18年度 法改正トピックス(厚生年金法等企業年金関連に関する主要改正点)

厚生年金法(厚生年金基金、企業年金関連)

改正後

改正ポイント

基金の業務 1.基金の業務(130条5項)(17.10.1改正)
 「基金は、その業務の一部を、政令で定めるところにより、信託会社(信託業法の免許を受けたものに限る)、信託業務を営む金融機関、生命保険会社、農業協同組合連合会(全国を地区とし、農業協同組合法の事業のうち生命共済の事業を行うものに限る)、企業年金連合会その他の法人に委託することができる」
 
 厚生年金基金連合会は企業年金連合会となり、「年金数理業務については厚生年金基金連合会に委託できないとなっていたのが削除され、企業年金連合会に対しても委託できる」こととなった。
基金からの権利義務の移転
1.基金間の権利義務の移転(144条の2)(17.10.1一部改正)
 「甲基金は、乙基金に申し出て、甲基金の設立事業所(政令で定める場合にあっては、設立事業所の一部。以下「脱退事業所」という)に使用される甲基金の加入員又は加入員であった者に係る甲基金の加入員であった期間(企業年金連合会又は他の基金がその支給に関する義務を承継している老齢年金給付の額の計算の基礎となる甲基金の加入員であった期間を除く)に係る年金たる給付及び一時金たる給付の支給に関する権利義務を移転することができる」
 「2項 甲基金が前項の規定により権利義務の移転を申し出るには、
@甲基金の代議員会において代議員の定数の4分の3以上の多数により議決した上で、
A厚生労働大臣の認可を受けなければならない」
1' 政令で定める場合(基金令41条の3)
 「144条の2の政令で定める場合は、次のとおりとする」
1
事業所単位
 譲受事業主が、吸収分割又は営業の全部若しくは一部の譲受けにより、譲渡事業主からその営業の全部又は一部を承継した場合であって、譲受事業主が設立する基金が、譲渡事業主の設立事業所に使用される者であって当該承継された営業の全部又は一部に係る事業に主として従事していたものとして厚生労働省令で定めるものの譲渡事業主が設立した基金に係る年金たる給付及び一時金たる給付の支給に関する権利義務を承継する場合
2
個人単位
 甲基金及び乙基金の規約において、あらかじめ、甲基金の設立事業所に使用される甲基金の一部移転加入員に係る年金たる給付及び一時金たる給付の支給に関する権利義務を乙基金が承継することを定める場合(一部移転加入員が乙基金の設立事業所に使用されることとなったことにより、甲基金の設立事業所に使用されなくなったときに、一部移転加入員の同意を得て当該権利義務の承継を行う場合に限る)
@個人単位で、基金から基金への権利義務の移転・承継が可能になった。
Aこの場合、加入期間は通算される。
 
2.他の基金への権利義務の移転及び脱退一時金相当額の移換(144条の3)(17.10.1新設)
 「甲基金の中途脱退者で、
@当該基金の加入員の資格を喪失した者で、かつ、
A資格喪失日において老齢年金給付の受給権を有さない者で、かつ
B当該基金の加入員であった期間が20年に満たない者は、
 乙基金の加入員の資格を取得した場合であって、甲基金及び乙基金の規約において、あらかじめ、甲基金から乙基金に甲基金の加入員であった期間に係る老齢年金給付の支給に関する権利義務の移転ができる旨が定められているときは、
 甲基金に当該権利義務の移転を申し出ることができる」
 中途脱退者(基金令41条の3の3の2項)
 「144条の3において、政令で定める加入員であった期間は、20年とする」
脱退一時金相当額とは、年金の受給資格(原則として国民年金の被保険者期間が25年)を満たす前に基金を脱退した場合、一時金の形で受給できる加算部分(基金の負担分)をいう。
 中途脱退者の老齢年金給付の支給義務の移転、脱退一時金相当額の移換について、
⇒ 従来は連合会に対してのみ可能。
⇒ 改正後は、中途脱退者が新たな基金に加入したときは、一定の要件を満たし、申し出を行なうことによって、そこの基金に移転、移換が可能になった。
基金、基金間で年金が通算可能になった。
中途脱退者とは 、資格喪失日において老齢年金給付の受給権を有する者を除き、加入期間が20年未満(従来は15年未満)
 国民年金基金の場合は15年未満 
3.基金から確定拠出年金への脱退一時金相当額の移換(144条の6)(17.10.1新設)
 「基金の中途脱退者は、確定拠出年金法に規定する企業型年金加入者又は個人型年金加入者の資格を取得したときは、当該基金に当該企業型年金の資産管理機関又は国民年金基金連合会への脱退一時金相当額の移換を申し出ることができる」
 「2項 当該基金は、前項の規定により脱退一時金相当額の移換の申出があったときは、当該企業型年金の資産管理機関又は国民年金基金連合会に当該申出に係る脱退一時金相当額を移換するものとする」
 「3項 当該基金は、前項の規定により脱退一時金相当額を移換したときは、当該中途脱退者に係る脱退一時金の支給に関する義務を免れる」
 基金の中途脱退者が、確定拠出年金法による企業型年金、又は個人型年金に加入したときは、申し出により脱退一時金相当額の移換が行なえるようになった。
老齢年金給付の支給義務は連合会に移転。
 脱退一時金のみ、確定拠出年金に移換可能(確定拠出年金の場合は、老齢厚生年金の代行部分がないため)
4. 基金の解散による年金たる給付等の支給に関する義務等の消滅(146条17.10.1一部改正)
 「基金は、解散したときは、当該基金の加入員であった者に係る年金たる給付及び一時金たる給付の支給に関する義務を免れる。
 ただし、
 @解散した日までに支給すべきであった年金たる給付又は一時金たる給付でまだ支給していないものの支給に関する義務
 A他の基金、確定給付企業年金又は確定拠出年金へ解散した日までに移換すべきであった年金給付等積立金若しくは脱退一時金相当額でまだ移換していないものの移換に関する義務については、この限りではない」 
 基金は解散しても、
@解散日までに支給すべきもの、又は、
A移換すべきものが残っている場合は、その義務から逃れることはできない。
⇒Aの部分が新たに加わったことに注意。
連合会 1.連合会
1-1 企業年金連合会の設立(149条 17.10.1改正)
 「基金は、中途脱退者及び解散した基金が老齢年金給付の支給に関する義務を負っていた者(解散基金加入員)に係る老齢年金給付の支給を共同して行うとともにため、年金給付等積立金の移換を円滑に行うため企業年金連合会を設立することができる」

