない場合は、休憩時間は与えなくともよい。ただし、実際には各労働日に休憩を1時間与えているから、万が一、午後5時から直ちに時間外労働をさせても問題はない。
 さらに、本肢で問題となっている割増賃金については、37条1項にある「36条協定を締結して、法定労働時間(1日8時間、1週40時間)を超える時間外労働あるいは休日労働をさせた場合」と37条4項にある「深夜業をさせた場合」が対象となる。
 なお、問題文には「製造業の事業場」とあるが、これは特に、解答とは関係ない。
A:「日曜に10時間の労働がある」場合とある。
 しかしながら、法定休日における労働は、時間外労働とは全く違うものであり、時間数に関係なく、全労働時間10時間が休日割増の対象となる。
 休日割増+時間外割増はない。(参考までに、休日割増+深夜割増はある)
B:「日曜の午後8時から月曜の午前3時まで勤務した場合」とある。
 通達(H6.5.31基発331によれば、「休日は原則として暦日を指し、午前0時から24時までをいう」となっている。
 つまり、時間外労働と休日労働とは別の概念であり、参考図1を見ればわかるように、「休日と平日をまたがって、連続して労働した場合」は、法定休日は午前0時からは24時で終わりである。
 よって、本肢の場合、日曜の午後8時から日曜日午後11時までが休日割増、日曜の午後11時から12時までが休日割増+深夜割増である。
 なお、月曜の午前0時から午前3時までの労働については、通達(H6.5.31基発331のA、通達(H63.01.01基発1)にあるように、「2暦日にわたる継続勤務はたとえ暦日を異にする場合でも一つの勤務として取り扱い、始業時刻の属する日の労働とする」ことから、日曜日の午後8時から続く7時間労働のなかの3時間として取り扱う(ただし、休日労働とはいわない。この辺が少しややこしいかもしれない)
 よって、1日の法定労働時間8時間を超えてはいないので、時間外労働にはならないが(当然ながら根っこの賃金の支払は必要)、深夜時間帯なので深夜割増は必要。
 また、この3時間労働は、日曜日における労働とみなされるので、月曜日の通常の6時間労働と合計してはならない。(1週間の労働時間には加えるがそれでも、他の日がすべて6時間労働であれば、合計で39時間)
C:「月曜の時間外労働が火曜の午前3時まで及んだ場合」とある。この場合はBの解説にもあるように、2暦日にまたがっても、1つの、前日の労働とみなされる。
 よって、月曜日の労働時間は通常の6時間+午後5時から翌日の午前3時までの10時間、合計で16時間であるから、8時間が時間外労働(そのうち、5時間が時間外+深夜割増)
D:「土曜の時間外労働が日曜の午前3時まで及んだ場合」とある。
 この場合、土曜日の労働時間は通常の6時間+午後5時から翌日の午前3時までの10時間、合計で16時間であるが、日曜日深夜0時から3時までは、休日労働+深夜割増の扱いとなる
 よって、土曜日の時間外はこの3時間を除いた5時間(そのうち、2時間が時間外+深夜割増)
E:「日曜から水曜までは所定どおりの6時間勤務、木曜から土曜までは10時間ずつ労働した」とある。
 この場合、1週間合計で48時間の労働時間となるが、まず、木曜から土曜までは、「1日8時間」を超える各2時間 が時間外労働(合計で6時間)
 さらに「1週間合計40時間」を超える8時間のうち、残りの2時間が時間外労働。 
12
4D
 通達(S63.3.14基発150号)によると、
 「割増賃金における端数処理として、次の処理は事務簡便を目的としたものであって常に労働者の不利となるものではないので、賃金の支払規定及び時間外、休日、深夜の割増賃金規定違反としては取り扱わない」
@「1か月における時間外労働、休日労働及び深夜労働の各時間数の合計に1時間未満の端数がある場合は、30分未満の端数を切り捨て、それ以上を1時間に切り上げる」
28
3C
 24条においては「賃金は全額を支払わないといけない」とされ、37条では「時間外労働をさせた場合は、一定の割増賃金を支払わないといけない」とされ、それぞれ違反すると罰則の適用がある。
 しからば、「1か月における時間外労働時間数が、たとえば、35時間20分であった場合、きっちりそのまま端数計算して支払わないと規定違反になるかというと、 通達(S63.3.14基発150号)によれば、
 「1か月における時間外労働の合計に1時間未満の端数がある場合は、30分未満の端数を切り捨て、それ以上を1時間に切り上げる端数処理は、事務簡便を目的としたものであって常に労働者の不利となるものではないので規定違反としては取り扱わない」とある。
 (なおこの場合、金額で円未満の端数が生じた場合は50銭単位での四捨五入も許されている)
 1か月合計おいては、30分以上を1時間に切り上げる、30分未満を切り捨てるのは、長い目でみれば損得はなかろうということで許されている。ただし、1日単位の場合は、きっちり分単位で計算しておかなければならない。
19
3E
 通達(S63.3.14基発150号)によると、
 「割増賃金における端数処理として、次の処理は事務簡便を目的としたものであって常に労働者の不利となるものではないので、賃金の支払規定及び時間外、休日、深夜の割増賃金規定違反としては取り扱わない」
 @「1か月における時間外労働、休日労働及び深夜労働の各時間数の合計に1時間未満の端数がある場合は、30分未満の端数を切り捨て、それ以上を1時間に切り上げる」
⇒本肢のように1日ごとに30分未満を切り捨ててしまっては、29分で打ち切るなどの作為が働きかねず、労働者にとっては著しく不利になる。つまり、事務簡便の措置どころではなくなる。
25
3B
 時間外労働等の時間数、割増賃金額等の時間単価、割増賃金総額の端数処理については、通達(S63.3.14基発150号)に、
 「次の方法は、常に労働者の不利となるものではなく、事務簡便を目的としたものと認められるから、24条(賃金の全額払い義務)及び37条(割増賃金の支払い義務)違反としては取り扱わない」
(1)1か月における時間外労働、休日労働、深夜労働の各時間数の合計について、それぞれ、端数を四捨五入して時間単位とすること。
(2)1時間あたりの賃金額及び割増賃金額(要するに時間単価)について、それぞれ、端数を四捨五入して円単位とすること。
(3)1か月における時間外労働、休日労働及び深夜労働の各々の割増金額の総額について、それぞれ、端数を四捨五入して円単位とすること。
 よって、問題文の冒頭にある「1日における時間外労働、休日労働、深夜労働の各時間数の合計に端数がある場合、30分未満の端数を切り捨てる」ことは許されない。

4
7D
 代替休暇とは、37条3項から、「使用者が、過半数組織の労働組合があるときはその労働組合、ないときは労働者の過半数代表者との労使協定により、1か月で60時間を超えた場合に支払うべき割増賃金の支払に代えて、賃金が支払われる休暇(代替休暇)を定めた場合は、労働者がその休暇(代替休暇)を取得したときは、代替休暇に対応した時間の労働については、60時間を超えた場合に支払うべき割増賃金率での支払いを要しない(60時間以下の場合に支払うべき割増賃金率での支払いでよい)」というものである。
 この代替休暇は、特に長い時間外労働が行われた月から一定の近接した期間に与えられることによって労働者の休息の機会とする観点から、与えることができる期間については、施行規則19条の2の3号により、「33条(非常災害時等時間外労働)又は36条1項(時間外労働)の規定によって延長して労働させた時間が 1か月について60 時間を超えた当該1か月の末日の翌日から2か月以内の範囲内で、労使協定で定めなければならない」とされている。
 例えば、4月の時間外労働が60時間を超えた場合は6月30日まで。
 なお、代替休暇を取得するか否かは、それによって支払うべき割増賃金の額が異なるので、通達H21.05.29基発0529001)において、「代替休暇については、賃金の支払額を早期に確定させる観点から、労使協定で定められるべきものとして、次のものが考えられる」とあり、たとえば、「労働者の代替休暇取得の意向については、1か月について60時間を超えて時間外労働をさせた当該1か月の末日からできる限り短い期間内において、確認されるものとすること。代替休暇を取得するかどうかは、労働者の判断によるため、代替休暇が実際に与えられる日は、当然、労働者の意向を踏まえたものとなること」などとある。
22
7C
 過半数代表者の選出については、施行規則6条の2に、
 「労働基準法に規定する労働者の過半数を代表する者(過半数代表者)は、次の各号のいずれにも該当する者とする」
 @41条2号に規定する監督又は管理の地位にある者でないこと
 A労働基準法に規定する協定等をする者を選出することを明らかにして実施される投票、挙手等の方法による手続により選出された者であつて、使用者の意向に基づき選出されたものでないこと
 よって、その者が管理監督者であれば、たとえ9条に定める労働者に該当するものであっても、また管理監督者以外の労働者によって選出された場合であっても、原則として、過半数代表者になることはできない。
 ただし、その例外として、同条2項に「1項1号に該当する者(管理監督者ではない者)がいない事業場にあっては、一定の労使協定あるいは就業規則の作成・変更にに規定する労働者の過半数を代表する者は、前項2号に該当する者とする」 とある。
 本肢では、「管理監督者以外の労働者によって選出された」とあるから、管理監督者以外の労働者がいることになり、同条2項には該当しない。
 つまり、管理監督者以外の労働者がいるのであれば、管理監督者以外の労働者から選ぶべきである。
22
7B
 前段については、たとえば36条1項に、
 「使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定を締結し、・・・・・・・・」とある通りで正しい。
 労働者の過半数代表者の選出方法については、施行規則6条の2の2号において、
 「労働基準法に規定する協定等をする者を選出することを明らかにして実施される投票挙手等の方法による手続により選出された者であつて、使用者の意向に基づき選出されたものでないこと」とある。
 ここで、「投票、挙手等」の等とは何かということに対しては、通達(H11.03.31基発169)に、
 「労働者の話合い、持ち回り決議等労働者の過半数が当該者の選任を支持していることが明確になる民主的な手続きが該当する」とあり、必ず書面を用いた投票でないといけない、とはなっていない。 
15
1E
 労働者の過半数を代表する者となるためには、施行規則6条の2によると、
@41条2号に規定する監督又は管理の地位にある者でないこと 、かつ
A労働基準法に規定する協定等をする者を選出することを明らかにして実施される投票、挙手等の方法による手続により選出された者であつて、使用者の意向に基づき選出されたものでないこと、が必要である、
 本肢の場合、問題文に「友の会」の会長をしている労働者(管理監督者ではない)が、36協定の労働者側の締結当事者たる「労働者の過半数を代表する者」を選出することを明らかにして実施された挙手により当該締結当事者として選出された」とあるから、上記@とAの前段部分は満足している。
 よって、残るはH31.04.01の法改正でAに追加された部分「使用者の意向に基づき選出されたものでないこと」をどう判定するかである。
 
