21年度 法改正トピックス( 最低賃金法に関する主要改正点)

  改正後 改正ポイント
   目的(1条) (H20.7.1)
 「この法律は、賃金の低廉な労働者について、賃金の最低額を保障することにより、労働条件の改善を図り、もつて、労働者の生活の安定、労働力の質的向上及び事業の公正な競争の確保に資するとともに、国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする」
 最低賃金の原則(以下の旧3条は削除)
 「最低賃金は、労働者の生計費、類似の労働者の賃金及び通常の事業の賃金支払能力を考慮して定められなければならない」
・「事業若しくは職業の種類又は地域に応じ」を削除
・事業若しくは職業の種類に応じるものについては、特定最低賃金を参照のこと。
・地域に応じたものについては、地域別最低賃金を参照のこと
   最低賃金額(3条) (H20.7.1)
 「最低賃金額は、時間によって定めるものとする」
 旧4条「最低賃金額は、時間、日、週又は月によって定めるものとする」を繰上げて、左記の新3条により、最低賃金は時給についてのみ定める
   最低賃金の競合(6条2項)(H20.7.1、2項新設)
 「前項の場合においても、第9条第1項に規定する地域別最低賃金において定める最低賃金額については、第4条第1項及び第40条の規定の適用があるものとする」
 
   最低賃金の減額の特例(7条)(H20.7.1)
 「使用者が厚生労働省令で定めるところにより都道府県労働局長の許可を受けたときは、次に掲げる労働者については、当該最低賃金において定める最低賃金額から当該最低賃金額に労働能力その他の事情を考慮して厚生労働省令で定める率を乗じて得た額を減額した額により4条の規定を適用する」
1  精神又は身体の障害により著しく労働能力の低い者
2  試の使用期間中の者
3  職業能力開発促進法の認定を受けて行われる職業訓練のうち職業に必要な基礎的な技能及びこれに関する知識を習得させることを内容とするものを受ける者であって厚生労働省令で定めるもの
4  軽易な業務に従事する者、断続的労働に従事する者
 最低賃金の適用除外(旧8条)
 「次に掲げる労働者については、当該最低賃金に別段の定めがある場合を除き、厚生労働省令で定めるところにより、使用者が都道府県労働局長の許可を受けたときは、5条(現4条)の規定は、適用しない」 を1条繰上げて、左記の7条1項に改正。
⇒最低賃金法の適用除外とするのではなく、最低賃金額に一定の逓減率をかけたもので適用することに
・逓減率は、個々の者について定め、都道府県労働局長の許可を得ること。
1号、2号、3号は従来と同じ、
 4号は「所定労働時間の特に短い者」を削除
(最低賃金が時給でのみ規定されるため)
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   地域別最低賃金
 地域別最低賃金の原則(9条) (H20.7.1全改)
 「賃金の低廉な労働者について、賃金の最低額を保障するため、地域別最低賃金(一定の地域ごとの最低賃金)は、あまねく全国各地域について決定されなければならない」
 「2項 地域別最低賃金は、地域における労働者の生計費及び賃金並びに通常の事業の賃金支払能力を考慮して定められなければならない」
 「3項 前項の労働者の生計費を考慮するに当たつては、労働者が健康で文化的な最低限度の生活を営むことができるよう、生活保護に係る施策との整合性に配慮するものとする」
労働協約に基づく地域別最低賃金(旧11条)は削除
 
 地域別最低賃金の決定(10条)(H20.7.1全改)
 「厚生労働大臣又は都道府県労働局長は、一定の地域ごとに、中央最低賃金審議会又は地方最低賃金審議会の調査審議を求め、その意見を聴いて、地域別最低賃金の決定をしなければならない」
 「2項 厚生労働大臣又は都道府県労働局長は、前項の規定による最低賃金審議会の意見の提出があつた場合において、その意見により難いと認めるときは、理由を付して、最低賃金審議会に再審議を求めなければならない」
 
 最低賃金審議会の意見に関する異議の申出(11条)(H20.7.1)
 「厚生労働大臣又は都道府県労働局長は、前条1項の規定による最低賃金審議会の意見の提出があつたときは、厚生労働省令で定めるところにより、その意見の要旨を公示しなければならない」
 「2項 前条1項の規定による最低賃金審議会の意見に係る地域の労働者又はこれを使用する使用者は、前項の規定による公示があつた日から15日以内に、厚生労働大臣又は都道府県労働局長に、異議を申し出ることができる」
 「3項 厚生労働大臣又は都道府県労働局長は、前項の規定による申出があつたときは、その申出について、最低賃金審議会に意見を求めなければならない」
 「4項 厚生労働大臣又は都道府県労働局長は、第1項の規定による公示の日から15日を経過するまでは、前条第1項の決定をすることができない。第2項の規定による申出があつた場合において、前項の規定による最低賃金審議会の意見が提出されるまでも、同様とする」
 旧16条の2の繰上げと一部改正
 最低賃金審議会の調査審議に基づく最低賃金の改正等(12条)(H20.7.1施行)
 「厚生労働大臣又は都道府県労働局長は、地域別最低賃金について、地域における労働者の生計費及び賃金並びに通常の事業の賃金支払能力を考慮して必要があると認めるときは、その決定の例により、その改正又は廃止の決定をしなければならない
 旧16条の3
 「厚生労働大臣又は都道府県労働局長は、(旧)16条(最低賃金審議会の調査審議に基づく最低賃金)の規定による最低賃金について必要があると認めるときは、その決定の例により、その改正又は廃止の決定をすることができる」
は左記のように。
  6.特定最低賃金
 特定最低賃金の決定等(15条)(H20.7.1新設)
 「労働者又は使用者の全部又は一部を代表する者は、厚生労働省令で定めるところにより、厚生労働大臣又は都道府県労働局長に対し、当該労働者若しくは使用者に適用される一定の事業若しくは職業に係る最低賃金(特定最低賃金)の決定又は当該労働者若しくは使用者に現に適用されている特定最低賃金の改正若しくは廃止の決定をするよう申し出ることができる」
 「2項 厚生労働大臣又は都道府県労働局長は、前項の規定による申出があつた場合において必要があると認めるときは、最低賃金審議会の調査審議を求め、その意見を聴いて、当該申出に係る特定最低賃金の決定又は当該申出に係る特定最低賃金の改正若しくは廃止の決定をすることができる」
 「16条 (H20.7.1新設) 前条第2項の規定により決定され、又は改正される特定最低賃金において定める最低賃金額は、当該特定最低賃金の適用を受ける使用者の事業場の所在地を含む地域について決定された地域別最低賃金において定める最低賃金額を上回るものでなければならない」


