発展講座 厚生年金保険法

KK03

 特別加算  
KeyWords  
 
 特別加算(S60法附則60条2項)  
 「老齢厚生年金の配偶者に係る加給年金額については、44条2項に定める額に加えて、表に掲げる額(50円未満の端数は切り捨て、50円以上100円未満の端数は100円に切り上げ)を加算した額とする」
 
(1)導入と改正
 昭和60年の年金法大改正の際に、激減緩和策のひとつとして導入されたもので、当初は昭和14年4月2日以後生まれの者を対象としていたが、平成6年の改正で、 昭和9年4月2日以後生まれの者まで適用が拡大された。
(2)導入の趣旨
 昭和60年の大改正においては、女性の年金受給権確保が主要なテーマのひとつになり、世帯単位で考えていた厚生年金についても、定額部分が国民年金の基礎年金に統合されるに伴って、個人単位で受給する仕組みに変更された。
 つまり、妻が65歳になるまでは世帯単位の支給であって、夫の老齢厚生年金に妻に対する加給年金額が合わせて支給されるが、妻が65歳になると加給年金はなくなり、自分自身の老齢基礎年金を受給することになった。(ただし、妻が昭和41年4月1日以前生まれの場合は 経過措置として、加給年金額の一部が振替加算として妻に支給される)
 しかしこの改正により、共働きの場合は妻が60歳になれば老齢厚生年金を受給できるが、専業主婦の場合65歳にならないと基礎年金が受給できないなどの不公平感が残った。
 またこのときに定額部分についても若い世代ほど生年月日による給付乗率が大きく切り詰められたことから、若い世代を中心にし て、65歳になるまでの間の何らかの措置が望まれたのである。
(3)具体的措置 
 その後平成6年の法改正で、老齢厚生年金の支給開始年齢も60歳から65歳に段階的に移行していくことが予定され、さらに問題が複雑化した。
 特別加算という制度はあくまでも激減緩和に対する経過的措置であって、財源との兼ね合いも考えた妥協の産物でできたものであると考えて良い。
 制度設計に当たっては、以下のような割り切りにたっているといわれている。
@夫婦間の年齢差などは無視し、夫の生年月日だけで決定する。
A妻の生年月日による振替加算の額は考慮しない。
B昭和18年4月2日以後生まれの者の特別加算の額は、満額の老齢基礎年金額の2分の1−加給年金額とする。
 また、昭和17年4月2日から昭和18年4月1日生まれ 上記の80%
    昭和16年4月2日から昭和17年4月1日生まれ 上記の60%
    昭和15年4月2日から昭和16年4月1日生まれ 上記の40%
    昭和 9年4月2日から昭和15年4月1日生まれ  上記の20%
:なお上記は、説明の都合上、夫、妻としたが、正確には受給権者、加給対象配偶者のことであり、夫と妻が逆の場合にも成立する。
                    特別加算の額
年齢区分   基本となる一定額 特別加算の額
昭和 9年4月2日から昭和15年4月1日生まれ 33,200
(165,800×0.2)
 33,200円×改定率
昭和15年4月2日から昭和16年4月1日生まれ 66,300
(165,800×0.4)
 66,300円×改定率
昭和16年4月2日から昭和17年4月1日生まれ 99,500
(165,800×06)
 99,500円×改定率
昭和17年4月2日から昭和18年4月1日生まれ  132,600(165,800×0,8) 132,600円×改定率
昭和18年4月2日以後生まれ 165,800 165,800円×改定率