問題文では、「部長など労働基準法41条2号に規定する監督又は管理の地位にある労働者を含め当該総会に出席した当該事業場のほとんどすべての従業員が残っている場」とある。
 通達(S46,1.18基収6206)によると、
 「36条でいう「当該事業場の労働者の過半数の労働者」は9条にいう労働者であって、例えば41条2号の規定に該当する者も含まれる」とあり、これらの者は過半数代表者にはなれないが、過半数代表者を選出する側に回ることはできる。
 また、「会社役員は退席したこと、部長などの管理監督者が会社の意向などをふりかざす特段の行為があったとは記述されていない」ことから、Aの要件も満足しているとしても差し支えないと判断できる。
 なお、本肢は最高裁判例[地位確認等請求上告事件(トーコロ事件)}を念頭においた出題であるが、判例とは内容・結論が異なることにも注意を。 
23
4D
 本肢は、最高裁判例[地位確認等請求上告事件(トーコロ事件)}(最高裁H13.06.22)に関する出題である。
 この事件は、「会社による残業命令をある労働者が拒否したため、それを理由に会社がこの者を解雇したことで、会社と親睦団体代表者との間で結ばれていた36条協定の効力が争われたものである。
 判決文によると、
 「36協定は、実体上、使用者と、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合にはその労働組合、そのような労働組合がない場合には労働者の過半数を代表する者との間において締結されたものでなければならないことは当然である。 
 ところで、本件36協定は、所轄の足立労働基監督署に届け出られたものであるが、協定の当事者は、Y社と「労働者の過半数を代表する者A」であり、協定の当事者の選出方法については、「全員の話し合いによる選出」とされていた。 
 そこで、Aが「労働者の過半数を代表する者」であったか否かについて検討するに、
 「労働者の過半数を代表する者」は当該事業場の労働者により適法に選出されなければならないが、適法な選出といえるためには、当該事業場の労働者にとって、
・選出される者が労働者の過半数を代表して36協定を締結することの適否を判断する機会が与えられ、かつ、
・当該事業場の過半数の労働者がその候補者を支持していると認められる民主的な手続がとられていることが必要というべき である。
 この点について、Y社は、Aは「友の会」の代表者であって、「友の会」が労働組合の実質を備えていたことを根拠として、Aが「労働者の過半数を代表する者」であった旨主張するけれども、
 「友の会」は、役員を含めたY社の全従業員によって構成され、「会員相互の親睦と生活の向上、福利の増進を計り、融和団結の実をあげる」ことを目的とする親睦団体であるから、労働組合でないことは明らかであり、
 このことは、仮に「友の会」が親睦団体としての活動のほかに、自主的に労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を目的とする活動をすることがあることによって変わるものではなく、したがって、Aが「友の会」の代表者として自動的に本件36協定を締結したにすぎないときには、
 Aは労働組合の代表者でもなく、「労働者の過半数を代表する者」でもないから、本件36協定は無効というべきである。 
 以上により、36協定が有効であるとは認められないから、それを前提とする残業命令も有効であるとは認められず、労働者これに従う義務があったとはいえない」としている。
 要するに
@友の会は役員と全従業員からなる親ぼく団体であって労働組合の実質を備えたものでないから、過半数代表者が必要である。しかしながら、会社側の意向によって、友の会の代表者Aを過半数代表者にあてたに過ぎないので、労基法所定の要件を満たす「労働者の過半数を代表する者」とはならない」
A36協定を締結し、行政官庁がこれを受理した 場合であっても、労働者代表でなかった者Aが締結した協定は無効である。。
17
3B
 41条2号に規定する監督又は管理の地位にある者は、過去問解説(22-7C)にもあるように、原則として、過半数代表者になることはできない。
 本肢の場合は、過半数代表者者が期の途中で41条2号に該当することとなったとあるので、ほかに、管理監督者に該当しない労働者がいる限り、いずれ(協定の更新などのために過半数代表者の出番が必要になった時までに)交代する必要がある。
 なお、この場合の協定そのものについては、
 「協定締結後、労働者側の協定当事者が法定の要件を満たさなくなった場合の効力」労働法コンメンタール「労働基準法」(厚生労働省労働基準局編)において、
 「協定締結の当事者が労働者の過半数代表者でなくなった場合において、協定締結当時に労働者の過半数の団体意思が反映されておれば、それだけで法の趣旨は充足され、改めて同意を必要とすると解する必要はないであろう。
 結論として、本36条が協定当事者の要件として要求している労働者の過半数を代表とするという要件は、協定の成立の要件であるにとどまり、協定の存続要件ではないと解される」
 つまり、36協定そのものは、定められた協定期間(1年間)内であればそのまま有効である。
13
5B
 労働者の範囲についての通達(S46.1.18基収6206)によると、
 「36条1項の規定でいう「当該事業場の労働者の過半数」について、次のような者を「労働者」の中に含めてよいか」
@41条2号の規定に該当する者(監督管理の地位にある者)
A病欠、出張、休職期間中等の者。
 というお伺いに対する回答は、
 「法36条1項の協定は、当該事業場において、法律上又は事実上時間外労働又は休日労働の対象となる労働者の過半数の意見を問うためのものではなく、同法18条(貯蓄金の委託管理)、24条(賃金からの一部控除)、39条(有給休暇の時間単位付与及び90条(就業規則の作成・変更)におけると同様、当該事業場に使用されるすべての労働者の過半数の意思を問うためのものであり、設問の@、Aともその通り」とある。
 つまり、「労働時間の規定の適用がない監督又は管理の地位にある者、時間外労働・休日労働がありえない年少者や、休職者などで当該協定期間中に出勤が全く予想されない者も含まれる。
14
1B
 過去問(13-5B)の解説の通り。
 通達(S46.1.18基収6206)によれば、「労基法36条1項の協定は、時間外労働又は休日労働の対象となる労働者の過半数の意見を問うためのものではなく、当該事業場に使用されるすべての労働者の過半数の意思を問うためのものである」とある。
 つまり、「時間外労働及び休日労働が全く予定されていないようなパートタイム労働者なども含めなければならないし、長期間の病気などにより休職発令を受けて休職中の労働者で当該協定期間中に出勤が全く予想されないものも含まれる」
15
1A
 派遣労働者の場合の36条協定については、通達(S61.6.6基発333(36条関係))に、
 「派遣元の使用者は、当該派遣元の事業場に労働者の過半数で組織する労働組合がある場合にはその労働組合と協定をし、過半数で組織する労働組合がない場合には、労働者の過半数を代表する者と協定をすることになる。
 この場合の労働者とは、当該派遣元の事業場のすべての労働者であり、派遣中の労働者とそれ以外の労働者との両者を含むものであること」とある。
 よって、派遣先の事業場が36協定を締結する際は、当該事業場に派遣されて現に指揮命令をうけて働いている派遣労働者は発言権をもたない。
25
3A
 36協定を締結する当事者(その他の労使協定も同様)は、36条に、
 「当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定を・・・・・」とある通りで、労働組合のない場合は、労働者の過半数を代表する者である。
 この過半数代表者の選定にあたっては、施行規則6条の2から、
 「監督又は管理の地位にある者でないこと。 法に規定する協定等をする者を選出することを明らかにして実施される投票、挙手等の方法による手続により選出された者であつて、使用者の意向に基づき選出されたものでないこと」とある。
 その場合、過半数かどうかを判定する根拠となる労働者数については、通達(S46.1.18基収6206)によれば、「労基法36条1項の協定は、時間外労働又は休日労働の対象となる労働者の過半数の意見を問うためのものではなく、当該事業場に使用されるすべての労働者の過半数の意思を問うためのものである」とある。
 つまり、「時間外労働、休日労働があるか否かにかかわらず、当該事業場で雇用されて働いているパート、アルバイト等の労働者も含めなければならない」
 ただし、派遣されてきている派遣労働者については、通達(S61.6.6基発333(36条関係))によると、
 「派遣労働者に関する36条協定は派遣元で行う。この場合の労働者とは、当該派遣元のすべての労働者であり、派遣中の労働者とそれ以外の労働者の両方を含むものである」
 よって、当該(派遣先)事業場に派遣されてきている派遣労働者は、現に指揮命令を受けて働いている者であっても、派遣先では労働者としてカウントされない(派遣元でカウントする)。
19
1D
 施行規則6条の2の3項に、
 「労働者が過半数代表者であること若しくは過半数代表者になろうとしたこと又は過半数代表者として正当な行為をしたことを理由として不利益な取扱いをしないようにしなければならない」とある。
 なお、労働基準法36条1項の詳細はこちらを
24
5E
 36条1項に、
 「使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、厚生労働省令で定めるところにより、これを行政官庁に届け出た場合においては、・・・労働時間又は休日に関する規定に関わらず、その協定で定めるところによって労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる」とある。
 すなわち、いわゆる36条協定はかならず届出を要し、単に同協定を締結したのみでは協定の効力(免罰効果)はない。
 協定の届出をせずに時間外労働をさせた場合は、32条(法定労働時間)等違反となり、6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処せられる。
12
7A
 36条1項において、
 「労働者の過半数で組織する労働組合(ない場合は労働者の過半数を代表する者)との書面による協定をし、厚生労働省令で定めるところにより、これを行政官庁に届け出た場合においては、・・・・法定労働時間の規定に関わらず、その協定で定めるところにより、労働時間は延長して労働させることができる」とあり、36協定は、届出しないと効力は生じない。
 なお、災害等による臨時の必要がある場合については、33条により、
 「災害その他臨時の必要がある場合においては、行政官庁の許可を受けて、労働時間を延長し又は休日に労働させることができる。ただし、事態急迫のために行政官庁の許可を受ける暇がない場合においては、事後に遅滞なく届け出なければならない」とあり、「その暇がない場合は事後遅滞なく届け出れば足りる」のただし書き規定は非常災害時等における時間外労働の場合である。

3
5A
 「令和3年4月1日から令和4年3月31日までを有効期間とする書面による時間外及び休日労働に関する協定を締結し、これを令和3年4月9日に厚生労働省令で定めるところにより所轄労働基準監督署長に届け出た」とある。
 いわゆる36(条)協定は、届出が必要なことはわかっていても、届出の重要性については、もう少し進んで、「届出が出て、初めて有効となる」ことまで徹底しておかないといけない。
 36条1項においても「労働者の過半数で組織する労働組合(ない場合は労働者の過半数を代表する者)との書面による協定をし、厚生労働省令で定めるところにより、これを行政官庁に届け出た場合においては、・・・・法定労働時間の規定に関わらず、その協定で定めるところにより、労働時間は延長して労働させることができる」とある。
 よって、「届出前の令和3年4月1日から令和3年4月8日までに行われた法定労働時間を超える労働は、適法なものではない」
29
4A
 まず、「労働基準法第36条に規定する労使協定」とは、36条にあるように、「労働者の過半数で組織する労働組合(ない場合は労働者の過半数を代表する者)との書面による時間外・休日労働に関する労使協定であり、労働基準監督署に届出ることにより、その効力を発する」
 しかしながら、問題文にあるように、「労働時間等設定改善委員会が設置されている事業場において、その委員の5分の4以上の多数による議決により決議が行われたとき」は、労働時間等の設定の改善に関する特別措置法7条により、「労働時間に関する規定すなわち 1か月単位の変形労働時間制、フレックスタイム制、1年単位の変形労働時間制、1週間単位の非定型的変形労働時間制、36条1項の時間外及び休日労働、同条2項(36協定で定める事項)、同上5項(36協定による時間外労働の限度)、代替休暇の付与、事業場外労働のみなし労働時間、専門業務型裁量労働制などなどについては、労使協定が締結されたものとして各規定を適用する」
ことになっている。
 つまり、同決議が(所定の条件を満足している限り)労使協定の代わりになるのである。さらには、労使協定の中には届出が義務となっているものもあるが、同決議の場合は、通達(H18.04.01基発0401006)において、
 「労働基準法上行政官庁への届出を要するもののうち、1カ月単位の変形労働時間制、1年単位の変形労働時間制、1週間単位の非定型的変形労働時間制、事業場外労働に関するみなし労働時間制(法定労働時間を超えないとき)及び専門業務型裁量労働制に係る決議などについては、労働基準監督署長への届出を要しないものであること。
 時間外及び休日の労働に係るものについては、労働基準監督署長への届出が必要であること・・・」とある。
 つまり、同決議は36条の労使協定の代替にはなるが、届出義務は免除されていない。
 参考までに、労使委員会の決議についても、一定の範囲の労使協定代替と届出免除の規定があり、これらをまとめた一覧表も参照のこと。
25
3E
 36条1項に
 「使用者は、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合との書面による協定をし、厚生労働省令で定めるところにより、これを行政官庁に届け出た場合においては、・・・・労働時間又は休日に関する規定に関わらず、その協定で定めるところによって労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる」とある。
 この場合、過半数組織労働組合の組合員でない他の労働者に対する36条協定の効力については、通達(S23.04.05基発535)に、
 「当該事業場の労働者の過半数で組織されている労働組合と協定すれば足り、(当該事業場に複数の労働組合があったとしても)他の労働組合と協定する必要はない」とある通り。
 つまり、過半数組織労働組合と36協定を締結しこれを届出すれば、その効力はその事業場の全労働者にも及ぶことになっている。
 この点は、過半数組織労働組合がない場合に、過半数代表者と締結し届出た場合も同じである。
18
5D
 これは日立製作所武蔵工場事件といわれ、原告労働者は、
 「電子部品の特性管理の業務に従事していた労働者が、上司から、歩留まり率が低い原因の追求と対策のために残業を命じられたのに対して、それを拒否し、懲戒解雇されたが、残業命令に従う義務はないとして争った」事件である。
 これに対する最高裁判決(第1小法廷、H3.11.28)によれば、
 「労働基準法32条の労働時間を延長して労働させることにつき、使用者が、当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合等と書面による協定(いわゆる36協定)を締結し、これを所轄労働基準監督署長に届け出た場合において、使用者が当該事業場に適用される就業規則に当該36協定の範囲内で一定の業務上の事由があれば労働契約に定める労働時間を延長して労働者を労働させることができる旨定めているときは、当該就業規則の規定の内容が合理的なものである限り、それが具体的労働契約の内容をなすから、右就業規則の規定の適用を受ける労働者は、その定めるところに従い、労働契約に定める労働時間を超えて労働をする義務を負うものと解するを相当とする」
 よくいわれるように、労使協定の効力については有名な通達(S63.1.1基発1)があり、
 「労働基準法上の労使協定の効力は、その協定に定めるところにより労働させても労働基準法に違反しないという免罰効果をもつものであり、労働者の民事上の義務は、当該協定から直接生じるものではなく、労働協約、就業規則等の根拠が必要である」とされている。
 従って、就業規則等により、「業務の都合により、所定労働時間を超え、又は所定休日に労働させることがある」などという規定を設けておかないと、労働者に対する強制力は働かないとされている。
 逆に、このような就業規則の定めがあり、かつ36条協定の締結と届出があれば、労働契約に優先して時間外労働を強制することができる。
 この判例はそのような考え方を取っているのだ。
20
3

 日立製作所武蔵工場事件の判決によると、
 「労働基準法32条の労働時間を延長して労働させることにつき、使用者が当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合等と書面による協定(いわゆる36協定)を締結し、これを所轄労働基準監督署長に届け出た場合において、使用者が当該事業場に適用される就業規則に当該36協定の範囲内で一定の業務上の事由があれば労働契約に定める労働時間を延長して労働者を労働させることができる旨定めているときは、当該就業規則の規定の内容が(合理的な)ものである限り、それが具体的労働契約の内容をなすから、当該就業規則の規定の適用を受ける労働者は、その定めるところに従い、労働契約に定める労働時間を超えて労働をする義務を負うものと解するを相当とする」としている。
まったく同じ趣旨の問題が択一式と選択式で出題された。
選択式は択一式と一緒に学習することが重要であり、特に日頃から、択一式問題文あるいはそれに関する条文において、どの部分が重要キーワードであるかをピックアップする週間をつけることです。(アンダーラインを引いたりするのがその作業の一つです)
27
6ウ
 最高裁判例[従業員地位確認等、いわゆる日立製作所武蔵工場事件](H03.11.28)の判決文要旨は、解説18-5Dにある通り。
 つまり、問題文にある「36協定は私法上の権利義務を設定する効果を有しないため」までは正しいが、その後の「就業規則の規定の内容が合理的なものであるか否かにかかわらず・・・労働契約に定める労働時間を超えて労働をする義務を負わない」とあるのは、
 「就業規則の規定の内容が合理的なものである限り、それが具体的労働契約の内容をなすから、・・・労働契約に定める労働時間を超えて労働をする義務を負う」とするのが正しい。
 「36協定は私法上の権利義務を設定する効果を有しない」とする点は、通達(S63.1.1基発1号)においても、
 「労使協定の効力は、その協定の定めによって労働者を労働させても労基法に違反しないという免罰効果であり、労働者の民事上の義務は、当該協定から直接生じるものではなく、労働協約、就業規則等の根拠が必要である」としている通り。
24
5D