 「17条 (H20.7.1全改) 15条1項及び2項の規定にかかわらず、厚生労働大臣又は都道府県労働局長は、同項の規定により決定され、又は改正された特定最低賃金が著しく不適当となつたと認めるときは、その決定の例により、その廃止の決定をすることができる」
最低賃金審議会による産業別最低賃金(旧16条)は廃止
 旧16条「厚生労働大臣又は都道府県労働局長は、一定の事業、職業又は地域について、賃金の低廉な労働者の労働条件の改善を図るため必要があると認めるときは、最低賃金審議会の調査審議を求め、その意見を聴いて、最低賃金の決定をすることができる」

 特定最低賃金は、ある特定産業の基幹的労働者に対して設定された地域別最低賃金よりも高い最低賃金
 関係労使の申出→最低賃金審議会への諮問・答申→厚生労働大臣等による決定→公示→30日後に発効
派遣労働者 7.1 派遣中の労働者の地域別最低賃金(13条)(H20.7.1新設)
 「労働者派遣法44条1項に規定する派遣中の労働者については、その派遣先の事業の事業場の所在地を含む地域について決定された地域別最低賃金において定める最低賃金額により4条の規定を適用する」
7.2 派遣中の労働者の特定最低賃金(18条)(H20.7.1全改)
 「派遣中の労働者については、その派遣先の事業と同種の事業又はその派遣先の事業の事業場で使用される同種の労働者の職業について特定最低賃金が適用されている場合にあつては、当該特定最低賃金において定める最低賃金額により4条の規定を適用する」
 
  8.1 地域別最低賃金の公示及び発効(14条)(H20.7.1新設)
 「厚生労働大臣又は都道府県労働局長は、地域別最低賃金に関する決定をしたときは、厚生労働省令で定めるところにより、決定した事項を公示しなければならない。
 「2項 10条1項の規定による地域別最低賃金の決定及び12条の規定による地域別最低賃金の改正の決定は、前項の規定による公示の日から起算して30日を経過した日(公示の日から起算して30日を経過した日後の日であつて当該決定において別に定める日があるときは、その日)から、
 同条の規定による地域別最低賃金の廃止の決定は、同項の規定による公示の日(公示の日後の日であつて当該決定において別に定める日があるときは、その日)から、その効力を生ずる」 
8.2 特定最低賃金の公示及び発効(19条)(H20.7.1新全改)
 「厚生労働大臣又は都道府県労働局長は、特定最低賃金に関する決定をしたときは、厚生労働省令で定めるところにより、決定した事項を公示しなければならない」
 「2項 15条2項の規定による特定最低賃金の決定及び特定最低賃金の改正の決定は、前項の規定による公示の日から起算して30日を経過した日(公示の日から起算して30日を経過した日後の日であつて当該決定において別に定める日があるときは、その日)から、同条第2項及び第17条の規定による特定最低賃金の廃止の決定は、前項の規定による公示の日(公示の日後の日であつて当該決定において別に定める日があるときは、その日)から、その効力を生ずる」 
 
   最低賃金審議会
 委員の任期(23条2項)(H20.7.1施行)
 「2項 委員の任期は、2年とする。ただし、補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする」
 1年から2年へ
   申告(34条) (H20.7.1新設)
 「労働者は、事業場にこの法律又はこれに基づく命令の規定に違反する事実があるときは、その事実を都道府県労働局長、労働基準監督署長又は労働基準監督官に申告して是正のため適当な措置をとるように求めることができる」
 「2項 使用者は、前項の申告をしたことを理由として、労働者に対し、解雇その他不利益な取扱いをしてはならない」
 罰則1(39条)(H20.7.1新設)
 「34条2項の規定に違反した者は、6月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する」
 罰則2(40条)(H20.7.1施行) 
 「4条1項の規定に違反した者(地域別最低賃金及び船員に適用される特定最低賃金に係るものに限る)は、50万円以下の罰金に処する」
 罰則3(41条)(H20.7.1施行) 
 「8条(周知義務)の規定に違反した者(地域別最低賃金及び船員に適用される特定最低賃金に係るものに限る)は、30万円以下の罰金に処する 」
・労働者からの申告ができるようになった。
・申告したことを理由に不利益な取扱いをしたときの罰則を新設
・地域別最低賃金額、船員の特定最低賃金額を下回る賃金しか支払わなかった場合の罰金を、1万円以下から50万円以下に
・周知義務に違反した場合の罰金を、5千円以下から30万円以下に。