 これらにより、厚生年金基金あるいは確定給付企業年金のある会社を退職したり、その基金や企業年金が解散した場合は、「積立金」を
@企業年金連合会に移換
A企業年金連合会を経由して、再就職後の厚生年金基金や企業年金(確定給付企業年金あるいは確定拠出年金)に移換
B条件があえば直接、再就職後の厚生年金基金や企業年金(確定給付企業年金あるいは確定拠出年金)に移換
することができることになった。
1-2 会員の資格(158条の5 17.10.1新設)
 「連合会の会員たる資格を有する者は、次の者とする。
 @基金
 A基金以外の者であつて、確定給付企業年金その他政令で定める年金制度を実施するものとして規約で定めるもの 」
 厚生年金基金連合会は企業年金連合会と名称を変更。
 その業務は
@中途脱退者への年金給付
A解散基金加入員への年金給付のほか、
B積立金の円滑な移換
が追加になった。





 
 連合会の会員は
@厚生年金基金、
A確定給付企業年金
B確定拠出年金法による企業型年金
2.中途脱退者に係る措置(17.10.1改正)
 「160条 基金は、政令で定めるところにより、連合会に申し出て、中途脱退者の当該基金の加入員であった期間に係る老齢年金給付の支給に関する義務を移転することができる」
 「160条の2 基金は、規約の定めるところにより、前条1項の規定による申出に係る中途脱退者に支給すべき脱退一時金相当額の交付を連合会に申し出ることができる」
 基金の中途脱退者とは加入期間が20年未満の者
3. 連合会からの移換
 「159条3項(17.10.1 新設) 連合会は、基金、確定給付企業年金の資産管理運用機関等又は企業型年金の資産管理機関若しくは国民年金基金連合会に年金給付等積立金を移換することができる」
 
3-1 連合会から基金への権利義務の移転及び年金給付金等積立金の移換(165条 H17.10.1改定)
 「連合会が給付の支給に関する義務を負つている中途脱退者又は解散加入員が、基金の加入員の資格を取得した場合であつて、連合会及び当該基金の規約において、あらかじめ、連合会から当該基金に老齢年金給付(プラスアルファ分は除く)の支給に関する権利義務の移転ができる旨が定められているときは、連合会に当該権利義務の移転を申し出ることができる。
 ただし、中途脱退者等が連合会が支給する老齢年金給付の受給権を有するときは、この限りでない」
 基金からの中途脱退または解散によって老齢年金給付の支給義務が連合会に移換された者
 ⇒ 再度新たな基金に加入したときは、一定の条件があれば、連合会からその基金に再度、年金給付の権利義務が移換される。
 すなわち、連合会に一時期滞留した後、旧基金から新基金に権利義務が引き渡される。
3-2 連合会から確定給付企業年金への年金給付等積立金の移換(165条の2)(17.10.1新設)
 「中途脱退者等は、確定給付企業年金の加入者の資格を取得した場合であって、連合会及び当該確定給付企業年金の規約において、あらかじめ、連合会から当該確定給付企業年金の資産管理運用機関等に連合会の規約で定める年金給付等積立金の移換ができる旨が定められているときは、連合会に当該年金給付等積立金の移換を申し出ることができる。
 ただし、中途脱退者等が連合会が支給する老齢年金給付の受給権を有するときは、この限りでない」 
 基金からの中途脱退または解散した者が、確定給付企業年金の加入者資格を得たとき
 ⇒ 上記と同じで、連合会に一時期滞留した後のと、旧基金から新確定給付企業年金に、権利義務が引き渡される。
3-3 連合会から確定拠出年金への年金給付等積立金の移換(165条の3)(17.10.1新設)
 「中途脱退者等は、企業型年金加入者又は個人型年金加入者の資格を取得した場合であつて、連合会の規約において、あらかじめ、当該企業型年金の資産管理機関又は国民年金基金連合会に連合会の規約で定める年金給付等積立金の移換ができる旨が定められているときは、連合会に当該企業型年金の資産管理機関又は国民年金基金連合会への当該年金給付等積立金の移換を申し出ることができる。
 ただし、中途脱退者等が連合会が支給する老齢年金給付の受給権を有するときは、この限りでない」
 基金からの中途脱退または解散した者が、確定給付企業年金の加入者資格を得たとき
 ⇒ 上記と同じで、連合会に一時期滞留した後のと、旧基金から新確定給付企業年金に、権利義務が引き渡される。