 
 過去問解説(18-5D20-3選択27-6ウ)の通りであるが、受験生には論点が分かりにくいかもしれない。
 問題文を逐語的に追っていくと、
 「労働基準法第36条は、時間外又は休日労働を適法に行わせるための手続きを規定したものである」
⇒つまり、法定労働時間を超える時間外労働、法定休日における休日労働は原則禁止であるが、36条は、これらを合法化するためには労使間で36協定を結び、監督官庁に届出ること、という手続きを規定したものであることに間違いない。
 ただし、「適法に行わせる」とあるときの主語はあくまでも「使用者」であって、労働者は含まれていないのである。
 ということは、この手続きをすれば、「たとえ時間外労働を行わせても、使用者は、32条違反により6か月以下の懲役または30万円以下の罰金という、刑事罰の責任は免れるということ。
 次にある、「時間外又は休日労働命令に服すべき労働者の民事上の義務」
⇒労働者にとっては、必ずしもやりたいとは思っていない時間外労働・休日労働であっても、命令が出た場合はこれに服さなければならないという命令服従義務があるとすれば、それは刑事上(あるいは公法上)課せられた義務ではなく、使用者と労働者(お互いに民間人)間の民亊上の義務であるということ。
 そして最後にある、「(民事上の義務)は、同条に定めるいわゆるいわゆる36協定から直接当然に生ずるものではない」
⇒「つまり、民事上の義務は36協定から直接当然に生じるものであるかどうか、(もしそうでないならば、その根拠はどこにあるのか)
 ここが、本肢の論点である。
 これに対しては、いわゆる免罰効果に関する通達(S63.1.1基発1)において、
 「労働基準法上の労使協定の効力は、その協定に定めるところにより労働させても労働基準法に違反しないという免罰効果をもつものであり、労働者の民事上の義務は、当該協定から直接生じるものではなく、労働協約、就業規則等の根拠が必要である」
 つまり、時間外労働命令が出された場合にこれに従わなければならない義務は、36協定から直接生じるものではないといっている。
 (本来は労働者と使用者当事者間で結んだ労働契約によるべきであるが、労働協約、就業規則等でよいともしている)
 なお、就業規則であってもその内容が合理的である限り、それでもよいというのは日立製作所武蔵工場事件の最高裁判決によって認められている。
22
7A
 労働基準法は、労働条件の最低基準の確保を目的として労働者を保護するための法律である以上、強行法規であって(当事者の意思や当事者間の合意がどうであろうと関係なく適用されるものということができる。
 たとえば、問題文にあるように、13条には、
 「この法律で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効とする。
 この場合において、無効となった部分は、この法律で定める基準による」とあり、まさに、労働基準法上の基準の強行的・直律的効力を規定したものである。
 また、そこにある強行規定については、それに違反した場合、懲役あるいは罰金という刑事罰にも処せられる。
 ここまでの準備ができたところで問題文に戻ると、
 「労働基準法上の労使協定が有する労働基準法の規制を解除する効力(13条の解除、罰則の適用の解除)」とは、
 いわゆる「労使協定の免罰効果」と呼ばれるもので、 通達(S63.1.1基発1)によると、
 「労働基準法上の労使協定の効力は、その協定に定めるところにより労働させても労働基準法に違反しないという免罰効果をもつものであり、労働者の民事上の義務は、当該協定から直接生じるものではなく、労働協約、就業規則等の根拠が必要である」
 すなわちここで、「労働基準法に違反しないという免罰効果」というのは、
 たとえば、36条協定を結んでその範囲内で労働させれば、休日労働・時間外労働であっても、32条(1日8時間、1週40時間労働)違反により6か月以下の懲役または30万円以下の罰金という、刑事罰の責任は免れるという意味である。(ただし、民事的効果は直接的には及ばないので、別途に、就業規則などの根拠が必要になる))
 さて、本肢の論点は、「労使協定の有する刑事上の免罰効果は、労使協定の締結に反対している労働者には及ばないか」ということ。
 これに対しては、通達(S23.04.05基発535)において、
 「刑事上の免責的効力が及ぶ人的適用範囲は、当該事業場の全労働者についてである。
 ただし、協定において、適用を受ける職種、人員を制限した場合は、その範囲内に限られる」とあり、
 その協定に特段の定めがない限り、協定の締結に反対している労働者に対しても、協定の効力とそれに関する免罰効果は及ぶ。
 つまり、時間外労働に関する36条協定に反対している労働者に対して、時間外労働を命じた場合であっても、免罰効果が及ぶので、使用者に刑事罰が課せられることはない。(労働者は従わないといけない)
14

 労働基準法36条第2項においては、労働基準法第36条第1項の協定をする場合には、労働時間を延長し、又は休日に労働をさせることとされる労働者の範囲、対象期間((A)1年間に限る)、延長し又は休日労働させることができる場合、対象期間における(B)1日(C)1か月及び(A)1年のそれぞれの期間について延長して労働させることができる時間又は労働させることができる休日の日数、その他労働時間の延長及び休日の労働を適正なものとするために必要な事項として厚生労働省令で定める事項について協定しなければならない、と規定されている。
 労働基準法36条1項の協定とは、36(サブロク)協定と呼ばれるもので、過半数組織労働組合(ない場合は労働者の過半数代表者)との間で結ぶ書面の協定であり、これを締結して届出することにより、法定労働時間(1日8時間、週40時間など)を超えて時間外労働あるいは休日労働をさせることができるものである。
 その場合、この協定で定める事項は、平成31年4月の法改正前までは、旧施行規則16条に記述されていたが、改正後は36条2項に法律として明示されることになった。
 これによれば、「36協定においては、次に掲げる事項を定めるものとする」とあり、
 労働時間を延長し、又は休日に労働をさせることとされる労働者の範囲、対象期間(1年間に限る)、延長し又は休日労働させることができる場合、対象期間における1日1か月及び1年のそれぞれの期間について延長して労働させることができる時間又は労働させることができる休日の日数、その他労働時間の延長及び休日の労働を適正なものとするために必要な事項として厚生労働省令で定める事項」とされている

5
7B
  36条1項の時間外・休日労働協により届出なければいけない事項は、36条2項により、
@労働者の範囲、A対象期間、B労働時間の延長、休日労働をさせることができる場合等々である。
 このうち、「労働者の範囲」については、通達(H30.09.07基発0907-1)によると、「労働者の範囲とは、時間外・休日労働協定の対象となる「業務の種類」及び「労働者数」を協定するものであること」とある。
 そして、36条7項により、厚生労働大臣が定める指針「労働基準法36条1項の協定で定める労働時間の延長及び休日の労働について留意すべき事項等に関する指針」の4条によれば、「労使当事者は、時間外・休日労働協定において労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる業務の種類について定めるに当たっては、業務の区分を細分化することにより当該業務の範囲を明確にしなければならない」とある。
 たとえば、単に「製造業務」ではなく、各製造工程に踏み込んで細分化することが求められる。
17
3C
 36条2項によれば、「36条1項の協定においては、次に掲げる事項を定めるものとする」とあり、
@この条の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させることができることとされる労働者の範囲
A対象期間(この条の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる期間をいい、1年間に限る)
B労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる場合
C対象期間における1日1箇月及び1年のそれぞれの期間について労働時間を延長して労働させることができる時間又は労働させることができる休日の日数
D労働時間の延長及び休日の労働を適正なものとするために必要な事項として厚生労働省令で定める事項とあり、厚生労働省令で定める事項とは、施行規則17条によるものでその一つとして、「法36条1項の協定(労働協約による場合を除く)の有効期間の定め」とある。
 
この有効時間につては、通達(H30.12.28基発1228第15号)において、「時間外・休日労働協定の有効期とは当該協定が効力を有する期間をいうものであり、対象期間が1年に限られることから、有効期間は最も短い場合で原則して1年なる。また時間外・休日労働協定については定期的に見直しを行う必要があると考られるから、有効期間は1年とすることが望ましい」とある。
 (なお、1年よりも短い有期事業場であれば、当然ながら、1年の定めは不要であるので、有効期間も1年より短くてよい)
 ただし、この有効期間については、通達(H11.3.31基発169)によれば、「1年間についての延長時間を定める時間外協定については、有効期間は最も短い場合でも1年間となる。しかしながら、1か月の延長期間の定めについては、別途の時間外協定により、その有効期間を1年未満とすることは差し支えない」ともある。
 ただし、このような別個の協定を届け出た場合であって、1年間間断なく、1か月についての延長時間を定めようとするときは、その協定の有効期間が終了するまでに改めて当該期間についての協定を届け出る必要があることになる。
13
5A
 36協定の有効期間については、施行規則17条の@にあるように、「労働協約による場合を除き)の有効期間の定め」を行わなければならないとあり、通達(H11.3.31基発169)において、「協定においては必ず1年間についての延長時間を定めなければならないので、1年間についての延長時間を定める時間外協定については、有効期間は最も短い場合でも1年間となる」
 また、有効期間の限度については、同通達により、「時間外労働協定について定期的に見直しを行う必要があると考えられることから、有効期間は1年間とすることが望ましい」とある。
 そして、この協定の更新については、36協定について規定した施行規則16条3項に、
 「法36条1項の協定(労使委員会の決議及び労働時間等設定改善委員会の決議を含む)を更新しようとするときは、使用者は、その旨の協定を所轄労働基準監督署長に届出ることによって、行うことができる」とされている。つまり、少なくとも「更新する」という協定を届け出る必要がある。
 また、自動更新条項があるときは、通達(S29.6.29基発355号)により、
 「協定の有効期間について自動更新の定めがなされている場合においては、当該協定の更新について労使両当事者のいずれからも異議の申出がなかった事実を証する書面を、届け出ることをもって足りる」
 つまり、少なくとも「異議なし」とする証拠書類を届け出る必要がある。
17
3A
 派遣労働者の場合の36条協定については、通達(S61.6.6基発333(36条関係))
 「派遣元の使用者は、当該派遣元の事業場に労働者の過半数で組織する労働組合がある場合にはその労働組合と協定をし、過半数で組織する労働組合がない場合には、労働者の過半数を代表する者と協定をすることになる。
 この場合の労働者とは、当該派遣元の事業場のすべての労働者であり、派遣中の労働者とそれ以外の労働者との両者を含むものであること」とある。
 つまり、派遣労働者に関する36条協定は派遣元で行う。
 よって、派遣先の使用者が、当該事業場に派遣されて現に当該使用者の指揮命令の下に働いている派遣労働者を、時間外労働させることができるのは、派遣先の使用者と労働者との間ではなく、派遣元の事業者がそこで雇用されている派遣労働者等との間で36条協定を締結し所轄労働基準監督署長に届けた場合である。
29
4E
 本社と労働組合本部との協定の有効性については、通達(S24..02.09基収4234)において、
 「36条1項の協定は当該事業場ごとに締結するように規定されているが、他府県に本社があって、本県に支店又は出張所がある場合、本社において社長と当該会社の労働組合本部の長とが締結した協定書に基づき、支店又は出張所がそれぞれ当該事業場の業務の種類、労働者数、所定労働時間等所要事項のみ記入して、所轄労働基準監督署長に届け出た場合、有効なものとして差し支えないか」というお伺いに対し、回答は「当該組合が各事業場毎にその事業場の過半数で組織されている限り、見解の通り取扱って差し支えない」とあった。
 本肢の場合、「全ての事業場においてその事業場の労働者の過半数で組織する単一の労働組合」とあるから、これに該当する。

2
6C

  「36条第3項に定める「労働時間を延長して労働させることができる時間」に関する「限度時間」」とある。
 ただし、36条3項においては、「労働時間を延長して労働させることができる時間は、当該事業場の業務量、時間外労働の動向その他の事情を考慮して通常予見される時間外労働の範囲内において、限度時間を超えない時間に限る」とあるだけである。
 そして、そこにある「通常予見される時間外労働の範囲内での限度時間」とは、36条4項によれば、「1か月について45時間及び1年について360時間(32条の4(1年単位の変形労働時間制で対象期間として3か月を超える期間を定めて労働させる場合にあっては、1か月について42時間及び1年について320時間)」とされている。
 参考までに、「通常予見することのできない業務量の大幅な増加等に伴い臨時的に上記の限度時間を超えて労働させる必要がある場合」は、
・45時間(42時間)を超える月数が年間6か月以内、かつ
協定時間を含め、1か月について時間外労働+休日労働が100時間未満
・協定時間を含め、1年間について時間外労働が720時間以内
 
である
12
5B
 労働基準法第36条第4項に定められた限度時間とは、「当該事業場の業務量、時間外労働の動向その他の事情を考慮して通常予見される時間外労働の範囲内において定めることのできる限度時間であり、1か月について45時間及び1年について360時間(いずれも1年単位の変形労働時間制は除く)」である。
 これを超えた時間数を36協定として締結し、届出を行おうとした場合の取扱いについては、通達(H30.12.28基発1228第15号)によると、「設問の事項は、労働基準法において定められた要件であり、この要件を満たしていない時間外・休日労働協定は全体として無効である」とある。
 なお、通常予見される時間外労働の範囲内において定めるとのできる時間外労働の限度時間を、36条4項の規定通りに、「1か月について45時間及び1年について360時間」とし、かつ、「臨時的に限度時間を超えて労働させる必要がある場合の限度時間」とし、同条5項に従って、「45時間を超える月数が年間6か月以内であって、全協定時間が、1か月について時間外労働+休日労働が100時間未満、1年間について時間外労働が720時間以内」とする特別条項をつけた協定(2枚からなる協定)を締結して届出た場合であれば、この協定は有効となる。
12
7B
 「労働基準法第36条5項の規定に基づづき時間外労働・休日労働に係る労使協定において協定し届け出られたた」とある。
 36条5項によれば、通常予見することのできない業務量の大幅な増加等に伴い臨時的に3項の限度時間を超えて労働させる必要がある場合において、1月について労働時間を延長して労働させ、及び休日において労働させることができる時間(100時間未満に限る)並びに1年について労働時間を延長して労働させることができる時間(720時間を超えない範囲内に限る)を、特別条項として定めることができる。
 この場合において、1か月について45時を超えることができる月数(1年について6月以内に限る)を定めなければならない」とある。
 これらを、同規定の諸要件を満たす範囲で協定に盛り込み、届出た場合であっても、実際に、協定を超えた時間労働させた場合、通達(S53.11.20基発642号)によると、「一定時間の延長時間の限度について協定をした場合であっても、これに違反して時間外労働をさせれば、法違反となる」とある。
 ただし、従来から36条違反で罰則があったのは、「坑内労働その他厚生労働省令で定める健康上特に有害な業務について、1日につき2時間間を超えて労働させた場合」だけであった。
 このたびの31年の法改正により、36条6項が新設され、「使用者は、協定で定めるところによつて労働時間を延長して労働させ、又は休日において労働させる場合であつても、
・1月について労働時間を延長して労働させ及び休日において労働させた時間は100時間未満。
・対象期間の初日から1月ごとに区分した各期間に当該各期間の直前の1月、2月、3月、4月及び5月の期間を加えたそれぞれの期間における労働時間を延長して労働させ、及び休日において労働させた時間の1月当たりの平均時間が80時間を超えないこと」とあり、これに違反した場合は、119条1号により、「6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金」が科せられる。

4
3B
 36条協定における「特別条項」とは、36条5項「1項の協定においては、2項各号に掲げるもののほか、当該事業場における通常予見することのできない業務量の大幅な増加等に伴い、臨時的に3項の限度時間を超えて労働させる必要がある場合において、
・1か月について労働時間を延長して労働させ、及び休日において労働させることができる時間(100時間未満に限る)
・1年について労働時間を延長して労働させることができる時間(720時間を超えないこと)
を定めることができる、
・この場合、1年単位の変形労働時間制でなければ、1か月について45時間を超えることができる月数(1年について6か月以内に限る)を定めなければならない」
 本肢の場合、「特別条項により、 1か月について95時間、1年について 700時間の時間外労働を可能としている」とあり、上記の制限をクリアしている。(1か月に45時間を超える月数については不明である)
 本肢に、1月から5月までの具体的な時間外労働時間が示され、これが合法かと聞いているのは、特別条項に関しては、さらに規制が設けられており、36条6項によると、 
ア 1か月について労働時間を延長して労働させ、及び休日において労働させた時間は100時間未満であること。
イ 対象期間の初日から1か月ごとに区分した各期間に当該各期間の直前の1か月、2か月、3か月、4か月及び5か月の期間を加えたそれぞれの期間における労働時間を延長して労働させ、及び休日において労働させた時間の1か月当たりの平均時間は80時間を超えないこと、とある。
 本肢の場合、アは合格
 イについては、たとえば、5月をチエックするときは、5月と4月、5月と4月3月、5月と4月3月2月、5月と4月3月2月1月の時間外労働時間(休日労働時間を含む)の平均値が80時間を超過していないかを確認する。
 3月をチェックすると、
 3月と2月(直前1か月)の時間外労働時間の平均値は77.5時間でOK
 3月と2月、1月(直前2か月)の時間外労働時間の平均値は81.67時間で×
11
3A
 36条7項によれば、「厚生労働大臣は、労働時間の延長及び休日の労働を適正なものとするため、1項の協定で定める労働時間の延長及び休日の労働について留意すべき事項、当該労働時間の延長に係る割増賃金の率その他の必要な事項について、労働者の健康、福祉、時間外労働の動向その他の事情を考慮して指針を定めることができる」
 なお、この指針は これまであった限度基準としての指針とは異なり、指針の中で限度時間を設定しているのではない。 
 36条8項によれば、「1項の協定をする使用者及び労働組合又は労働者の過半数を代表する者は、当該協定で労働時間の延長及び休日の労働を定めるに当たり、当該協定の内容が前項の指針に適合したものとなるようにしなければならない」とあり、ここまでは正しい。
 問題文の最後にある「この基準に適合しない協定」についてであるが、36条9項には、「行政官庁は、7項の指針に関し、1項の協定をする使用者及び労働組合又は労働者の過半数を代表する者に対し、必要な助言及び指導を行うことができる」とある。
 すなわち、指針に適合しない時間外・休日労働協定であっても、所轄労働基準監督署長は適合したものに変更することはできず、適合したものになるよう助言・指導するに留まる。
⇒これは指針への対応の話であって、36条1項から6項までの規定に違反すれば、罰則も課せられる。
13
選択
 労働基準法第36条においては、行政官庁は、同条第7項の規定に基づいて定められる指針(労働基準法第36条第1項の協定で定める労働時間の延長及び休日の労働について留意すべき事項等に関する指針)に関し、「第1項の協定をする使用者及び(A)労働組合又は労働者の過半数を代表する者に対し、必要な(B)助言及び指導を行うことができる」旨定められている。
[解説]
 
指針に関しては、36条7項から、「労働時間の延長及び休日の労働を適正なものとするため、1項の協定(いわゆる36協定)で定める労働時間の延長及び休日の労働について留意すべき事項、当該労働時間の延長に係る割増賃金の率その他の必要な事項について、労働者の健康、福祉、時間外労働の動向その他の事情を考慮して指針を定めることができる」とある通り。
 ここで、この指針「労働基準法36条1項の協定で定める労働時間の延長及び休日の労働について留意すべき事項等に関する指針」はこちらの通り。
 また、36協定が、労働基準法の各規定の要件を満足してはいるが、この指針には適合していない場合であっても、直ちにその協定を無効とすることまではできないが、36条9条にあるように、
 「行政官庁は、指針に関し、1項の協定をする使用者及び労働組合又は労働者の過半数を代表する者に対し、必要な助言及び指導を行うことができる」ことになっている。
12
7C
 労働基準法における女性の時間外労働に関する規定は、男女の雇用機会均等化の観点から、平成11年4月に廃止された。
 これに伴う激減緩和策の一つとして、労働基準法附則133条において、「旧36条2項による基準を定めるに当たっては、子の養育又は家族の介護を行う労働者「特定労働者」の職業生活の著しい変化がその家庭生活に及ぼす影響を考慮して、平成14年3月31日までの間、特定労働者(時間外労働を短いものとすることを使用者に申し出た者に限る)の1年についての労働時間の延長の限度についての基準は、150時間を超えないものとしなければならない」と定め、360時間が限度ではなかった。
 その後、平成14年4月1日以降は、育児介護休業法の17条18条において、
 「小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者、要介護状態の対象家族を介護する労働者が請求したときは、制限時間(1月について24時間1年について150時間)を超えて労働時間を延長してはならない。ただし、事業の正常な運営を妨げる場合は、この限りでない」とされている。

4
3C
 「労働者が遅刻をし、その時間だけ通常の終業時刻を繰り下げて労働させる場合」とある。
 このような場合の、36条協定や割増賃金の支払い義務については、通達(S29.12.01基収6143号など)に、
 「32条(法定労働時間)又は40条(労働時間及び休憩の特例)に定める労働時間は実労働時間をいうものであり、時間外労働について36条1項に基づく協定及び37条に基づく割増賃金の支払いを要するのは、上記の実労働時間を超えて労働させる場合に限るものである。
 例えば労働者が遅刻をした場合その時間だけ通常の終業時刻を繰り下げて労働させる場合には、一日の実労働時間を通算すれば32条又は40条の労働時間を超えないときは、36条第1項に基づく協定及び37条に基づく割増賃金支払の必要はない」とある通り。

4
3D
 「就業規則に所定労働時間を1日7時間、 1週35時間と定め、1週35時間を超え1週間の法定労働時間まで労働時間を延長する場合」とある。
 このように法定労働時間内での時間外労働については、通達(S23.04.28基収1497など)に、「就業規則に実労働時間を1週38時間と定めたときは、1週38時間を超え1週間の法定労働時間まで労働時間を延長する場合、36条1項の規定に基づき労働組合と協定する必要があるか」というお伺いに対して、回答は「各日の労働時間が8時間を超えない限り36条1項に基づく協定の必要はない」とある。
 なお、問題文には、「各日の労働時間が8時間を超えずかつ休日労働を行わせない限り」とあるが、これは、1週間の労働時間が法定労働時間を超えなくても、35条に「毎週少なくとも1回の休日を与えなければならない」とあり、休日に労働させるときは、36条1項の協定が必要になってくるからである。
 つまり、本肢の場合、「各日の労働時間が8時間を超えずかつ休日労働を行わせない限り、36条1項の協定をする必要はない」

4
3E
 「36条1項の協定は、事業場ごとに締結するよう規定されている」とある。
 確かに、36条1項には、「当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定・・・・」とある。
 労働基準法コンメンタール(厚生労働省労働基準局編)においても、「「事業場」とは、本法の適用事業として決定される単位であり、したがって数事業場を擁する企業にあっても、協定はそれぞれの事業場ごとに締結されなければならない。
 しかしながら、協定の締結単位と協定当事者を誰にするかとは別個の問題である」としている。
 本肢の場合、通達(S24.02.09基収4234など)において、
 「36条1項の協定は、当該事業場ごとに締結するよう規定されているが、他府県(同一府県内を含む)に本社があって、本県に支店又は出張所がある場合、本社において社長と当該会社の労働組合本部の長とが締結した協定書に基づき、支店又は出張所がそれぞれ当該事業場の業務の種類、労働者数、所定労働時間等所要事項のみ記入して、所轄労働基準監督署長に届け出た場合、有効なものとして差支えないか」というお伺いに対し、回答は、
 「当該組合が各事業場ごとにその事業場の労働者の過半数で組織されている限り、見解の通り、取り扱って差し支えない」とあった。
⇒「協定の締結単位と協定当事者とは別個の問題である」
22
4D
 災害等による臨時の必要がある場合の時間外労働等について規定した33条の1項に、
 「災害その他避けることのできない事由によって、臨時の必要がある場合においては、使用者は、行政官庁の許可を受けて、その必要の限度において労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる。
 ただし、事態急迫のために行政官庁の許可を受ける暇がない場合においては、事後に遅滞なく届け出なければならない」とある。
  なお、年少者の場合は60条において、
 「時間外及び休日労働(36条)、労働時間及び休憩の特例の規定(40条)は、満18才に満たない者については、これを適用しない」とあるが、33条については適用を除外していないので、18歳未満の場合でも、行政官庁の許可を受ければ、災害等による臨時の必要がある場合には時間外労働を(深夜業も含めて)させることができる。
11
3E
 災害等による臨時の必要がある場合の時間外労働等について規定した33条の1項により、
 「ただし、事態急迫のために行政官庁の許可を受ける暇がない場合においては、事後に遅滞なく届け出なければならない」とある。
 「当該年度の終了時まで」では遅すぎる。
 また、遅滞なく事後に届けたとしても、同2項により
 「前項ただし書の規定による届出があった場合において、行政官庁がその労働時間の延長又は休日の労働を不適当と認めるときは、その後にその時間に相当する休憩又は休日を与えるべきことを、命ずることができる」ともあり、不適当と認定されることもありうる。
26
5E
 34条では、
 「使用者は、労働時間が6時間を超える場合においては少くとも45分、8時間を超える場合においては少くとも1時間の休憩時間を労働時間の途中与えなければならない」としている。
 この場合の休憩時間とは、通達(S22/09.13発基17)に、
 「休憩時間とは単に作業に従事しない手待ち時間を含まず、労働者が権利として労働から離れることを保障されている時間の意であって、その他の拘束時間は労働時間として取扱うこと」とある。
 たとえば、いつ電話がかかってくるかもわからないが、かかってきたら応対しなければならない時間などは、労働から離れる(就労しない)ことが保障された時間ではないので、休憩時間ではない。

5
2オ
 「工場の事務所において、昼食休憩時間に来客当番として待機させた場合、結果的に来客が1人もなかった」とある。よくあることでる。
 問題は、この時間は34条にいう休憩時間として認められるかということであるが、通達(S22/09.13発基17)によれば、
 「休憩時間とは単に作業に従事しない手待ち時間を含まず、労働者が権利として労働から離れることを保障されている時間の意であって、その他の拘束時間は労働時間として取扱うこと」とある。
 たとえば、いつ来客があるかわからないが、来客があれば応対しなければならない時間などは、労働から離れる(就労しない)ことが保障された時間ではないので、休憩時間とは認められない。
 たとえ、結果として来客が1人もなかった場合であっても、その時間帯は休憩時間ではなく労働時間である。

5
2エ
  本肢に関し、34条1項に定めてあるのは、「使用者は、労働時間が6時間を超える場合においては少くとも45分の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならないる」とあるのみ。
 この意味については、労働法コンメンタール「労働基準法労働基準法上P450」によると、「6時間を超える場合とは、始業後6時間を経過した際少くとも45分の休憩が与えられなければならないという意味ではなく、一勤務の実労働時間の総計が6時間を超え8時間までの場合は、その労働時間の途中に45分の休憩を与えなければならないという意味であって、休憩時間の置かれる位置は問わない。
 8時間を超える場合の意味についても同様である」とある。
23
4C
 休憩時間について規定した34条に、
 「労働時間が6時間を超える場合においては少くとも45分8時間を超える場合においては少くとも1時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない」とある。
 これは、36協定を締結して行政官庁に届け出た場合であろうがなかろうが関係ない(もちろん、法定労働時間(通常の場合、1日8時間あるいは1週40時間)を超えて労働させる場合は、この手続きが必要ではあるが)
 なお、通達(S22.2.27基発401、S26.10.23基収5058)によれば、「34条における労働時間とは実労働時間の意であり、これが1日8時間を超える場合には、所定労働時間の途中に与えられる休憩時間を含めて少なくとも1時間の休憩時間が与えられなければならない」とある。
 よって、通常の所定労働時間内労働だけであれば、休憩時間は45分でよいが、これを超えて時間外労働を命ずる日においては、時間外となる前に、休憩時間が1時間を超えるようにしておかなければならない。
 時間外労働が終った後に、15分の休憩を与えても意味がない。
21
6B
 休憩時間について規定した34条に、
 「労働時間が6時間を超える場合においては少くとも45分、8時間を超える場合においては少くとも1時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない」とある。
 本肢の場合、労働時間の合計が6時間丁度であり、6時間を超えていないので、休憩を与える義務はない。
 なお、所定時間外の労働が1時間を超えると予想される場合は、合計で6時間を超えることになるので、まずは45分以上の休憩を与え、その後に労働を再開させるようにしなければならない。(全部終わった後の休憩はだめ)
24
5A
 前段については、34条に、
 「労働時間が6時間を超える場合においては少くとも45分、8時間を超える場合においては少くとも1時間の休憩時間を 労働時間の途中に与えなければならない」とある通り。
 後段に、「1日の労働時間が16時間を超える場合」とあるが、この場合に、「少なくとも2時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない」とするルールはない。
 実労働時間が8時間を超える場合の休憩時間についての通達(S22.2.27基発401、S26.10.23基収5058)によれば、「法34条における労働時間とは実労働時間の意であり、これが1日8時間を超える場合には、所定労働時間の途中に与えられる休憩時間を含めて少なくとも1時間の休憩時間が与えられなければならないものであること」と念押しされている。
 すなわち、「実際の労働時間が8時間を超えた場合、何時間超過しようと、休憩時間は少くとも1時間あれば合法である」
 休憩時間を長くしてやたらに長時間にわたり拘束することもよくないという考えである。

5
2イ
 1昼夜交替勤務の場合の休憩については、通達(S23.05.10基収1582)に、
 「1昼夜交替制は労働時間の延長ではなく2日間の所定労働時間を継続して勤務する場合であるから、法34条の条文の解釈(1日の労働時間に対する休憩と解する)により1日の所定労働時間に対して1時間以上の休憩を与えるべきものと解して、2時間以上の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならぬとの見解は如何」とのお伺いに対し、回答は、
 「1昼夜交替制においても、法律上は労働時間の途中において法34条1項の休憩(1時間の休憩)を与えればよい」とある。
20
4C
 34条3項に、
 「使用者は、休憩時間を自由に利用させなければならない」とあり、これが原則である。
 しかしそれならば、休憩時間中は何をやってもよいかというと、「例外のない規則はない」というのも事実である。
 休憩時間中の政治活動についての最高裁のある判例(「目黒電報電話局事件(S52.12.13)によると、
 「私企業においては、元来、職場は業務遂行のための場であつて政治活動その他従業員の私的活動のための場所ではないから、従業員は職場内において当然には政治活動をする権利を有するというわけのものでないばかりでなく、
 職場内における従業員の政治活動は、従業員相互間の政治的対立ないし抗争を生じさせるおそれがあり、また、それが使用者の管理する企業施設を利用して行われるものである以上その管理を妨げるおそれがあり、
 しかも、それを就業時間中に行う従業員がある場合にはその労務提供業務に違反するにとどまらず他の従業員の業務遂行をも妨げるおそれがあり、
 また、就業時間外であつても休憩時間中に行われる場合には他の従業員の休憩時間の自由利用を妨げ
 ひいてはその後における作業能率を低下させるおそれのあることがあるなど、企業秩序の維持に支障をきたすおそれが強いものといわなければならない。
 したがつて、一般私企業の使用者が、企業秩序維持の見地から、就業規則により職場内における政治活動を禁止することは、合理的な定めとして許されるべきである」
 さらに、34条との関係については、
 「被上告人は、本件ビラ配布は正午の休憩時間を利用して行つたものであるのにこれを懲戒処分の対象とすることは、労基法34条3項項に違反する、と主張する。 
 一般に、休憩時間中は、使用者の指揮命令権の拘束を離れ、この時間を自由に利用することができ、もとよりこの時間をビラ配り等のために利用することも自由であつて、使用者が従業員の休憩時間の自由利用を妨げれば34条3項違反の問題を生じ、休憩時間の自由利用として許される行為をとらえて懲戒処分をすることも許されないことは、当然である。
 しかしながら、休憩時間の自由利用といつてもそれは時間を自由に利用することが認められたものにすぎず、その時間の自由な利用が企業施設内において行われる場合には、使用者の企業施設に対する管理権の合理的な行使として是認される範囲内の適法な規制による制約を免れることはできない
 また、従業員は労働契約上企業秩序を維持するための規律に従うべき義務があり、休憩中は労務提供とそれに直接附随する職場規律に基づく制約は受けないが、右以外の企業秩序維持の要請に基づく規律による制約は免れない]とした。
 よってこの判例では、「休憩時間内に職場内で政治活動を行うことを禁止することは許されない」とはいっていない。
28
4E
 問題文冒頭にあるように、「労働基準法第34条に定める休憩時間は、労働者が自由に利用することが認められているものである」
 ただし、通達(S22.9.13発基17)において、「休憩時間の利用については事業場の規律保持上必要な制限を加えることは、休憩の目的を害わない限り差し支えない」ともある。
 このあたりに、争いの種がありそうだ。
 本肢にある最高裁判例とは、目黒電報電話局事件(S52.12.13)のことで、そこにおいて最高裁は
 「一般に、休憩時間中は、使用者の指揮命令権の拘束を離れ、この時間を自由に利用することができ、もとよりこの時間をビラ配り等のために利用することも自由であつて、使用者が従業員の休憩時間の自由利用を妨げれば34条3項違反の問題を生じ、休憩時間の自由利用として許される行為をとらえて懲戒処分をすることも許されないことは、当然である。
 しかしながら、休憩時間の自由利用といつてもそれは時間を自由に利用することが認められたものにすぎず、その時間の自由な利用が企業施設内において行われる場合には、使用者の企業施設に対する管理権の合理的な行使として是認される範囲内の適法な規制による制約を免れることはできない。・・・・・」 
 「局所内において演説、集会、貼紙、掲示、ビラ配布等を行うことは、休憩時間中であつても、局所内の施設の管理を妨げるおそれがあり、更に、他の職員の休憩時間の自由利用を妨げ、ひいてはその後の作業能率を低下させるおそれがあつて、その内容いかんによつては企業の運営に支障をきたし企業秩序を乱すおそれがあるのであるから、これを局所管理者の許可にかからせることは、合理的な制約ということができる。
 本件ビラの配布は、休憩時間中であつても、企業の運営に支障を及ぼし企業秩序を乱すおそれがあり、許可を得ないでその配布をすることは公社就業規則に反し許されるべきものではないから、これをとらえて懲戒処分の対象としても、労基法34条3項に違反するものではない」とした。
21
6A
 34条3項に、
 「使用者は、休憩時間を自由に利用させなければならない」とあり、これが原則である。
 しかしそれならば、休憩時間中は何をやってもよいかというと、「例外のない規則はない」というのも事実であり、過去問(20-4C)もその一例である。
 さらに、最高裁判例「いわゆる米軍立川基地事件」(昭49.11.29))においても、
 「使用者は、休憩時間を自由に利用させる義務を負うが、その事業施設に対する管理権を有する以上、施設内における労働者の休憩時間中の特定の行動を規制しても、それが管理権の合理的な行使として是認されうる範囲内にある限り、有効である」としている。
 この点については、労基法制定の当初から、通達(S22.9.13発基17)において、
 「休憩時間の利用については事業場の規律保持上必要な制限を加えることは、休憩の目的を害わない限り差し支えない」とし、
 外出についても、通達(S23.10.30基発1575)において、
 「休憩時間中の外出について所属長の許可を受けさせる取り決めになっていても、事業場内において自由に休息し得る場合には、必ずしも違法にはならない」としている。
 つまり、「休憩時間中の外出許可制は絶対にだめ」としているわけではない。

5
2ウ
 休憩時間の利用に関しては、34条3項に、
 「使用者は、休憩時間を自由に利用させなければならない」とあり、これが原則である。
 ただし、労基法制定の当初から、通達(S22.9.13発基17)において、
 「休憩時間の利用については事業場の規律保持上必要な制限を加えることは、休憩の目的を害わない限り差し支えない」とし、
 外出についても、通達(S23.10.30基発1575)において、
 「休憩時間中の外出について所属長の許可を受けさせる取り決めになっていても、事業場内において自由に休息し得る場合には、必ずしも違法にはならない」としている。
 つまり、「休憩時間中の外出許可制は絶対にだめ」としているわけではない。
24
5B
 34条3項に、
 「使用者は、休憩時間を自由に利用させなければならない」とあり、これが原則である。
 しかしながら過去問解説'21-6A)にあるように、実際にはこれにもある程度の限度があり、通達(S22.9.13発基17)においても、
 「休憩時間の利用については事業場の規律保持上必要な制限を加えることは、休憩の目的を害わない限り差し支えない」としている。
23
4A
 問題文にある、34条1項に定める休憩時間とは、
 「労働時間が6時間を超える場合においては少くとも45分、8時間を超える場合においては少くとも1時間の休憩時間を労働時間の途中に 与えなければならない」とする休憩時間である。
 そして、同2項から、
 「1項の休憩時間は、一斉に与えなければならない。(これが原則) ただし、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定があるときは、この限りでない」 とすしている。
 具体的には、労使協定による一斉休暇の適用除外について定めた施行規則15条に、
 「使用者は、34条2項ただし書の協定をする場合には、@一斉に休憩を与えない労働者の範囲及び、A当該労働者に対する休憩の与え方について、協定しなければならない」とし、
 その意義については、通達(H11.1.29基発45(自由利用担保))に、「休憩時間の自由利用を担保するための手段として一斉付与を義務化しているが、労務管理の個別化が進展し、かつ自律的に働くことを希望する労働者がいることなどから、一斉付与の適用除外許可を廃止すると同時に、労使の自主的な話合いの上、職場の実情に応じた労使協定を締結することにより、適用除外とすることとした」とある。
 すなわち、「どの範囲の労働者に対して、どのような休憩の与え方をするかを協定で定め、その通りに実行」すれば、34条1項に定める休憩時間を一斉に与えなくてもよい。
29
1C
 34条2項によると、「1項の休憩時間は、一斉に与えなければならない。ただし、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定があるときは、この限りでない」とある。
 つまり、休憩時間は事業場毎に一斉に与えるのが原則であるが、労使協定に定めがあれば、一斉付与でなくても構わない。
 この場合の労使協定においては、施行規則15条にあるように、「一斉付与とはしない労働者の範囲と、それらの労働者に対する休憩の与え方」を協定しなければならない。
 参考までに、問題文にある「労働基準監督署長の許可を受けた場合に限り」とあるのは、H10年の法改正前の規定であり、この部分が労使協定の締結による方法に改められた。
 その意義については、通達(H11.1.29基発45(自由利用担保))を参考にされたい。
12
5A
 休憩時間については、34条2項にあるように、「一斉に与えなければならないのが原則である」
 ただし、これには例外が二つあり、そのひとつは40条による 特例であるが、
 「製造業、鉱業、建設業、農林業及び水産、畜産業以外の事業で、公衆の不便を避けるために必要なものその他特殊の必要あるものについては、その必要避くべからざる限度で、休憩などに関する規定について、厚生労働省令で別段の定めをすることができる」 とあるので、製造業はこの特例に該当しない。
 製造業が特例に該当していないことは、一斉休憩の例外について定めた厚生労働省令(施行規則31条)からも明らかである。 
 もう一つの例外は、34条2項後段のただし書きによるもので、
 「一斉休憩を適用したくない場合は、 事業場の過半数で組織する労働組合(これがない場合は事業場の労働者の過半数を代表する者)と書面による協定が必要である」 
 労使委員会が設置されている事業場であれば、労使委員会による決議でもよい。
21
6C
 労働時間及び休憩の特例40条によると、
 「製造業、鉱業、建設業、農林業及び水産、畜産業以外の事業で、公衆の不便を避けるために必要なものその他特殊の必要あるものについては、その必要避くべからざる限度で、休憩などに関する規定について、厚生労働省令で別段の定めをすることができる」
 とあり、建設業は特例に該当しない。
 よって、建設業において、一斉休憩を適用したくない場合は34条2項により書面による労使協定が必要で ある。
 問題文には、「所轄労働基準監督署長の許可を受けなければならない」とあるが、平成10年の法改正があるまではこれでよかった。しかしながら改正後は、労使による話し合いを尊重することになり、労使協定の締結でよいことになった。(H11.1.29基発45(自由利用担保))
 もし、一斉休憩の例外について定めた厚生労働省令(施行規則31条)に該当する事業場であれば、労働基準監督署長の許可や労使協定の締結などなくても、休憩の一斉付与の義務は免れる、
11
3C

 

 40条に基づく休憩の特例の一つとして、休憩を与えなくてもよい者が施行規則32条に規定されており、「航空機の操縦士など、長距離にわたり継続して乗務する者、屋内勤務者30人未満の郵便局において郵便の業務に従事するものについては、休憩時間を与えないことができる」とある。
 しかし問題文にあるような「病院に勤務する医師、看護師」についてはこのような例外規定は適用されない。
 なお、施行規則31条にある13号の「病者又は虚弱者の治療、看護その他保健衛生の事業」には該当するので、休憩の付与は必要であるが、一斉休憩でなくても良い。
14
4D
 前団の航空機操縦士については、過去問(11-3C)の解説の通りで、「航空機による旅客運送の事業における航空機の操縦士で長距離にわたり継続して乗務する者については、休憩時間を与えないことができる」
 後段の坑内労働については、38条2項により、
 「坑内労働については、労働者が坑口に入った時刻から坑口を出た時刻までの時間を、休憩時間を含め労働時間とみなす。但し、この場合においては、34条2項(休憩の一斉付与)及び3項(休憩時間の自由利用)の規定は適用しない」
15
6A
 休憩時間は34条2項にあるように、「一斉に与えなければならない」のが原則である
 しかしながら、特定の事業については一斉付与の必要がないという施行規則31条による例外規定がある。
 同条によると、13号、「病者又は虚弱者の治療、看護その他保健衛生の事業については、労働者に休憩を一斉に与える必要はない」とある。
 しかし、満18才に満たない労働者に対しては、60条1項により、
 「1箇月単位、1年単位の変形労働時間制、1週間単位の非定型的変形労働時間制、フレックスタイム制、36条による時間外及び休日労働、及び40条の労働時間及び休憩の特例(別段の定め)の規定は、満18歳に満たない者については、これを適用しない」とある。
 よって、保健衛生の事業であっても、満18才に満たない労働者に対しては、休憩を一斉に与えなければならず、一斉付与しないようにするためには、労使協定の締結という手続き必要である。

5
2ア
 休憩時間は34条2項にあるように、「一斉に与えなければならない」のが原則である
 しかしながら、特定の事業については一斉付与の必要がないという施行規則31条による例外規定がある。
 同条によると、1号から、「道路による貨物の運送の事業」は一斉休憩の規定は、適用されない」が、「ドック、船舶、岸壁、波止場、停車場又は倉庫における貨物の取扱いの事業」は別表第1の5号に該当し、施行規則31条による除外事業ではない。すなわち、一斉休憩の規定は適用される。

4
7A
 32条の1項、2項によれば、労働時間は「1週間については40時間1日については8時間(いずれも休憩時間を除く)を超えてはならない」とあり、これを法定労働時間という。
 しかしながら、これについては40条に特例があり、「一定の事業で、公衆の不便を避けるために必要なもの、その他特殊の必要あるものについては、その必要避くべからざる限度で、労働時間及び休憩に関する規定について、厚生労働省令で別段の定めをすることができる」とある。
 そして、この40条に基く労働時間の特例については、施行規則25条の2に、「使用者は、法別表第1の8号(物品の販売、配給、保管若しくは賃貸又は理容の事業)、10号(映画の製作又は映写、演劇その他興行の事業(ただし、映画の製作の事業を除く)、13号(病者又は虚弱者の治療、看護その他保健衛生の事業)及び14号(旅館、料理店、飲食店、接客業又は娯楽場の事業)に掲げる事業のうち、常時10人未満の労働者を使用するものについては、 32条の規定にかかわらず、1週間について44時間、1日について8時間まで労働させることができる」
 すなわち、1週間については、法定労働時間+おまけの4時間。
 いずれにしても、1週間について48時間、1日について10時間は長すぎる。
18
3E
 施行規則25条の2において、
 「使用者は、商業などの事業のうち、常時10人未満の労働者を使用するものについては、1週間について44時間、1日について8時間まで労働させることができる」  
 とある。なお、32条の規定とは、
 「1週間について休憩時間を除き40時間、1日について休憩時間を除き8時間を超えて労働させてはならない」
 施行規則25条の2による特例が認められる根拠は、40条において、
 「公衆の不便を避けるために必要なもの、その他特殊の必要あるものについては、厚生労働省令で別段の定めをすることができる」とあることによる。 
30
1ウ
 労働時間の特例については、40条の規定に基づき、施行規則25条の2において、
 「使用者は、商業などの事業のうち、常時10人未満の労働者を使用するものについては、1週間について44時間、1日について8時間まで労働させることができる」とある。
 ここで、「常時10人未満の労働者を使用」について、法令上の明確な定義はなさそうであるが、通達(H9.03.25基発195(32条関係)において、「(労働時間の特例に該当するか否かにおける)労働者数の判断は、当該事業場の通常の状況によって判断するものであり、臨時的に労働者を雇入れた場合や欠員が生じた場合については、労働者数の変更があった者として取り扱わないこと」とある。
 これらで注意すべきは、「常態として」とか「通常の状況で判断」としか述べていないので、「たとえば週3日とか月数日のシフトで勤務しているアルバイトやパートなどであっても、労働日数が少ないというだけでは、人数から排除されていない」ということである。
 本肢の場合、「週に2日勤務する労働者であっても、継続的に当該事業場で労働している者」とあるから、これも使用される労働者数に加えるべきであろう。
17
7C
 前段については、40条及び施行規則25条の2により、
 「公衆の不便を避けるために必要なものその他特殊の必要あるもの(商業や保健衛生業、客娯楽業などで、常時10人未満の労働者を使用するもの)については、1週間について44時間、1日について8時間まで労働させることができる」とあり、正しい。
 後段については、施行規則25条の2の4項において、
 「フレックスタイム制(清算期間が1か月を超えるものである場合に限る)、1年単位の変形労働時間制又は1週間単位の非定型的変形労働時間制については、特例事業に関する規定は適用しない」とある。
 すなわち、「1か月単位の変形労働時間制、フレックスタイム制(清算期間が1か月以内)であれば、期間を平均し1週間当たりの労働時間が法定労働時間(特例事業では44時間)を超えない範囲であればよいが、
 「フレックスタイム制であっても清算期間が1か月を超えるもの」、「1年単位の変形労働時間制」、1週間単位の非定型的変形労働時間制では、期間を平均し1週間当たりの労働時間が40時間(特例事業であっても40時間)を超えない範囲でなければならない」
たとえば、1年単位の変形労働時間制は対象期間が長いので、その期間を平均して1週間当たりの労働時間を40時間と制限しても、繁忙期には相当の長時間労働になる恐れがある。よって、特例事業の特典を認めないだけでなく、労働時間や労働日数にさまざまな制約が課せられている。
 フレックスタイム制(清算期間が1か月を超えるもの)についても同様。
 「1週間単位の非定型的変形労働時間制」は30人未満の労働者を使用する小売業、旅館、料理店、飲食店だけのものであり、それだけですでに特典になっているのだ。
23
4B
 問題文にある35条違反とは、「使用者は、労働者に対して、毎週少くとも1回の休日を与えなければならず、これに違反した場合は、119条により、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金となる」
 これが原則であるが、35条2項に、その例外として
 「前項の規定は、4週間を通じ4日以上の休日を与える使用者については適用しない」とある。
 この2項の位置づけについては、通達(S22.9.13発基17)に
 「1項(毎週1日)が原則であり2項(4週間に4日以上)は例外であることを強調し徹底させること」となっているにも注意を。
 なお、起算日については、施行規則12条の2の2項
 「使用者は、法35条2項の規定により労働者に休日を与える場合には、就業規則その他これに準ずるものにおいて、4日以上の休日を与えることとする4週間の起算日を明らかにするものとする」による。
 ここで、「就業規則その他これに準ずるものにおいて」とあるのは、就業規則があればその就業規則において、常時使用する労働者数が10人に満たない事業場にあっては就業規則に準ずるもので、という意味である。
13
7A
 法定休日については、原則が35条1項で「毎週1日以上」、過去問解説(23-4B)にあるように極めて例外的に、35条2項の「4週間に4日以上」と規定されている。
 後者の「4週間で4日以上のの変形休日制」については、通達(S23.9.20基発1384号)に、
 「4週間を通じ4日以上の休日とは、特定の4週間に4日の休日があればよく、どの4週を区切っても4日の休日が与えられていなければならない趣旨ではない。
 なお、特定の4週間を明確にさせるため、施行規則12条の2の2項により、その起算日を就業規則等で明らかにすることとされているので、留意すること」とある。
 たとえば、下記のように休日を付与した場合
1週 1日 2週 0日 3週 2日 4週 1日
5週 0日 6週 2日 7週 1日 8週 1日
・2週から5週までの4週間を区切ると、3日の休日しかないが、
・1週から起算して4週間づつ区切ると、4週間で4日が確保されている、ので合法である。
13
7C
 休日の振替に関する通達(S63.3.14基発150(35条関係2))によると、「就業規則において休日を定めるとともに、別に、休日の振替を必要とする場合には休日を振り替えることができる旨の規定を設け、これによって、休日を振り替える前にあらかじめ振り替えるべき日を特定して振り替えた場合は、当該休日は労働日となり、休日に労働させることにならない。
 以上によることなく、休日に労働を行った後に、その代償としてその後の特定の労働日の労働義務を免除するいわゆる代休の場合はこれに当たらない(すなわち、当初予定された休日における労働は割増賃金が発生する休日労働となる)」とある。
 問題文の最後にある「この場合(振替後も)、4週4日の休日は確保されている」ことも重要な要件である。
 なお、振り替えるべき日については、通達(S63.3.14基発150(35条関係4))に、「振り替えるべき日については、振り替えられた日(当初の休日)以降できる限り近接している日が望ましい」とある。
 問題文には、「8日後」とあるが、これが妥当かどうかは別としても、「4週4日の休日は確保されている」とあるので、法的には問題なかろう。
21
6E
 過去問解説(13-7C)にあるように、
 @就業規則において休日を振り替えることができる旨の規定を設け、
 Aあらかじめ振り替えるべき日を特定し、
 B振り替え後においても、4週4日の休日が確保されている
 場合は、労働日と休日とを入れ替えることができる。
18
5C
 休日振替については、通達(S63.3.14基発150(35条関係2))にある通りで、「就業規則に休日を振り替えることができる旨の規定を設け、この規定に基づいて、あらかじめ、ある週の休日を翌週の労働日に振り替えた場合には、当該休日は労働日となりその日に労働させても、休日労働とはならない。すなわち、休日労働に伴う割増賃金の発生はない」。
 注意すべきは、同じ週の日どうしを振替えするときは問題ないが、もともとの休日を翌週のいずれかの労働日と入れ替えると、もともと休日であった週は1日、労働日が増えることになる。
 よって、その週の労働時間が40時間(または44時間)を超えると、時間外労働(休日労働ではない)になるのである。
 本肢はこのことをいっており、通達(S63.3.14基発150(35条関係3))においても、このことを念押ししている。。
 休日振替はあらかじめ振替え日をきめること。。 
(1)土曜日が休日のところ、同じ週の金曜日に休んでもらうことを前提に、土曜日に出勤する。 
⇒土曜日の労働時間に相当する賃金が発生。その週の労働時間が40時間(44時時間)を超えない場合は、時間外労働に関する割増賃金は発生しない。
(2)土曜日が休日のところ、翌週の月曜日に休んでもらうことを前提に、今週の土曜日は出勤させる。  
⇒土曜日の労働時間に相当する賃金が発生。その週の労働時間が40時間(44時間)を超えた時間分だけは、平日割増賃金が発生する。
  翌週の月曜日については、通常は賃金カットする(よって、割増賃金を除き、差し引き0になる)が、就業規則等の定めにもよる。
 代休は、休日出勤させた後に、他の日を休ませること。
(1)土曜日が休日のところ、出勤させる。その後、翌週の火曜日は休んでいいという。
⇒その土曜日は休日出勤なので、その労働時間に相当する賃金のほか、休日割増賃金が発生。
  火曜日については、通常は賃金カットする(よって差し引き、休日割増賃金分がプラスになる)が、就業規則等の定めにもよる。
29
1D
 労働基準法35条に定める休日は、「毎週少くとも1回の休日を与えなければならない」 のが原則である。
 そして、「1回の休日」については、S23.4.5基発535(35条関係)によれば、「休日とは暦日を指し、午前零時から午後12時までである」とあり、暦日休日が原則である。
24
5C
 暦日休日の原則に関する通達(S23.4.5基発535(35条関係))に、
 「休日とは暦日を指し、午前零時から午後12時までである」とあり、これが原則である。
 本肢では、「午前8時から翌日の午前8時までの労働と、同じく午前8時から翌日の午前8時までの非番とを繰り返す1昼夜交代勤務の場合」において、「非番の日が24時間継続していてもこれは休日ではない」とある。
 これを、暦日休日の原則の観点からみてみると、非番で勤務をしなくてよいのは、午前8時からであって、その日の午前零時から4時間は勤務しているので、非番日は休日とはいえないことがわかる。
 このような場合は、通達(S23.11.09基収2968(35条関係))にあるように、たとえば、「6日目の非番日が24時間継続していてもこれは休日ではなく、その日の深夜0時から翌日午後12時までを別途に休日として与えなければならない。(実際には、休日が終わる午後12時から午前8時までの8時間も不就労とし、そこから、労働日、非番日・・・と続けることになる)、
13
7B
 暦日休日の原則に関するS23.4.5基発535(35条関係)に、
 「休日とは暦日を指し、午前零時から午後12時までである」とあるから、前段は正しい。
 しかしながらこれには例外もあり、交替制の場合の休日に関する通達(S63.3.14基発150号(35条関係))によると、、
 「休日は暦日によるべきことが原則であるが、
 例えば、8時間3交替連続作業のような場合において暦日休日制の解釈をとることは、連続24時間以上の休息が2暦日にまたがる際は、1週2暦日の休日を与えなければならないこととなり、1週1日の週休制をとった立法の趣旨に合致しないこととなる。
 そこで、番方編成による交替制における「休日」については、次のいずれにも該当するときに限り、継続24時間を与えれば差し支えないものとして取扱う」
@番方編成による交替制によることが就業規則等により定められており、制度として運用されていること。
A各番方の交替が規則的に定められているものであって、勤務割表等によりその都度設定されるものではないこと。 
 具体例:8時間3交替連続作業の工場において、Aが1番方(6時から14時)、Bが2番方(14時から22時)、Cが3番方(22時から翌朝6時)で労働することとし、土曜日朝6時まで操業した場合、Cの休日は原則によると土曜日の24時(日曜日0時)から日曜日の午後12時までとなるから、操業は月曜日からとならざるをえない。
 しかしこの場合、A、Bは前の週の金曜日の途中から休んでおり、法定休日が2暦日あることになる。
 よって、番方編成による交替制においては、一定の条件を満たす限り、歴日でなくても継続24時間であれば法定休日と認めるという例外を設けたのである。
 上記の例では、日曜日から操業することができ、Cがもし1番方にまわったとしても、Cの休日は土曜日朝6時から日曜日朝6時までと2日間にまたがる連続24時間でよい とした。
21
6D
 過去問解説(13-7B)にあるように、「休日とは暦日を指し、午前零時から午後12時までである」 というのが原則であって、
 たとえ連続24時間の休息を与えても、それが暦日(午前零時から午後12時まで)でなければ、法定の1週1日休日を与えたとはいえない。
 しかしながら、交替制の場合の休日に関する通達(S63.3.14基発150号(35条関係))のような例外もあり、
・番方編成による交替制によることが就業規則等により定められており、制度として運用されていること、
・各番方の交替が規則的に定められているものであって、勤務割表等によりその都度設定されるものではないこと
 の要件を満たす8時間3交替制勤務の事業場にあっては、使用者が暦日でない(すなわち2日間にまたがッた)継続24時間の休息を与えても、35条の法定休日として認められている。
18
3D
 出張中の休日については、通達(S33.2.13基発90(35条関係))によると、
 「出張中の休日はその日に旅行する等の場合であっても、旅行中における物品の監視等別段の指示がある場合のほかは、休日労働として取扱わなくても差し支えない」とある。
 よってたとえば、月曜日朝にある本社の会議に出席するため、日曜日の夜行列車に乗って移動しても労働時間ではない。ましてや休日労働でも深夜労働でもない。
 また、平日の昼間に、出張のため新幹線等で移動した場合は、所定の労働時時間、労働したものとみなされるが、移動時間が所定労働時間を超えていても、時間外労働になるわけではない。
  ただし労災に関していえば、出張命令による移動は休憩時間と同じような扱いで拘束時間と見ることができるので、列車内で事故にあえば業務上災害となりうる。
 なお、問題文にある35条の休日とは、  「毎週少くとも1回の休日、あるいは4週間を通じ4日以上の休日を与えなければならない」とする最低限度の休日のことである。 
11
7A
 41条の1号に該当するので、「農業や畜産の事業に従事する労働者については、労働時間、休憩及び休日に関する規定は適用されない」
 しかしながら、通達(S22.11.26 基発389)によると、
 「41条該当者にも39条(年次有給休暇)の適用がある」としている。
16
5E
 労働時間・休憩・休日に関する規定は、適用除外41条の1号により、
 「農業・漁業・畜産の事業に従事する労働者には適用されないが、林業に従事する労働者には適用される
 
また、41条の適用除外者であっても、深夜業、年次有給休暇、産前産後休業に関する規定は除外されない。
 たとえば、深夜業については通達(H11.3.31基発168(41条関連))に
 「本条は労働時間、休憩及び休日の規定を適用除外としているものであり、深夜業の関係規定は適用が除外されるものでない。従って、本条により労働時間等の適用除外を受ける者であっても、37条に定める深夜時間帯に労働させる場合は、深夜業の割増賃金を支払わなければならない」とある。 

23
1

 労働基準法第4章に定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、農業又は畜産、養蚕、水産の事業に従事する労働者には適用されないが、これらの事業においても、深夜業及び年次有給休暇に関する規定は適用される。
 41条にあるように、1号に該当する農業や畜産などの事業に従事する労働者については、労働時間、休憩及び休日に関する規定は適用されない。
 ただし、深夜業については通達(H11.3.31基発168(41条関連))に
 「本条は労働時間、休憩及び休日の規定を適用除外としているものであり、深夜業の関係規定は適用が除外されるものでない。従って、本条により労働時間等の適用除外を受ける者であっても、37条に定める深夜時間帯に労働させる場合は、深夜業の割増賃金を支払わなければならない」とある。
 また、年次有給休暇についても、通達(S22.11.26 基発389)に、
 「41条該当者にも39条(年次有給休暇)の適用がある」としている。 

22
4C

 労働時間・休憩・休日に関する規定は、適用除外41条の2号により、「事業の種類にかかわらず監督管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者には適用されない」
 それでは、管理・監督者にはどのような者が該当するかについては、通達(S63.3.14基発150)に
 「一般的には、部長、工場長等労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者の意であり、名称にとらわれず、実態に即して判断すべきものである」としており、さらに 具体的には、
 「一般に企業においては、職の内容と権限等に応じた地位(職位)と経験、能力等に基づく格付(資格)とによって人事管理が行われている場合があるが、管理監督者の範囲を決めるに当たっては、かかる資格及び職位の名称にとらわれることなく、職務内容、責任と権限、勤務態様に着目する必要があること」としている。
 なお、それ以外にも、「管理監督者であるか否かの判定に当たっては、上記のほか、賃金等の待遇面についても無視しえないものであり、その地位にふさわしい待遇がなされているか否か等について留意すること」とある。
 参考までにいわゆる「名ばかり管理職問題」について争った「日本マクドナルド事件」(東京地方裁判所20.01.28)においても
 「管理監督者については, 労働基準法の労働時間等に関する規定は適用されないが, これは, 管理監督者は, 企業経営上の必要から, 経営者との一体的な立場において, 同法所定の労働時間等の枠を超えて事業活動することを要請されてもやむを得ないものといえるような重要な職務と権限を付与され 、 また、 賃金等の待遇やその動務態樣において、 他の一般労働者に比べて優遇措置が取られているので、 労働時間等に関する規定の適用を除外されても, 上記の基本原則に反するような事態が避けられ, 当該労働者の保護に欠けるところがないという趣旨によるものであると解される。
 原告が管理監督者に当たるといえるためには, 実質的に以上の法の趣旨を充足するような立場にあると認められなければならない」とし、店長たちの要求を一部認めて、未払い分の時間外手当の支払いを命じた。
26
2
 小売業、飲食業等において、いわゆるチェーン店の形態により相当数の店舗を展開して事業活動を行う企業における比較的小規模の店舗においては、店長等の少数の正社員と多数のアルバイト・パート等により運営されている実態がみられるが、この店舗の店長等については、十分な権限、相応の待遇等が与えられていないにもかかわらず労働基準法第41条第2号に規定する「監督若しくは管理の地位にある者」(以下「管理監督者」という)として取り扱われるなど不適切な事案も見られることから、平成20年9月9日付け基発第0909001号通達「多店舗展開する小売業、飲食業等の店舗における管理監督者の範囲の適正化について」が出されており、
 同通達によれば、これらの店舗の店長等が管理監督者に該当するか否かについて、職務内容、責任と権限、勤務態様及び賃金等の待遇を踏まえ、総合的に判断することとなるとされており、このうち「賃金等の待遇」についての判断要素の一つとして、「実態として長時間労働を余儀なくされた結果、(B)時間単価に換算した賃金額において、店舗に所属するアルバイト・パート等の賃金額に満たない場合には、管理監督者性を否定する(C)重要な要素となる」ことがあげられている。
 いわゆる「名ばかり管理職問題」については「日本マクドナルド事件」(東京地方裁判所20.01.28)の裁判結果などを受けて、通達(H20.09.09基発0909001)が出された。同通達によると、
 「店舗の店長等が管理監督者に該当するか否かについては、労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者であって、労働時間、休憩及び休日に関する規制の枠を超えて活動することが要請されざるを得ない重要な職務と責任を有し、現実の勤務態様も、労働時間等の規制になじまないような立場にあるかを、職務内容、責任と権限、勤務態様及び賃金等の待遇を踏まえ、総合的に判断することとなるが、今般、店舗の店長等の管理監督者性の判断に当たっての特徴的な要素について、店舗における実態を踏まえ、最近の裁判例も参考として、下記のとおり整理したところである。
 ついては、これらの要素も踏まえて判断することにより、店舗における管理監督者の範囲の適正化を図られたい。(以下要旨)
(1)職務内容、責任と権限についての判断要素
(2)勤務態様についての判断要素
(3)賃金等の待遇についての判断要素
・基本給、役職手当等の優遇措置が、実際の労働時間数を勘案した場合に、割増賃金の規定が適用除外となることを考慮すると十分でなく、当該労働者の保護に欠けるおそれがあると認められるときは、管理監督者性を否定する補強要素となる。
・一年間に支払われた賃金の総額が、勤続年数、業績、専門職種等の特別の事情がないにもかかわらず、他店舗を含めた当該企業の一般労働者の賃金総額と同程度以下である場合には、管理監督者性を否定する補強要素となる。
・実態として長時間労働を余儀なくされた結果、時間単価に換算した賃金額において、店舗に所属するアルバイト・パート等の賃金額に満たない場合には、管理監督者性を否定する重要な要素となる。
 特に、当該時間単価に換算した賃金額が最低賃金額に満たない場合は、管理監督者性を否定する極めて重要な要素となる。
B:「実態として長時間労働を余儀なくされた結果、アルバイト・パート等の賃金額に満たない場合」とあるから、たとえ総賃金額や平均賃金額が上回っているとしても、時間外労働による割増し賃金が支払われていないのであるから、時間単価換算した賃金額でどうかということが問題になるのは当然。

24
2
選択

 労働基準法第41条第2号に定める「監督若しくは管理の地位にある者」(以下「管理監督者」という)とは、一般的には、部長、工場長等労働条件の決定その他労務管理について(B)経営者と一体的な立場にある者の意であり、名称にとらわれず、実態に即して判断すべきものである。
 具体的な判断に当たっては、下記の考え方による。
(1) 原則
 労働基準法に規定する労働時間、休憩、休日等の労働条件は、最低基準を定めたものであるから、この規制の枠を超えて労働させる場合には、法所定の割増賃金を支払うべきことは、すべての労働者に共通する基本原則であり、企業が人事管理上あるいは営業政策上の必要等から任命する職制上の役付者であればすべてが管理監督者として例外的取扱いが認められるものではないこと。
(2) 適用除外の趣旨 [略]
(3) 実態に基づく判断 [略]
(4) 待遇に対する留意
 管理監督者であるかの判定に当たっては、上記(1)から(3)のほか、賃金等の待遇面についても無視し得ないものであること。
 この場合、定期給与である基本給、役付手当等において、(C)その地位にふさわしい待遇がなされているか否か、ボーナス等の一時金の支給率、その算定基礎賃金等についても役付者以外の一般労働者に比し優遇措置が講じられているか否か等について留意する必要があること。
 なお、一般労働者に比べ優遇措置が講じられているからといって、実態のない役付者が管理監督者に含まれるものではないこと。
(5)スタッフ職の取扱い [略]
 まず、41条とは
 「4章(労働時間、休憩、休日及び年次有給休暇)、6章(年少者)及び6章の2(妊産婦等)で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない」
 各号のうち、2号にある「管理監督者」について、重要な通達(S63.3.14基発150)があり、それによれば、
 「一般的には、部長、工場長等労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者の意であり、名称にとらわれず、実態に即して判断すべきものである。具体的は、
 (4)待遇に対する留意
 管理監督者であるか否かの判定に当たっては、上記のほか、賃金等の待遇面についても無視しえないものであること。
 この場合、定期給与である基本給、役付手当などにおいて、その地位にふさわしい待遇がなされているか否か ・・・・・」とある通り。
 賃金のほか「労働時間」についても裁量権がかなりあることが重要。つまり、忙しいときは無給の長時間労働、休日労働もやむをえないが、そうでないときは自分で勤務時間や休日の取り方をコントロールできるものでないと。
 そのほか[略]についても、今後も出題の可能性があるので、確認しておいた方がよいです。
 その他の紛らわしい言葉としては、(B)については
 「事業主のために行為をするすべての者」:これは使用者について定義した10条の、
 「この法律で使用者とは、事業主又は事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者をいう」からきたもので、使用者とは、労基法各条の義務についての履行の責任者をいい、その義務について実質的に一定の権限を与えられているか否かによって判定されるもの。
 よく、「使用者」と「管理監督者」を混同する人がいるが、前者はあくまでも使用者であって労働者ではない。
 ただし、事業主のごとく労基法全体に対しての使用者もおれば、ある規定では使用者であって使用者としての罰則規定が適用されうるが、他の規定では労働者であって保護される側になる者もいる。
 これに対して、「管理監督者」は、上記通達の「適用除外の趣旨」にあるように、
 「労働時間、休憩、休日の規制の枠を超えて活動することが要請されざるを得ない重要な職務と責任を有し、現実の勤務態様も、労働時間等の規制になじまないような立場にある者に限って管理監督者として、41条による適用の除外が認められる趣旨であること」とされており、
 管理監督者はあくまでも労働者である。
 
このことを頭にいれておかないと、問題文の原則に書かれていることを理解することができないことになる。
 「複数の部下を持ち指揮命令を行っている者」: 使用者ではなく労働者であるから指揮命令の有無は直接的には関係ない。よって、部下が一人もいないいわゆるスタッフ管理職であっても、一定の範囲の者については、管理者として適用除外となることは充分あり得る。
 ただし、管理監督者の適用範囲をあまりにも広げすぎると、いわゆる名ばかり管理職になってしまう恐れがある。
 この点について争われた「日本マクドナルド事件」(東京地方裁判所20.01.28)の判決文は大いに参考になる。
20
4E
 いわゆる管理監督者については、41条2号により、労働時間・休憩・休日に関する規定は適用除外である。
 またこの適用除外に当たって、行政官庁の許可を要件とするという規定はない。  
 なお、行政官庁の許可が必要なのは、施行規則23条により、「宿直又は日直の勤務で断続的な業務に就く労働者」である。
13
5E
 41条2号に該当するので、
 「監督又は管理の地位にある者については、労働時間、休憩及び休日に関する規定は適用されない」
 しかしながら、適用除外に関する通達(H11.3.31基発168(41条関連))によると、
 「労基法41条は労働時間、休憩及び休日の規定を適用除外としているものであり、深夜業の関係規定は適用が排除されない。従って、労働時間等の適用除外を受ける者であっても、37条に定める深夜時間帯に労働させる場合は、深夜業の割増賃金を支払わなければならない」
17
3E

 

 過去問(13-5E)の解説の通りで、
 「監督又は管理の地位にある者については、労働時間、休憩及び休日に関する規定は適用されない」。
 しかしながら、適用除外に関する通達(H11.3.31基発168(41条関連))によると、
 「労基法41条は労働時間、休憩及び休日の規定を適用除外としているものであり、深夜業の関係規定は適用が排除されない。従って、労働時間等の適用除外を受ける者であっても、37条に定める深夜時間帯に労働させる場合は、深夜業の割増賃金を支払わなければならない」。
 つまり、時間外労働、休日労働に関する概念はないので、割増賃金は支払う必要はないが、深夜労働に対しては割増賃金の支払いが必要である。
 たとえば、午後5時以降午後10時までの労働に対して、割増賃金を支払う必要はないが、午後10時から午前5時までの深夜時間労働に対しては、37条の規定に従い、通常の労働時間の賃金の計算額の2割5分以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。
 22年4月以降は、「延長して労働させた時間が1箇月について60時間を超えた場合においては、
 その超えた時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の5割以上の率(それが深夜業であれば7割5分以上)の割増賃金を支払わなければならない」
 となるが、管理監督者の場合は1か月の時間外労働が60時間を超えるということはない。
25
1

 正解は、(A)=長さ、(B)=午後10時から午前5時まで、(C)適用しない
 問題文でいう最高裁の判示とは、同判例(いわゆる「ことぶき事件」、H21.12.18)のことで、これによれば、
 「労基法(労働基準法)における労働時間に関する規定の多くは,その(A)長さに関する規制について定めており,同法37条1項は,使用者が労働時間を延長した場合においては,延長された時間の労働について所定の割増賃金を支払わなければならないことなどを規定している。
 他方,同条3項(注:現4項)は,使用者が原則として(B)午後10時から午前5時までの間において労働させた場合においては,その時間の労働について所定の割増賃金を支払わなければならない旨を規定するが,
 同項は,労働が1日のうちのどのような時間帯に行われるかに着目して深夜労働に関し一定の規制をする点で,労働時間に関する労基法中の他の規定とはその趣旨目的を異にすると解される。
 また,労基法41条は,同法第4章,第6章及び第6章の2で定める労働時間,休憩及び休日に関する規定は,同条各号の一に該当する労働者については適用しないとし,これに該当する労働者として,同条2号は管理監督者等を,同条1号は同法別表第1第6号(林業を除く)又は第7号に掲げる事業に従事する者を定めている。
 一方,同法第6章中の規定であって年少者に係る深夜業の規制について定める61条をみると,同条4項は,上記各事業については同条1項ないし3項の深夜業の規制に関する規定を(C)適用しない旨別途規定している。
 こうした定めは,同法41条にいう「労働時間,休憩及び休日に関する規定」には,深夜業の規制に関する規定は含まれていないことを前提とするものと解される。
 以上によれば,労基法41条2号の規定によって同法37条3項(現4項)の適用が除外されることはなく,管理監督者に該当する労働者は同項に基づく深夜割増賃金を請求することができるものと解するのが相当である」 
(A):ここは日本語としても、時間帯、長さ、密度、割増しかないが、内容からいって「長さ」以外には考えられない。
(B):ここは、「原則として」とあるから、「午後10時から午前5時まで」で誰も異存はなかろう。
 なおこの例外として「厚生労働大臣が必要であると認める場合は、その定める地域又は期間については午後11時から午前6時まで」とあるが、実施例はない。
(C):61条4項によると、「別表1第6号(農林業)、第7号(水畜産業)若しくは第13号に掲げる事業(保健衛生業)若しくは電話交換の業務については、61条1項から3項までの年少者の深夜労働に対する規制の規定は、適用しない
 ここの部分でいわんとすることは、
 ・41条によれば、農業や水畜産業に従事する者には、労働時間・休憩・休日に関する規定は適用されない。
 ・61条によれば、農業や水畜産業に従事する者には、年少者に対する深夜業の禁止・制限の規定は適用されない。
 ・よって、労働働時間・休憩・休日に関する問題と深夜業の問題とは別物である。
 ・以上のことから、管理監督者に対しては、41条により労働時間・休憩・休日に関する規定は適用されないが、これによって深夜労働の規定も適用されないとはいえない。
 それ以外に61条のような別規定がない以上、管理監督者に対しては深夜労働の規定は適用される(深夜労働を行えば、深夜割増賃金を請求できる)
27
6エ
 41条の2号により労働時間等に関する規定が適用除外される「機密の事務を取り扱う者」とは、通達(S22.9.13発基17)によると、
 「秘書その他職務が経営者又は監督・管理者の活動と一体不可分であって、厳格な労働時間管理になじまないものであること」とある。
 つまり、必ずしも秘密書類を取り扱う者を意味するものでなく、たとえば夜中といわず休日といわず社長のそばにずっと付いていないといけないとなると、時間外労働・休日労働の管理にはなじまない、そういう者のこと。
11
7B
 41条の2号に該当するので、「機密の事務を取扱う者や監督又は管理の地位にある者については、労働時間、休憩及び休日に関する規定は適用されない」
 しかしながら、これに関して、満60歳以上の者に対する特例措置などはない。 
 参考までに、民間企業などでは、役職定年制なるものが採用されていることも多く、その結果として、その職務内容、権限と責任などにおいて、機密の事務を取扱う者や管理監督者に該当しなくなれば、60歳前であろうと60歳後であろうと、年齢に関係なく適用除外者ではなくなり、1日8時間、1週間40時間の原則が適用されることになる。
 なお、国家公務員については、令和5年度から定年の引上げが始まり、同年度に 60 歳に達する管理監督職の職員は役職定年制による管理監督職以外の官職への異動(役降り)があることになっている。
18
6A
 41条2号に該当する者とは、
 「事業の種類にかかわらず監督・管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者」であり、これらの者に対しては、41条から、
 「4章(労働時間、休憩、休日及び年次有給休暇)で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は適用されない」とある。
 すなわち、年次有給休暇は確かに4章で規定されてはいるが、41条は「4章の中の労働時間、休憩及び休日に関する規定は適用されない」と読むべきである。
 また、通達(S22.11.26、基発389)においても、
 「41条該当者にも39条(年次有給休暇)の適用がある」となっている。
 参考までに、深夜業、産前産後休業についても適用がある。
25
3C
 本肢が問題にしようとしているのは、労働時間等の規定が適用されないある一定の者のことであり、41条の、「4章(労働時間、休憩、休日及ぶ年次有給休暇)、6章(年少者)及び6章の2(妊産婦等)で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次に該当する労働者については適用しない」とあって、その3号にある、「断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けたもの」とある。
 一方、また、問題文にある施行規則23条とは、
 「宿直又は日直の勤務で断続的な業務について、書面により所轄労働基準監督署長の許可を受けた場合は、これに従事する労働者を、法定労働時間の規定にかかわらず、使用することができる」
 そして、その根拠については、通達(S23.3.17基発464(施行規則23条関連))に、「施行規則23条の根拠は41条3号に基づくものである」
 つまり、「宿直又は日直の勤務で断続的な業務については、所轄労働基準監督署長の許可を受けると、労働時間・休日・休憩の規定を適用せずに使用することができることになる」
 このときの許可の基準は、通達(S22.9.13発基17(許可基準))から、
 「常態としてほとんど労働をする必要のない勤務のみを認めるものであり、定時的巡視、緊急の文書又は電話の収受、非常事態に備えての待機などを目的とするものに限って許可するものであること。(なお、宿直は週1回、日直は月1回を限度とする)」とある。
17
2A
 問題文にある施行規則23条とは、
 「使用者は、宿直又は日直の勤務で断続的な業務について、書面により所轄労働基準監督署長の許可を受けた場合は、これに従事する労働者を、32条(労働時間と休日)の規定にかかわらず、使用することができる」のことであり、
 過去問解説(25-3C)にあるように、
 「宿直又は日直の勤務で断続的な業務については、所轄労働基準監督署長の許可を受けると、労働時間・休日・休憩の規定を適用せずに使用することができることになる」
 この許可基準については、通達(S22.9.13発基17(許可基準))に、
@常態としてほとんど労働をする必要のない勤務のみを認めるものであり、定時的巡視、緊急の文書又は電話の収受、非常事態に備えての待機などを目的とするものに限って許可するものであること。
A原則として、通常の労働からの継続は許可しないこと。
B宿直(日直)勤務1回についての宿直(日直)手当の最低額は、当該事業場において宿直(日直)の勤務に就くことの予定されている同種の労働者に対して支払われている賃金(37条の割増賃金の基礎となる賃金に限る)の1人1日の平均額の3分の1を下回らないこと
C宿直は週1回、日直は月1回を限度とすること。
 つまり、断続的な宿直業務の場合の宿直手当額は、宿直勤務に就くことが予定されている同種の労働者に対して支払われている1人1日当たり賃金の平均額の3分の1を下回ってはならない。
それにしても、本肢は難しい。
27
6オ
 41条3号の「監視又は断続的労働に従事する者」には、本来の勤務がこれに該当する者と、当直等の勤務でこれに該当する者とがおり、いずれも手待ち時間が多いなど労働の密度が低いとして行政官庁の許可を受けた者については、労働者保護上大きな問題はなかろうということで、労働時間、休憩、休日等の規定の適用が除外されている。
 問題文に「医師、看護師の病院での宿直業務は、医療法によって義務づけられる」とあり、これはその通りであるが、41条3号に該当するか否かについては、通達(S24.03.22基発352、H11.03.31基発168)において、
 「勤務の実態が、以下の基準に該当すると認められるものについてのみ、所轄労働基準監督署長の許可を与えること」とあり、たとえば、
・通常の勤務時間の拘束から完全に解放された後のものであること。(通常勤務の延長であってはならない)
・夜間に充分睡眠がとれること。
 急患等のため、昼間と同様の労働に従事することが稀にあっても、一般的にみて睡眠が充分とりうるものである
限り、許可を取り消す必要はなく、その時間は時間外労働として割増賃金を支払うこと。(このような事態がたびたび起きるようでは許可は与えられない)
 よって、医師、看護師の病院での宿直業務はその勤務実態から判断すべきことで、一律に「労働時間等に関する規定の適用はないもの」とすることはできない。